2021年7月31日土曜日

すみだ北斎美術館 特別展「THE 北斎ー冨嶽三十六景と幻の絵巻ー」 

東京墨田区のすみだ北斎美術館では特別展「THE 北斎ー冨嶽三十六景と幻の絵巻ー」が開催されています。

4階展望ラウンジ撮影スポット


こちらは、4階展望ラウンジの撮影スポット。
遠くに「冨嶽三十六景」の赤富士(「凱風快晴」)と、手前には大波(「神奈川沖浪裏」)、波に揺られているのは、幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」の新吉原での遊興の場面。

そしてキャッチコピーは、極上の北斎、揃えました。

今回の見どころの一つは、北斎の三大錦絵シリーズ「冨嶽三十六景」「諸国名橋奇覧」「諸国瀧廻り」が前期後期ですべて見られること。そして、約100年のあいだ行方不明だった幻の絵巻「隅田川両岸景色図巻」が約5年ぶりに展示されること。

まさに極上の北斎が楽しめる展覧会なのです。

のちほど紹介しますが、「サプライズ」もありますので、ぜひ前期後期ともお越しいただいて、お楽しみください。

展覧会概要


会 期 2021年7月20日(火)~9月26日(日)
 前期 7月20日(火)~8月22日(日)
 後期 8月24日(火)~9月26日(日)
 ※前後期で一部展示替えを実施
休館日 毎週月曜日
 ※開館:8月9日(月・振休)、9月20日(月・祝)、休館:8月10日(火)、9月21日(火)
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
観覧料  一般 1,200円ほか
※展覧会の詳細、新型コロナウイルス感染症拡大防止策等については同館公式サイトをご覧ください⇒すみだ北斎美術館
※展示作品は、〈葛飾北斎「桜に鷹」ほか四面版木火鉢〉(個人蔵 すみだ北斎美術館寄託)以外は、すべてすみだ北斎美術館所蔵品です。

展示は4章構成になっています。

 第1章 冨嶽三十六景のすべて
 第2章 橋と滝の絶景
 第3章 花と鳥、虫たちの楽園
 第4章 幻の絵巻 隅田川両岸景色図巻

※特別展の展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、プレス内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。


第1章 冨嶽三十六景のすべて


今回は前後期で《冨嶽三十六景》の46図すべてをご覧いただくことができますが、特に注目したいのは、テーマごとに6つの節に分類された展示方法です。

1 空間を構成する


第1章展示風景

多くの人が往来する日本橋から、遠くに行くにしたがって狭まっていく川の向こうに江戸城の櫓と富士山を臨んだ場面が描かれてます。
北斎は西洋絵画に用いられる遠近法も研究していたのです。作品の左のパネル解説もぜひご覧ください。


葛飾北斎「冨嶽三十六景 江戸日本橋」
前期展示


2 〇×△で作られた世界

あらためて〇や△を意識して北斎作品を見てみると、意外と見つかるものです。

こちらは、浅草本願寺の大屋根と富士山の二つの三角形が並んでいます。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 東都浅草本願寺」
前期展示

こちらは丸い桶の中から見える三角の富士山。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 尾州不二見原」
前期展示

西洋の遠近法を意識したり、〇や△を探したりする面白さもありますが、細部まで見ていろいろな人やものを発見するのも北斎作品の楽しみの一つ。
今回は、作品を見ながら答を探すクイズ「THE北斎 探してみよう🔍」が用意されているので、ぜひトライしてみてください。
意外と簡単に答は見つからないかもしれません。

答は展示室出口付近にあります。





3 驚異の自然

「冨嶽三十六景」の中でも、「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」とともに人気のある「山下白雨」がずらりと並んでいます(前期展示)。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 山下白雨」
左から、初摺に近い版、後摺、変わり図
前期展示


版ごとの違いが見比べられますが、中でも注目は今回が初公開の「冨嶽三十六景 山下白雨(変わり図)」。山裾に浮かんでいるように松林が描かれています。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 山下白雨(変わり図)」
前期展示

4 形のないものを捉える

形のないものというと、思い浮かぶのが声や音。
「冨嶽三十六景 駿州大野新田」に描かれているのは、牛や農夫・農婦たちと背景の富士山。どれも形のあるものばかりですが、よく見ると画面中央から左に5羽の白鷺が飛び立っているのに気が付きます。
鳥たちが羽ばたくバタバタバタッという響きが聞こえてきそうな作品です。


