2019年2月10日日曜日

すみだ北斎美術館「北斎アニマルズ」が面白い!

毎回趣向を凝らした企画展で楽しませてくれる東京・墨田区にある「すみだ北斎美術館」。
今回の企画展は「北斎アニマルズ」。
鳥も犬も猫も猿も、虫も魚も亀も、想像上の動物まで、かわいい動物、不思議な動物、怖い動物などなど、いろいろな動物が大集合している、とても楽しい展覧会です!

3階企画展示室前のホワイエにある撮影スポット
今回のコラボ企画は北斎アニマルズ占いです

こんな楽しい展覧会なので、ぜひ多くのみなさまにご覧になっていただきたいのですが、開会に先がけて開催されたプレス内覧会に参加したので、まずは実際に展示室をご案内して、楽しさを実感していただきたいと思います。

展示室内をご案内いただいたのは今回の企画展を担当されたすみだ北斎美術館学芸員の竹村さん。
それでは、北斎劇場のはじまり、はじまり!

※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示作品はすべてすみだ北斎美術館所蔵品です。
※展覧会は2月5日(火)から4月7日(日)までですが、前期と後期で展示替えがあります。
 前期:2月5日(火)~3月3日(日) 後期:3月5日(火)~4月7日(日)

3階企画展示室入口


今回の企画展は3章構成になっています。
第1章では北斎や門人たちの描いた生き生きとした動物たちがお出迎えしてくれます。

1章 生けるがごときアニマル
 

はじめは鳥たちのコーナーです。

「こちらは葛飾北斎《桜に鷹》。鷹狩りの鷹と桜が描かれています。版画の色がとてもきれいに出ている作品です。」と竹村さん。
葛飾北斎《桜に鷹》 前期展示

続いて『北斎漫画』などに描かれた賑やかな鳥たち。

葛飾北斎『北斎漫画』三編 風鳥、ベラ鷺 他  全期間展示
急降下する雁
葛飾北斎『独発句』下  全期間展示
こちらを睨みつける駝鳥(江戸時代の駝鳥は現在のダチョウではなく、ヒクイドリを指しました)。
葛飾北斎『唐詩選画本 七言律』一 駝鳥 全期間展示 

ユニークなのはこちら。定規とコンパスを使った描き方を解説した絵手本『略画早指南』
葛飾北斎『略画早指南』初編 さぎ がん おなが 全期間展示
初夢に見ると縁起のいい「一富士、二鷹、三茄子」もあります。
葛飾北斎『富嶽百景』二編 夢の不二 全期間展示

こちらは彩色の摺物の花鳥画です。
「《芙蓉に雀》のように下に向かっていく鳥を描くのが北斎の特徴。《馬尽 駒鳥》では江戸時代から鳥が飼われていたことがわかります。」
左から、葛飾北斎《芙蓉に雀》、《鵙(いすか) 小薊(おにあざみ)》、
《馬尽(うまづくし) 駒鳥》  いずれも前期展示
動物
次は動物の中でも哺乳類のコーナーです。

こちらは門人たちの肉筆画です。
「森高雅は北斎の孫弟子。落款には四条派の呉春の鹿図を、玄谷という人が模写して、それを森高雅が模写したことが書かれています。」
左から、森高雅《鹿図》、二代葛飾北斎《俵に鼠》 いずれも前期展示
北斎の描く動物の目に注目!
「北斎は60歳以降、への字に目尻を細くした目や、ボリューム感のあるつぶれた丸い形の目を描くようになりました。現実の動物の目とは違いますが、生きているように見せるためこのように描いたのでしょう。かわいらしい感じがします(笑)。」と竹村さん。

こちらは月夜の下、遠吠えをする野犬。確かに目尻が細くなっています。
野犬ですが、どことなく愛嬌のあるようにも見えます。
葛飾北斎『富嶽百景』二編 月下の不二 全期間展示
今回の展覧会の展示では、壁に飛び出してきた動物たちにも注目です。
右奥のパネルには、北斎の描く動物の目の違いの解説がありるので、こちらもぜひご覧になってください。



