2017年2月26日日曜日

泉屋博古館分館「屏風にあそぶ春のしつらえ-茶道具とおもてなしのうつわ」ブロガー内覧会

2月22日(水)、泉屋博古館「屏風にあそぶ春のしつらえ-茶道具とおもてなしのうつわ」ブロガー内覧会に参加してきました。


展示室Ⅰ《二条城行幸図屏風》(左)、《誰ヶ袖図屏風》(右)
はじめに泉屋博古館分館の野地分館長から、歓迎のご挨拶に始まり、分館でのこれからの特別展のご案内がありました。

野地分館長(右)と学芸員の森下さん(左)

○ 2月25日(土)に始まって5月7日(日)まで開催されるのが今回紹介する「屏風にあそぶ春のしつらえ-茶道具とおもてなしのうつわ」。

○ 6月1日(木)~8月4日(金)は、兵庫県西宮市にある黒川古文化研究所の名刀コレクションを展示する「名刀礼賛-もののふ達の美学」。愛刀家には見逃せない企画です。
(上の写真で森下さんが手に持っているのがこの展覧会のパンフレットです。)

○ 9月9日(土)~10月13日(金)は、日本洋画壇の先覚者・浅井忠が教授を務めた京都高等工芸学校(現 京都工芸繊維大学)とのタイアップ企画「浅井忠の京都遺産ー京都工芸繊維大学 美術工芸コレクション」。

○ 11月3日(金・祝)~12月10日(日)は、泉屋博古館だけでなく東京国立博物館、京都国立博物館、大阪市立美術館所蔵の明末清初の中国名画を展示する「典雅と奇想-明末清初の中国名画展」。

どれも興味深い特別展ですが、中国絵画ファンの私としては、11月3日から始まる中国名画展は見逃せない展覧会です。

展示会場は展示室Ⅰと展示室Ⅱに分かれていて、展示室Ⅰは森下さんにご案内していただきました。

展示室Ⅰ 《扇面散・農村風俗図屏風》

入ってすぐ左に展示されている屏風が《扇面散・農村風俗図屏風》。
桜の花が咲く農村の風景。
森下さん「春の風物詩として定着してる花見ですが、昔は田植えの時期を神様が桜の花を咲かせて知らせてくれたと考えられていました。」

展示室Ⅰの右側には江戸前期流行のファッションの着物が描かれた《誰ヶ袖図屏風》と、今回注目の作品《二条城行幸図屏風》が展示されています。
時の将軍・徳川家光と父・秀忠の招きに応じて後水尾天皇と中宮和子の一行が二条城に行幸する様子を描いた《二条城行幸図屏風》には、一行の行列と見物人を合わせてなんと3,226人もの人物が描き込まれているとのことです。
一人ひとりのしぐさや表情がそれぞれ特徴があって、いくら眺めても飽きることのない素晴らしい屏風です。

上段は後水尾天皇と中宮和子の一行が堀川通りを二条城に向かう様子で、下段が将軍・家光の一行が天皇を奉迎するために中立売通りを御所に向かう様子が描かれています。
上段の行列の後方、鳳凰の飾りが付いているのが後水尾天皇が乗っている輿、中ほどの中宮和子の乗っている牛車は牛2頭立て、下段の行列の中ほどのやや後方、将軍・家光が乗っている牛車も牛2頭立てなので、みなさんもぜひ探してみてください。

この屏風は、江戸時代にはすでに住友家が所蔵していたのですが、天皇家と徳川家が描かれていたため、おそれ多くて飾ることができなかったそうです。そのおかげでとても保存状態がいいのです、と森下さん。

展示室Ⅰには《二条城行幸図屏風》が描かれた寛永年間にちなんだ茶道具が展示されています。


続いて展示室Ⅱへ。
こちらでは野地分館長の解説をおうかがいしました。

展示室Ⅱ

野地館長のお話
○ 今回は新収蔵品もまじえて、春にちなんだ作品を展示しています。
○ 正面の《桜図》は、上野の寛永寺が戊辰戦争で焼ける前、境内に咲いていた桜を描い
 たもので、作者の菊池容斎は幕臣で、38歳から本格的に絵を描きはじめた人です。
○ 菊池容斎は学者肌の人で、人体デッサンを初めて行ったり、狩野派や四条派など当時
 の作風を取り入れて、自分風の作風を確立した人です。
○ この作品は1年半ほど前に住友家の倉庫から発見されたもので、今回が初公開です。