葛飾北斎「冨嶽三十六景 駿州大野新田」
前期展示

5 イリュージョンを仕掛ける

よく見てみると「あれっ」と思うのが「冨嶽三十六景 甲州三坂水面」。
実際の富士山は夏の姿なのに、湖面に映る逆さ富士は雪化粧。
北斎は何のためにこのような作品を描いたのでしょうか。当時の浮世絵ファンをあっと驚かせるためだったのでしょうか。
不思議な作品ですが、それだけに気になる作品です。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 甲州三坂水面」
前期展示


6 超絶表現

この節では、絵師、彫師、摺師の技術が一体となって生まれる木版画の超絶表現の醍醐味が味わえる作品が展示されています。

薄い紅のグラデーション(「ぼかし摺り」)に、空摺(からずり)の凹凸で丸点の花弁を表した桜の花のふわっとした感じがよく出ているのが、「冨嶽三十六景 東海道品川御殿山ノ不二」。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 東海道品川御殿山ノ不二」
前期展示


「冨嶽三十六景 東海道金谷ノ不二」では、「箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川」と詠まれた東海道の難所、大井川の川越しの様子が描かれていますが、B4サイズほどの小さな画面の中に描かれた人数は、なんと120人以上。
細かな人物の描写も、うねるような川の流れの表現も見事に表現されています。

葛飾北斎「冨嶽三十六景 東海道金谷ノ不二」
前期展示


第2章 橋と滝の絶景


第2章では、「冨嶽三十六景」に続いて出版された「諸国瀧廻り」と「諸国名橋奇覧」の作品が紹介されています。

1 ふしぎな橋の構図

はじめに、現在のところ11図が確認されている「諸国名橋奇覧」から。
前期後期で11図すべて見ることができます。

第2章展示風景



『伊勢物語』で知られた八橋は、構図も不思議ですが、平安時代中頃には失われたはずの八橋の上を江戸時代の旅人たちが渡っているという、時空を超えたシチュエーションも不思議な作品。北斎の想像力のたくましさを感じます。

葛飾北斎「諸国名橋奇覧 三河の八つ橋の古図」
前期展示

2 水のかたちを捉える

続いて全8図からなると考えられている「諸国瀧廻り」。
こちらも前期後期で8図すべてを見ることができます。

「こんな景色はありえない!」という絵を描いてしまうのが北斎。
瀧の上の波紋は真上から、勢いよく流れ落ちる滝は正面から捉えたと考えられていますが、これはキュビスムの先駆けではないでしょうか。やはり北斎はすごい!

葛飾北斎「諸国瀧廻り 木曽路ノ奥阿弥陀ヶ瀧」
前期展示


第3章 花と鳥、虫たちの楽園


黒い箱が展示されていました。
いったいこの箱は何なのでしょうか。
そう思いつつ近くに寄ってみると、何か鷹のようなものが彫られているのが見えてきます。

そうです。これはオリジナルの版木を使用した「葛飾北斎「桜に鷹」ほか四面版木火鉢」なのです。
版木は表面が削られて版木として再利用されたりするので現存しているものが少なく、その上、北斎のものはアメリカのボストン美術館に1点所蔵されているくらいで、国内では珍しいものなのです。
そして実物の公開は今回が初めて。
ぜひ近くでよくご覧ください。これが冒頭にふれた「サプライズ」です。

葛飾北斎「桜に鷹」ほか四面版木火鉢
個人蔵 すみだ北斎美術館寄託
通期展示 


錦絵「桜に鷹」そのものも展示されていますので(前期展示)、ぜひ見比べてみてください。

葛飾北斎「桜に鷹」
前期展示


第4章 幻の絵巻 隅田川両岸景色図巻


約100年ものあいだ行方不明でしたが、2015年に墨田区が取得して、現在はすみだ北斎美術館が所蔵している全長約7mの巻物「隅田川両岸景色図巻」は、今回の展覧会の大きな見どころの一つです。

葛飾北斎「隅田川両岸景色図巻」
前期後期で巻き替えあり


2016年のすみだ北斎美術館開館記念展「北斎の帰還-幻の絵巻と名品コレクション-」で展示されていたので、ご覧になられた方もいらっしゃるかと思いますが、今回は隅田川両岸の名所を描いた作品も展示されているので、比較しながら名所のにぎわいを感じとることができます。

第4章展示風景

特別展の展示のご紹介は以上ですが、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」をディテールまで映像化した作品が、本展期間中、3階ホワイエで上映されています。

