2021年5月29日土曜日

【6月1日(火)から再開!】すみだ北斎美術館「しりあがりサン北斎サン-クスッと笑えるSHOW TIME」 

緊急事態宣言の発令によって4月25日(日)から臨時休館していた「すみだ北斎美術館」が6月1日(火)から再開!

※会期が変更になりました。
  前期 6月1日(火)~6月20日(日)
  後期 6月22日(火)~7月10日(土)

タイトルに偽りなし!


いつも北斎さんを中心とした浮世絵の展覧会でアートファンを楽しませてくれる「すみだ北斎美術館」の今回の企画展は、北斎さんとマンガ家でアーティストのしりあがり寿氏との時代を超えたコラボ企画。
いつも見慣れた「冨嶽三十六景」や「東海道五十三次シリーズ」とはちょっと違った景色があって、サブタイトルにあるとおり、クスッと笑えて気軽に楽しめる展覧会です。

展覧会チラシ


展覧会概要

会 期  2021年4月20日(火)~6月27日(日)7月10日(土)
      ※臨時休館4月25日~5月31日
 前 期 4月20日(火)~5月23日(日) 6月1日(火)~6月20日(日) 
 後 期 5月25日(火)~6月27日(日)
     6月22日(火)~7月10日(土)        
 ※前後期で一部展示替えあり
休館日  毎週月曜日
開館時間 9時30分~17時30分(入館は17時00分まで)
観覧料  一般 1,000円ほか
※本展のチケットは、会期中観覧日当日に限り、AURORA(常設展示室)をはじめ全ての展示をご覧になれます。
※入館のための日時指定予約を行っておりませんが、館内・展示室内・ミュージアムショップ内が混雑し、一定の人数を超えた場合は入場制限を行う場合があります。
※展覧会の詳細、新型コロナウィルス感染症の感染・拡大防止については、同館公式HPをご覧ください⇒すみだ北斎美術館 

※展示室内は撮影不可です。掲載した写真は、内覧会で美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。AURORA(常設展示室)は一部を除き撮影可。

展示は3章構成になっています。

第1章 ちょっと可笑しなほぼ三十六景
第2章 よりぬき北斎サン
第3章 ちょっと可笑しな北斎サンにしりあがりサン

それでは第1章から。

クスッと笑える冨嶽三十六景


まずは4階企画展示室から。
「冨嶽三十六景」のコーナーでは、北斎サンの作品としりあがり寿サンの時代を超えたコラボが実現!


右 葛飾北斎「冨嶽三十六景 礫川雪ノ且」
吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託
前期展示
左 しりあがり寿「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 ホワイトクリスマス」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示


「冨嶽三十六景」の中でも一、二をあらそう人気作品は「神奈川沖浪裏」(前期展示)。
(もう一つの人気作品「凱風快晴」は後期展示)

葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
すみだ北斎美術館 前期展示

これがしりあがり寿サンの手にかかると、このとおり。

しりあがり寿「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 銭湯でこども大暴れ」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

湯船で楽しそうに暴れるこどもと、後ろで困った顔をしている北斎サン。
銭湯ということは、後ろの富士山は銭湯のタイル絵なのですね。

続いてこちらは赤い波の合間に見える地球。

しりあがり寿「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 太陽から見た富士山」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

波のように見えるのは、実は燃え盛る太陽の炎。
その炎の間に地球が垣間見えるという、まるでSF映画を見ているような幻想的な光景。
しかし・・・富士山がない!