菊池容斎《桜図》(左)、香田勝太 春秋草花図のうち《春》(左)
○ 《桜図》の左の屏風《春》は一見すると日本画ですが、実は油絵。近くで見ると絵の具
 の重なり具合がよくわかります。


畳が敷かれた茶室風のしつらえがとてもいい雰囲気です。
○ 右端の釜は《鳳凰模様日の丸釜》。よく見ると鳳凰が浮かび上がって見えます。

二代目川甚兵衛《猟犬図額》(左)、クロード・モネ《モンソー公園》(中)、《サン=シメオン農場の道》(右)

○ 《猟犬図額》は油絵のようですが、実は織物です。
○ モネの作品は、印象派になりきる前のバルビゾン風の作品《サン=シメオン農場の 
 道》と点描を使った印象派の作品《モンソー公園》の対比を楽しむことができます。

展示室内は春らしくてとても華やかな雰囲気でいっぱいです。
この春おすすめの展覧会です。

分館長の野地さんや学芸員の森下さんのお話は興味深く、とても参考になりました。
ご興味のある方は、ギャラリートークの日程に合わせてご覧になってはいかがでしょうか。

展示作品やギャラリートークの詳細は泉屋博古館の公式サイトをご覧ください。
  ↓
「屏風にあそぶ春のしつらえ」

※掲載した写真は美術館より特別に撮影の許可をいただいたものです。





2017年2月12日日曜日

青い日記帳×オルセーのナビ派展ブロガー特別内覧会

2月9日(木)に開催された「青い日記帳×オルセーのナビ派展ブロガー特別内覧会」に行ってきました。

「オルセーのナビ派展」は、現在、三菱一号館美術館で開催中の展覧会で、キャッチコピー「はじめまして、ナビ派です。」のとおり、日本で初めて開催される本格的なナビ派展です。

入口から第一室に入ると、ナビ派の画家たちに影響を与えたゴーガンの作品がお出迎え。
左から、ゴーガン「《黄色いキリスト》のある自画像」、「扇のある静物」、そしてベルナールの「炉器瓶とりんご」。



この展覧会は6章構成になっていて、第一章は「ゴーガンの革命」です。
このコーナーにはゴーガンと、ブルターニュ地方のポン=タヴェンでゴーガンの影響を受けたベルナール、セリュジエの作品が展示されています。

ゴーガンはセリュジエにこう言いました。

「これらの木々がどのように見えるかね?これらは黄色だね。では、黄色で塗りたまえ。これらの影はむしろ青い。ここは純粋なウルトラマリンで塗りたまえ。これらの葉は赤い?それならヴァーミリオンで塗りたまえ。」
(会場では、壁に掛けられたアクリル板にこの言葉が書かれています。)

このようなゴーガンの助言を受けてできた作品がセリュジエ「タリスマン(護符)、愛の森を流れるアヴェン川」でした。


三菱一号館美術館に来ていつも思うことですが、展示室内の内装がとても素晴らしいです。暖炉の上の絵画を見ていると、美術館というより、まるで洋館の応接間で作品を鑑賞しているようなとても心地よい気分にさせてくれます。

第二章は「庭の女性たち」です。
このコーナーには庭の女性たちを好んで描いたドニやボナールの作品が展示されています。

重厚なドアを開けて居間に入ると、大きな絵が視界に入ってくる。
こういったくつろいだシチュエーションがたまらなくいいです。
作品はドニ「ミューズたち」です。

第三章は「親密さの詩情」です。
このコーナーには、ボナール、ヴァロットン、ヴュイヤールの室内情景を描いた作品が展示されています。

さてここで三菱一号館美術館の高橋館長と今回のブロガー特別内覧会のモデレーターTakさんの楽しいトークをおうかがいすることができました。

Takさんはこのたび『カフェのある美術館』(世界文化社)を出版されたので、そのことも紹介されていました。
左がTakさん、右が高橋館長
1986年に開館したパリ・オルセー美術館に1984年の準備室時代から係わっていた高橋館長。その当時のお話から始まりました。

