2023年3月29日水曜日

東京国立博物館 特別展「東福寺」

東京・上野公園の東京国立博物館では特別展「東福寺」が開催されています。


鎌倉時代に奈良の東大寺と興福寺を合わせたような大寺の造営を願って名付けられた京都の大禅宗寺院・東福寺初の大規模展覧会ですので、なにしろそのスケールの大きさに圧倒されます。
まさに今回の特別展のキャッチコピーのとおり「圧倒的スケール、すべてが規格外」

それではさっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


展覧会名  特別展「東福寺」
会 期   2023年3月7日(火)~5月7日(日)
※会期中、一部作品の展示替えを行います。
会 場   東京国立博物館 平成館
開館時間  9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)
休館日   月曜日(ただし、5月1日(月)は開館)
観覧料金  一般 2,100円、大学生 1,300円、高校生 900円
※本展は事前予約不要です。混雑時は入場をお待ちいただく可能性があります。展覧会の詳細は展覧会公式サイトをご覧ください⇒特別展「東福寺」

展示構成
 第1章 東福寺の創建と円爾
 第2章 聖一派の形成と展開
 第3章 伝説の絵仏師・明兆
 第4章 禅宗文化と海外交流
 第5章 巨大伽藍と仏教彫刻

巡回展情報
  京都展 会 期 2023年10月7日(土)~12月3日(日)
      会 場 京都国立博物館 平成知新館  

※展示室内は一部を除き撮影禁止です。掲載した写真は主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。


見どころ1 「五百羅漢図」全50幅を公開!


14年に及ぶ「五百羅漢図」の修理完成と合わせ開催される特別展「東福寺」。
なんといっても一番の見どころは室町初期の東福寺の画僧・明兆(1352~1431)の現存47幅に補作を加えた全50幅の「五百羅漢図」が公開されることです。

「第3章 伝説の絵仏師・明兆」展示風景


そして今回特にユニークなのは、作品ごとにつけられたわかりやすいタイトルと解説、そして一部の作品についている4コマ漫画によるそれぞれの場面の解説。
ふだん仏画にはあまりなじみのない私たちにとっては、とてもうれしい取組みだと感じました。

「第3章 伝説の絵仏師・明兆」展示風景

「五百羅漢図」の展示スケジュールは次のとおりです。
50幅全部を見るためには少なくとも4回は来なくてはなりませんが、他にも展示替えがあるので、興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

「五百羅漢図」展示スケジュール
 重要文化財 吉山明兆筆「五百羅漢図」(東福寺蔵)
   第1~15号  3/7~3/27
   第16~30号  3/28~4/16
   第31~45号  4/18~5/7
 重要文化財 狩野孝信筆「五百羅漢図」(東福寺蔵)
   第46号    4/4~4/16
   第47号    4/18~5/7
  重要文化財 吉山明兆筆「五百羅漢図」(東京・根津美術館蔵)
   第48号        3/7~3/19
   第49号    3/21~4/2
 「五百羅漢図」(復元模写) (東福寺蔵) 通期展示


「五百羅漢図」(復元模写)は、これまで所在不明とされていた第50号を、五百羅漢図下絵を参照して平成27年から3年をかけて制作されたもので(下の写真左)、この展覧会の準備段階で明兆の原本がロシア・エルミタージュ美術館に保管されていることが判明しました。
(原本の参考図版はパネル展示されています。)


「第3章 伝説の絵仏師・明兆」展示風景

第3章には、「五百羅漢図」のほかにも明兆独特の力強い画風の作品や、流麗な観音図などが展示されていて、まさに「明兆ワールド」が展開されている空間です。

重要文化財「達磨・蝦蟇鉄拐図」 吉山明兆筆
室町時代・15世紀 東福寺蔵 展示期間3/7~4/9



「第3章 伝説の絵仏師・明兆」展示風景



下の写真左は「五百羅漢図」の制作のため故郷に帰れず、代わりに自らの姿を写して母親に贈ったという自画像の模本(*)が展示されていますが、親思いの明兆の優しさに触れたようで、思わずほろりとしてしまいました。
(*)「明兆自画像模本」 住吉広行筆 江戸時代 安永3年(1774) 京都・南明院蔵 展示期間 3/7~4/9
   (4/11~5/7には東福寺蔵の「明兆自画像模本」(住吉広行筆)が展示されます)。

「第3章 伝説の絵仏師・明兆」展示風景



見どころ2 大迫力の特大サイズの仏像!