実は富士山は描かれているのですが、まずは4階展示室入口に戻って大きなパネルをご覧ください。
地球の中心にある日本の本州の中心あたりに小さく富士山が描かれているのがわかります。
その感覚を忘れないようにしながらもう一度上の作品を見ると、「これが富士山かな。」というくらい小さな富士山が見えてくるかもしれません。

4階企画展示室入り口のパネル

北斎サンとしりあがり寿サンの作品を見比べて楽しめるものばかりなのですが、中でも特撮世代の私の一番のお気に入りはこちら。

しりあがり寿「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 地底船現る!」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

特撮ファンの方ならご存じかもしれませんが、海中、空中、地中を突き進む「海底軍艦」(1963年 東宝映画)を彷彿とさせる迫力です。

おめでたい作品が出てきました。
江戸時代にもよく描かれた宝船に乗った七福神と思ったら、なんと百福神!
いつも見慣れた布袋さんや弁天さんもいますが、よくよく見ると古代エジプトや古代ギリシャローマの神々、アンコールワットで見たような神様はじめ、古今東西の神様が乗っている、おめでたさ百倍の宝船なのです。

しりあがり寿「ちょっと可笑しなほぼ三十六景 百福神」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

おなじみの『北斎漫画』も展示されています。

『北斎漫画』展示風景


開かれたページには「百福神」に登場する神様が出てきますので、ぜひ見比べてみてください。

葛飾北斎『北斎漫画』初編
すみだ北斎美術館
通期展示

ご覧のとおり、展示されている作品はクスッと笑えるものばかり。
まさに「看板に偽りなし」です。

近くでよく見るとさらにクスッと笑える!


3階に移ります。


3階展示室入り口のパネル


雲の合間からにょきにょきと出てくるのは何でしょうか?

しりあがり寿「ポテトチップス六景 イモ掘り」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

北斎サンの原画と比較すると、どっちがどっちだか区別がつきません。

右 葛飾北斎「冨嶽三十六景 身延川裏不二」
吉野石膏コレクション すみだ北斎美術館寄託
前期展示
左 しりあがり寿「ポテトチップス六景 イモ掘り」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示


実はこの「にょきにょき」はポテトチップスで、「ポテトチップス六景」は、イモ掘り⇒イモ洗い⇒イモを切る⇒揚げる⇒塩をふる⇒食べるという工程を描いているのです。

「ポテトチップス六景」展示風景

しかし、出来上がったポテトチップスを食べようとしたら・・・

しりあがり寿「ポテトチップス六景 虫メガネで大きくすると……」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

さて、みなさんは北斎さんの生誕260周年を記念して昨年(2020年)に期間限定で発売された、カルビーとすみだ北斎美術館がコラボしたパッケージのカルビーポテトチップスうすしお味は食べられましたでしょうか。

カルビー「すみだ北斎美術館監修 ポテトチップス うすしお味」
展示協力:カルビー株式会社


東海道シリーズの小さな作品も、よくよく見てみるとクスッと笑えるものばかり。

「東海道シリーズ」展示風景


こちらは箱根関所で役人が旅人たちの取り調べを行っている場面。
でもよく見るとお役人さんのおでこには大きなたんこぶが。
なぜたんこぶができているのか、答えは画面の中にあります。
頭を下げている手前の旅人は必死に笑いをこらえているようにも見えます。

しりあがり寿「東海道五十三次 箱根 たんこぶ」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

「冨嶽三十六景」に描かれた冨士山も、こうやって並べてみるといろいろな表情をしています。

しりあがり寿「冨士だけほぼ三十六景」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示

コロナまん延の時なので、疫病退散を願わずにいられません。
右のしりあがり寿さんの鐘馗様は、マスクを着けて、コロナウィルスを踏みつけています。
そして、手に持つのは注射器。私たちにワクチンを接種してくれるところなのでしょうか。

右 しりあがり寿「コロナ退散 2021」
©しりあがり寿 すみだ北斎美術館
通期展示
左 葛飾北斎「朱描鐘馗図」すみだ北斎美術館
前期展示(後期には高精細レプリカを展示)

今回あらためて気が付いたのですが、人を4人も肩に乗せたり、百面相をしてみたり、北斎サンもクスッと笑える作品を描いています。


葛飾北斎『北斎漫画』十編
すみだ北斎美術館
通期展示


北斎サンをまとう!


