中国・殷時代の青銅器から、宋や高麗の青磁、そして江戸時代の有田焼、備前焼、明治時代に入ってからの薩摩焼、と静嘉堂が所蔵する東アジアの酒器が大集合。タイトルどおり、見ているだけでその美しさに酔える展覧会です。
さっそくですが、開催に先立って開催されたブロガー内覧会に参加しましたので、その時の様子をお伝えしたいと思います。
※掲載した写真は美術館より特別に許可をいただいて撮影したものです。
会場をご案内いただいたのは、静嘉堂文庫美術館の学芸員 山田さん。
会場入口でお出迎えしてくれるのは、桃やすももの花の下で楽しそうに杯を傾ける詩仙・李白。
「桃とすももは兄弟の象徴です。」と山田さん。
李白と一緒にいるのは、兄弟や親戚なのでしょうか。
川端玉章《桃李園・独楽園図屏風》のうち右隻「桃李園図」 (前期(4/24~5/20)のみの展示です。後期(5/22~6/17)は《江戸名所図屏風》 のうち左隻「隅田川図」が展示されます。) |
展示は4章構成になっています。
Ⅰ 酒を盛る
耳杯は、楕円形で耳のような取っ手がついた器で、素材は金属だったり、磁器だったりで、料理やスープなど温かいものを入れていました。
続いて元代や明代の青磁の酒会壺です。
「右の壺のふたはおもしろい形をしていないでしょうか。」と山田さん。
中国ではふたの代わりに蓮の葉をかぶせていたので、右の壺のふたは蓮の葉をイメージして端が波打ったようになっているとのことです。
左の壺は、銅の周囲に「美酒」と書かれているので、酒入れに使われていたのがすぐにわかります。
右 青磁鎬文酒会壺(元時代)、左 青磁刻花「清香美酒」花卉文酒会壺(明時代) |
そして、細長いのが特徴の梅瓶(めいびん)が並びます。
Ⅱ 酒を注ぐ
ここからは酒を注ぐ器が続きます。
はじめに鍋島焼の水注(すいちゅう)。注口と把手の装飾は金蒔絵。これは超絶技巧です!
鍋島焼はお皿が多く、このような形をした「仙盞瓶(せんさんびん)」という水注は少なかったそうです。八代将軍・徳川吉宗が「センサン瓶二」を内証で注文したとの記録があって、この瓶が吉宗の注文品の可能性があるとのことでした。
吉宗も倹約令を出した手前、こんな豪華なものは表だって堂々と注文できなかったのでしょうね。
こちらは北宋時代の青白磁の水注と、杯と托(=杯を乗せる台)のセット。
この水注は胴体が少し低めですが、熱湯をはった鉢に入れて温めた酒を保温していたもので、当時の富裕層の日常生活を描いた墓室壁画にも描かれています。
この展示ケースの左のパネルをぜひご参照ください。
はじめに鍋島焼の水注(すいちゅう)。注口と把手の装飾は金蒔絵。これは超絶技巧です!
鍋島焼はお皿が多く、このような形をした「仙盞瓶(せんさんびん)」という水注は少なかったそうです。八代将軍・徳川吉宗が「センサン瓶二」を内証で注文したとの記録があって、この瓶が吉宗の注文品の可能性があるとのことでした。
吉宗も倹約令を出した手前、こんな豪華なものは表だって堂々と注文できなかったのでしょうね。
色絵牡丹文水注(江戸時代) |
こちらは北宋時代の青白磁の水注と、杯と托(=杯を乗せる台)のセット。
右 青白磁刻花草花文八角水注、左 青白磁輪花杯・托(いずれも北宋時代) |
この水注は胴体が少し低めですが、熱湯をはった鉢に入れて温めた酒を保温していたもので、当時の富裕層の日常生活を描いた墓室壁画にも描かれています。
この展示ケースの左のパネルをぜひご参照ください。
続いてお銚子です。
あれっ、形が違うぞ、と思われるかもしれませんが、今のような徳利の形のものを使うようになったのは幕末から。それまで熱燗を入れる器はこのように急須のような形をしていました。
ようやく徳利が出てきました。でもこちらは重要文化財!