キャッチコピーにもあるとおり、なにしろすべてが規格外。
明兆による、東福寺を開いた円爾(1202~80)の像(*)もこの迫力の大画面。
(*)重要文化財「円爾像」吉山明兆筆 室町時代・15世紀 東福寺蔵 展示期間 3/7~4/2
  

「第1章 東福寺の創建と円爾」展示風景

円爾が中国に渡り禅宗を学んだ無準師範が円爾に贈った国宝「禅院額字幷牌字」(無準師範、張即之筆 中国・南宋時代 13世紀 東福寺蔵)もこの大きさ。(展示替あり)

「第5章 巨大伽藍と仏教彫刻」展示風景


そしてクライマックスは展示室の最後に登場する迫力の仏教彫刻の数々。
ぜひ近くで巨大な仏像を見上げてご覧ください。

「第5章 巨大伽藍と仏教彫刻」展示風景

こちらは撮影可のエリア。


「釈迦如来坐像(光背化仏)」、「仏手」、「蓮弁」(上の写真左から、いずれも通期展示)は明治14年(1881)に焼失した東福寺旧本尊のもので、現在は東福寺の塔頭・南明院の本尊として祀られている「釈迦如来坐像(光背化仏)」はなんと光背にあらわされた化仏の一つでした。そして「仏手」(東福寺蔵)はゆうに2mを超えているので、東福寺旧本尊がいかに大きな仏像であったかが想像されます。

奥は、明兆の大作「仏涅槃図」(部分)の原寸大グラフィック。

明兆筆「仏涅槃図」(部分)の原寸大グラフィック


原本は東福寺蔵で、普段は3月14日から16日までの東福寺涅槃会行事の3日間しか公開されませんが、今年は令和の大修理が完了し、今回の特別展が開催されたことを記念して春と秋に東福寺で一般公開されるので、この機会に現地を訪ねてみてはいかがでしょうか。

 春季公開  2023年4月15日(土)~5月7日(日)
 秋季公開  2023年11月11日(土)~12月3日(日)

そして、東福寺といえば秋の紅葉シーズンには多く観光客が訪れることでも知られています。

中でも有名なのが見晴らしのよい通天橋。

うれしいことに展示室内にはその通天橋が再現展示されていて、トーハクはただいま紅葉真っ盛り!
ここも撮影可のエリアですので、ぜひ記念撮影を。



東福寺のすべてを収録した決定版の公式図録(税込3,000円)は特別展東福寺特設ショップで販売中です。
全部で400ページ近くあって、読みごたえ十分。



会期は5月7日(日)まで。明兆「五百羅漢図」だけでなくほかの作品も展示替えがあるので何回も訪れてみたくなる展覧会です。

2023年3月10日金曜日

大阪中之島美術館 開館一周年記念特別展「大阪の日本画」

大阪中之島美術館では、開館一周年記念にふさわしい特別展「大阪の日本画」が開催されています。

展覧会チラシ

今回の展覧会は明治から昭和に至る近代大阪の日本画に光を当てて、前期後期で60名を超える画家による約150点の作品が展示される超豪華な展覧会。

キャッチコピーは、初めてにして決定版、浪華の名画大集結

横山大観らをはじめとした東京画壇、竹内栖鳳を中心とした京都画壇とは異なる大阪ならではの近代日本画がこれだけ勢ぞろいするのは史上初、そしてまさに決定版ともいえる充実の内容です。


展覧会開催概要


会 期  2023年1月21日(土)~4月2日(日)
     前期:1/21-2/26 後期:2/28-4/2
     月曜日(3/20を除く)休館
開場時間 10:00-17:00(入場は16:30まで)
会 場  大阪中之島美術館 4階展示室
観覧料  一般 1700円 高大生 1000円 小中学生 無料

展覧会の詳細等は同館公式サイトをご覧ください⇒大阪中之島美術館

巡回展情報 2023年4月15日(土)~6月11日(日) 東京ステーションギャラリー 

※展示室内は一部作品を除き撮影禁止です。掲載した写真は撮影可の作品で、いずれも通期展示です。

第一章 ひとを描く ー北野恒富とその門下
第二章 文化を描く ー菅楯彦、生田花朝
第三章 新たなる山水を描く ー矢野橋村と新南画
第四章 文人画 ー街に息づく中国趣味
第五章 船場派 ー商家の床の間を飾る画
第六章 新しい表現の探求と女性画家の飛躍