3階のホワイエには、いつものとおり撮影スポット?
いえいえ、今回はこちらも展示作品。こちらの作品と、次の衣装は撮影OKです。

左のマネキンが着ているのが、しりあがり寿「充電?はんてん 元祖北斎巣ごもりウェア」
展示協力:(株)ヤギ・(一社)東京ブランドラボ
通期展示


しりあがり寿「浪裏&瀧廻りポンチョ」(手前)ほか
展示協力:(株)ヤギ

展覧会の見どころをコンパクトにまとめたパンフレット(税込300円)もおススメです。
展示作品を思い出して、ご自宅でもう一度クスッと笑ってみませんか。


会期は6月27日(日)まで。
とても楽しい展覧会です。お見逃しなく!

2021年5月13日木曜日

【5月15日(土)から再開!】山種美術館 開館55周年記念特別展「百花繚乱-華麗なる花の世界-」

緊急事態宣言の発令により4月27日(火)から臨時休館していた山種美術館が、感染症予防対策を強化して5月15日から再開!

毎年春恒例、花の展覧会が開催されている山種美術館。
今年も会場内は花の絵でいっぱい。
さわやかなこの季節に、春らしい雰囲気を感じとってみませんか。




展覧会概要

会 期  2021年4月10日(土)~6月27日(日) ※5月15日(土)から再開
開館時間 火~金 10時~16時
     土・日・祝日 10時~17時
     ※5月29日(土)から土・日・祝日は通常開館
     (入館はいずれも閉館の30分前まで) 
休館日  月曜日
入館料  一般 1300円 大学生・高校生 1000円 中学生以下 無料
※チケットは美術館受付で当日券を購入できます。
※混雑時に入場制限を行う場合があります。
※日時指定オンラインチケットの購入は、5月14日(金)正午から再開。
展覧会の詳細、入館日時のオンライン予約、感染症対策、混雑状況等については同館公式HPをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/

※展示室内は次の作品を除き撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※掲載した写真はすべて山種美術館所蔵作品です。

今回の展覧会では、季節ごとの花や鳥が画面いっぱいに描かれた荒木十畝《四季花鳥》のみ写真撮影OKです。

荒木十畝《四季花鳥》1917(大正6)年
右から「春(華陰鳥語)」「夏(玉樹芳艸)」
「秋(林梢文錦)」「冬(山澗雪霽)」

展示は3章+特集の構成になっています。
 第1章 春から夏、咲き誇る花々
 第2章 花のユートピア
 第3章 秋と冬の彩り、再び春へ
 特集:百花の王・牡丹

それではさっそく会場内に入ってみることにしましょう。

四季をめぐる花たちの競演


第1展示室でお出迎えしてくれるのは小林古径《菖蒲》。
すくっと伸びた葉と色とりどりに咲く菖蒲の花。端午の節句の5月にふさわしい作品です。

小林古径《菖蒲》1952(昭和27)年

続いて、横山大観が描いた朝日に映える山桜。金泥の霞が人知れず咲く山桜の美しさを引き立てています。
そして再び小林古径。こちらも春らしいチューリップ。
左 横山大観《春朝》1939(昭和14)年頃
右 小林古径《鉢花》1953(昭和28)年

今回の展覧会では、全部で54点のうち小林古径の作品が6点展示されています。
古径が描く華麗な花の競演を楽しむことができるのも今回の楽しみのひとつです。

 「百花繚乱」で展示されている小林古径作品(☆は今回の記事で紹介している作品)
  ☆《菖蒲》、☆《鉢花》、☆《白華小禽》、《蓮》、《春日》、☆《牡丹》

横山大観の作品は2点展示されていて、もう1点の《寒椿》は、実は今回の展示作品の中で私のイチ押し。
主役は寒い冬に花を咲かせる寒椿なのですが、私が注目したのは金箔の上に墨で薄く描かれた竹の幹(竹稈)と竹の葉。冬のピンと張りつめた空気感が伝わってくるようです。
右が横山大観《寒椿》1949(昭和24)年
中央 速水御舟《椿ノ花》1933(昭和8)年
左 木村武山《秋色》20世紀(大正時代)


こちらは川端龍子らしい豪快な大作《八ツ橋》。
《八橋図屏風》(メトロポリタン美術館)など尾形光琳の屏風に刺激を受けたとのことですが、太平洋戦争末期の相次ぐ空襲の中、作品を完成させて自らが主催する「青龍展」を開催するという龍子の執念が感じられる迫力の作品です。
川端龍子《八ツ橋》1945(昭和20)年




可愛い鳥たちを探してみませんか?



