2012年7月14日土曜日

旧東ドイツ紀行(28)

11月18日(金) バウツェン
いよいよ観光最終日。
この日は、ドイツの中のスラブ系の少数民族ソルブ人の街、バウツェンに行くことにした。
ドレスデンから鉄道で西に向かい約1時間。
バウツェンは、あたり一面に畑や牧草地が広がる田園地帯の中にぽつんと浮かぶ小さな町。列車からは降りる人も少なく、駅前も静か。

ソルブ人は、6~7世紀にドイツ東部に移住して農地を開拓したが、12世紀以降のゲルマン民族の東方植民以降、徐々にその活動範囲が狭められ、今ではブランデンブルク州南部とザクセン州北東部にまたがるラウジッツ地方におよそ6万人が住んでいるだけ。
しかし、他のスラブ民族がドイツ人に同化したのに対して、ソルブ人は自分たちの言語・文化をかたくなに守って今に至っている。
「バウツェン駅」の駅名もドイツ語の下にソルブ語で表記されている。


駅前にあった地図をもとに旧市街地に向かおうとしたが、看板のうしろに二手に分かれた道の左側に行かなくてはならないところ、間違えて右側の道に行ってしまった。


おかげで見ることができたのが、見上げるような尖塔をもったマリア・マルタ教会(Maria-und-Martha Kirche)。

道を間違えたことに気がつき教会の前を左に曲がると郵便局が見えてきた。あとはまっすぐ北に向かうと旧市街地だ。
郵便局から旧市街地に通じる通りの名前は「カール・マルクス通り」。
もう旧東ドイツからはマルクスもエンゲルスも消え去ったと思っていたが、小さな田舎町にはまだ東ドイツの面影が残っていた。
これが「カール・マルクス通り」の標識。

クリスマスの飾りつけが通りに彩りを添えている。
左側の赤い看板に「Dreißig」と書かれたベーカリーショップは、帰りに昼食をとったところ。


旧市街地に入った。まずはツーリスト・インフォメーションに寄って、地図を入手することにした。
正面の黄色い建物が市庁舎で、ツーリスト・インフォメーションはここの1階にある。


ツーリスト・インフォメーションはスーベニアショップを兼ねているので中は広々している。
カウンターの向こう側では若い男性がパソコンの前に座り、熱心に何か検索しているようだった。
「Guten Morgen」
と挨拶すると、青年はパソコンから目をそらさず挨拶を返した。
「地図はありますか」と聞いたところ、その青年は立ち上がって、
「これです」とカウンターの上を指さした。
ドイツではパンフレットも有料だ。
1枚50セントの地図を購入すると、青年はもとどおりパソコンの前に座り、
私が少し店内を見て外に出るとき、「Danke」と言うと、やはり青年はパソコンから目を離さずに「Bitte」と返した。
愛想がないと言ってしまえばそれまでだが、まあ彼の性格か、それとも旧東ドイツ時代の外国人への対応のなごりなのだろうか。
(「東ドイツ式外国人歓迎法」については、昨年6月~7月にこのブログに連載した「二度と行けない国『東ドイツ』」をご参照ください)
市庁舎の裏手はバウツェンで一番大きな聖ペトリ教会。


中もこんなに広々している。


これがツーリスト・インフォメーションで購入したバウツェンの地図。

街も小さく、迷いようもないので、地図を見ながらも適当に小路に入ってみるとおもしろい発見がある。







街の中を歩いていると、ドイツにいながら、ドイツの街でないような気がする。
なぜだろうか?
なんだかイタリアの街ような感じもするし、など考えているうちに何が他のドイツの街と違うか分かってきた。
ドイツだと石造りの家が並び、建物も灰色、あるいは薄いベージュ色のモノトーン、または木組みの家というイメージがあるが、この街は建物も装飾も色とりどりなのだ。
イタリアというより、やはり同じスラブ系のチェコの街並みに雰囲気が近いのだろうか。

バウツェンには見張り塔も多い。
街角で立ち止まり、ふと横を見ると塔がある。


街の一番奥のオルテンブルク城の一角は現在ではソルブ博物館になっている。

ここでの表示は、ソルブ語の方が上で、字も大きい。

博物館の中は、ソルブ人の歴史が順を追ってわかるようになっている。民族衣装を着飾ったソルブ人たちの人形のひたむきな表情がかわいらしかった。
館内は撮影禁止だったので、写真は撮れなかったが、ソルブ博物館のホームページのトップページに一枚だけ写真が出ていた。

http://www.museum.sorben.com/


ソルブ博物館の受付にいた中年の女性はとても感じのいい方だった。
東ドイツ時代には冷遇されていたソルブ人は、「東ドイツ式外国人歓迎法」を身に着けなかったのだろう、なんて勝手に想像してしまう。

オルテンブルク城の裏手は崖になっていて、この下はベルリンにまで流れていくシュプレー川。

これは城からシュプレー川を見下ろしたところ。


帰りの時間も近づいてきたので、先ほど紹介した「Dreißig」で軽めの昼食を食べてバウツェン駅に向かった。
トマト、きゅうり、モッツァレラチーズをはさんだ胚芽パン、チョコプリンケーキとコーヒー。
ドイツのベーカリーショップには珍しく、コーヒーには小さいクッキーと水がついていて、チョコプリンケーキとセットになって値段も安くなっている。合計で4ユーロ60セント(約500円)。

店内のショーウィンドウを入れたら胚芽パンがはみ出てしまったのでもう一枚。

ドレスデン市内に入り、エルベ川を渡るところで、昨日の夜見た旧市街地の教会の尖塔が見えてきたので、動画で撮った。
(動画はアップできないので、行きに撮った写真を掲載します)



午後はドレスデンの旧市街地をもう一度ゆっくり歩いてみようと思った。
(次回に続く)