2022年10月25日火曜日

神戸市立博物館開館40周年記念特別展 よみがえる川崎美術館-川崎正蔵が守り伝えた美への招待-

開館40周年を迎えた神戸市立博物館では特別展「よみがえる川崎美術館-川崎正蔵が守り伝えた美への招待-」が開催されています。

神戸市立博物館外観

川崎造船所(現川崎重工業株式会社)や神戸新聞社などを創業した川崎正蔵氏(1837-1912)が日本や東洋の美術品の海外流出を憂えて収集した所蔵品を、現在のJR新神戸駅周辺にあった自邸で公開したのが明治23(1890)年のことでした。

川崎美術館外観(川崎芳太郎編『長春閣鑑賞』第6集、國華社)
大正3年(1914)川崎重工業株式会社

その後、正蔵氏の没後を含め14回の展観(展覧会)が開催されましたが、昭和初期の金融恐慌を契機にコレクションは散逸し、自邸も災害などにより失われてしまいました。

今回の特別展は、ゆかりの地・神戸でおよそ100年ぶりに「川崎美術館」の姿を再現するという、夢のような展覧会。
まさに神戸市立博物館の40周年を記念するのにふさわしい展覧会ではないでしょうか。


展覧会開催概要


展覧会名 神戸市立博物館開館40周年記念特別展「よみがえる川崎美術館―川崎
     正蔵が守り伝えた美への招待―」
会 期  20221015日(土)~124日(日)
     会期中、一部作品に展示替えあり
会 場  神戸市立博物館(神戸市中央区)
開館時間 930分~1730
    (金曜・土曜日は1930分まで、入場は閉館の30分前まで)
休館日  月曜日
観覧料金 一般1,600円(1,400円) 大学生800円(600円) 高校生以下は無料
     *( )内は前売・団体(20名以上)料金
     *障がい者割引など各種割引あり
問い合わせ: 電話 078-391-0035
公式サイト:https://kawasaki-m2022.jp


展示構成
 第一章 実業家・川崎正蔵と神戸
 第二章 収集家・川崎正蔵コレクション
 第三章 よみがえる川崎美術館
 第四章 美術とともに
 第五章 川崎正蔵が蒔いた種-コレクター、コレクション、美術館

※会場内は撮影禁止です。掲載した写真は報道内覧会で博物館より特別の許可をいただいて 
 撮影したものです。


神戸市立博物館1階ロビー

とても内容の充実した展覧会なのでお伝えしたいことはたくさんあるのですが、実際には現地で体験していただくとして、見どころを3つに絞ってご紹介したいと思います。


見どころ1 東洋古美術の幅広いコレクションが見られる!


今回の展覧会で展示されるのは、国宝2件、重要文化財5件、重要美術品4件を含む約80件と関連資料をあわせて約110件。
もとは千点も二千点ともいわれた川崎コレクションのうち、今回の展覧会のための調査で確認されたのは国内外で所蔵されている約200件。
そして調査の手がかりとなったのが川崎正蔵氏の養嗣子・川崎芳太郎氏が刊行した『長春閣鑑賞』でした。

『長春閣鑑賞』展示風景


『長春閣鑑賞』全6集には厳選された386図が掲載されていて、各巻の構成は次のとおりですが、これだけ見てもジャンルも時代も幅広い東洋古美術がコレクションされていたことがわかります。

第1集 仏画・やまと絵・肉筆浮世絵
第2集 水墨画・狩野派
第3集 円山・四条派
第4集 中国絵画
第5集 仏像・漆器
第6集 陶磁器・玉器・青銅器

まずは3階第1会場の絵画からご紹介していきますが、あらためてジャンルの幅の広さに驚かされます。

「第二章 収集家・川崎正蔵コレクション」展示風景

絵画作品は展示期間が限られるものもあるので、公式サイトの「出品目録・展示替予定表」をご確認ください。

仏画で展示中の作品は、重要文化財《孔雀明王像》(文化庁)。
11月13日までの展示で、《最勝曼荼羅》(奈良国立博物館)は11月1日~12月4日、《春日宮曼荼羅》(MOA美術館)は11月15日~12月4日に展示されます。