「オルセー美術館は当時『印象派美術館』と呼ばれていたほど印象派が中心の美術館で、ナビ派で知られていたのはボナールくらいで、他の画家はほとんど知られていませんでした。オルセー美術館開館当時、ナビ派の作品は暗がりに置かれていました(笑)。ナビ派は今ようやく再評価の途上にあると言えるでしょう。」
「現在のオルセー美術館のギ・コジュヴァル館長は、もともとナビ派を研究している方でした。私もナビ派との付き合いは長く、1980年に国立西洋美術館に入って、ドニ展(1981年)を開催したのですが、そのときドニ家の人たちが来られて親交を温めました。」
「ギ・コジュヴァル館長は今年3月にオルセー美術館の館長を退任されるので、今回の展覧会はオルセーでの最後の仕事です。4月からはナビ派センターに行かれることが決まっていますが(笑)。今回の展覧会の開催にあたって、ギ・コジュヴァル館長には作品の選定からかかわっていただきました。そのため出展作品はどれもトップレベル、トップクラスのものばかりです。」
「ナビ派は二次元の絵の中に三次元のイリュージョンを描かずに平面的なものを描きました。その点で浮世絵になじんでいる日本人に合っているのかもしれません。それに西洋では隠ぺいされていた『やさしさ』『かわいさ』が前面に出ているのもナビ派の特徴です。これは対象を見る目線が低いところにあるということです。」

「一方で現代的な側面もあって、表面の『かわいさ』の裏にある不条理やボナールの作品に潜む『影』も見逃すことはできません。」
こう説明されてから、高橋館長は後ろに展示されているヴァロットンの「髪を整える女性」の不自然に曲がる椅子の脚、ありえないところにある影、ボナールやヴュイヤールの作品に潜む影の部分について解説されました。

左からヴァロットンの「髪を整える女性」「室内、戸棚を探る青い服の女性」「化粧台の前のミシア」。

第四章は「心のうちの言葉」です。
このコーナーには、ナビ派独特の色使いの肖像画や自画像が展示されています。
左からヴュイヤール「八角形の自画像」、「読書する男性」、ドニ「18歳の画家の肖像」。ここでも暖炉がいい雰囲気を出しています。



第五章は「子ども時代」です。
このコーナーには、ナビ派の画家たちの、子どもたちに対する慈しみに満ちた作品が展示されています。もちろん、子どもに忍び寄る影も見逃すことはできません。

ドアの横にさりげなく飾られるヴァロットンの「ボール」
こちらは高橋館長おすすめのヴュイヤール「公園」。
ナビ派のパトロンであったナタンソン家の応接間兼食堂の装飾画として制作されたもので、当初あった9枚のうち5枚がオルセー美術館に所蔵されています。



第六章は「裏側の世界」です。
このコーナーには、ナビ派が表現しようとした内的生活や夢や想像の世界を描いた作品が展示されています。
写真は、ロシアの近代美術コレクター、イヴァン・モロゾフの私邸の装飾壁画のためのドニの習作「プシュケの物語」。

高橋館長が言われていたように、本当に作品の質が高くて、とても見応えのある素晴らしい内容です。この春おすすめの展覧会です。
5月21日(日)までです。お見逃しなく。

詳細は展覧会の公式サイトをご覧ください。
 ↓
オルセーのナビ派展

※掲載した写真は、主催者の許可を得て特別に撮影したものです。




2017年1月5日木曜日

2016年 私が見た展覧会ベスト10

あけましておめでとうございます。
昨年一年間ご愛読いただきありがとうございました。
これからもドイツ関連の記事や美術展関係の記事を掲載していきたいと考えていますので、おつきあいのほどよろしくお願いいたします。

