2012年4月15日日曜日

旧東ドイツ紀行(17)

11月16日(水) ドレスデン市内

昨日は温かくして早く寝たにもかかわらず、朝になってもノドの腫れはひかず、熱っぽさも残っていた。
今夜も地ビールを味わうのは無理かなと思いつつ、朝食が始まる6時半には1階に下りていった。少しぐらい体調が悪くても、せっかくドレスデンに来たのだから市内を歩かないともったいない。
朝食はベルリンのホテルとほとんど同じで、黒パン、チーズ、くだもの、ヨーグルト、少しばかりの野菜、そしてコーヒー。席は窓際で、ドレスデン中央駅が良く見えるところ。ここも毎朝の私の指定席となった。
ジャムも種類が豊富にある。器がコーンになっているので、底にジャムが残っても、そのままムシャムシャ食べることができる。
パンは黒いハード系。家でも毎週末にホームベーカリーでライ麦パンをつくっているほど黒パンが好きなので、黒系パンが多いのはうれしい。

朝食を終えて部屋に戻ると、外は明るくなっていたが、雲が低く立ち込めている。今日は一日曇りのようだ。
旅行前に買ったデジカメにはミニチュアライズ機能がついているので、試しに部屋の窓からドレスデン中央駅を撮ってみた。高さが十分でなかったせいか、ミニチュアっぽく見えないかな。
ところで中央駅の前の建物は、ベルリン中央駅と同様、四方が総ガラス張り。その後ろの一段低くなったところはまだ開発されずに残っている。そのうちここにも総ガラス張りの建物が建つのだろうか。

外に出るとやたら寒い。プラーガー通りから旧市街地へ行く途中はリニューアルされたホテルや、ショッピングモールがずらりと並んでいる。
下の写真の一番手前のホテルは、位置関係から見て私が22年前に泊まったインターホテルがあったところ。今では同じ系列のホテルが威勢よく3棟並んでいる。

まずはじめに見たかったのが聖母教会(Frauenkirche)だったが、一方で、戦争の悲惨さを後世に伝えるため廃墟のまま残しておけば良かったのでは、という思いも強く、きれいに再建された聖母教会は見たくない、という気持ちもあった。
そんなことを考えているうちにクリスマスの市の小屋が準備されていた旧市場広場まで来ると、聖母教会の先端が見えてきた(中央少し左寄りの高い木の後ろ)。ここまで来たらもう引き返すわけにはいかない。


見たくもあり、見たくなくもあった聖母教会。
複雑な思いを抱きながら、明るいクリーム色をした建物の前に立った。
あまりの新しさにまばゆいばかりだ。




正面のマルティン・ルターも揺るがぬ信念をもって堂々と空を見上げている。



しかし聖母教会は廃墟の痕跡を残していた。裏手に回ってみると、廃墟の部分はそのまま残し、崩れて積み上がっていた煉瓦もできるだけ再利用しているのがわかる。壁のところどころに見える黒い煉瓦がそれだ。
映画「ドレスデン」では爆撃によって街が破壊しつくされる場面が延々と続く。降り注ぐ爆弾の雨、燃え上がる炎、逃げ惑う人々。教会は新たに再建されたが、煉瓦の色の違いが当時の悲惨な状況を伝えてくれる。
私は少しほっとしたが、煉瓦の色の違いを説明する案内板や、廃墟になっていた時の写真は周囲にないのが残念に思えた。聖母教会を廃墟として残したDDRのことも過去のものにしたいからなのだろうか。




もう9時を回っているが、気温はまったく上がる気配はない。寒さでカメラのバッテリーが上がってしまい、厚手のジャケットの中に入れて温めなくてはならないほどだったし、体調も良くなかったが、それでも早く来て良かった。
後で気がついたが、この周辺はレストランやお土産物屋が並び、昼間や夜には多くの観光客が訪れる場所だ。夕方には教会の前の広場でストリートミュージシャンがギターをかき鳴らしていた。
下の写真は、午後になってエルベ川岸の方から見たところ。多くの観光客でにぎわっている。このにぎわいもいいのだが、聖母教会を前にして過去の歴史を振り返り、もの思いにふけるのは早朝に限る。


(次回に続く)