展示室に入って一番最初に感じたのは、昔懐かしい大阪の街並みや風物詩が見られることでした。

最初にご紹介するのは、歴史画や大阪庶民の生活を描いた菅楯彦(1878-1963)が、大阪市中央区にある大阪美術倶楽部の舞台緞帳に手描きした《浪華三大橋緞帳》。


菅楯彦《浪華三大端緞帳》昭和32年(1957)頃
株式会社大阪美術倶楽部蔵 通期展示
(展示室ロビーに展示)

水運がさかんだった「水の都」大阪らしく、多くの運河が流れ、その上に数多くの橋が架けられている様子が描かれた大画面の緞帳は現在でも使われれていて、大阪美術倶楽部以外では初公開とのことです。

菅楯彦の弟子、生田花朝(1889-1978)が描くのは、海の上に多くの船が繰り出す天神祭。

生田花朝《天神祭》昭和10年(1935)頃
大阪府立中之島図書館 通期展示
(第六章に展示)

大阪天満宮の天神祭は、6月下旬から7月25日までのおよそ1か月間にわたり行われる祭で、この作品は、7月25日の本宮の夜に行われる天神祭のクライマックス、船渡御(ふなとぎょ)のにぎやかな様子が生き生きと描かれています。


もう一つ感じたのは女性画家の活躍。

大阪では江戸時代から女性画家が活躍していたことに加え、明治時代以降、富裕層を中心に子女に教養として絵画を習わせる傾向が強かったことから、多くの優れた女性画家が登場しました。

第六章では、美人画を得意とした島成園(1892-1970)の作品をはじめ、女性画家の多くの作品を見ることができます。

島成園《祭りのよそおい》大正2年(1913)
大阪中之島美術館蔵 通期展示

左側の着飾った二人の少女を羨ましそうな眼を向ける質素な帯をつけた少女、さらにその三人をじっと見つめる素足に草履姿の少女。
一見するとお祭りを楽しみにしている4人の少女が描かれているように見えますが、実は少女たちの表情や装いでその背景にある貧富の差を、21歳の島成園が見事に描き分けた作品だったのです。

島成園に学んだ女性画家、高橋成薇が描いたのは着物のグラデーションが見事な作品《秋立つ》。

高橋成薇《秋立つ》昭和3年(1928)
大阪中之島美術館 通期展示

同じく島成園に師事した、吉岡美枝(1911-1999)の描く女性はモダンな感じがします。
下の写真左の《ホタル》は、ホタルだけでなくけ少女自身も輝いているように見えます。

右から 吉岡美枝《店頭の初夏》《ホタル》
どちらも昭和14年(1939) 大阪中之島美術館
通期展示


南画家・星加鴨東の長女として生まれ、北野恒富に師事した星加雪乃(1900-1989)の《初夏》は、川の流れに足を入れてとても涼し気。

星加雪乃《初夏》昭和15年(1940)
大阪中之島美術館 通期展示



他にも山水画や文人画はじめ、初めて名前を聞くような画家たちの作品がずらりと並んでいて、大阪の日本画家たちの名品の数々をたっぷりと楽しむことができました。

大阪で見る大阪の日本画はまた格別です。
機会がありましたらぜひ大阪でご覧ください!

2023年3月8日水曜日

根津美術館 企画展「仏具の世界ー信仰と美のかたちー」

 東京・南青山の根津美術館では、仏の教えと仏具の造形美の関わりを探る企画展「仏具の世界ー信仰と美のかたち」が開催されています。

展覧会チラシ

仏教美術というと、真っ先に仏像や仏画、経典などが思い浮かんできますが、今回は主に仏教で用いられる仏具に焦点をあてた展覧会。
細部まで丁寧に作り込まれた仏教工芸の美をぜひお楽しみいただきたいです。

展覧会開催概要


会 期  2023年2月18日(土)~3月31日(金)
     会期中に前期(2/18-3/12)、後期(3/14-3/31)で展示替があります。
休館日  毎週月曜日
開館時間 午前10時~午後5時(入館はいずれも閉館30分前まで)
入場料  オンライン日時指定予約
     一般 1300円、学生 1000円
     *障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料
会 場  根津美術館 展示室1・2