重要文化財《孔雀明王像》平安時代・12世紀
文化庁 展示期間:10/15-11/13


肉筆浮世絵のうち、幻想的な風景が描かれた葛飾北斎《渡船山水図》(北斎館)は11月8日~12月4日の展示です。

「渡船山水図」葛飾北斎 弘化4年(1847)
北斎館 118日~124日展示

今回展示される2件の国宝のうち、《宮女図(伝桓野王図)》(個人蔵)は11月15日~12月4日に展示されます。

国宝「宮女図(伝桓野王図)」伝銭舜挙
元時代・13世紀~14世紀
個人蔵 1115日~124

もう1件の国宝《六祖挟担図》(大東急記念文庫)は11月22日~12月4日に展示予定ですので、お目当ての作品が展示されている時をねらって来館してみるといいかもしれません。

続いて2階第2会場に移ります。
こちらは仏像、蒔絵、磁器などの旧・川崎コレクションが展示されています。

会場入口を守っているのは、仏教を守護する四天王のうち西方を守護する広目天。
「魔物は寄せ付けないぞ」という迫力のある表情が印象的です。

重要文化財《広目天眷属像》康円作 文永4年(1267)
静嘉堂文庫美術館 通期展示

続いて、蒔絵の硯箱、堆朱の食籠、鍋島焼や景徳鎮窯の磁器が並びます。  

「第二章 収集家・川崎正蔵とコレクション」展示風景



見どころ2 応挙の襖絵の間が再現!


国内外に散逸した旧・川崎正蔵コレクションがゆかりの地・神戸に大集結したというだけでも大変なことなのですが、なんと今回の展覧会では、かつての川崎美術館の室内の一部まで再現されているのです。



「川崎美術館」の扁額をくぐり、中に入ると・・・
見てください、円山応挙の襖絵で囲まれたこの贅沢な空間を!

川崎美術館1階「上之間」の再現
《月夜浮舟図・江頭月夜図襖》円山応挙筆
天明7年(1787) 東京国立博物館
通期展示


川崎美術館1階「広間」の再現
《海老老松図襖》円山応挙筆
天明7年(1787) 東京国立博物館
通期展示



川崎美術館1階「三之間」の再現
《江岸楊柳図襖》円山応挙筆
天明7年(1787) 東京国立博物館
通期展示


さらに「三之間」の前には、第8回展観や第12回展観で展示されていた中国絵画が展示されているのです。

川崎美術館は、一般に公開されていたのでなく、展観入場券を送られて招かれた一部の人たちしか入ることができませんでした。
この贅沢な空間の中で、川崎美術館の展観に招かれた幸福な一人になったかのような至福の時をぜひ味わっていただきたいです。

「第三章 よみがえる川崎美術館」展示風景

上の写真左、中国・明代の宣宗皇帝が描いた《麝香猫図》のモフモフした毛並みで、可愛らしい表情をした猫は、展覧会オリジナルグッズになっているのでぜひ注目してみてください。

《麝香猫図》宣宗筆 明時代・宣徳元年(1426)
個人蔵 通期展示


見どころ3 「名誉の屏風」5双のうち3双が見られる!


明治35年(1902)の明治天皇の神戸行幸で御用立てられ、「名誉の屏風」と呼ばれた5双の金地屏風がありました。

今回は、そのうち海外から初の里帰りとなる狩野孝信筆《牧馬図屏風》(個人蔵 通期展示)をはじめ、伝狩野孝信筆《桐鳳凰図屏風》(重要美術品 林原美術館蔵 通期展示)、狩野探幽筆《桐鳳凰図屏風》(サントリー美術館 展示期間:11/8-12/4)の3双が展示されます。

狩野孝信筆《牧馬図屏風》
桃山時代~江戸時代・16世紀後期から17世紀前期
個人蔵

この《牧馬図屏風》は、とても400年ほど前に描かれたとは思われないほど鮮やかな色が残っていて、それぞれの馬の表情も個性があるので、いつまで見ていても飽きない作品です。
今回の展覧会のメインビジュアルになっているのもよく分かります。

