東京・日本橋の三井記念美術館では「美術と遊びのこころⅨ 花と鳥」が開催されています。
展覧会開催概要
会 期 2025年7月1日(火)~9月7日(日)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 月曜日(但し7月21日、8月11日は開館)
入館料 一般1,200円、大学・高校生 700円、中学生以下無料
展覧会の詳細等は同館公式サイトをご覧ください⇒https://www.mitsui-museum.jp/
※本展覧会では、展示室3(如庵)、展示室4に限り写真撮影可です。(動画撮影は不可)
会場内で撮影の注意事項をご覧ください。
※掲載した写真は、プレス内覧会で主催者より許可を得て撮影したものです。
今回の展覧会は、日本・東洋の古美術に親しむことを目的として同館が企画している、恒例の「美術の遊びとこころ」シリーズ第9弾。
今回のテーマは「花」と「鳥」。同館が所蔵する絵画、茶道具、工芸品に登場する花と鳥が楽しめる、とても明るい雰囲気の展覧会です。
展示室に入って気がついたのは、作品のキャプションとともに、作品に描かれた花や鳥の写真のパネルが展示されていることでした。「美術と遊びのこころ」シリーズらしい取組みで、大人だけでなく、学校の夏休み期間中なので、子どもたちにも親しみやすい工夫はとてもありがたいです。
中には「遅桜」との銘があっても桜がデザインされていない変わりダネの唐物肩付茶入がありました。
《唐物肩衝茶入 銘遅桜》は足利義政が所持していた東山御物の一つで、足利義政が《唐物肩衝茶入 銘初花』(重要文化財 徳川記念財団蔵)」より先に世に知られていたら、この茶入が第一であったろうという思いから「遅桜」と命名されたといわれています。
展覧会の中でもとびきりの逸品が展示される「VIPルーム」の展示室2には、何が展示されるのかいつも楽しみにしているのですが、今回は国宝《志野茶碗 銘卯花墻》ではなく、重要文化財《玳皮盞 鸞天目》が展示されていました。
展示室2展示風景 |
茶碗の中を覗き込むと、見込みには長い尾をなびかせて飛び交う二羽の鳥が見えてきます。
これは鸞(らん)という中国の想像上の鳥で、羽は赤色に五色をまじえ、鳴き声は五音に合うとされている吉鳥。優雅に空を舞う姿は「VIPルーム」にぴったりです。
さて、国宝《志野茶碗 銘卯花墻》はどこだろうと思い先に進むと、なんと展示室3に展示されていました。
国宝の茶室・如庵を再現した展示室3に国宝の茶碗。これ以上の取り合わせはないというくらい贅沢な展示ではないでしょうか。
展示室3展示風景 |
展示室4には「鳥」が主題の絵画作品が展示されています。
展示室4展示風景 |
円山応挙の《蓬莱山・竹鶏図》(下の写真左の三幅対の作品)も展示されていました。
伊藤若冲が描く鶏はアクロバティックな動きをしていたり、ひょうきんな表情をしていたりしますが、応挙の鶏は写実的で真面目な表情をしています。写生を重んじた応挙らしい生真面目さが感じられました。
昨年(2024年)に「新発見」されたと話題になった二人の合作(伊藤若冲《竹鶏図屏風》、円山応挙《梅鯉図屏風》(どちらも個人蔵)は、三井記念美術館の次回展(特別展「円山応挙ー革新者から巨匠へ」)で東京初公開となるので楽しみです。
左から 円山応挙筆《蓬莱山・竹鶴図》江戸時代・寛政2年(1790)、 土佐光起筆《鶉図》江戸時代・17世紀、伝牧谿筆《蓮燕図》 南宋時代・13世紀 いずれも三井記念美術館蔵 |
そして圧巻は全長約17.5メートルにおよぶ長巻に63種類の鳥が超リアルに描かれた渡辺始興の《鳥類真写図巻》。
渡辺始興が24年もの間、身近な鳥を観察して描いた図巻で、鳥の写真パネルと見比べてもその観察眼の鋭さに驚かされます。
渡辺始興筆《鳥類真写図巻》江戸時代・18世紀 三井記念美術館蔵 |
これまでは花や鳥が描かれた作品を見てきましたが、展示室5には鳥の形をした工芸作品なども展示されていて、見る人の目を楽しませてくれます。
中でも特に注目したいのは《牙彫鶏親子置物》(下の写真左)。
ヒヨコたちのあどけなさには思わず胸がキュンとなってしまいます。
小さな作品でも間近で見ることができる展示室6には、四季折々の草花が描かれた金箔の小襖や色紙・短冊が展示されているので、一段と華やいだ雰囲気が感じられました。
ここでも花の写真と見比べながらじっくり見ることができます。
広々とした展示室7のテーマは「花と鳥」。
金地の背景に鶴と松、四季折々の草花が描かれ、右には太陽、左には月が金属板で表現された大画面の《日月松鶴図屏風》(重要文化財 室町時代・16世紀 下の写真右)の前に立つと、右から左に春から秋への移ろいが感じられて、まるでその場にいるようなすがすがしい気分になってきました。