東京・六本木の東京ミッドタウンにあるサントリー美術館では「美をつくしー大阪市立美術館コレクション」が開催されています。
今回の展覧会のキャッチコピーは、年代もジャンルも多彩なコレクションを所蔵する大阪市立美術館から選りすぐりの逸品が展示される「なにわのアートコレクション、紀元前から近代まで東京大集合」。略して「なにコレ」。
どれだけ多彩かというと、展覧会チラシを見ればよく分かります。
なにしろ、メインビジュアルとなる作品が一つや二つでなく、こんなにたくさん。
仏教美術、中国の青銅器・絵画、金屏風の日本画、美人画、工芸、そして大阪の発展の基礎を築いた豊臣秀吉。時代も分野も異なる作品が一堂に会する、「あれもこれも」あって、「何これ?」と驚きながら楽しめる展覧会なのです。
そして、同館がこれだけ多様なコレクションを所蔵することになったのは、関西財界人からの寄贈や近隣古寺社からの寄託によるところが大きいとのことですが、まさに地元に根付いた美術館ということが感じられる展示内容でもありました。
それではさっそく展示室内の様子をご紹介したいと思います。
※展示室内は一部の作品を除き撮影禁止です。掲載した写真は美術館より特別に許可をいただいて撮影したものです。
展覧会概要
展覧会名 美をつくし-大阪市立美術館コレクション
会 期 2022年9月14日(水)~11月13日(日)
※会期中展示替があります。
開館時間 10:00~18:00(金、土は10:00~20:00)
10月9日(日)、11月2日(水)は20時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日 火曜日
※11月8日は18時まで開館
入館料 一般 1,500円 大学・高校生 1,000円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
※展覧会の詳細、各種割引等は、同館公式サイトをご覧ください⇒サントリー美術館
※出品作品はすべて大阪市立美術館の所蔵です。
展示構成(サントリー美術館での展示順)
祈りのかたち 仏教美術
日本美術の精華 魅惑の中近世美術
はじまりは「唐犬」から コレクションを彩る近代美術
世界に誇るコレクション 珠玉の中国美術
江戸の粋 世界が注目する近世工芸
巡回展情報
福島展 会期 2023年3月21日(火・祝)~5月21日(日)
会場 福島県立美術館
熊本展 会期 2023年9月16日(土)~11月12日(日)
会場 熊本県立美術館
祈りのかたち 仏教美術
4階の第1展示室に入ると、仏像、仏具、経典などの仏教美術が展示される落ち着いた雰囲気の空間が見えてきます。
この章で紹介されているのは、大阪で弁護士・政治家として活躍した田万清臣氏と、妻・明子氏が収集した仏教美術コレクションの逸品の数々。
こちらは、田万夫妻が自宅に祀っていたと伝えられる優雅なお姿の仏様、重要美術品「木造 観音菩薩立像」。
目の前に立つと、ご夫妻の信仰心の篤さが伝わってくるようです。
重要美術品 木造 観音菩薩立像 平安時代・12世紀 通期展示 |
お釈迦様が生まれてすぐに右手で天を、左手で地をさして「天上天下唯我独尊」と唱えたという姿をかたどった誕生仏は撮影可。
丸みを帯びたふくよかなお顔から、白鳳文化の息吹が伝わってくるように感じられました。
銅造 誕生仏立像 白鳳時代・7~8世紀 通期展示 |
撮影可の作品のマークは下の写真左。
そして、解説パネルの右、黄色い帯が目印の「サン美学芸員のなにコレポイント」にも注目です。
学芸員さんの作品に対する思い、親しみが伝わってきます。
日本美術の精華 魅惑の中近世美術
続いて、狩野派、長谷川等伯、尾形光琳といった桃山時代から江戸時代にかけて人気の絵師たちを中心とした作品が展示される中近世美術のエリアに移ります。
「日本美術の精華 魅惑の中近世美術」展示風景 |
ここでの注目は、下絵、画稿、書状などの尾形光琳関係資料。
会期中に展示替があって、全部で9点の作品が展示されます。
重要文化財 尾形光琳 鶴虎図下絵 江戸時代・17~18世紀 展示期間:9/14-10/3 |
尾形光琳の子・寿市郎が養子入りした小西家に200年来伝わってきた資料は、昭和に入ってしばらく所在不明となり、その後、大阪市立美術館と京都国立博物館に分蔵されることになったといういきさつがありました。
散逸したり所在不明のままでしたら、このようにまとまって見ることができなかった貴重な資料です。
この「鶴虎図下絵」には、京都国立博物館の公式キャラクター「トラりん」のモデルとなった光琳の「虎図」(京都国立近代美術館蔵)を左右反転したような虎が描かれています。
気持ちよさそうに眠る毛並みのきれいな子猫が描かれた作品は撮影可。
作者は「原派」の祖、原在中の長男・在正。
毛のふさふさした感じの描写をじっくりご覧いただきたいです。
はじまりは「唐犬」から コレクションを彩る近代美術
3階に降りてすぐの第2展示室には、近代日本画の名品が展示されています。
右から 北野恒富「星」昭和14年(1939)、上村松園「晩秋」昭和18年(1943)、 橋本関雪「唐犬」昭和11年(1936) いずれも通期展示 |
橋本関雪「唐犬」は、昭和11年(1936)の落成記念に開催された帝展出品作を買い上げたもので、大阪市立美術館の記念すべきコレクション第1号でした。
この「唐犬」は縦164cm、横366cmもの大きな二曲一隻の屏風で、展示ケースに入れてからでは開けないので、開いた状態でケースに入れるという難しい展示作業を行ったとのことです。
展示作業の様子は9月12日付のサントリー美術館公式ツィッターで紹介していますので、こちらもぜひご覧ください⇒サントリー美術館公式ツィッター
北野恒富「星」と上村松園「晩秋」は撮影可です。
世界に誇るコレクション 珠玉の中国美術
第3展示室に移ります。
中国美術の一つの柱は、関西実業界の重鎮として活躍した山口謙四郎氏が収集した石造彫刻、青銅器、陶磁器などの「山口コレクション」。
「世界に誇るコレクション 珠玉の中国美術」展示風景 |
撮影可の作品は「青銅鍍金銀 仙人」。
高さ10cmほどの小さな像ですが、およそ2000年ほど前に作られた不老不死を得た仙人の姿なのです。
この作品は撮影可ですので、不老不死とは言わないにしても、写真に撮って長寿を願ってみてはいかがでしょうか。
中国美術のもう一つの柱は大阪の実業家、阿部房次郎氏が収集した中国書画。
私が初めて大阪市立美術館に行ったのは、4年前に開催された「阿部房次郎と中国書画」展の時。
中国書画ファンの私としては見逃せない展示でしたので、前期後期とも大阪に行って見てきました。
今回は阿部コレクションの名品が東京まで来てくれるのですから、こんなにうれしいことはありません。
「世界に誇るコレクション 珠玉の中国美術」展示風景 |
江戸の粋 世界が注目する近世工芸
最後を飾るのは、大阪で貿易商として活躍したウーゴ・アルフォンス・カザール氏が収集した漆工品や根付、印籠など江戸時代から明治時代にかけての工芸品のコレクション。
下の写真の黒い線から先の根付は撮影可です。