鮮やかなデザインの柿右衛門様式の有田焼です。
鳳凰の表現が、ヨーロッパへの輸出が一段落した17世紀末から18世紀初めころに特徴的なもので、国内の特別な注文主によって制作されたものだそうです。
鮮やかなデザインの柿右衛門様式の有田焼です。
鳳凰の表現が、ヨーロッパへの輸出が一段落した17世紀末から18世紀初めころに特徴的なもので、国内の特別な注文主によって制作されたものだそうです。
Ⅲ 酒を酌み交わす
この章は酒を酌み交わす杯が多く並んでいます。
唐三彩のかわいい水注や杯も。
そういった中でユニークなのは、杯を洗う盃洗(下の写真右と中央)。
右の盃洗の把手の上には杯を乗せるための穴があいています。
一番奥は茶壺をかたどった段重で、三段に分かれています。
この章は酒を酌み交わす杯が多く並んでいます。
唐三彩のかわいい水注や杯も。
そういった中でユニークなのは、杯を洗う盃洗(下の写真右と中央)。
右の盃洗の把手の上には杯を乗せるための穴があいています。
一番奥は茶壺をかたどった段重で、三段に分かれています。
Ⅳ 酒呑む人々
このコーナーには酒を飲む人たちを描いた絵や携帯用の酒器セットなどが展示されています。
はじめに伝・土佐光元《酒飯論絵巻》(室町時代)。
この絵巻は、飯好きで下戸の僧侶・好飯、酒好きの貴族・長持、飯と酒のバランスを重んじる武士・仲成が、それぞれ酒の効用や弊害を説く物語。
前期(5月20日まで)は全4段のうち、長持の屋敷での宴会の場面が描かれている第2段が展示されています(後期(5/22-6/17)は第4段が展示されます)。
踊っていたり、腹を出したり、従者に抱えられて帰ったり、酔っ払いは今も昔も変わらないですね。
絵巻の上の解説パネルもぜひご覧になってください。
下の写真右は、江戸後期の絵師・高久靄厓(1796-1843)の《楊貴妃図》。
「海棠睡未だ足らず(かいどうのねむりいまだたらず)」
前の日にお酒を飲み過ぎた楊貴妃が玄宗皇帝から急に呼び出され、侍女に支えられてふらふらと現れたときの様子を玄宗が海棠にたとえた言葉。
絶世の美女・楊貴妃は酔っていてもよっぽどきれいだったのでしょうね。
楊貴妃が手にするのは海棠の花。海堂は美人の象徴です。
こちらは中国・清時代の携帯用の酒具です。《唐瓢酒器一式》。
明治時代の煎茶愛好家が使用していたようです。
これはこれで漆を塗った瓢箪、玉(ぎょく)や銀の杯、象牙柄の箸と小刀、となかなか凝っていますが、江戸時代の大名クラスになるとこんなに豪華な蒔絵の重箱を持って芝居や花見・舟遊びに出かけました。
そして、忘れてはならないのが曜変天目(南宋時代)。もちろん国宝!
上からのぞきこむと、まるで夜空のようなきらきらした小宇宙が広がっています。
今回の展覧会の図録(税込500円)です。
写真もきれいで解説もわかりやすくて、軽いので持ち運びにも便利です。
ミュージアムショップで売っています。展覧会の記念にぜひ。
《酒器の美に酔う》はいかがだったでしょうか。
とても素敵な展覧会です。ぜひともその場でさまざまな酒器の輝きをご覧になっていただきたいと思います。
さて、酒器を見ていたら本物のお酒が飲みたくなってしまうではないか!という御仁に朗報です。
ゴールデンウィーク期間中は静嘉堂の前庭で「二子玉川の地ビール」が飲めます!
日 時 4月28日(土)~5月6日(日)11時~16時30分(雨天中止)
(5月1日(火)は除く 休館日)
場 所 静嘉堂文庫美術館前庭
料 金 「酒器の美に酔う」入館券+飲食券2枚のセット券で1,500円
他にも興味深い関連イベントが多数あります。詳細は公式サイトでご確認ください。
http://www.seikado.or.jp/