1月2日にはさっそく東京国立博物館に初もうでに行って、今年の干支の「鳥」をたくさん見てきました。

《梨に双鳩》菱田春草

さて、今年の第一号は恒例の「私が見た展覧会ベスト10」の2016年版です。

去年は、都内や地元神奈川の美術展はもちろん、京都国立博物館で「禅展」を見たり、奈良の大和文華館に行ったり、奈良国立博物館で「信貴山縁起絵巻」や「正倉院展」を見たり、少し足を伸ばして長沢蘆雪を見に和歌山県立博物館まで行ってきました。
さらには、中国絵画が見たくて台北の國立故宮博物院に2回も行ってきました。

こうやってあちこちを飛び回って見た展覧会はどれもいいものばかりでした。
その中からベストテンをセレクトするのは至難の業ですが、悩みながらも実際に作品を見ているときを思い浮べて楽しみながら選んでみました。
(今回も首都圏で開催の美術展に絞りました。)

第1位 「カラヴァッジョ展」 国立西洋美術館
 「エマオの晩餐」の神々しさに圧倒されました。2016年の一枚と聞かれたら、迷わず「この絵です。」と答えます。 

第2位 「美の祝典Ⅰ~Ⅲ」 出光美術館
 10年ぶりに公開の「伴大納言絵巻」堪能しました。それに、三期に分けて出光美術館所蔵の日本絵画総ざらえといった感じで、コレクションの分厚さに感動しました。初めて見た狩野元信の《西湖図屏風》、雰囲気出ていました。

第3位 「広重ビビッド」 サントリー美術館
 版画の初摺の色があまりに鮮やかなのに驚かされました。本当に「ビビッド」でした。

第4位 「禅展」 東京国立博物館
 東博と京博の両方に行ってきました。「禅展」とのコラボで10月21日、22日の2日間限定で開催された企画展「白隠さんと出会う」(世田谷・龍雲寺)で白隠さんの絵をお寺の座敷で拝見してからすっかり白隠ファンになった勢いで京都の花園大学まで白隠さんを見に行ってきました。
 数えてみたら、東京国立博物館の常設展は本館とアジアギャラリーを合わせて12回も行ってました。

第5位 「ポンペイの壁画展」 森アーツセンターギャラリー
 鮮やかな色づかい、ふっくらとした体つき。ルネッサンス(=古代の再生)がめざした芸術はこういったものだったのか、とポンペイ壁画の新鮮さにひたすら驚いていました。

第6位 「若冲展」 東京都美術館
 ものすごく混んでいたけど、釈迦三尊像と動植栽絵が一堂に会するまたとない機会。理屈抜きでよかったです。

第7位 「福井県立美術館所蔵~日本画の革新者たち展」 そごう美術館(横浜)
 日本各地の美術館の名品を紹介する新たなシリーズの第一弾。横浜で生まれ育った岡倉天心の故郷・福井にちなんで、天心ゆかりの横山大観、菱田春草、下村観山、木村武山、さらには福井に20年ほど住んだ岩佐又兵衛の名品の数々が横浜に来てくれるなんて、とてもうれしいです。第二弾、第三弾も期待しています。
 
第8位 「頴川美術館の名品展」 渋谷区立松濤美術館
 頴川家が蒐集した美術品のコレクションが西宮から渋谷に来てくれました。現地へ行ってもいつも展示しているわけではないので、こうやって一堂に集まったコレクションを見ることができるのはとてもありがたいです。前期後期とも行きました。
 

第9位 「若冲と蕪村展」 岡田美術館(箱根)
 「箱根で琳派、印象派」とひそかに提唱して岡田美術館とポーラ美術館に通っています。昨年も岡田美術館には「箱根で琳派 第二部 江戸・大坂編」とあわせて2回行ってきました。広々とした会場内に展示されていた若冲の孔雀と鳳凰、存在感ありました。

第10位 砂子の里資料館(川崎)
 豊富な浮世絵コレクションを展示して私たちを楽しませてくれた砂子の里資料館も9月17日をもって閉館しました。昨年は、「東海道五十三次之内 行書版全揃」と「隷書版全揃」、そして最後の展示「これぞ日本の宝・珠玉の浮世絵名品展」を見てきました。長い間ありがとうございました。斎藤文夫さんの浮世絵コレクションに再び出会えることを楽しみしています。
 
