2026年1月6日火曜日

三井記念美術館 国宝 熊野御幸記と藤原定家の書―茶道具・かるた・歌仙絵とともに―

東京・日本橋の三井記念美術館では、 国宝 熊野御幸記と藤原定家の書―茶道具・かるた・歌仙絵とともに―が開催されています。



今回の展覧会の主人公は、鎌倉時代初期の歌人、藤原定家(1162-1241)。
『新古今和歌集』や『小倉百人一首』の撰者の一人で、漢文体の日記『明月記』を著し、『源氏物語』や『土佐日記』の研究者としても知られています。
『明月記』は定家が19歳から74歳までの日記で、当時の政治情勢や歌壇・社会の状況、自身の心情などが詳しく記述されていますが、恒星が一生を終える時に大爆発を起こした「超新星爆発」の記録もあって、天文学上も貴重な記録として注目されています。

今回の展示のメインは、後鳥羽上皇(1180-1239 天皇在位1183-98)が建仁元年(1201)10月に熊野参詣に随行した際の定家の旅日記、「国宝 熊野御幸記」。
三井記念美術館の開館20周年の年に、平成24~26年(2012~2014)の修理後、久方ぶりに全巻が展示されます。

展覧会開催概要


会 期  令和7年(2025)12月6日(土)~令和8年(2026)年2月1日(日)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日  月曜日(但し1月5日・12日・26日は開館)、年末年始(12月27日(土)~1月3日(土))、
     1月13日(火)、1月25日(日)
主 催  三井記念美術館
入館料  一般1,200円、大学・高校生700円、中学生以下無料
※展覧会の詳細、各種割引等については同館公式サイトをご覧ください⇒https://www.mitsui-museum.jp/

※本展覧会では、展示室4のみ撮影可です。展示室内の注意事項をご確認ください。
※その他の展示室の作品の写真は、広報用画像を主催者よりお借りしたものです。

展示構成
 展示室1:茶人好みの定家様
 展示室2:小倉色紙「うかりける…」
 展示室3:如庵 茶道具の取り合わせ
 展示室4:国宝 熊野御幸記と大嘗会巻、百人一首かるた
 展示室5:定家の古筆切・消息、小堀遠州の定家様
 展示室6:三十六歌仙団扇形かるた
 展示室7:歌仙絵と東福門院入内図


展覧会チラシ



藤原定家筆「国宝 熊野御幸記」は、三井記念美術館が所蔵する6点の国宝の一つ。それにあわせて、今回の展覧会では、同館の所蔵作品の中から後鳥羽上皇と藤原定家の書が選ばれて展示されます。
あわせて、定家の書は江戸時代初期の大名茶人小堀遠州(1579-1647)などの茶人の間で「定家様」として好まれたので、独立ケースがずらりと並んだゴージャスな内装の展示室1には、遠州筆の和歌色紙や、遠州が伝えた茶道具、遠州に私淑した江戸時代後期の大名茶人松平不昧(1751-1818)の書状などが展示さてれいます。


中興名物 瀬戸二見手茶入 銘二見
桃山~江戸時代・17世紀 三井記念美術館

「中興名物」とは、遠州が見出した名物茶道具を、東山時代の大名物に対して不昧が称したもので、「中興名物 瀬戸二見手茶入 銘二見」には遠州の箱書と不昧の書状が添えられています。

松平不昧筆書状 二見茶入添幅 江戸時代・19世紀 三井記念美術館

不昧の書体はまさに「定家様」。墨の濃淡があって、文字線の太さの違いもあるので、かえってそれがリズムとなって、絶妙なバランスを保っているように感じられます。

その時の展覧会を代表する作品が1点だけ展示される展示室2には、定家筆の和歌がしたためられた色紙が展示されていました。



小倉色紙「うかりける…」藤原定家筆 鎌倉時代・13世紀
三井記念美術館

織田有楽斎の茶室「如庵」を写した展示室3に続いて、展示室4の冒頭には、今回が初公開となる藤原定家画像3幅が展示されていました。

展示室4 展示風景

上の写真右の藤原定家画像は、似絵の名手藤原信実(1176-1265)の筆として伝わっているもので、信実は定家の甥ですが、絵そのものは江戸時代初期まで下る写しとされています。
歌人であり文学研究者でもあった当代随一の文化人の定家でしたので、どれも秀才肌の雰囲気があって、いかにも聡明な表情をしているように感じられました。

