東京・日本橋の三井記念美術館では「国宝の名刀と甲冑・武者絵」、特集展示「三井家の五月人形」が開催されています。
今回は、三井記念美術館の館蔵品の中から、国宝の短刀2点をはじめ重要文化財7点を含む刀剣や、蒔絵の拵(こしらえ)が一挙に公開されるという、刀剣ファンにはたまらない展覧会で、そのうえ、甲冑や武者絵、酒呑童子ほかの絵巻、特集展示としてこの時期にふさわしい三井家の五月人形が展示されるという、武具や武士に焦点を当てたとても内容の濃い展覧会。
開幕からは日にちが経ってしまいましたが、先日行ってきましたので、遅ればせながら展覧会の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2025年4月12日(土)~6月15日(日)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 月曜日
入館料 一般 1,200円、大学生・高校生 700円、中学生以下無料
展覧会の詳細、各種割引等については同館公式サイトをご覧ください⇒https://www.mitsui-museum.jp/
※本展覧会では、展示室1・2の全作品および展示室4の具足(甲冑)2領は写真撮影可能です。それ以外の撮影不可の作品の写真は美術館から広報用画像をお借りしたものです。
展示室1には、国宝の《短刀 無銘正宗 名物日向正宗》はじめ名刀や、これ自体が一級の工芸品ともいえる、蒔絵がほどこされた拵(こしらえ 柄や鞘などの刀装具)が独立ケースに入って展示されています。
太刀の拵が分解されて並べて展示されていました!
柄(つか)、鐔(つば)、鞘(さや)の間に、切羽(せっぱ)をはじめこんなに多くの部位があることは初めて知りました。それぞれの名称の解説パネルがあるのもうれしいです。
手前《葵角紋桐紋蒔絵糸巻太刀(太刀 銘宗光の拵)》 奥《葵角紋蒔絵太刀(太刀 銘宗光の拵)》 どちらも江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵 |
展示室1には、武者絵が描かれた蒔絵の料紙箱も展示されています。
描かれているのは「宇治川の先陣争い」の場面。
木曽義仲追討の命を受けた源義経と義仲が宇治川で相対した際、義経軍の佐々木高綱と梶原景季がそれぞれ源頼朝から与えられた名馬・生唼と磨墨に乗って先陣を争った場面が描かれていて、こちらは梶原景季。佐々木高綱が描かれた蒔絵の硯箱とともに展示されています。
いつも展覧会を象徴するこの一品(逸品)が展示される展示室2には、国宝《短刀 無銘貞宗 名物徳善院貞宗》が展示されています。
国宝《短刀 無銘貞宗 名物徳善院貞宗》貞宗作 鎌倉~南北朝時代・14世紀 三井記念美術館蔵 |
貞宗は正宗の実子とも養子とも伝えられ、相州伝の二人の最高傑作が展示室1と2で見られるのも今回の展覧会の大きな見どころのひとつです。
豊臣秀吉が所持し、五奉行の一人前田徳善院玄以が拝領したことから「徳善院貞宗」と呼ばれ、その後、徳川家康、紀州徳川家、西条松平家、三井家と伝わった由緒ある名刀を洋風建築の内装の中で見るのはまた格別の味わいがあります。
刀剣の展示はまだまだ続きます。
展示室4には、重要文化財の太刀はじめ名刀がずらりと並んでいます。
刀剣ファンの方は、ここまででお腹一杯になってしまうかもしれませんが、ここから先も甲冑や武者絵、五月人形など見どころいっぱいですので、ぜひ続きもご覧ください。
三井家の先祖を祀った京都・顕名霊社のご神宝とされてきた甲冑2点は撮影可。
今回の展覧会では、ストーリーがよく知られている2つの絵巻が見られるのも大きな見どころのひとつです。
そのうちの1点が、平安時代、都で婦女や財宝を奪った鬼・酒吞童子が、武将・源頼光とその家来たちによって退治された物語を描いた《酒吞童子絵巻》。
頼光らが酒吞童子に真意を悟られないように酒宴に臨む場面や、酒呑童子が酔いつぶれたところにすかさず襲いかかり首をはねる場面などハラハラ・ドキドキの場面の連続。
血のりのついた刀など、リアルな描写は真に迫るものがあります。
一方の《十二類合戦絵巻》は、登場人物ならぬ登場動物たちにとっては真剣なのですが、どことなくユーモラス。
これは、十二類(十二支の鳥獣)の歌会で判者を務めた狸が、その場で罵倒されたのを恨んで熊や狐、鳶たちを集め合戦を挑んだのですが、惨敗して出家するという物語。途中で鬼に化けた狸が犬に吠えられて正体がばれたり、狸が神妙な表情で剃髪したりなど、思わずくすっと笑える場面も出てきて、楽しみながら見ることができました。
下の場面では、雷雲とともに登場する龍がかっこいい!
そして最後の展示室7では、特集展示として「三井家の五月人形」が展示されています。
「三井家の雛人形」はひな祭りの季節恒例の展覧会「三井家のおひなさま」で展示されていますが、「三井家の五月人形」は、今までほとんど展示される機会がなく、今回の展示がほぼ初めての展示になるとのことです。
展示室6の「ミニチュア五月飾」で展示されている本物そっくりに精巧にできたミニチュアの火縄銃や大筒(おおづつ)などと相まって、筆者のようなミニチュア好きにはたまらない展示ですが、武将や刀剣・甲冑・弓矢・幟など武器・武具が主体となってる五月人形や五月飾は、ミニチュアファンでなくても楽しめる展示なので、ぜひともこの貴重な機会にご覧いただきたいです。
ロビーでご来場のみなさまをお出迎えしてくれる永樂妙全作《色絵小鍛冶置物》は撮影可です。
展示を見終わってエレベーターを降りたら、前を歩いていた若いカップルが「いい展示だったね。」と話しているのが聞こえてきました。
刀剣ファンも、絵巻ファンも、ミニチュアファンもみんなが楽しめるおすすめの展覧会です。