また、昨年はブロガー特別内覧会に4回参加させていただきました。

①「禅展」 東京国立博物館
②「メアリー・カサット展」 横浜美術館
  カサットの母子像は、「聖母子像」のようでした。
③DMM.PLANETS Art by teamLab 「お台場みんなの夢大陸2016」会場内
 ひざ下まで水に浸かって芸術鑑賞。面白い体験でした。
④「風景との対話」 損保ジャパン日本興亜美術館
 「フランスの風景 樹をめぐる物語」と合わせて2回、新宿副都心で風景画を楽しんできました。

「白隠展」と合わせ技の①の「禅展」以外はベストテンに入れませんでしたが、どれも甲乙つけがたいいい展覧会でした。主催者のみなさまどうもありがとうございました。
展覧会の様子はこのブログで紹介しています。

他にもいい展覧会ばかりだったのですが、とても紹介しきれませんでした。
見た展覧会の感想は私のツィッターにアップしています。

YAMA@SANのぶらり散歩道

台北の國立故宮博物院の様子はもう一つのブログで紹介しています。

ぶらり気ままな散歩道

こちらもぜひご覧になってください。



2016年12月31日土曜日

AfDの台頭~ワイマール末期の再来か?~(3)

ベルリン市(都市州)では、市議会議員選挙が行われた9月18日以降の長い連立交渉の結果、州レベルで初めてSPD(社会民主党)主導の「赤赤緑連立政権」が成立し、12月9日にはミヒャエル・ミューラー氏(SPD)がベルリン市長に再任された(チューリンゲン州の「赤赤緑連立政権」は州議会第一党の左派党が主導)。

これで今年行われた5つの州で連立の枠組みが決まり、各州でAfDが多くの議席を獲得したが、既成政党が連立の枠組みを変えるなどして過半数を確保したため、結果的にどの州もトップの顔ぶれは変わらず、ポピュリズムに流されることにはならなかった。

 ①バーデン・ビュルテンベルク州  ヴィンフリート・クレッチマン首相(緑の党)再任
   緑の党とSPD(社会民主党)との連立 → 緑の党とCDU(キリスト教民主同盟)の連立

 ②ラインラント・プファルツ州  マル・ドライヤー首相(SPD)再任
   SPDと緑の党の連立 → SPD、緑の党、FDP(自由民主党)の連立

 ③ザクセン・アンハルト州  ライナー・ハーゼルホフ首相(CDU)再任
   CDUとSPDの連立  → CDU、SPD、緑の党の連立

 ④メクレンブルク・フォアポメルン州 エルビン・ゼレリング首相(SPD)再任
   SPDとCDUの連立で変わらず

 ⑤ベルリン市(ベルリン市は都市州) ミヒャエル・ミューラー市長(SPD)再任
   SDPとCDUの連立  → SPD、左派党、緑の党の連立
   

このようにポピュリズムの台頭に既成政党が団結して対抗するというメカニズムがうまく機能した結果となったが、19日のベルリンでのテロ以降、AfDが勢いづいているので、これから先はどうなるかわからない。

AfDも、今では反移民政策を掲げ「右派大衆政党」とのレッテルを貼られているが、2013年4月に設立された当初はEU統合に反対するインテリ集団というイメージがあった。
しかしながら、2014年には早くも党内のリベラル派と右派の権力闘争が表面化し、2015年7月に行われた党大会では、設立時の共同代表の一人でリベラル派のベルント・ルッケが党を去り、同じく共同代表の一人で右派のフラウケ・ペトリが党の代表に就任して現在に至っている。

来年は連邦議会選挙が実施される。
メルケル首相率いるCDUの姉妹政党CSU(キリスト教社会同盟)のゼーホーファー党首は「移民政策、治安政策を考え直さなくてはならない」と発言し、CDUだけでなく、他の既成政党に波紋を投げかけている。

既成政党は移民受け入れ寛容な政策を修正するのだろうか。ベルリンで成立したSPD主導の「赤赤緑」連立は連邦レベルでの連立の試金石となるのだろうか。AfDはこのままの勢いで選挙に突入するのだろうか。これからもドイツから目を離せない。

(「AfDの台頭~ワイマール末期の再来か?~」の稿終了)