小林古径作品の3点目は初夏に花を咲かせる泰山木と瑠璃鳥。
大きな白い花と、鳥のあざやかな青のコントラストが絶妙です。
小林古径《白華小禽》1935(昭和10)年


展覧会のタイトルが「百花繚乱」なので主役は四季の花ですが、昔から「花鳥画」と言われるくらい花と鳥はいつも一緒に描かれていました。
写真撮影OKの作品、荒木十畝《四季花鳥》にも鳥たちが描かれていますが、作品の中にかわいい鳥を探してみるのも今回の展覧会の楽しみの一つです。

京都画壇からは、江戸時代後期に活躍した岸派の岸連山《花鳥図》。
右隻の優雅な立ち振る舞いの鶴の群れ、左隻の華麗な孔雀のつがいに目を奪われがちですが、右隻上方の控えめな表情のオウムにも注目です。
岸連山《花鳥図》19世紀(江戸時代)

幕末から明治に活躍した大家たちの描く芙蓉と鳥たち。
芙蓉は夏を代表する花です。
右 狩野芳崖《芙蓉白鷺》1872(明治5)年頃
左 野口小蘋《芙蓉夏鴨》1900(明治33)年


夏から秋、冬になって春の訪れを告げる梅とともに描かれているのは、北宋・徽宗皇帝(款)《桃鳩図》を思わせる小茂田青樹《梅鳩》と、白梅の白とカラフルな小禽の色合いがマッチしている土田麦僊《梅花小禽》。
右 小茂田青樹《梅鳩》1925(大正14)年
左 土田麦僊《梅花小禽》20世紀(大正-昭和時代)

特集:百花の王・牡丹


「百花繚乱」のトリを務めるのは、第2展示室に展示されている百花の王・牡丹の作品。
6人の日本画家による6点の個性的な作品が楽しめます。
右 川端龍子《牡丹》1961(昭和36)年
左 小林古径《牡丹》1951(昭和26)年頃

菱田春草が描く可憐な白牡丹。
ここには白牡丹の上を舞う蝶が描かれています。長寿を象徴する蝶をぜひ探してみてください。

菱田春草《白牡丹》1901(明治34)年頃

展覧会オリジナルグッズも和菓子も充実してます


色とりどりの花の展覧会なので、展覧会オリジナルグッズもカラフル。

特におススメは今回新発売の荒木十畝《四季花鳥》をモチーフにしたマスキングテープ(税込440円)。
絵と絵の間の空白がまるで額縁のようです。
好きな長さに切って、手帳の表紙などに貼りつけてもオシャレかもしれません。
川端龍子《八ツ橋》をモチーフにしたマスキングテープ(税込440円)もあるのでどちらにしようか迷ってしまいます。




今回の展覧会の図録ではありませんが、山種美術館の花の絵画の優品を掲載した『山種コレクション 花の絵画 名品集 Flower』(税込1,320円)もおススメです。
塗り絵もあるので、おうちでもアートが楽しめます。



作品を見る楽しみに加えて、作品にちなんだオリジナル特製和菓子を味わえるのも山種美術館の魅力の一つ。
抹茶とオリジナル特製和菓子のセットで1,200円。
鑑賞後のホッとしたひと時にいかがでしょうか。

レパートリーは次の5種類。カッコ内はモチーフとなった作品で、すべて山種美術館蔵です。
上の写真上から時計回りに、「花のかおり」(小林古径《白華小禽》)、「百花」(菱田春草《白牡丹》)、「あずまくだり」(川端龍子《八ツ橋》(左隻))、「はすはな」(小林古径《蓮》)、「雨あがり」(山口蓬春《梅雨晴》)。

会期は6月27日(日)まで。
華やかな花や鳥たちの展覧会をぜひお楽しみください!