さらにこの作品は、第三回売立に出されたのですが、その売立が二・二六事件により無期延期になり、近年、海外で再発見され2019年にアメリカの美術館で展示が行われたもので、歴史の渦に翻弄された川崎コレクションを象徴するかのようにも感じられました。

会場の最後に展示されているのは、川崎正蔵氏がコレクションの中で最も愛したという作品、重要文化財《寒山拾得図》伝顔輝筆(東京国立博物館)。


重要文化財《寒山拾得図》伝顔輝筆
元時代・14世紀 東京国立博物館
展示期間:10/15-11/13

川崎正蔵氏は日露戦争でバルチック艦隊が攻めてきたらこの作品を携えて高野山へ避難しようと考えていたと伝えられ、睡眠中でもこの作品のことは忘れることはないといわれたほど愛蔵していたといわれています。


猫に癒されたい!展覧会オリジナルグッズも充実してます!
  
展覧会オリジナルグッズの中でも特におススメしたいのは、先ほどご紹介した《麝香猫図》をモチーフにした再生コットントートバッグ(税込1,320円)。
明の皇帝が描いただけあって、気品を漂わせながらも、お茶目な表情に癒されます。



他にも出展作品をモチーフにした絵はがき、A4クリアファイル、マグネットなど盛りだくさん。
出展作品のカラー図版や解説はじめ川崎美術館関連資料が満載の『公式図録』(税込2,800円)もおススメです。



夢のような展覧会も、会期が終わればまた「夢」に戻ってしまいます。
その前にぜひ川崎美術館のよみがえった姿をご覧ください!

2022年10月23日日曜日

東京国立博物館創立150年記念 特別展 国宝 東京国立博物館のすべて 

東京・上野公園の東京国立博物館では、「東京国立博物館創立150年記念 特別展 国宝 東京国立博物館のすべて」が開催されています。



10月18日(火)に開幕してすでに話題沸騰、連日大盛況の展覧会ですが、なにしろ東京国立博物館が所蔵する89件の国宝すべてが12月11日(日)までの間に展示されるのですから、この機会を逃すわけにはいきません。

それでは、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。

※展示室内(フォトスポットを除く)は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。

※所蔵先を記載していない作品は、すべて東京国立博物館所蔵です。

展覧会概要

東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」
会 期  2022年10月18日(火)~12月11日(日)~18日(日) 会期延長!
開館時間 9時30分~20時
     ※金曜・土曜日は20時まで開館。(総合文化展は17時閉館)
     ※12月12日(月)は休館。
     ※12月13日(火)~18日(日)は本展のみ9時30分から20時まで開館。
      総合文化展は全日17時閉館。
     ※入館は閉館の30分前まで
休館日  月曜日
※本展は事前予約制です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください⇒特別展「国宝」公式サイト
※会期中、一部作品の展示替えを行います。


見どころ1 史上初!東博所蔵の国宝89件すべて公開!


東博が所蔵する約12万件の美術品の頂点に立つ国宝は89件。
これは、一つの博物館が所蔵する国宝の件数では最多。

会場内では、絵画、書跡、考古、漆工など8つの分野に分けて展示されています。

絵画・筆跡

「絵画」展示風景

平成館2階の第1会場に入ってすぐにお出迎えしてくれるのは長谷川等伯の国宝《松林図屛風》。
10月30日までの展示です。

そして等伯といえば、桃山時代のライバル・狩野永徳。
永徳の作品も見たくなりますが、国宝《檜図屛風》は11月1日から11月27日まで展示されます。

全長約9.5mの国宝《平治物語絵巻 六波羅行幸巻》は巻替えなしの一挙公開!
こちらも10月30日までの展示です。

国宝《平治物語絵巻 六波羅行幸巻》
展示期間10/18-10/30


「書跡」展示風景


絵画や書跡は保存のため展示期間が限られていて、会期内に展示替えがあります。
他にも展示期間が限られている作品があるので、ぜひ出品目録をこまめにチェックしてみてください!

