横浜駅東口・そごう横浜店6階のそごう美術館では、 Ukiyo-e 猫百科 ごろごろまるまるネコづくしが開催されています。
そごう美術館入口パネル |
今回の展覧会の主役は、ご覧のとおり、ごろごろ、まるまる、な猫たち。
大の猫好きで知られる幕末期の浮世絵師、歌川国芳をはじめ、江戸時代から明治時代にかけての浮世絵版画147点をとおして猫の生き方や歴史、人との関わりを「猫あるある」を交えて紹介する、とても楽しい展覧会です。
先日、取材に行ってきましたのでさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2025年7月19日(土)~9月2日(火) 会期中無休
開館時間 午前10時~午後8時 *入館は閉館の30分前まで
入館料(税込) 一般1,400円、大学・高校生1,200円、中学生以下無料
展覧会の詳細、各種イベント等は公式HPをご覧ください⇒そごう美術館
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は取材で主催者より特別に許可を得て撮影したものです。
展示構成
第1章 猫の姿
第2章 猫と暮らせば
第3章 猫七変化
第4章 おもちゃ絵猫
展示室入口に入ってすぐのパネルは撮影可です。
右上の「いろはにほへと」から左の「ゑひもせす」まで並ぶ「いろはカルタ」は作品を楽しむヒントになるので、展示室内でぜひ探してみてください。
展示室内で最初にお出迎えしてくれるのは、鬼才・河鍋暁斎の暁斎楽画[猫と鼠]ですが、この作品が冒頭に展示されていることには大きな意味がありました。
猫というと、特に家猫は縁側で気持ちよさそうにひなたぼっこをしていたり、人にじゃれつく姿ばかり想像してしまいますが、「第1章 猫の姿」の解説を読んではっとしました。
そうです、かつては鼠退治に重宝されてた猫は「単独行動の待ち伏せ型ハンター」だったのです。一日の多くを睡眠に費やすのも狩りのエネルギーを蓄えるため、熱心に毛づくろいするのも獲物に自分のにおいを消すことが目的だったと考えると、猫を見る目もガラッと変わってきます。
河鍋暁斎 暁斎楽画[猫と鼠] 明治14年(1881) 個人蔵 |
展示室入口のパネルに出ていた「いろはカルタ」の「い」を見つけました。
遊廓の2階から外を眺める猫が描かれているのは、歌川広重の人気シリーズ「江戸名所百景」の「浅草田圃酉の町詣」。田圃の真ん中には熊手を持った酉の市詣帰りの人たちの行列が見えます。
猫の視力は人間の10分の1程度ですが、動体視力は4倍もあるそうです。そして猫は縄張り意識が強いので、自らのテリトリーに侵入者が来ないかも監視しているのです。
さすがハンター!
歌川広重 名所江戸百景 浅草田圃酉の町詣 安政4年(1857) 渡邊木版美術画舗蔵 |
鼠退治で重宝された猫は、江戸時代にはすっかり人々の暮らしになじんで、浮世絵版画でも「猫あるある」の生活の一コマが描かれました。特に女性が猫と戯れる姿は人気があったようです。
展示風景 |
女性たちと戯れる猫が描かれた作品が展示された明るい雰囲気の展示室の一角に、赤色のバックライトで照らされた怪しげなコーナーが見えてきました。
猫は夜行性で、暗闇の中でも目が光って見えることなどから、江戸時代には「猫は化ける」という伝説が広まりましたが、ここには歌舞伎の演目に登場して人気を得た「化け猫」を演じる歌舞伎役者が描かれた浮世絵版画が展示されています。
猫は体が柔らかいことはよく知られていますが、猫の骨の数は、人間200に対して240もあり、靭帯も柔らかく、小さな鎖骨はどの骨ともつながっていないことは初めて知りました。
それも「待ち伏せ型ハンター」である猫にとっては、狭い場所に対応できるように柔軟な体を持つ必要があったからなのです。
そんな猫の特性に注目したのは、多くの猫と一緒に暮らしていた歌川国芳でした。
なんと猫で当て字をつくってしまったのです!
猫の擬人化は、江戸幕末から明治前半にかけて流行した「おもちゃ絵」に引き継がれました。
「おもちゃ絵」には、双六や、厚紙に貼り、切って組み立てるもの、「〇〇づくし」や子どもたちの教育のためのものなど様々なものがありました。