私も見ましたが、「冨嶽三十六景」をより身近に感じるようになりました。こちらもあわせてぜひご覧ください。


タイトル  葛飾北斎~冨嶽三十六景~
上映時間  15分45秒
制作    NHKエンタープライズ


そして展覧会の思い出におススメなのが、こちら。
すみだ北斎美術館 編・著『THE北斎 冨嶽三十六景 ARTBOX』(2200円(税別))
今回の展覧会の構成にあわせて全46図が詳しい解説付きで紹介されています。
1階ミュージアムショップはじめ、全国書店で販売中。
おうちでもぜひ北斎をお楽しみください!

『THE北斎 冨嶽三十六景 ARTBOX』

特別展の観覧日当日に限り、AURORA(常設展示室)もご覧になれます。
北斎の代表作(実物大高精細レプリカ)が展示されていて、北斎の画業をたどることができます。
※4階AURORA(常設展示室)は、一部を除き写真撮影が可能です。

すみだ北斎美術館に来られたら、ぜひ北斎さんにご挨拶を!

4階AURORA(常設展示室)北斎のアトリエ再現模型



それでは極上の北斎をぜひお楽しみください!

2021年7月22日木曜日

東京国立博物館 聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」

東京国立博物館 平成館では、聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」が開催されています。


冠位十二階や「和を以て貴しとなす」で知られる憲法十七条の制定、遣隋使の派遣、仏教を奨励して奈良・法隆寺の建立など、飛鳥時代に日本の基礎を築いた聖徳太子は、最も有名で、私たちにとって最も身近に感じられる歴史上の人物の一人ではないでしょうか。

その聖徳太子の展覧会が奈良国立博物館(4月27日~6月20日 終了)に続き、いよいよ東京国立博物館で始まりました。

展覧会概要


展覧会名 聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」
会 場  東京国立博物館 平成館
会 期  2021年7月13日(火)~9月5日(日)
 ※会期中、一部の作品は展示替を行います。
 主な展示期間 前期 7/13-8/9 後期 8/11-9/5
開館時間 午前9時30分~午後5時
休館日  月曜日(ただし、8/9は開館し、8/10(火)は休館)
観覧料  一般 2,100円ほか
※本展は事前予約制です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください⇒特別展「聖徳太子と法隆寺」

※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、報道内覧会で主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。

展示は5つのエリアで構成されています。

第1会場 A 聖徳太子と仏法興隆
     B 法隆寺の創建
     C 聖徳太子と仏の姿
第2会場 D 法隆寺東院とその宝物
     E 法隆寺金堂と五重塔

今回の展覧会は、普段は見ることのできない国宝の秘仏にお会いできたり、法隆寺の東院や金堂の内部に入ったような雰囲気が体験できるなど、聖徳太子遠忌1400年記念ならではの盛りだくさんの内容が楽しめる、またとない機会です。

それではさっそく会場内に入ってみることにしましょう。   

見どころ1 聖徳太子のさまざまなお姿が見られます。


第1会場では、さまざまなお姿の聖徳太子や、創建当時の法隆寺の様子がうかがえる逸品が展示されています。

第1会場入口でお出迎えしてくれるのは、優しいお顔で優雅なポーズをとる「如意輪観音菩薩半跏像」(奈良・法隆寺蔵 重要文化財)。

重要文化財「如意輪観音菩薩半跏像」平安時代(11~12世紀)
奈良・法隆寺 全期間展示

なぜ平安時代の観音様が、と思われるかもしれませんが、平安時代には聖徳太子を観音様の化身とする信仰が広まったので、この観音様も聖徳太子のお姿なのです。


続いて第1会場のAエリアへ。

第1会場A「聖徳太子と仏法興隆」 展示風景

聖徳太子の時代には、「異国の宗教」であった仏教を受容するかどうかの対立がありましたが、崇仏派の太子や蘇我馬子らは排仏派の物部守屋を破り、以降、仏教が日本国内に広まりました。

このエリアには、主に仏教興隆当時が偲ばれる仏像、仏具が展示されています。


聖徳太子といえば、やはりこのお顔。
日本史の教科書やお札でおなじみの聖徳太子の肖像を見つけました!