東洋絵画・東洋筆跡

東博の豊富な中国書画のコレクションはいつも東洋館で楽しませてもらっていますが、こうやって国宝だけが並んでいると壮観です。

「東洋絵画」展示風景


法隆寺献納宝物・考古・漆工

「漆工」の作品は、照明の効果が絶大。
きらびやかな蒔絵や螺鈿が、その輝きを一層増しています。

「漆工」「考古」展示風景

「考古」の《東大寺山古墳出土品》《江田船山古墳出土品》のうち、特別展「国宝」に出ていなものは平成館1階考古展示室に展示されているので、ぜひこちらもご覧ください。

「法隆寺献納宝物」「考古」「漆工」展示


「考古」展示風景



見どころ2 東博所蔵の国宝の刀剣19件を一挙公開、それも通期展示!


国宝の刀剣19件も、一つの博物館としては日本一。
そして、その19件を一つの空間に展示したのも史上初!
平成館2階の第2会場に出現した「刀剣の間」は圧巻です。

刀剣の見どころは何といってもその輝き。
展示ケースにも、照明にも工夫を凝らしているので、ぜひ刃文(はもん)や地鉄(じがね)の輝きをお楽しみください。




「刀剣」展示風景



見どころ3 東博150年の歩みを所蔵作品とともに追体験!


「第2部 東京国立博物館の150年」では、150年を大きく3つの時期に分けて、それぞれの時期に収蔵された作品とともに東京国立博物館の歩みを追体験できる展示になっています。


第1章 博物館の誕生

明治維新後、幕末の戊辰戦争で荒廃していたかつての東叡山寛永寺の広大な敷地、現在の上野公園で行われたのが内国勧業博覧会。
当時の様子をうかがうことができる錦絵や、初期の収蔵品が展示されています。

「第1章 博物館の誕生」展示風景

「第1章 博物館の誕生」展示風景


第2章 皇室と博物館

続いて、「東京帝室博物館」時代に収蔵された皇室ゆかりの名品の数々。

「第2章 皇室と博物館」展示風景

総合博物館として、動植物や鉱物の標本など自然史の資料も収蔵していた時期がありました。
現在、国立科学博物館が所蔵する《キリン剥製標本》はおよそ100年ぶりの里帰り!

「第2章 皇室と博物館」 展示風景

第3章 新たな博物館へ

関東大震災や戦災を経て、戦後、新たな歩みを始めた東京国立博物館は、変わることなく文化財の収集保存を続けています。
この章では、戦後に収集された名品が展示されています。



重要文化財《風神雷神図屛風》尾形光琳筆
展示期間10/18-11/13


尾形光琳に私淑した酒井抱一がこの《風神雷神図屛風》の裏に描いた同じく重要文化財の《夏秋草図屛風》は入れ替わりで11/15-12/11に展示されます(現在は別々の屛風に仕立てられています)。

展示の最後にフォトスポットがあります。
こちらは令和に入って収蔵された《金剛力士立像》。
高さ約2.7mもある迫力の表情に圧倒されそうです。


《金剛力士立像》 通期展示

最後に展示されているのは、切手でもおなじみの菱川師宣筆《見返り美人図》。
こちらは初期の収蔵作品ですが、前に向かって歩きながら、後ろを振り向く姿が、150年を振り返りつつ、将来に向かって新たな一歩を踏み出していくという今回の展覧会にピッタリの作品だと思いました。

《見返り美人図》菱川師宣筆
展示期間10/18-11/13
(11/15-12/11には複製が展示されます)


国宝をはじめ、東京国立博物館の収蔵品の幅の広さ、奥行きの深さが実感できる展覧会です。
この秋おススメの展覧会です!