展覧会の詳細、入館の日時指定予約等は同館公式サイトをご覧ください⇒根津美術館

※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は記者内覧会で美術館より特別に許可を得て撮影したものです。

展示構成
 ・仏を荘厳する
 ・仏を供養する
 ・仏道を修める
 ・仏性を呼び覚ます
 ・コラム 茶の湯と仏具
 ・仏教美術と女性の信仰

それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。

仏を荘厳する

建物の中や儀式などでおごそかで立派な様を「荘厳(そうごん)な」と表現することがありますが、仏教の世界で「荘厳(しょうごん)する」とは仏像や仏堂をおごそかに飾ることを指します。

「仏を荘厳する」展示風景

最初にご紹介するのは、藤原仲麻呂(恵美押勝)が道鏡を除こうとして起こした恵美押勝の乱(764年)の平定後に称徳天皇によって発願された100万塔の小塔のうちの3基。
塔芯に納められた無垢浄光経(陀羅尼)(下の写真左)は最古の印刷物としても知られる貴重なものなのです。

百万塔 日本・奈良時代 8世紀 
右2基 根津美術館蔵 左1基 根津美術館蔵(植村和堂氏寄贈) 
いずれも通期展示

続いては、寺院の境内や仏殿に立てる飾り布「幡(ばん)」の一部であったと考えらえる「赤地格子連珠花文錦(蜀江錦)」。

赤地格子連珠花文錦(蜀江錦) 中国・隋~唐時代 7世紀
根津美術館蔵
 前期展示(後期には同じ名称で別のものが展示されます)

7世紀の隋~唐時代のものですが、長い年月を経ても当時の鮮やかな文様が残されています。
壁面のパネルには幡の概略図が示されていますが、このような大きな幡が立ち並ぶ、まさに荘厳な場面を想像してみたくなってきます。

今回は仏具の展覧会ですが、仏画の名品も展示されています。

当麻曼荼羅 日本・室町時代 15世紀
根津美術館蔵 通期展示

「当麻曼荼羅」は中将姫の物語で知られる奈良・当麻寺の当麻曼荼羅を4分の1に縮小した室町時代の模本で、原本は織物ですが、こちらは絹本に着色したものです。
多くの仏さまや大伽藍が描かれた極楽浄土の様子はまさに壮観。縮小版といっても大画面の迫力が感じられます。


仏を供養する

仏・法・僧や恩人・故人などに対して供物を捧げる供養具には、制作した人たちや、供養した人たちの念(おも)いや技が込められています。

「仏を供養する」展示風景


仏に供養する散華のための花びらを盛る器「黒彩絵華籠」は、一見したところ陶器のように見えましたが、実は紙でできているもので、木型に10枚ほどの紙を貼って形を整えたあと全面に黒漆を塗り、胡粉で下地を整え緑青、朱、金箔で彩色するといういくつもの工程を経たものなのです。

黒彩絵華籠 日本・鎌倉時代 14世紀
根津美術館蔵 通期展示

高麗時代の朝鮮半島で作られた高い脚つきの香炉も、薄い銀板を梵字の形に切り抜いて炉身側面4か所と口縁6か所に象嵌して、その周りに唐草文を銀の線象嵌であらわすという、精巧なつくりです。
どちらも携わった職人さんたちのものづくりへの思いや技が込められていると感じました。
まさに超絶技巧。細部までじっくりご覧いただきたいです。