 「聖徳太子二王子像(模本)」狩野(晴川院)養信筆
江戸時代 天保13年(1842) 東京国立博物館 全期間展示



第1会場Bエリアのテーマは「法隆寺の創建」。

一番の見どころは、聖徳太子の没後、「天寿国」に往生した太子の姿を見たいという、妃の橘大郎女の願いを受けて作られた刺繍の帷(とばり)、国宝「天寿国繍帳」。
およそ1400年の時を超えて鮮やかに残る色合いをぜひご覧いただきたいです。



国宝「天寿国繍帳」飛鳥時代 推古天皇30年(622)頃
奈良・中宮寺 前期展示

前期(7月13日~8月9日)のみの展示なのでお見逃しなく!


今回は特に音声ガイドがおススメです。ナビゲーターは女優の杏さん、解説ナレーターは、声優の三宅健太さん。(貸出料金:お一人様1台600円(税込))

わかりやすい解説はもちろんのこと、音声だけでなく画面には灌頂幡の再現の様子も出てくるので、創建当時のきらびやかな様子を想像することができます。

幡とは仏教儀礼で用いる旗で、特に天蓋を伴ったものは灌頂幡を指すとのことです。
下の写真は天蓋。その下の写真の幡身の上に天蓋がついて、高くそびえたつ様子はさぞかし壮観だったことでしょう。

国宝「灌頂幡」飛鳥時代(7世紀)
東京国立博物館(法隆寺献納宝物)
全期間展示


こちらは「大幡の幡身」。見事な透彫にも注目です。

国宝「灌頂幡」飛鳥時代(7世紀)
東京国立博物館(法隆寺献納宝物)
全期間展示


飛鳥時代の異国情緒あふれる逸品も展示されています。
下の写真右、国宝「竜首水瓶」の注ぎ口は竜頭で、胴部には有翼馬(ペガサス)が彫られているので、ぜひお近くでご覧ください。
近年では日本製とみなす説があるとのことですが、エキゾチックな趣が感じられます。

右 国宝「竜頭水瓶」飛鳥時代(7世紀)
東京国立博物館(法隆寺献納宝物) 前期展示
左 重要文化財「胡面水瓶」中国・唐または奈良時代(8世紀)
奈良・法隆寺 全期間展示



第1展示室Cエリアのテーマは「聖徳太子と仏の姿」。

国宝「聖徳太子および侍者像」は、今から900年前、聖徳太子の五百年遠忌にあたり制作された法隆寺聖霊院の秘仏本尊。

国宝「聖徳太子と侍者像」平安時代 保安2年(1121)
奈良・法隆寺 全期間展示

中央の像が聖徳太子なのですが、瞳の部分には青緑色の薄いガラス板が嵌め込まれていて、威厳のあるとてもリアルな表情をしています。かつてはまつ毛も植えられていたとのことです。
27年ぶりの寺外公開なので、ぜひお近くで太子様の真剣なまなざしに注目していただきたいです。


聖徳太子は、推古天皇の求めによって勝鬘経の講義を行ったという伝記が残されていますが、その場面を描いたのが「聖徳太子勝鬘経講讃図」。
蘇我馬子や、遣隋使で隋に派遣された小野妹子の姿も見られます。

「聖徳太子勝鬘経講讃図」鎌倉時代 文歴2年(1235)頃
奈良・法隆寺 前期展示


見どころ2 法隆寺伽藍の内部に入った雰囲気が感じられます。


第2会場には、法隆寺伽藍の東院、金堂、五重塔にゆかりの仏像や宝物が展示されています。

Dエリアは「法隆寺東院とその宝物」。



第2会場D「法隆寺東院とその宝物」 展示風景

中央には、太子が数え2歳の2月15日、東に向かって手を合わせ「南無仏」と称えたという伝承に基づいて制作された「聖徳太子立像(二歳像)」。この時、掌から釈迦の遺骨がこぼれ落ちたと伝えられ、それが納められているのが左の「南無仏舎利」。

後方にはかつて舎利殿内壁を飾っていた障子絵(現在は屛風に改装(※)、一部パネル展示あり)が展示されているので、東院舎利殿内陣のかつての姿をこの場で体験することができるのです。
(※)重要文化財「文王呂尚・商山四皓図屛風」南北朝時代(14世紀) 東京国立博物館(法隆寺献納宝物) 前期「文王呂尚図」後期「商山四皓図」


右 「聖徳太子立像(二歳像)」鎌倉時代(13~14世紀)
左 「南無仏舎利」[舎利塔]南北朝時代 貞和3~4年(1347-48)
[舎利据箱]鎌倉時代(13世紀)
いずれも奈良・法隆寺 全期間展示