2022年10月20日木曜日

山種美術館【特別展】没後80年記念 竹内栖鳳

 東京・広尾の山種美術館では、【特別展】没後80年記念 竹内栖鳳 が開催されています。

展覧会チラシ
(「竹」と「鳳」の一画が猫の瞳の色と同じに
なっているのがアクセントになっています。)




今年は近代京都画壇を代表する日本画家・竹内栖鳳(1864-1942)の没後80年。
今回の特別展は、同館が所蔵する竹内栖鳳作品全26点をはじめ、個人蔵の初公開作品を含む初期から晩年までの作品全37点が出品される10年ぶりの回顧展になります。

あわせて、栖鳳の先人たちや、同時代に活躍した日本画家、栖鳳の弟子たちの作品を通して、江戸時代から昭和までの京都画壇の流れをたどることもできる盛りだくさんの内容の展覧会なのです。

それではさっそく展示室内の様子をご紹介したいと思います。

展覧会概要

会 期  2022年10月6日(木)~12月4日(日)
  ※会期中、一部展示替えあり。
  前期 10月6日(木)~11月6日(日)
  後期 11月8日(火)~12月4日(日)  
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  月曜日
入館料  一般 1300円、大学生・高校生 1000円、中学生以無料(付添者の同伴が必要)
     障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)一般1100
     円、上記いずれかのうち大学生・高校生900円
     ※きもの特典:きものでご来館のお客様は、一般200円引き、大学生・高校生
      100円引きの料金となります。
     ※複数の割引・特典の併用はできません。
     入館時のオンライン予約も可能です。詳細は山種美術館公式サイトをご覧くださ   
     い。

    お得な相互割引のご案内!
     下記チケットの提示で入館料を100円割引。
     *いずれも対象券1枚につき1名様、1回限り有効。
     *入館チケットご購入時に受付にご提示ください。購入後の割引はできません。
     *他の割引との併用はできません。
     *オンラインチケットは割引対象外。

展示構成
 第1章 竹内栖鳳
 第2章 栖鳳をめぐる人々
   京都画壇の先人たち
   同時代の画家たち
   栖鳳の弟子たち
 特集 国画創作協会-栖鳳が応援した画家たち- 

山種美術館公式サイト⇒https://www.yamatane-museum.jp/

※展示室内は《班猫》を除き撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※掲載した作品のうち、前期後期で展示替えがあるものはその旨を表記しました。


本展限り!《班猫》が撮影できます。

同館所蔵の竹内栖鳳作品の中でも特に人気があるのが、重要文化財《班猫》。
今回に限り特別に写真撮影ができます。
 ※撮影はスマートフォン・タブレット・携帯電話に限ります。

竹内栖鳳《班猫》【重要文化財】1924(大正13)年
山種美術館蔵

今回はモデルとなった猫の写真もパネル展示されていますので、ぜひ見比べてみてください!

「班猫チャレンジ」のお知らせ
    山種美術館では、《班猫》にちなんで、毛づくろいをする猫や、《班猫》そっくりな猫
 の写真を募集しています。
  すてきな投稿には山種美術館公式アカウントからリアクションがあるかもしれません。
 ぜひご参加ください!
 
  応募期間:~2022年12月4日(日)
  応募方法:TwitterまたはInstagramでハッシュタグ「#班猫チャレンジ #山種美術館」 
       をつけて投稿すれば応募完了です。


見どころ2 個人蔵の初公開作品はじめ、バリエーション豊かな栖鳳作品が見られます!

今回の特別展では、同館が所蔵する栖鳳作品全26点のほかに、東京国立博物館所蔵の《松虎》(前期展示)と、初公開10点(通期展示8点+後期展示2点)を含む個人蔵11点、全部で38点の作品が展示されます。

そして、《班猫》はじめ可愛い動物たち、国内や海外のさりげない風景、四季のうつろいを感じさせてくれる風物詩、そしてお釈迦様も描かれていて、あらためて栖鳳の画業の幅の広さを感じさせてくれる、バリエーションに富んだ内容になっています。