「ドイツ~東と西~」の読者のみなさま、今年一年おつきあいいただきありがとうございました。
これからもドイツ関連の記事をはじめ、気に入った美術展なども紹介していきたいと考えていますので、来年もよろしくお願いいたします。
それでは、みなさまよいお年を。

ベルリン・ブランデンブルク門





2016年12月5日月曜日

損保ジャパン日本興亜美術館「風景との対話」ブロガー内覧会

12月1日(木)、東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「風景との対話 コレクションが誘う場所」のブロガー内覧会に参加してきました。


とてもいい雰囲気の展示室


パリの風景、日本の風景、異国の風景、日常の風景、さらにシュールな心象風景、会場いっぱいにさまざまな風景が広がっていて、私たちを小さな旅へと誘ってくれます。

展示室内は、今回の展覧会を担当された主任学芸員の中島啓子さんにご案内いただきました。

「当館では毎年1回コレクション展を開催していて、今回のテーマは『風景』。今までのテーマではあまり展示する機会のなかった”秘蔵”の作品も多く展示されています。」と中島さん。

次にいつお目にかかれるかわからない作品が展示されているとなると見逃すわけにはいきませんね。

第1章 フランスのエスプリ

入口を入ってすぐの部屋に展示されているのはフランスの画家たちの作品。

「第1章は主にパリを中心に活躍した画家の作品です。ユトリロを除いて1960年代の画家たちの作品で、戦前のパリの良さを描いています。戦時中のナチス占領からの解放感からどの作品も温かい色を使っています。」





第2章 東郷青児の旅

第2章は、損保ジャパン日本興亜美術館の所蔵作品の中心をなす東郷青児のコーナー。

「東郷青児は、欧州や南米を旅行して多くの旅のスケッチを残しています。映画「ローマの休日」で有名になったローマの「スペイン広場」も描いています。確立したスタイルを変えようとした意欲作「古城」もぜひご覧になってください。」





第3章 日本の風土

こちらのコーナーにはポスト印象派に傾倒した岸田劉生や有島生馬、そして東山魁夷をはじめとした日本画も展示されていて、さまざまな日本の風景が広がっています。






第4章 異国の魅力

第4章は私の一番のお気に入りのコーナー。
中でもよかったのが後藤よ志子「白夜の街Ⅰ」(下の写真正面)。今回の展覧会の私の一押しです。
作者は中国の青島出身とおうかがいしたので、映画「恋の風景」で見た青島の古い街並みを描いているのでは、と錯覚してしまいました。





第5章 意識の底の地

シュールレアリズムの作品もあります。
私の二番目のおススメは矢元政行「極楽塔」(一番右の作品)。いったい何人の子どもたちが描かれているのでしょうか。



第6章 日常の向こう側

「このコーナーは他のどこにも属さない”余った人たち”のコーナーです(笑)。」と中島さん。
「でも私はここがお気に入りのコーナーで、このコーナーを作っているときに展覧会のタイトル『風景との対話』が頭の中に思い浮かんできました。たとえばキッチンで鍋を見ると、笠井さんの作品「二つの卓上生物」(下の写真左)を思い浮かべるとか、日常の中によみがえる記憶との対話ができる作品を展示しています。」



第7章 世界の感触

「このコーナーも余った人たちの作品ですが、第6章の作品とは合わない作品が展示されています。」と中島さん。
「その違いは作家の生きた世代がもっているテーマだと思います。1960年代に学生運動を経験して、一度カンバスを放棄した人たちが絵を描くことにもどってきて、平面に何を表現するか考えた人たちや、現在、20歳代から30歳代の人たちが自分自身の手作業で表現していく作品だったりします。」
「不確かな風景」(櫃田伸也)の前で解説する中島さん

「WALL(宮里紘規 下の写真右)は過去に開催された美術展のパンフレットを細く切って貼ったものです。パンフレットは古くなると退色してしまうので、保存には困る作品です(笑)。」



第8章 思い出のニューヨーク州

第8章はグランマ・モーゼスのほのぼのとした風景の作品が展示されています。



東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催中の「風景との対話 コレクションが誘う場所」は12月25日(日)まで開催されています。