Eエリア「法隆寺金堂と五重塔」に入ると、見上げるほど大きな四天王様が見えてきました。

ここからは金堂ゆかりの仏像をご紹介していきます。


第2展示室E「法隆寺金堂と五重塔」 展示風景

飛鳥時代の四天王立像のうち、今回東京までお出ましいただいたのは、多聞天と広目天(下の写真右から)。
現存する日本最古の四天王像ですが、後に見られるように怖い表情というより、どちらかというと穏やかな表情を浮かべていて、1400年の長きにわたり踏みつけられている邪鬼も憎めない表情をしています。

右 国宝「四天王立像 多聞天」
左 国宝「四天王立像 広目天」
いずれも飛鳥時代(7世紀) 奈良・法隆寺
全期間展示

続いて、四天王立像と同じく法隆寺金堂の須弥壇上に安置されている国宝「薬師如来坐像」(飛鳥時代(7世紀) 奈良・法隆寺 全期間展示)(下の写真中央)。


展示室E「法隆寺金堂と五重塔」 展示風景

そしてラストは、かつては金堂に安置されていた国宝「伝橘夫人念持仏厨子」。

国宝「伝橘夫人念持仏厨子」 飛鳥時代(7~8世紀)
奈良・法隆寺 全期間展示


金堂ゆかりの仏像がこれだけゆったりした空間で間近に見られる機会はそう多くはないでしょう。
この厳かな空間をぜひご覧いただきたいです。

東京国立博物館 東洋館地下1階では、ヴァーチャルリアリティで金堂内の仏像や壁画をすべてご覧いただくことができるVR作品が上映されています。特別展とあわせてぜひご覧ください。



また、昨年(2020年)、コロナ禍の中、残念ながら中止になった特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」で、東京までお越しいただいたのに公開されることなく奈良に帰られた国宝「百済観音」と、同じく国宝の救世観音を3DGCでご覧いただくことができます。
場所は平成館1階です。こちらもぜひお立ち寄りください。





展覧会オリジナルグッズも盛りだくさん。




私のおススメは、カラー図版も解説も充実している展覧会公式図録。


展覧会公式図録(1冊 税込2,800円)


おうちでもぜひ特別展「聖徳太子と法隆寺」をお楽しみください! 

『巨大映像で迫る五大絵師』ー北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界ー

 東京大手町の大手町三井ホールでは『巨大映像で迫る五大絵師ー北斎・広重・宗達・光琳・若冲の世界ー』が開催されています。



雷雨の轟音とともに天から降ってくる身の丈より大きな風神雷神。
目の前に迫りくる見上げるほど大きな赤富士。
大きく拡大してわかる鶏や菊の花の細かな描写。

超細密データ画像の巨大映像だからこそわかる名作の世界が楽しめます。
セレクトされた作品も名作ばかり。
江戸時代の五大絵師の名作を巨大スクリーンで楽しめる展覧会です。

それでは、開幕前に開催された特別内覧会に参加しましたので、その時の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


会 場  大手町三井ホール(東京都千代田区大手町1-2-1 Otemachi One 3F)
     東京メトロ・都営地下鉄各線「大手町」駅 C4出口直結
会 期  2021年7月16日(金)~9月9日(木) 会期中無休
開館時間 10:30-19:30 ※最終入館は閉館の60分前まで
観覧料  一般 2,000円、大学生・専門学校生 1,500円、中学生・高校生 1,000円
     ※満70歳以上、小学生以下は入場無料。
     ※障がい者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)は無料。
     ※ご来場時、年齢証明ができるもの、または学生証をご提示ください。


展覧会の詳細等は展覧会公式ウェブサイトをご覧ください⇒巨大映像で迫る五大絵師
展覧会公式ツィッター⇒https://twitter.com/faaj_staff
You Tubeチャンネル⇒巨大映像で迫る五大絵師


会場は次の3つのエリアで構成されています。

【解説シアター】
 超高精細デジタル画像で作品の緻密な部分を拡大表示し、ナレーション(英文字幕)とともに作品をわかりやすく解説します。(上映時間20分)

【メイン会場】
 縦7m、横45mの3面ワイドスクリーンによる圧巻の巨大映像空間。先進デジタル技術と高輝度4Kプロジェクター複数台を駆使した映像と、音楽のコラボレーションによる大スペクタクルを体験いただけます。(上映時間約20分)
 フォトタイム(約7分)には巨大名画の写真撮影ができます。

