東京・六本木の泉屋博古館東京では、リニューアルオープン記念展Ⅲ「古美術逍遥 東洋へのまなざし」が開催されています。
泉屋博古館東京エントランス |
リニューアルオープンパートⅠの近代日本画、パート2の西洋絵画に続き、今回は同館と泉屋博古館(京都)が所蔵する中国絵画、仏教美術、茶道具はじめ中国、朝鮮、日本の古美術が見られる落ち着いた雰囲気の展覧会。
そして、エントランスのパネルに見られるように、一つの目玉作品がデンと構えるのでなく、多くの名品がぎっしり詰まったとてもうれしい展示内容になっています。
それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
※館内は撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。
展覧会概要
展覧会名 泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展Ⅲ
古美術逍遥-東洋へのまなざし
会 期 2022年9月10日(土)~10月23日(日)
*会期中展示替有り*
前期:9月10日(土)~10月2日(日)
後期:10月4日(火)~10月23日(日)
休館日 月曜日(祝日の場合は翌平日休館)
開館時間 午前11時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
*金曜日は午後7時まで開館(入館は午後6時30分まで)
入館料 一般 1,000円、高大生 600円、中学生以下無料
展覧会の詳細は同館公式サイトをご覧ください⇒泉屋博古館東京
展示構成
1 中国絵画 - 気は熟した(第1展示室)
2 仏教美術 - かたちの彼岸(第2展示室)
3 日本美術 - 数寄あらば(第3展示室)
4 文房具と煎茶 - 清風は吹く(第4展示室)
*展示作品は泉屋博古館および泉屋博古館東京所蔵のものです。
1 中国絵画-気は熟した(第1展示室)
第1展示室には国内屈指の明末清初の絵画を所蔵する住友コレクションの名品の数々が展示されていて、中国絵画ファンにはたまらない空間です。
この章のサブタイトル「気は熟した」に注目です。
熟したのは「機」ではなく「気」。
まさに空気感たっぷりの山水画の世界に入り込むことができます。
でも、中国絵画はあまりなじみがないのでよくわからない、という方もご安心を。
今回の展覧会を担当された泉屋博古館(京都)の学芸員、竹嶋さんに中国絵画の見方を教わりました。
こちらは重要文化財の石濤《廬山観瀑図》。
重要文化財 石濤《廬山観瀑図》 清時代 17-18世紀 |
まずは画面下の人物を見てみましょう。
「観瀑図」なのに二人の高士は滝の方を見ていません。
滝の音を聞いているのか、滝つぼに落ちた水しぶきの雰囲気を感じ取っているのかもしれません。
人物から画面中央右の斜めに切り立った岩に沿って視線を移すと一筋の瀑布が見えてきて、雲気の上には廬山の主峰の一つ香炉峰がそびえています。
さらにその上の賛を見ると、濃く書かれた文字と薄く書かれた文字がありますが、これは墨がかすれたのでなく、賛の上を雲が通っているところを表していて、賛までもが山水の世界に溶け込んでいるように書かれているのです。
キャプションのキャッチコピーも絶妙です。
「耳を澄ませば、滝の音が聞こえる」
ぜひこの作品の前で滝の音を聞いて、雄大な自然の雰囲気をお楽しみください。
(他の作品のキャッチコピーもぜひ注目してみてください。)
もう一つおススメの一品は、今なら「ゆるキャラ」「萌え」と人気が出そうな八大山人《安晩帖》(重要文化財)。
《安晩帖》は、花卉、魚、鳥、山水などが描かれた20図がノートのように一冊に綴じられているので一度に全部を見ることはできません。
今回の展覧会では、前期(9/10-10/2)にこの「叭々鳥」、後期(10/4-23)に「鱖魚(けつぎょ)」が展示されます。
「鱖魚」は小さい魚ですが、とてもかわいらしい表情をしているので、後期もご覧いただきたいです。
重要文化財 八大山人《安晩帖》清時代 康熙33年(1694) 第7図(叭々鳥) 展示期間 9/10-10/2 (10/4-23は第6図(鱖魚図)が展示されます。) |
2 仏教美術 -かたちの彼岸(第2展示室)
今回のリニューアルで拡張された展示室の一つがこの第2展示室。
観音様が優しいお顔でお出迎えしてくれるので、なごんだ気分になってくるとてもいい空間です。
中でも注目は、国宝《線刻仏諸尊鏡像》。
国宝《線刻仏諸尊鏡像》 平安時代 12世紀 |
鏡なので昔の人は手に取って仏さまを拝んでいたのですが、今では展示ケースの中に入っているので、ご自身が鏡の前で角度を変えて、みなさまそれぞれのベストポジションを探してみてください。
きっと中央の如来像、その左右の文殊菩薩、普賢菩薩はじめ仏さまの姿がくっきりと見えてきます。
3 日本美術 -数寄あらば(第3展示室)
「数寄」とは、茶の湯などの風流、風雅に心を寄せること。
心の中に「隙(すき)」ならぬ、茶の湯、香道、能といった「数寄」があれば、日本の書画や工芸が展示されるこんなに素晴らしい光景が広がってくるのでしょう。
第3展示室展示風景 |
上の写真手前の茶碗は、江戸時代初期の大名茶人、小堀遠州が京都・伏見の六地蔵で見出したという《小井戸茶碗 銘 六地蔵》。
茶道具の銘は、その形や表面に現れる模様から付けられることが多いのですが、この茶碗は、今では京都市営地下鉄東西線の駅名になっている「六地蔵」という地名にちなんでいます。
そして、「井戸茶碗」は李朝時代の朝鮮半島で作られたうつわなのですが、日本で茶碗として価値が見いだされ、室町時代以後、日本で茶人たちに愛用されたものなのです。
第3展示室では、茶の湯の落ち着いた雰囲気の世界にひたることができます。
伊藤若冲《海棠目白図》 江戸時代 18世紀 |
若冲の代表作《動植綵絵》が話題になっていますが、こちらも《動植綵絵》とはほぼ同時期の作品。
画面いっぱいに広がる鮮やかな色彩の花や可愛らしい鳥たちが描かれた、見ごたえのある作品ですので、ぜひこちらの若冲もご覧ください。
4 文房具と煎茶 -清風は吹く(第4展示室)
第2展示室と同じく、今回のリニューアルで拡張された第4展示室には、中国の工芸と煎茶会のしつらえがイメージできる作品が展示されています。