2020年7月18日土曜日

「絵師もの」時代小説を読んでみた

「絵師もの時代小説」がすごい!

書店に行くと、必ずと言っていいほど時代小説のコーナーがあります。
そこには、戦国武将もの、幕末の志士もの、それに捕物帳のシリーズものなど、書棚にはぎっしり文庫本が並び、新刊が書棚の前にずらりと平積みになっている壮観な光景が広がっています。

その中でも最近ひそかに定位置を占めるようになってきたのが、桃山や江戸の絵師たちが主人公の「絵師もの」時代小説。



実を言うと、私は時代小説はあまり読まない方なのですが、あるとき時代小説のコーナーをながめていたら、『若冲』とか、『等伯』というタイトルを見つけたり、新聞の書評欄に『ごんたくれ』が紹介されているのを見て、「アートファンとしては、これは読まないわけにはいかない!」と思い、読み始めたのがきっかけでした。

今まで読んだのは上の写真の6冊。

上の段右から
『等伯(上)(下)』安部龍太郎   文春文庫 2015年 
『花鳥の夢』  山本兼一    文春文庫 2015年

下の段右から
『若冲』    澤田瞳子    文春文庫 2017年
『ごんたくれ』 西條奈加    光文社時代小説文庫 2018年
『墨龍賦』   葉室麟     PHP文芸文庫 2019年


「いまトピ」のコラムで紹介しています!

さて、この中で上の段の『等伯(上)(下)』はタイトルどおり主人公は長谷川等伯、『花鳥の夢』は等伯のライバル、狩野永徳。
その二人の火花散らす激突の場面を読むと、二つの小説が頭の中で一つの物語に合成されて映像まで目の前に浮かんでくるようなので、同じ時期に読んでみるといいかもしれません。

二人のライバル対決については、NTTレゾナントが運営する、~すごい好奇心のサイト~「いまトピ」にコラムを書きましたので、ぜひこちらもご覧になってください。


右 狩野永徳《檜図屏風》、左《松林図屏風》(部分)
いずれも東京国立博物館


『ごんたくれ』は、師・円山応挙の名代で南紀に行ったものの、依頼された襖絵の制作が進まないで、日々ぶらぶらしていた長沢芦雪(小説では吉村胡雪)が、わざわざ南紀までやってきた曽我蕭白(小説では深山箏白)に喝を入れられ、あの大胆な《龍虎図》(無量寺)を描くというストーリー。

こちらも、南紀紀行とあわせて「いまトピ」で紹介しています。


南紀・無量寺の入口

そして、今年(2020年)のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』にちなんで『墨龍賦』を紹介したコラムがこちら。


            建仁寺大方丈の《雲竜図》(高精細複製画)

この小説の主人公は安土桃山時代から江戸初期にかけて活躍した海北友松。
打倒・織田信長を明智光秀に託した友松の思いがメインストリームになっているので、麒麟を待つ間に読んでみてはいかがでしょうか。

他にもまだ読んでいない「絵師もの時代小説」がありますし、これからも出版されるかもしれないので、見つけたらぜひ読んでみたいです。