牛も「北斎の描く動物の目」になってます。
葛飾北斎『絵本孝経』上 牛 全期間展示
動物(猫)
続いて、猫のコーナーです。

「北斎の描いた猫の絵は意外と少ないのです。」と竹村さん。
「80歳を過ぎて『猫一匹も画(えが)くこと能(あた)はず』と涙を流した北斎ですが、かわいらしい猫を描いています(笑)。」


「北斎が、書道などの真、行、草の三体に倣って、1つの画題を3つに描き分けた絵手本で
す。」
右のページの下に描かれているのが猫が愛くるしいです。
葛飾北斎『三体画譜』栗鼠 猫 鼠 獅子 全期間展示
動物(干支)
干支のコーナーもあります。

下の写真の左が十二支の動物たち、右が今年の干支のイノシシ。
左から、葛飾北斎『北斎漫画』四編 十二支、『北斎画鑑』野豕 仁田の四郎
いずれも全期間展示
イノシシはひし形をしていますが、これは鳥のコーナーで紹介したコンパスと定規で絵を描く方法で描かれています。
葛飾北斎『北斎画鑑』野豕 仁田の四郎  全期間展示


魚介
北斎や門下の人たちは何でも描きます。

かわいらしい亀たち。
葛飾北斎《亀》 前期展示

魚が絵から飛び出している!

虫・爬虫類・両生類
トンボも、蝶も、カエルも、ヘビも、どれもよく観察して描いています。

葛飾北斎《桔梗にとんぼ》 前期展示
「右上のカエルは、西洋でジャポニズムが流行する中、フランスのエミール・ガレが花器に取り入れたものです。」
このカエルはフランスまで飛び跳ねていったのですね!
葛飾北斎『北斎漫画』初編 全期間展示

「かぼちゃの花の上のアブの羽根に注目してください。はばたいている様子を出すためぼかしを使っています。こういうところに北斎の観察眼の鋭さを見ることができます。」
葛飾北斎《南瓜花群虫図》 前期展示
葛飾北斎《南瓜花群虫図》(部分) 前期展示

続いて、かわいらしい動物たちが登場する第2章です。

2章 かわいらしいアニマル
まずは北斎門下のかわいい動物たち。
「左の魚屋北渓《三十六禽続 子犬》では鮭の切り身をくわえて首をかしげるかわいらしい子犬です。右の柳川重信《猪の貴人》は、イノシシが擬人化されたもので、左上には蛇が描かれています。十二支のうちある干支から数えて7つ目の干支を組み合わせた絵は縁起がいいとされていました。」
左から、魚屋北渓《三十六禽続 子犬》、柳川重信《猪の貴人》 
いずれも前期展示

飛び出すかわいい動物たち。

帽子をかぶったフクロウもいます。
葛飾北斎『北斎漫画 草筆之部』山鴞(ふくろう) 前期展示
今回の展覧会のチラシになった子犬もいます(左のページ下)。
葛飾北斎『三体画譜』馬 兎 猿 狗猧(えのころ=子犬)
全期間展示
「仁魚とは、現在では戦後、日本に持ち込まれたティラピアのことですが、ここでは鯉のような魚が描かれています。目つきが鋭いですね。」
葛飾北斎『唐詩選画本 七言律』四 仁魚


またまた定規とコンパスで描いた動物たち。
「右の猿は睨んでいるようにも見えます(笑)。」
葛飾北斎『略画早指南』初編 全期間展示

そして第3章が想像上の動物や物語・伝説上の動物、それにデザイン化された動物たちです。
3章 絵ならではのアニマル

今まではほとんどが実在の動物でしたが、「浮世絵なのだからやっぱり想像上の動物が出てこなくちゃ」と思われる方にも十分満足いただけるコーナーです。

こわいアニマル
こんなナマズが本当にいたら怖い!人の顔をした鯰です!
葛飾北斎『化物和本草』人面の鯰 全期間展示
こんな動物には出会いたくない!
顔は虎、胴体は牛、そして名前が「わざわい(禍獣)」。
葛飾北斎『椿説弓張月」続編 巻之六 禍獣 全期間展示