銀象嵌梵字宝相華文香炉 朝鮮・高麗時代 13~14世紀
根津美術館蔵 通期展示


「法華経」巻首の見返絵の右側の露台の上で説法する釈迦如来の前には同じような高い脚のついた香炉が置かれているので、こちらも注目です。

法華経(部分) 朝鮮・高麗時代 至正13年/恭愍王2年(1353)
根津美術館蔵 通期展示


仏道を修める

ここでは、自らの行いを正して悟りに達するという目的を果たすために修行者を助ける僧具が紹介されています。

「仏道を修める」展示風景

こちらは、僧侶が月に2回、一堂に集まり、戒律を確認し自省を行う布薩会(ふさつえ)で、手を清めるための浄水を容れる水瓶。

水瓶の下の朱漆塗の盥(たらい)は、見込みに水瓶を置いたような丸い跡が残っているので、布薩盥として用いられていたと考えられています。

上 布薩形水瓶 日本・鎌倉時代 13世紀
 根津美術館蔵
 下 漆塗足付盤(布薩盥) 日本・室町~桃山時代
16世紀 個人蔵
どちらも通期展示 


仏性を呼び覚ます

密教法具の中には、独鈷、三鈷、五鈷といった「鈷」とついた法具がよく見られます。

「仏性を呼び覚ます」展示風景


これは、もとはインドの武器であった「鈷」が仏教に取り入れられて、煩悩を打ち砕き、仏性を現わす意味で用いられるようになったもので、ここでは真言宗の開祖・空海の像(重要文化財 弘法大師像 日本・鎌倉時代 13~14世紀 大師会蔵)を前に、密教の祭壇にならって五鈷杖や独鈷鈴などが配置されて厳かな雰囲気を醸し出しています。

「仏性を呼び覚ます」展示風景



コラム 茶の湯に取り入れられた仏具

茶の湯では、本来の目的とは違っても、茶人たちに風流さが好まれて茶の湯の道具に取り入れられたものがありますが、これには驚きました。

仏堂の軒下に吊るし、前に垂らした綱で打ち鳴らす鰐口に脚をつけて、お湯を沸かす風炉にしたものまであったのです。
「鰐口やつれ風炉」という名称ですが、茶人たちは「やつれ」ているところに風流さを感じたのでしょうか。

左 鰐口やつれ風炉 日本・江戸時代 元禄16年(1703)
右 青磁浮牡丹文香炉 龍泉窯 中国・南宋~元時代 13~14世紀
どちちらも根津美術館蔵 通期展示



仏教美術と女性の信仰

ここでは、仏さまの衣の黒い部分に髪の毛を繍い込んだ来迎図や、小袖を仕立て直した、見事な色合いの刺繍の幡をはじめとした、女性の信仰への思いに着目した仏教美術の名品が展示されています。


「仏教美術と女性の信仰」展示風景

もとは女性用の小袖であったとみられ、明る色合いで、菊や籬(まがき)の配置がとてもリズミカルな打敷も展示されています。
(打敷とは、仏前の机上などに敷く直角三角形や正方形の荘厳具のことです。)

白綸子地籬菊花模様刺繍打敷 日本・江戸時代 文化2年(1805)銘
根津美術館蔵 通期展示



見どころいっぱいの展示も同時開催中です!


展示室5 西田コレクション受贈記念Ⅰ IMARI

2021年、根津美術館が、東洋陶磁を中心とする美術工芸の研究者で、同館に1981年から勤務され、現在は顧問を務められている西田宏子氏から東洋・西洋陶磁器を中心とした工芸品169件の寄贈を受けたことを記念して、今回から3回に分けて受贈記念展が開催されます。

現在開催されている第1回は、肥前国有田の伊万里焼の特集「IMARI」。

展示風景

オランダのビューレン家のイダ・マリアと、ブレデローデ家のヨアンの1702年の結婚を祝い、両家の家紋を中央に配した伊万里の大皿は、西田氏が子孫のビューレン氏より1枚もらい受けたというとても貴重な逸品です。

色絵紋章文大皿 肥前 日本・江戸時代 18世紀
根津美術館蔵(西田宏子寄贈) 通期展示


第2回以降のスケジュールは次のとおりです。

4月15日(土)~5月14日(日) 西田コレクション受贈記念Ⅱ 唐物
5月27日(土)~7月2日(日)   西田コレクション受贈記念Ⅲ 阿蘭陀・安南 etc.
 
ミュージアムショップでは、受贈を記念して制作された図録「海をこえて、今ここにー西田コレクションのうつわー」も販売中です。
カラーの図版や、研究者の方たちのコラムもあって全120頁(税込2,200円)。
ぜひミュージアムショップにお立ち寄りください。

ミュージアムショップ



展示室6 花どきの茶

花どきとは、花の盛りの時季、とりわけ桜の花が咲く春のひとときのこと。

桜を題として詠んだ和歌が書かれている紀貫之の家集『貫之集』の断簡、「貫之集切」(伝 藤原行成筆 日本・平安時代 11世紀 根津美術館蔵 通期展示)はじめ、春の訪れを楽しむ季節の茶道具が展示されています。

「花どきの茶」展示風景

企画展をはじめ、さまざまな分野の美術の世界が楽しめます。
この春おすすめの展覧会です。