※プログラムは、A、B二つの作品リストがあって毎日入れ替わります。上記公式サイトで「開催カレンダー」「上映作品一覧」をご確認ください。

五大絵師の主な作品(カッコ内は、ABそれぞれの作品リストを表します。)
 葛飾北斎 冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」他(ABとも)
 歌川広重 東海道五拾三次「日本橋 朝之景」「蒲原 夜之雪」「庄野 白雨」他(ABとも)
 俵屋宗達 国宝「風神雷神図屏風」(ABとも)国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」(Bのみ)
 尾形光琳 重要文化財「風神雷神図屏風」(ABとも)「菊図屏風」(Bのみ)「雪松群禽図屏   
      風」(Aのみ)
 伊藤若冲 重要文化財「仙人掌群鶏図」(ABとも)「百花の図」(Aのみ)

【Digital北斎×広重コーナー】
 超高精細デジタル画像による「冨嶽三十六景」と「東海道五拾三次」からベストセレクション58作品を大型モニター12台で紹介します。

※解説シアター及びメイン会場の3面シアターの上映プログラムはともに撮影禁止です。
3面シアターにて約7分のフォトタイムがあります。
また、Digital北斎×広重コーナーは撮影可です。
掲載した写真はメイン会場のフォトタイムとDigital北斎×広重コーナーで撮影したものです。


まずは国内だけでなく海外でも大人気の葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」。
ご覧ください!人の影と比べたこの赤富士の大きさ!

葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
所蔵:山梨県立博物館


客引きの女性が強引に旅人を引っ張っている場面で知られる、歌川広重「東海道五拾三次 御油 旅人留女」。
私たちも宿場町にスーッと入って行けそうな感じです。

歌川広重「東海道五拾三次 御油 旅人留女」
所蔵:大阪浮世絵美術館


雨と雷の激しい音で降臨してきた俵屋宗達の風神雷神は特に大迫力!

俵屋宗達 国宝「風神雷神図屏風」
所蔵:大本山 建仁寺

風神雷神がさらに近くまで迫ってきました。

俵屋宗達 国宝「風神雷神図屏風」
所蔵:大本山 建仁寺


尾形光琳の「菊図屏風」もここまでアップになると、胡粉で盛り上がった菊の花や、金泥で描かれた葉の葉脈の様子もよくわかります。

尾形光琳「菊図屏風」
所蔵:岡田美術館



伊藤若冲の作品は、やはり鶏。重要文化財「仙人掌群鶏図」です。
人間より大きい鶏が迫ってきます!

伊藤若冲 重要文化財「仙人掌群鶏図」
所蔵:小曽根山 西福寺

さらにアップになると、鶏の目のまわりの細かな表現や、とさかに描かれた黒い点々まで細部にわたる描写がよくわかります。

伊藤若冲 重要文化財「仙人掌群鶏図」
所蔵:小曽根山 西福寺



巨大スクリーンだからこそ迫力いっぱい、巨大スクリーンだからこそ細かいところまでよくわかる。
そしてそれぞれの作品にぴったりのBGMと効果音。

ぜひこの迫力を体感してみてください!

続いて【Digital北斎×広重コーナー】に移ります。
※【Digital北斎×広重コーナー】は撮影OKです。

このコーナーでは、20億画素の超高精細デジタル技術で復元された「冨嶽三十六景」と「東海道五拾三次」からのベストセレクション58作品をご紹介しています。


【Digital北斎×広重コーナー】展示風景


全部で12台のモニターが並んでいて、1台の大型モニターで1作品約1分、3~5作品をご覧いただくことができます。


【Digital北斎×広重コーナー】展示風景

そして最後は、ミュージアムショップでお買い物タイム。
五大絵師の作品を中心にとっておきの商品が多数ご用意されています。

※ミュージアムショップでの撮影はご遠慮ください。


いろいろ迷ってしまいますが、中でも私のおススメは展覧会公式ガイドブック。



今回の展覧会のメイキングのお話や、五大絵師のプロフィール、作品のカラー写真など盛りだくさんの内容で税込2,200円。
ミュージアムショップにて会場限定販売。書店ではお取り寄せできませんので、ぜひその場でお買い求めください。おうちでも五大絵師がお楽しみいただけます!

この夏、巨大スクリーンの迫力をぜひご体験ください!