東京・広尾の山種美術館では、【特別展】日本の風景を描く ー歌川広重から田渕俊夫までーが開催されています。
今回の特別展は、浮世絵風景画家として名声を博した歌川広重の《東海道五拾三次》、《近江八景》シリーズや、横山大観や川合玉堂をはじめ近代日本画の大家たちによる自然の景観が描かれた作品も展示されていますが、一方では現代の都会の風景など意外な作品も展示されているので、新しい発見があるかもしれません。
それではさっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2022年12月10日(土)~2023年2月26日(日)
*会期中、一部展示替えあり。
前期 12月10日(土)~1月15日(日)
後期 1月17日(火)~2月26日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日[1/9(月)は開館、1/10(火)は休館、12/29(木)-1/2(月)は年末年始休館]
入館料 一般 1300円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、及びその介助者(1名) 一般
1100円
冬の学割 大学生・高校生 500円 *本展に限り通常1000円のところ特別に半
額になります。
※きもの特典:きものでご来館のお客様は、一般200円引きの料金となります。
※複数の割引・特典の併用はできません。
入館日時のオンライン予約も可能です。詳細は山種美術館公式サイトをご覧くださ
い。
山種美術館公式サイト⇒https://www.yamatane-museum.jp/
お得な相互割引のご案内!
下記チケットの提示で入館料を100円割引。
■【2023年1月15日スタート】戸栗美術館との相互割引
*いずれも対象券1枚につき1名様、1回限り有効。
*入館チケットご購入時に受付にご提示ください。購入後の割引はできません。
*他の割引との併用はできません。
*オンラインチケットは割引対象外。
展示構成
第1章 日本における風景表現の流れ
第2章 風景表現の新たな展開
オンライン講座 関連作品
※展示室内は米谷清和《暮れてゆく街》を除き撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※掲載した作品のうち、前期後期で展示替えがあるものはその旨を表記しました。
見どころ1 自然の風景だけでなく意外な景色も見られます
「風景」というと自然の風景を想像しがちですが、撮影可の作品、米谷清和さんの《暮れてゆく街》に描かれているのは昭和の渋谷。
筆者を含め、ある程度の年代の人なら懐かしい、渋谷の雑踏の景色が画面に広がっています。
米谷清和《暮れてゆく街》1985(昭和60)年 山種美術館 第8回山種美術館賞展 優秀賞 |
場所は、JR渋谷駅南改札を出て画面左端に描かれているモヤイ像に向かうあたり。
薄暗い画面の下半分は雨の中(バス停の屋根の一部が白いので雪かみぞれ?)、外で傘を差しながらバスを待つ人たち。
それとは対照的に明るい画面の上半分は東急百貨店東横店南館(2020年に営業終了)の中で、家路を急ぐ人や、待ち合わせをしている人たちが見えます。
当時は携帯もスマホもなかったので、待ち人が来なくても連絡の方法がなく、ひたすら待つしかありませんでした(業務ではポケベルを使う人もいましたが)。
本展では《暮れてゆく街》1点のみ写真撮影OKです。
ぜひ撮影してシェアしましょう!
(撮影はスマートフォン・タブレット・携帯電話に限ります。撮影時の注意事項は作品横のパネルでご確認ください。)
第2展示室には大きな作品4点が展示されています。
そのうちの1点が、千住博《街・校舎・空》(下の写真右)。
右から 千住博《街・校舎・空》1984(昭和59)年、 関出《廃園濃紫》1983(昭和58)年 いずれも山種美術館 |
山種美術館で今年(2022年)7月から9月にかけて開催された【特別展】水のかたち ー《源平合戦》から千住博の「滝」までー で展示された《ウォーターフォール》《フォーリングカラーズ》(どちらも山種美術館蔵)のように、千住博さんの作品は明るい色の「滝」のイメージがあるのですが、若い頃にはこのような作風の作品も描いていたのです。
以前、慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)で、千住博さんの《西の街》(慶應義塾)という作品を見た時にも感じたのですが、人が住む街なのに人の気配はなく、巨大なコンクリートの塊の存在感に圧倒されるこの作品には心を惹かれる何かがあるのです。
第1展示室に入ってすぐ右には、日本の洋画家たちの作品が展示されています。
日本画の掛け軸がずらりと並ぶいつもの山種美術館の光景とは違うので、意外に思われるかもしれません。
