東京・目白台にある永青文庫では、夏季展「Come on!九曜紋ー見つけて楽しむ細川家の家紋ー」が開催されています。
肥後熊本54万石の大名・細川家の広大な屋敷跡にあって、国宝8件、重要文化財35件を含む、およそ6,000点の美術工芸品と58,000点の歴史資料などからなる細川コレクションを所蔵している永青文庫では、昭和初期に建てられた旧細川侯爵家の家政所(事務所)で、洋館風の落ち着いたたたずまいの中で毎回テーマが設けられて展覧会が開催されています。
今回のテーマは細川家の家紋「九曜紋」。永青文庫初となる家紋をテーマとした展覧会です。
武家の家紋というと、戦陣の中で敵味方を区別するために家紋をつけた旗印を掲げるというイメージがあったので、今回は武具が中心なのかなと思っていたのですが、武具だけでなく、香道具、茶碗、蒔絵や螺鈿の箱、書画など様々なジャンルの美術作品が見られる盛りだくさんな内容が楽しめます。
展覧会開催概要
会 期 2024年7月27日(土)~9月23日(月・振休)
開館時間 10時~16時30分(入館は16時まで)
休館日 毎週月曜日(ただし8/12・9/16・9/23は開館、8/13・9/17は休館)
入館料 一般1000円、シニア(70歳以上)800円、大学・高校生500円
※中学生以下、障害者手帳をご提示の方及びその介助者(1名)は無料
展覧会の詳細等は公式サイトをご覧ください⇒永青文庫
※館内は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より許可を得て撮影したものです。
※展示されている作品はすべて永青文庫蔵です。
展示構成
九曜紋のルーツー家紋の成立と星の信仰ー
九曜紋を纏う
九曜紋と暮らす
小さな九曜紋
今回の展覧会のサブタイトルは「見つけて楽しむ細川家の家紋」ですので、さっそく展示室内に入って「九曜紋」を探してみたいと思います。
4階展示室に展示されているのは、主に武器や武具。
九曜紋とは、9つの星(太陽、月、火・水・木・金・土の五惑星、日月食や彗星に関係するとされる羅睺星〈らごせい〉・計都星〈けいとせい〉)を表すといわれ、細川家では、安土桃山時代から江戸初期の武将で茶人としても知られる細川家2代忠興(ただおき 1563-1645)が織田信長から九曜紋を拝領したと伝えられ、のちに多用された9つの円が離れた紋は「細川九曜」とも呼ばれています。
「九曜紋紫羅紗鞍覆」は、その名のとおり鞍の上から鐙(あぶみ)にかけて覆う馬具で、左右に九曜紋が配置されているのがすぐにわかりました。
縁取と九曜紋には金箔押の革、赤い羅紗の部分には金モールの装飾が加えられるなど、超豪華な装飾が施されています。
「九曜紋紫羅紗鞍覆」 江戸時代(19世紀) 永青文庫(熊本県立美術館寄託) |
「衛府太刀拵 九曜紋金装」は、近くでよく見ると金具の細部にまで九曜紋が施されているのがわかります。いったい幾つの九曜紋があるのでしょうか。
「衛府太刀拵 九曜紋金装」江戸時代(18-19世紀) 永青文庫 |
オンラインゲームの影響で「刀剣女子」という言葉がすっかり定着した最近では刀剣や刀装具の展示をよく見かけますが、鉄砲の展示というのはあまり多くないかもしれません。
この「九曜紋散象嵌火縄銃 銘 肥州住八助重勝作」は、金と銀の象嵌で九曜紋を散らしているという豪華な銃です。これでは大量生産に向かないのではと心配してしまいましたが、戦乱の世が終わった「天下泰平」の時代ならではなのでしょうか。
銃にも刀剣と同じく銘があることは初めて知りましたが、加藤清正に仕えた鉄砲鍛冶の林八助重勝が丹精を込めて作り上げたことが伝わってくる火縄銃です。
「九曜紋散象嵌火縄銃 銘 肥州住八助重勝作」林八助重勝作 江戸時代(17世紀) 永青文庫 |
ユニークなデザインの兜が展示されていますが、もちろん兜にも九曜紋が施されています。
山鳥の羽を扇状につけた「白糸裾紫威越中頭形兜」の兜には両耳の部分、山鳥の頭立には羽を束ねる中央に九曜紋を見つけました。
(山鳥の頭立と兜は、作品保護のため別々に展示されています。下の写真右が兜、その左が山鳥の頭立です。)
展示風景 |
今回の展示作品の中で、一番のお気に入りは細川家5代綱利(つなとし 1643-1714)所用と伝わる「紅糸威小星兜」。山鳥の尾を束ねた頭立が特徴的で、兜の中央の龍がとてもかっこいいです。
2階展示室に移ります。
2階には書画や、刀装具などの工芸作品が展示されています。
細川家5代綱利の肖像画では、「一文字」と呼ばれる絵本体上下の帯状部分の九曜紋はすぐにわかりますが、絵の中や、掛け軸を巻く軸先の九曜紋は見つけにくいかもしれないので、こちらも解説パネルを見ながら探してみてください。
展示ケースの中は「槍柄(残欠)」です。