まずは初公開の個人蔵の作品から。

左から、竹内栖鳳《焦山猛乕》1904(明治37)年、
《釈迦出山図》《立雛図》どちらも1908(明治41)年、
いずれも個人蔵

《釈迦出山図》は、6年も山で修業しても悟りを得られず、憔悴しきって山を下りてきた釈迦の姿を描いた作品。

栖鳳が描いた道釈人物画(道教、仏教に関する人物画)を見るのは初めてでしたが、釈迦の衣のしわ、画面上部の枝ぶりなど、中国南宋の画家、梁楷の国宝《出山釈迦図》(東京国立博物館)を参考にしているのがよく分かります。
栖鳳の中国絵画学習の成果が伝わってくる作品です。

続いて、可愛い動物たち。

猫だけでなく鳥も、蛙も、どれもが可愛く描かれていて、栖鳳の動物たちを見る優しさが伝わってくるようです。

左から、竹内栖鳳《みゝづく》1933(昭和8)年頃、
《風かおる》1937(昭和12)年
どちらも山種美術館蔵 


竹内栖鳳《緑池》1927(昭和2)年頃
山種美術館蔵

下の写真右の《遊鹿》(個人蔵)では鹿の親子が可愛らしく描かれていますが、魚は・・・
「可愛い」ではなく、海から上がったばかりの新鮮で美しい姿が描かれています。


左から、竹内栖鳳《松魚》、《海幸》、《遊鹿》
いずれも1926-42年頃(昭和時代)、個人蔵


そして、動物画と並んで風景画も今回の特別展の見どころのひとつです。


右から、竹内栖鳳《城外風薫》、《潮来小暑》
どちらも1930(昭和5)年 山種美術館蔵

《城外風薫》は中国江南地方の蘇州を描いた作品。
水郷に囲まれ、古い街並みが残る蘇州は、にぎやかで見どころも多くて、とてもいい雰囲気の街でした。
この作品を見ていたら蘇州をはじめとした江南地方にまた行ってみたくなりました。

一見水彩画のように見える淡い色彩の風景画も味わい深いものがありますが、落ち着いた雰囲気の水墨山水の世界にも心を惹かれます。

右から、竹内栖鳳《晩鴉》、《水墨山水》どちらも1933(昭和8)年、
《雨中山水》1932(昭和7)年頃、いずれも山種美術館蔵


この作品のタイトルはそのものずばり《水墨山水》。
墨の濃淡とにじみで表現された世界が何ともいえない透明感を出しています。
小さいですが、画面左に描かれた橋を渡る人物の姿が印象に残りました。

竹内栖鳳《水墨山水》1933(昭和8)年、
山種美術館蔵


見どころ3 江戸から昭和にかけての京都画壇の画家たちの名作が見られます!

関東地方の美術館では京都画壇の画家たちの作品をまとめて見る機会はあまり多くないので、今回の特別展は、江戸時代から明治、大正、昭和にかけての京都画壇の名作を見ることができる絶好の機会です。

江戸時代中期以降、京都画壇の主流を占めたのは円山・四条派でした。

「京都画壇の先人たち」展示風景

円山応挙に学んだ森徹山が描く兎のふわふわした毛並みは、その後の栖鳳をはじめとした京都画壇の日本画家たちにも綿々と引き継がれていることが分かります。

森徹山《兎図》19世紀(江戸時代)
山種美術館蔵

栖鳳が師事した幸野楳嶺も円山・四条派の流れを汲む画家でした。
そして、栖鳳と並んで楳嶺門下の四天王と呼ばれた、菊池芳文、都路華香、栖鳳と同時代に活躍した山元春挙の作品も並んでいるので、それぞれの画家に共通するものと個性の違いを見比べてみることができます。

菊池芳文《花鳥十二ヶ月》1868-1918年頃(明治-大正時代)
山種美術館蔵 前後期で頁替あり



左から、都路華香《萬相亭》1921(大正10)年、
山元春挙《清流》1927-33(昭和2-8)年頃、《曠原放牧図》1916(大正5)年頃
いずれも山種美術館蔵


動物描写では師の栖鳳をしのぐといわれた西村五雲の《白熊》は、オットセイを捕らえる白熊の迫力ある姿を描いています。

画面からは、五雲が京都市動物園で初めて巨大な白熊を見た時の衝撃の強さが伝わってくるようです。

西村五雲《白熊》1907(明治40)年
山種美術館蔵

今回の特集は「国画創作協会-栖鳳が応援した画家たち-」。

第二展示室には国画創作協会創設時の中心メンバーで、栖鳳が教鞭をとった京都市立絵画専門学校の卒業生、土田麦僊、村上華岳、小野竹喬と、のちに同協会に加わった入江波光の作品が展示されています。

