2013年7月10日水曜日

プーシキン美術館展夜間特別観覧会

先週の土曜日(7月6日)、横浜美術館で開催された「プーシキン美術館展夜間特別観覧会」に行ってきました。
これで美術館のブロガーナイトも3回目となり、今回もテーマはドイツから離れますが、おつきあいのほどよろしくお願いします。
(撮影された写真は、夜間特別観覧会のため、特別に撮影許可をいただいたものです)

内容は、18時から18時30分までが横浜美術館主任研究員の松永真太郎さんによるミニレクチャー、18時30分から20時までが特別観覧会という2部構成。


ミニレクチャーでは、「 『プーシキン美術館展 フランス絵画300年』は2年前の4月に開催される予定だったが、作品がロシアから日本に出発する4日前に東日本大震災が発生し、開催するかどうか日本とロシアの美術館で検討した結果、やむなく延期となった。その後、関係者が協議を重ね、今年になって2年前の企画とほぼ同じ内容で開催できることになった」と松永さんが感慨深げにお話しされていたのが印象的でした。

私も縁あってモスクワのプーシキン美術館には2回訪れていて、思い入れのある美術館の一つなので、今回の展覧会は本当に心待ちにしていました。

展覧会は4章構成になっていて、副題のとおりフランス絵画の300年を順を追って鑑賞することができます。

  第1章   17-18世紀-古典主義、ロココ
  第2章   19世紀前半-新古典主義、ロマン主義、自然主義
  第3章   19世紀後半-印象主義、ポスト印象主義
  第4章   20世紀-フォーヴィスム、キュビズム、エコール・ド・パリ






1912年、「モスクワ大学附属アレクサンドル3世美術館」として開館し、ロシア革命を機に「モスクワ美術館」と名を変え、1937年には文豪プーシキンにちなんで現在の名称に改められたプーシキン美術館には、女帝エカテリーナ2世やアレクサンドル2世といったロマノフ王朝の歴代皇帝や貴族たちが蒐集したコレクション、産業革命後に台頭した大富豪イワン・モロゾフとセルゲイ・シチューキンが蒐集した膨大な近代フランス絵画の数々が収蔵され、

「ロシアの美術館というとエルミタージュ美術館を思い浮かべる方も多いかと思いますが、プーシキン美術館も絵画、版画、彫刻などコレクションは67万点を越えていて、『あなどるなかれ』といった存在です」

と松永さんはお話しされていました。

また、モロゾフとシチューキンは、ロシア革命後、すべての絵画を没収され、それぞれの邸宅は第1西洋絵画美術館、第2西洋絵画美術館となり、シチューキンはすぐに亡命しましたが、モロゾフはモスクワにとどまり、名誉学芸員といったあまり名誉でない役職についたとのことです。ところが、1919年のある日、出勤しないと思ったら、西側に亡命していて、1921年にドイツのカールスルーエでさびしく生涯を終えた、といった少し物悲しいエピソードも紹介されていました。
モロゾフが名誉学芸員だった当時、もしかしたらギャラリー・トークをやっていたかもしれない、と言われていましたが、自分が好きで購入した絵画なので、さぞかし熱のこもった解説をしていたのでは、と思いました。

壁を埋め尽くさんばかりにフランス絵画が飾られていたモロゾフとシチューキンの邸宅の様子もスライドで紹介していただきました。下の左の写真はシチューキン邸の様子です。
 

第2部の特別内覧会では、ナビゲーター・水谷豊さんの音声ガイドを聞きながら珠玉の作品の数々を鑑賞させていただきました。

第1章の入口では、モーセの後継者ヨシュアが「約束の地」カナンを征服するという『旧約聖書』の一場面を題材にしたニコラ・プッサンの「アモリびとを打ち破るヨシュア」が出迎えてくれます。
この作品はエカテリーナ2世がオークションで買い付けたものです。


第1章の部屋は赤が基調です。
人物でフランス絵画の変遷をたどってもらうのがねらい、と松永さんが解説されていたように、人物の肖像画が多いのがこの美術展の特徴です。

第2章の入口ではアングルの「聖杯の前の聖母」がやさしく迎えてくれます。
ミニレクチャーで松永さんは、実際より長い首、そして指が人体の優美さを引き立てている、と解説されていました。
また、この作品は、アレクサンドル2世が皇太子時代に直接アングルに依頼した作品で、サンクトペテルブルクに運ばれる前にパリでも公開され、絶賛を得たもので、アングルもこの絵を気に入り、のちに同じ構図の絵を4枚作成したとのことです。



第2章の部屋はダークブルーが基調です。


第3室の一番の見どころは、やはりルノワールの「ジャンヌ・サマリーの肖像」。
この作品は、ルノワールお気に入りのコメディ=フランセーズの花形女優がモデルで、モロゾフがパリの画商から買い付けたものです。


第3章の部屋は白が基調です。


第4章だけは撮影不可だったので、松永さんのスライドからシチューキンのコレクションだったピカソの作品を3点紹介します。


横浜会場の会期は9月16日(月・祝)までです。
詳細は公式ホームページをご参照ください。

http://pushkin2013.com/about/yokohama.html

8月2日(金)、8月9日(金)、8月30日(金)には18時から18時30分までギャラリー・トークが開催され、8月と9月の毎週金曜日は20時まで開館しているので、今回のブロガーナイトと同じく、学芸員さん(松永さん?)の解説を聞いたあと、作品を鑑賞することができます。
ポイントを絞って24点の絵画を解説する音声ガイドも、作品の理解が深まるのでおススメです。

東横線や東京メトロ副都心線はじめ私鉄5社が相互乗り入れして、みなとみらい地区へのアクセスがより便利になりました。
ぜひこの機会に港・ヨコハマにお越しください。