東京・丸の内の静嘉堂@丸の内(明治生命館1階)では「絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ」展が開催されています。
静嘉堂文庫美術館では今まで刀剣や水墨画の入門編の展覧会は開催されていましたが、神仏や人物が描かれた絵画の入門編は初めての試み。
神仏や歴史上の人物が描かれていても、その背景を知らないと、それが誰なのか、どんな場面なのかわからないのが神仏人物画ですが、それをやさしくひも解いてくれるのですから、こんなありがたいことはないと心待ちにしていた展覧会でした。
展覧会開催概要
会 期 2025年7月5日(土)~9月23日(火・祝)
前期:7月5日(土)~8月11日(月・祝)
後期:8月13日(水)~9月23日(火・祝)
※作品は前後期でほぼ総入れ替え
開館時間 10:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
※第4水曜日(7月23日、8月27日)は午後8時まで、9月19日(金)、9月20日(土)は
午後7時まで開館
休館日 月曜日(ただし、7月21日、8月11日、9月15日、22日は開館)
7月22日(火)、8月12日(火)、9月16日(火)
入館料 一般1,500円、大高生1,000円、中学生以下無料
障がい者手帳お持ちの方700円(同伴者1名無料)
※日時指定予約優先、当日券もあります
展覧会の詳細、関連イベント等は静嘉堂文庫美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.seikado.or.jp/
展示構成
第1章 やまと絵と高貴な人の姿
第2章 神さまと仏さまの姿
第3章 道釈画と故事人物画
※出陳作品は全て公益財団法人 静嘉堂の所蔵です。
※撮影条件 撮影可
*携帯電話・スマートフォン・タブレットのカメラは使用できます。動画撮影・カメラで
の撮影は不可。
それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
今回の展覧会は、夏休み期間中に開催されるので親子で楽しめる仕掛けがいっぱい。
謎解きワークシート
会場入口で、神さまや仏さま、歴史上の人物たちのフシギにせまるクイズにチャレンジできる「謎解きワークシート」、鉛筆、クリップボードをお借りして、さあスタート!
ガイド役はキャラクター聖徳太子くんと霊照女ちゃん
今回の展覧会を案内してくれるのは、ご存じ聖徳太子と親孝行娘の霊照女がモデルになった聖徳太子くんと霊照女ちゃん。
イラストはイラストレーターの伊藤ハムスターさんのご担当。くすりと笑える絵をモットーに制作している伊藤ハムスターさんだけあって、二人とも親しみやすいお顔をしていて、表情も豊か。
上の「謎解きワークシート」にも登場していて、作品キャプションも、二人のキャラクターが解説するキャプションと普通のキャプションがあって、キャラクターが解説するキャプションだけでも十分作品が楽しめるようになっています。
*二人が登場する作品のうち、重要文化財《聖徳太子絵伝》は第一、二幅が前期、第三、四幅が後期、《霊照女図》は後期に展示されます。
*下の写真の上部がかまぼこ型をしたキャプションがキャラクターが解説するキャプションです。
第1章 やまと絵と高貴な人の姿
それでははじめに《住吉物語絵巻》にある聖徳太子くんの解説を見てみましょう。
《住吉物語絵巻》桃山~江戸時代・16~17世紀 前期展示 |
《住吉物語絵巻》のキーワードは「引目鉤鼻」。
お姫さまや貴族の男の人たちのように高貴な人たちは、目は細い線を横に長くスーッと引いて、鼻は「く」の字の形で描かれていますが、これは「引目鉤鼻」という、身分の高い人たちの顔を描くときによく使われる描き方なのです。
「あえて感情がわからないような顔にすることで、絵の中の人たちがどんな気持ちなのか、見る人が自由に想像するができるようにしたんだって!」と解説するのは聖徳太子くん。
今まで、高貴な人たちはなんでこんな無表情な顔をしているのだろう、としか思わなかったのですが、実はこのような意味合いがあったことに初めて気が付きました。
第2章 神さまと仏さまの姿
仏教の仏が日本の神の姿で現れたという「本地垂迹思想」にもとづいて描かれたのが「垂迹画」。
こんなに多くの神さま、仏さまが描かれていたら誰が誰だか分からないと思われるかもしれませんが、雲の上に乗っているのが仏さま、人や鬼のような姿で描かれているのが奈良の春日大社の神さま。昔の人たちはこの曼荼羅図を見て、どの仏さまがどの神さまになったのかすぐにわかったのですね。
「昔の人たちはこの絵を見て「私も死んだら、こんな素敵なところに行きたいなあ」って一生懸命お祈りしたんだって。」と聖徳太子くんが紹介するのは、《当麻曼荼羅》。
《当麻曼荼羅》鎌倉時代・14世紀 前期展示 |
これは、奈良・当麻寺の「綴織当麻曼荼羅」を、約八分の一の大きさで描き移したもので、楽器を奏でたり、踊ったりしている仏さまたちもいて、とてもにぎやかで楽しそうです。
それでも画面下の段のマス目には、生前の行いによって極楽浄土に生まれ変わるときの九つの段階が描かれていて、下の段階ほど結構シビアになってくるので、やはり生きているときに善いことをしなくてはと、あらためて思わせてくれる曼荼羅図です。
第3章 道釈画と人物故事画
第3章展示風景 |
万博イヤーにちなんで、1970年大阪万博に出展された因陀羅の国宝《禅機図断簡 智常禅師図》が展示されています(前期展示)。
この作品は見れば見るほどミステリアス。
手を合わせて教えを乞いにきた張水部という人物に、木の下に座っている中国・唐時代の高僧・智常禅師が指をさしてニヤリと笑っている図ですが、はたして何を意味しているのか。
「智常さんは何と答えているのか想像してみよう!」と紹介してくれるのは霊照女ちゃん。
国宝 因陀羅筆、楚石梵琦題詩《禅機図断簡 智常禅師図》 元時代・14世紀 前期展示 |
これは懐かしい!
2019年に世田谷区岡本の静嘉堂文庫美術館で開催された「入門 墨の美術ー古写経・古筆・水墨画ー」のキャラクター「カンザンくん」に再会できました。
お元気そうでなによりです。
重要文化財 牧谿《羅漢図》南宋時代・13世紀 前期展示 |
最後の部屋・Gallery4には大画面の屛風が展示されています。
前期は、中国の知識人が大切にした、琴(琴の演奏)、棋(囲碁)、書(書道)、画(絵画)の場面が描かれた《琴棋書画図屏風》。作者は、狩野探幽の跡を継いで江戸狩野の総帥として狩野派隆盛の基礎をつくった狩野常信です。
狩野常信《琴棋書画図屏風》江戸時代 17~18世紀 前期展示 |
ミュージアムショップ
発売以来大好評の「ほぼ実寸の曜変天目ぬいぐるみ」は、昨今の物価高騰のおりから、このたび価格改定が行われましたが、今回手のひらサイズの曜変天目ぬいぐるみのキーリング、バックチャームが新たに発売されました。
神仏と人物の描かれた絵画を中心に43点の作品の魅力を、聖徳太子くんや霊照女ちゃんのイラストとともにわかりやすく紹介する『絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ』も絶賛発売中!縦約20㎝、横約19㎝のA4変型判でハンディサイズなのもうれしいです。
(下の写真の上の棚左が「ほぼ実数の曜変天目ぬいぐるみ」、右が曜変天目ぬいぐるみのキーリング、バックチャーム、下の棚左が図録『絵画入門 よくわかる神仏と人物のフシギ』です。)
お帰りの際にはぜひミュージアムショップにお立ち寄りください。