広々とした空間に広がるさまざまな風景。作品一枚一枚それぞれ違った場所に旅をしているような、とても楽しい気分にさせてくれる展覧会です。おすすめです。

詳しくはこちらをご参照ください。
  ↓
損保ジャパン日本興亜美術館「風景との対話 コレクションが誘う場所」



(掲載した写真は美術館の特別の許可を得て撮影したものです。)






2016年11月13日日曜日

東京国立博物館・チームラボ新作発表@禅展・夜間特別内覧会

11月8日(火)、「チームラボ新作発表@禅展・夜間特別内覧」に参加してきました。

東京国立博物館で開催中の特別展「禅-心をかたちに-」(禅展)とのコラボで作品を展示しているチームラボ。今回は、禅展の後期展示が始まる11月8日から展示する新作「円相 無限相」の発表会でした。

一面に銀箔を貼り付けたような背景の上に黒い墨で円が描かれはじめ、さまざまな形に変化していきます。じっと見ていると、魚が飛び出してきて、すぐ消えたりするので目が離せません。





「『円相』をモチーフとして、空間に描く円をイメージしています」と説明するチームラボ代表の猪子寿之さん。


禅展のポスターをバックに、左から 東京国立博物館学芸研究部列品管理課長の救仁郷秀明さん、猪子さん、そして今回の新作発表会にゲストで来ていただいた世田谷にある龍雲寺の細川晋輔住職、恵比寿にある松泉寺の森昌寛住職(龍雲寺、松泉寺とも臨済宗妙心寺派のお寺です)。




細川住職は「先日、禅展を見終わってこの衣装で上野から山手線に乗った時、ハロウィンの仮装と間違われて周りの人たちに写真を撮られた」とユーモアたっぷりにごあいさつされた細川住職。

「今回の禅展は、禅の文化が一堂に並んだ画期的な展覧会です。」
「白隠の禅画は悩み苦しむ人たちに少しでも幸せになってほしいという思いを込めて描いているものです。ぜひ、禅画からメッセージを受け取ってほしい。」と熱く語られていました。

龍雲寺さんには10月21日におうかがいして、龍雲寺さんの所蔵する白隠の禅画をたくさん見させていただきました。どうもありがとうございました。

さて、禅展の方ですが、内容ももちろん、空間をたっぷり使って、展示も趣向を凝らしたレイアウトが何しろ素晴らしかったです。

入口を入ってすぐがポスターにもなっている白隠の「達磨像」(大分・萬壽寺蔵)のお出迎えを受けてすぐ横を曲がると、遠くに見える雪舟の国宝「慧可断臂図」(愛知・齊年寺蔵)。
こちらは「第1章 禅宗の成立」のコーナーです。

今回の禅展は、臨済禅師1150年遠諱と白隠禅師250年を記念して開催された展覧会です。
こちらは今回の主役の一人、臨済禅師の肖像画です。
左 「臨済義玄像」(京都・大徳寺蔵)、右 「達磨・臨済・徳山像」(京都養源院蔵)。

「第2章 臨済禅の導入と展開」では、建仁寺、東福寺はじめ臨済宗のお寺の寺宝がずらりと展示されています。


そして「第3章 戦国武将と近世の高僧」のコーナーの後半は、白隠の作品のオンパレードです。


上の写真では一番左、下の写真では右が、腕を切る前の「慧可断臂図」(大分・見星寺蔵)です。


「第4章 禅の仏たち」のコーナーの展示も渋いです。
中央は、円形に並んだ京都・鹿王院蔵の「十代弟子像」。十人のお弟子さんを間近に見ることができます。


「第5章 禅文化の広がり」では、私の好きな長谷川等伯の「竹林猿猴図屏風」(京都・相国寺蔵)も、教科書に出てくる国宝「瓢鮎図」(京都・退蔵院蔵)も、龍に向かって吠える虎の迫力がすごい狩野山楽の「龍虎図屏風」(京都・妙心寺蔵)も、さらにはエツコ&ジョー・プライス夫妻のご厚意で特別出品された伊藤若冲の「鷲図」と「旭日雄鶏図」も出展されています。

このゆったり感がいいですね。

狩野元信「四季花鳥図」(京都・大仙院蔵)


会場内には座禅コーナーもあります。
松泉寺の森住職が実際にここで座禅を組んで、座禅について説明されていました。



決して堅苦しくなく、気軽に禅文化の奥行きの深さを味わうことができる素晴らしい展覧会です。

11月27日(日)までです。お見逃しなく!