村上華岳が描いた「久遠の女性」を見ると、いつもうっとりしてしまいます。

村上華岳《裸婦図》【重要文化財】1920(大正9)年
山種美術館蔵

最後にご紹介したいのは、近代日本画界の東西の巨匠たちの合作《松竹梅》。
この作品は、日本橋・三越で開催された、当時の画壇を代表する日本画家6人による淡交会に出品されたもので、西の栖鳳、東の大観と並び称された東西の横綱と、栖鳳と同じく幸野楳嶺に師事したあと上京して橋本雅邦の門に入った川合玉堂という豪華メンバーの3人がそれぞれが梅、松、竹を描いています。

この中では、玉堂の《竹》に描かれた小鳥たちのしぐさの可愛さに特に心を惹かれました。

横山大観・川合玉堂・竹内栖鳳《松竹梅》
(右から川合玉堂《竹》、横山大観《松》、竹内栖鳳《梅》
1934(昭和9)年 山種美術館蔵


オリジナルグッズも、オリジナル和菓子も、関連イベントも盛りだくさん!

今回は《班猫》をモチーフにしたオリジナルグッズが充実しています。
「オリジナル班猫トートバッグ(税込み1,320円)は新発売!



山種美術館が所蔵する全26点の竹内栖鳳作品が収録された『山種美術館所蔵 竹内栖鳳作品集』(税込み1,100円)も新発売です。




オリジナル和菓子は今回もどれも美味しそう。
ランチメニューもあるので、美術館1階ロビーの「Cafe 椿」にぜひお立ち寄りください。


上の写真一番上から時計回りに、「蓮はな(村上華岳《裸婦図》【重要文化財】)」、「秋の風(竹内栖鳳《柿の実》)」、「ちとせ(西村五雲《松鶴》)」、「えびす鯛(竹内栖鳳《艸影帖 ・色紙十二ヶ月》のうち「鯛(1月)」)、「薫風(竹内栖鳳《風かおる》)」。
(カッコ内はモチーフにした作品。すべて山種美術館蔵)

高級美術複製画(彩美版®)第2弾が新発売!

山種美術館所蔵作品の高級美術複製画(彩美版®)の第2弾は、今回の特別展で展示中の上村松篁《白孔雀》。
ミュージアムショップにも飾られていて、案内パンフレットもいただけます。
ご自宅でも山種美術館所蔵作品をお楽しみください!



【オンライン講演会のお知らせ】

10月22日(土)14:00-15:30にはオンライン講演会が開催されます。

講師:小宮輝之氏(上野動物園 元園長・日本鳥類保護連盟 会長)
「日本画に描かれた動物たち-竹内栖鳳を中心に-」
講演会参加費 1,500円
アーカイブ視聴期間もあります。詳しくはこちらです⇒オンライン講演会

また、過去のオンライン講演会動画のアーカイブも販売中です。詳しくは同館公式サイトをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/


【公募展】Seed 山種美術館 日本画アワード 2024-未来をになう日本画新世代-

山種美術館では、日本画の新たな創造に努める優秀な画家の発掘と育成を目指し、
公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024」を開催します。
 詳しくは公募展のサイトをご覧ください⇒Seed 山種美術館 日本画アワード 2024

最後にうれしいお知らせ。

山種美術館がSNSイベント「Museum Week 2022」で『最も反響の大きい文化施設』第3位を獲得しました。

おめでとうございます!

展示も、オリジナルグッズも、関連イベントも、どれも盛りだくさんの展覧会です。
ぜひ会場にお越しください!