そしていよいよ本展のメイン作品、「国宝 熊野御幸記」が見えてきました。

展示室4 展示風景

これは旅先での直筆の記録なので、とにかく急いで書いて、文字の修正や挿入などがありますが、かえってそれが臨場感を盛り上げています。
筆者はくずし字を読むことはできませんが、作品の上には活字にしたパネルが掲示されいてるので、内容を追いかけることができるのがうれしいです。


国宝 熊野御幸記(部分) 藤原定家筆 鎌倉時代・建仁元年(1201)
三井記念美術館

「国宝 熊野御幸記」の隣に展示されているのは、後鳥羽上皇の和歌懐紙で、今回が初公開です。この翌年に上皇は和歌所を設け、定家らが撰者となり第8番目の勅撰和歌集「新古今和歌集」が撰進されました。

後鳥羽院和歌懐紙「花有歓色」鎌倉時代・正治2年(1200)
三井記念美術館 

ここでふと頭の中をよぎったのは、後鳥羽上皇といえば、承久3年(1221)、討幕の兵を挙げたものの、幕府軍に大敗して(承久の乱)隠岐に流され、その地で生涯を終えたのですが、その時、定家はどうしていたのかということでした。
熊野参詣に随行し、勅撰和歌集の撰者にもなり、後鳥羽上皇の寵愛を受けていた定家ですが、ちょうど承久の乱の頃は上皇の不興を買って謹慎中の身でしたので、特にお咎めはなかったのです。
その後も、第9番目の「新勅撰和歌集」や「小倉百人一首」の撰者になるなどの活躍をしているので、人生何が幸いするかわかりません。

展示室4には、定家撰「百人一首」の冊子本と山口素絢絵・鈴木内匠文字のかるたも展示されています。
かるたは絵札と文字札が全部展示されていますので、お正月を迎えるのにふさわしい華やいだ雰囲気に華を添えています。

展示室4 展示風景


展示室5には定家の書と「定家様」の典型としての小堀遠州の書が展示されています。
定家の書6点はすべて今回が初公開です。


藤原定家筆自詠和歌三首 鎌倉時代・13世紀
三井記念美術館

初公開の「三十六歌仙団扇形かるた 梅鉢紋蒔絵箱入」が展示されている展示室6に続き、展示室7にも歌仙絵が展示されているので、展覧会のフィニッシュに向けて正月気分が盛り上がってきます。
3点の歌仙帖のうち、土佐光起筆の「女房三十六歌仙帖」は十二単の女性歌人が描かれているので特に華やかですね。

女房三十六歌仙帖より紫式部 土佐光起筆
江戸時代・17世紀 三井記念美術館

展示は豪華な大画面の屏風「東福門院入内図屏風」で締めくくられます。
東福門院とは、江戸前期の後水尾天皇(1596-1680 在位1611-29)の中宮で、2代将軍徳川秀忠の五女、和子のことで、日本独特の和歌の文化を育んだ宮中内裏への入内が描かれています。

重要文化財 東福門院入内図屏風 江戸時代・17世紀 三井記念美術館


「国宝 熊野御幸記」をはじめ藤原定家の独特の味わいのある書、わび・さびの茶道具、華やいだ雰囲気の歌仙絵や百人一首かるたなど、見どころいっぱい。
新年を迎えるのにふさわしい展覧会ですので、ぜひご覧ください!