物語・伝説のなかのアニマル
こちらは少しユーモラス。

擬人化されたネズミたちの生活の様子が描かれています。
葛飾北斎『北斎漫画』十編 家久連里 全期間展示

こちらは孫悟空。
葛飾北斎『北斎漫画』十編 孫悟空 殷の妲妃  全期間展示
こちらは鬼退治でおなじみ、源頼光の四天王の一人藤原保昌の土蜘蛛退治です。
葛飾北斎『絵本魁』初編 平井の保昌 土蜘蛛退治  全期間展示
未確認アニマル
どうしてこんなにユニークな動物を思いついたのか、昔の人たちの想像力はすごい!

「悪夢を食べる獏、たくさんの目をもった白沢、それに翼が約1万mもあって、1度はばたけば約35万㎞を飛ぶという鵬といった想像上の動物が描かれてます。」
葛飾北斎『北斎漫画』二編 白沢 獏  全期間展示
二代葛飾戴斗『花鳥画伝』初編 鵬  全期間展示
人魚もいます。
葛飾北斎『椿説弓張月』残編五 人魚  全期間展示 
デザイン化されたアニマル
日々の生活の中に出てくる動物たちのコーナーです。

「江戸時代の楊枝屋の看板はサルでした。」
葛飾北斎『楊枝屋店先』 前期展示
よーく見ると、右の女性の着物の柄はアメンボ!

とてもすべては紹介しきれない充実の内容でした。
最後にご案内いただいた竹村さん「北斎や門人たちの描いた動物たちをぜひお楽しみください。」(拍手)

さて、「北斎アニマルズ」はいかがだったでしょうか。
ご覧のとおりの楽しい展覧会です。
会期は4月7日(日)までですが、前期は3月3日(日)までなのでお早めに!

企画展「北斎アニマルズ」開催概要
展覧会の概要は次のとおりです。
コラボ企画やスライドトークもありますので、詳細は展覧会公式HPでご確認ください。
すみだ北斎美術館

会 期 2月5日(火)~4月7日(日)
開館時間 9:30-17:30(入館は17:00まで)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
観覧料 一般 1.000円(800円)ほか カッコ内は団体料金
(本展チケットで会期中観覧日当日に限り、次に紹介する4階の「AURORA(常設展示)」と「常設展プラス」もご覧になれます。)

「北斎アニマルズ」展リーフレットも販売しています。税込300円です。

他にも楽しさいっぱい~『北斎漫画』を立ち読みしよう!
4階の常設展示室(AURORA)では、北斎の画業の流れがわかる複製画の展示があって、北斎さんに会うこともできます。こちらは一部を除き写真撮影ができます。

北斎と娘のお栄


同じく4階の企画展示室では新しい企画として常設展プラスが開催されていて、すみだ北斎美術館所蔵の『北斎漫画』や全長7mの「隅田川両岸景色図巻(複製画)」が展示されています。こちらは写真撮影不可です。

葛飾北斎『隅田川両岸景色図巻(複製画)』
『北斎漫画』の立ち読みだってできる!
『北斎漫画(複製)』の立ち読みコーナー
常設展プラスの開催概要
会 期  2月5日(火)~6月9日(日)(予定)
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
観覧料(常設展プラスと常設展示室(AURORA)のみ) 一般700円(560円)ほか カッコ内は団体料金
(企画展開催中は企画展のチケットで会期中観覧日当日に限り常設展プラスとAURORA(常設展示)もご覧になれます。)