見どころ2 自然豊かな日本の風景にホッとします
第1展示室でお出迎えしてくれるのは、川合玉堂《春風春水》(下の写真左)。
自然の景観と、そこで働く人たちが調和した玉堂らしい作品を見ると、いつも心が和んできます。
展示風景 |
江戸中期から後期に活躍した絵師たちが描いた風景も名品揃い。
作者は、江戸琳派の祖・酒井抱一、狩野派、南蘋派、大和絵、西洋画など当時のあらゆる画法を学んで独自の画風を確立した谷文晁、指や爪などで描く指頭画を得意として、自由奔放で個性的な画風の池大雅はじめ多士済々。
展示風景 |
歌川広重の作品は、《東海道五拾三次》シリーズから前期後期で8点、《近江八景》シリーズから前期後期で4点が展示されます。
《東海道五拾三次之内 日本橋・朝之景》は、後の摺りでは省略されている空の左右の雲が描かれている最初期の摺りです。
歌川広重《東海道五拾三次之内 日本橋・朝之景》 1833-36(天保4-7)年頃 山種美術館 前期展示 |
続いて、明治、大正期の作品から昭和、平成と続き、現在、第一線で活躍する画家の作品まで、名所や自然の景色を描いた名品が続きます。
田渕俊夫さんの《輪中の村》は、木曽川と長良川に囲まれた福原輪中の景色が描かれた作品。空の部分は、アルミ箔が使われています。
そして、私たちの生活に欠かせない電気を運ぶ送電用鉄塔と送電線が繊細な筆遣いで遠景に描かれているところなどはいかにも現代的です。
展示風景 |
参勤交代が描かれた広重の作品から、描かれたものも画材も現代の作品まで、会場を巡りながら、時代とともに移り行く「日本の風景」を楽しむことができます。
見どころ3 久しぶりに展示される作品も見られます
山種美術館が渋谷区に移転してから今年で13年になりますが、移転後初出展となる作品も数多く見ることができるのも今回の特別展の楽しみの一つです。
こちらは全4点の一挙公開は37年ぶりの石田武《四季奥入瀬》(個人蔵)シリーズ。
安井曽太郎《初秋遠山》1945-55(昭和20-30)年頃 山種美術館 |
17年ぶりの展示は、冒頭にご紹介した米谷清和《暮れてゆく街》と関出《廃園濃紫》のほかに山本梅逸《蓬莱山図》、小野具定《白い海》の4点。
15年ぶりの展示は、同じく冒頭にご紹介した千住博《街・校舎・空》のほかに堀川公子《街角》、木村光宏《兆》の3点。
懐かしいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんし、初めて見て新鮮に感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
令和5年の干支 おすすめ兎グッズも充実してます!
山種美術館所蔵品を中心にデザインしたオリジナルグッズのほかにも、陶芸家の畑井智一氏による箸置き(2個セット)2,750円、〈六兵衛窯〉兎の小皿3,300円、山種美術館が所蔵する速水御舟《翠苔緑芝》がデザインされたマスキングテープ495円、グリーティングカード(封筒付き)385円はじめ、ミュージアムショップには可愛らしい兎のグッズも充実しているので、どれにしようか迷ってしまいます。
*いずれも税込価格。
鑑賞後のお楽しみにはオリジナル和菓子がおすすめです!
いつものことですが、展示作品をモチーフにしたオリジナル和菓子は、どれも見た目がきれいで美味しそう。
抹茶とオリジナル和菓子のセット1,250円(税込)などもあるので、美術館1階ロビーの「Cafe 椿」にもぜひお立ち寄りください。
上の写真手前右から時計回りに「香りたつ(山本梅逸《桃花源図》)」、「うららか(横山大観《春の水・秋の色》のうち「春の水」)」、「さなえ(川合玉堂《早乙女》)」、「冬けしき(森寛斎《雪中嵐山図》)」、「みなもの色(山元春挙《火口の水》)」。
(カッコ内はモチーフにした作品。すべて山種美術館蔵)
オンライン講座 「日本画の描き方を知ろう」配信中!
講師は、「Seed 山種美術館 日本画アワード 2019」で大賞を受賞され、2023年大河ドラマ「どうする家康」の書籍の装画を担当された日本画家・安原成美氏。
視聴期間は、2023年3月5日(日)まで(申込みは2月26日(日)まで)。
視聴費は500円。お申し込み・詳細はこちらをご覧ください⇒https://fuukei2022.peatix.com
お正月限定企画もあります!
①2023年1月3日(火)限定 プチギフトプレゼント ※展覧会入場の先着100名様
②ミュージアムショップにて「新春福袋」限定50個販売 ※お一人様1袋まで
③Cafe 椿にてお正月限定和菓子をご提供 ※1月9日(月・祝)まで実施
2023年は1月3日(火)から開館します。お正月にはぜひ山種美術館でお楽しみください!
※文中のうち、所蔵先表記のない作品はすべて山種美術館所蔵です。