オフィシャルサイトはこちらです。

東京国立博物館 特別展「禅-心をかたちに-」


(禅展の会場内の写真は、東京国立博物館より特別に撮影の許可をいただいたものです。)

2016年10月25日火曜日

AfDの台頭~ワイマール末期の再来か?~(2)

ベルリンでもAfDが躍進して左派党や緑の党に肉薄する議席数を確保した。
一方、今まで大連立を組んでいたSPDとCDUはともに議席を減らし、合計で69議席となり過半数を割ってしまった。

そこで、浮上したのが赤(SPD)、赤(左派党)、緑(緑の党)の連立。
「赤赤緑」連立は、州レベルではチューリンゲン州で実績があり(2014年~)、「赤赤」であればベルリンでも2002年から2011年まで連立を組んでいたので、全く可能性がないわけではないが、選挙から1ヶ月以上が経過した今でも、各党の綱引きが続いている。

ベルリン市議会議員の選挙結果(投票日 9月18日)

  得票率及び獲得議席数(カッコ内は前回2011年との比較)

  1. SPD                  21.6%(-6.7%)              38議席(-9)
  2. CDU      17.6%(-5.8%)              31議席(-8)
  3. 左派党               15.6%(+4.9%)              27議席(+8)
  4. 緑の党               15.2%(-2.4%)              27議席(-2)
  5. AfD             14.2%(+14.2)              25議席(+25)
  6. FDP               6.7%(+4.9%)              12議席(+12)    
                                                          合計 160議席(過半数 81議席)   

各党の幹部たちが他の党に牽制球を投げたりして、「赤赤緑」の連立交渉がうまくいかないのは、どうやら来年行われる連邦議会選挙後をにらんでいることが大きな要因のようである。
首都ベルリンでの連立は、連邦レベルでの「赤赤緑」連立の可能性を探る、いわば試金石と言ってもいいだろう。

「赤赤緑」の三党のうち連邦レベルでも連立を組んだことのあるSPDと緑の党の歩み寄りは難しくないと思われるが、NATOやEUよりロシアの方に顔を向けている左派党は、これら二党とは外交政策面での隔たりが大きく、連邦レベルでの連立は難しいと考えられていた。

実際、2013年の連邦議会選挙の結果、CDU/CSUとSPDの大連立が成立したが、数の上では過半数をとることができた「赤赤緑」の三党には、そもそも連立に向けた動きすらなかった。
もし、そのとき「赤赤緑」の連立政権が成立していたら、CDUのメルケル首相は、党としては選挙で躍進したにもかかわらず野党に転落するという信じられない事態になっていたところだった。

下の表は、私が参加しているある勉強会のために作成した1994年からの連邦議会選挙の結果をメルケル首相の動きを中心にまとめたものであるが、2013年の選挙結果を見ると、「赤赤緑」は320議席を獲得していて、過半数の316議席をわずかに超えている。

SPDや緑の党は外交政策での歩み寄りを左派党に投げかけているが、はたして左派党は妥協するのか。その行方は不透明だ。

外交面での方向転換を迫られている左派党ではあるが、旧東ベルリンではあいかわらず強い支持を得ている。
旧東ベルリン市民にとって、SPDやCDU、FDPは「西から来た党」であるが、左派党はいまだに「おらが党」として親しまれているのだろう。今回のベルリン市議会選挙で出た、あたかもベルリンの壁が存在するかのような興味深い投票結果を見るとついそう思ってしまう。


旧西ベルリン

  1. SPD      23.2%
  2. CDU     20.9%
  3. 緑の党     17.1%
  4. AfD           12.1%
  5. 左派党       10.1%
  6. FDP           8.6% 

旧東ベルリン


  1. 左派党    23.4%
  2. SPD         19.3%
  3. AfD           17.0%
  4. CDU         13.1%
  5. 緑の党      12.6%
  6. FDP           4.0%  


次回は、そもそもAfDとはどのような政党なのか見ていきたいと思います。