2025年11月17日月曜日

古美術から現代工芸、近代洋画から現代美術まで、時代を横断して作品を展示販売する「CURATION⇆FAIR」が京都で初開催!

古美術から現代工芸、近代洋画から現代美術まで、時代とジャンルを横断して作品を展示販売する「CURATION⇆FAIR」が京都で初めて開催されています。
会場は、京都西陣の日蓮宗大本山・妙顕寺、主催は、ユニバーサルアドネットワーク株式会社。11月15日(土)から18日(火)まで4日間限定の開催です。


さらに今回は、創立約120年の歴史をもつ東京美術倶楽部が初めて京都で開催する特別展示 「工+藝」京都2025が JR京都駅から徒歩10分ほどの距離にある渉成園(枳殻邸)で併設開催されるという豪華な内容になっています。

それでは11月15日(土)に開催されたプレス・関係者向けのプレビューに参加しましたので、さっそく会場の様子をレポートしたいと思います。

※「CURATION⇆FAIR Kyoto」の開催概要等は公式サイトでご確認ください⇒https://curation-fair.com/kyoto2025

「CURATION⇆FAIR Kyoto」


大本山妙顕寺は鎌倉時代に創建され、京都洛中における日蓮宗最初の寺院で、伽藍はたびたび移転を繰り返しましたが、本能寺の変ののち、豊臣秀吉の命により堂宇を現在の地に移転した由緒ある寺院です。    
春は桜が咲き誇り、秋は紅葉が境内を覆い、特別公開時には多くの参拝客が訪れる妙顕寺ですが、今回は少し様子が違う賑わいを見せています。

大本山妙顕寺「四海唱導の庭」

そうです。
このたび堂内を埋め尽くしているのは、各地のギャラリーから出展された美術作品なのです。

<出展者一覧>

akamanma/ARTDYNE/Artglorieux GALLERY OF TOKYO/hatonomori art/
ギャラリー広田美術/ギャラリー北欧器/KANEGAE/TATSURO KISHIMOTO/
Maki Fine Arts/水犀/名古屋画廊/日動画廊/RED AND BLUE GALLERY/
しぶや黒田陶苑/ギャラリー 志/ATSUHIKO SUEMATSU GALLERY/瀧屋美術/Wa.gallery/ZEAL HOUSE

<企画展示> 

超適応2:新しい時代の工芸と表現




勅使門を正面に臨む客殿にもこのとおり、8軒の出展者がブースを出しています。

妙顕寺客殿


日本で最も長い歴史をもつ洋画商・日動画廊からは、梅原龍三郎、藤田嗣治、安井曾太郎はじめ、近代日本美術を代表する作家たちの作品が展示されています。

Booth15日動画廊 展示風景

一方、こちらはBooth13水犀の立体作品。
さまざまなジャンルの作品が見られるのもアートフェアならではの楽しみです。

Booth13水犀 展示風景


妙顕寺を訪れる来賓をお迎えするための施設・大玄関に出展しているATSUHIKO SUEMATSU GALLERYでは、なんとドイツ・ルネサンスを代表する画家、版画家、デューラーの版画を発見!(下の写真右)
これでもかというくらい細かい描写、氏名の頭文字A(アルブレヒト)とD(デューラー)を組み合わせた独特のロゴからすぐにわかりました。

Booth19 ATSUHIKO SUEMATSU GALLERY 展示風景


三方を特徴的な庭園に囲まれた和室(書院)には6軒の出展者が作品が展示されています。
違い棚を利用したお寺ならではの展示風景が見られるのは、鎌倉の瀧屋美術のブース。
ここでは岡本太郎などの近代洋画と古美術が組み合わされた展示が見られます。岡本太郎の作品と縄文土器が何の違和感もなく並んでいるところがすごいです。

Booth06瀧屋美術 展示風景


樹齢400年の赤松と樹齢100年の黒松を臨む茶室で気になった作品は、現代作家によるインスタレーションでした。

Booth07ギャラリー志/KANEGAE 展示風景  


茶室に行く途中の圓窓から見る「光琳曲水の庭」の眺めもまた格別です。



「CURATION⇆FAIR Kyoto」は、普段はあまり訪れる機会の少ないギャラリーの作品や、時代やジャンルを超えて受け継がれてきた名品が古刹を舞台に集まったアートフェアです。
「自分の部屋に飾りたい。」と思える作品にめぐり合えるチャンスかもしれないので、ぜひ会場に足を運んでご覧いただきたいです。


渉成園(枳殻邸) 「工+藝」京都 2025


「工+藝」は、東京美術倶楽部が、工芸の新たな魅力や可能性を国内外に発信するために2024年に初めて開催した特別展示で、今回初めて京都で開催されることになりました。
「工+藝」京都 2025の会場は、渉成園の中でも一番広い閬風亭(ろうふうてい)。
現代の工芸界をけん引する作家46人の作品が京都の地に集結しています。

<出展作家一覧> 

浅井康宏、伊藤秀人、伊藤航、内田鋼一、ウチダリナ、王雪陽、大室桃生、隠﨑隆一、
月山貞伸、加藤高宏、加藤亮太郎、川端健太郎、岸野寛、小曽川瑠那、五味謙二、
佐故龍平、新宮州三、スナ・フジタ、関島寿子、孫苗、高橋奈己、田中里姫、佃眞吾、
土屋順紀、出和絵理、時田早苗、戸田浩二、豊海健太、新里明士、西村圭功、橋本雅也、
福村龍太、藤川耕生、桝本佳子、前田正博、増田敏也、松永圭太、三上亮、見附正康、
宮入陽、ミヤケマイ、十三代三輪休雪、三輪太郎、山村慎哉、吉田泰一郎、和田的


「工+藝」京都2025 展示風景

中には抽選に当たらないと入手できない作品あります。

「工+藝」京都2025 展示風景


渉成園では、ほかにも棟方志功の襖絵の特別公開、裏千家による呈茶席や和舟体験など多彩なプログラムが開催されます。
夜間特別拝観「渉成園 秋灯り」は11月30日(日)まで開催されます。
詳しくはこちらをご覧ください⇒https://www.higashihonganji.or.jp/news/shoseien/015410564/

渉成園 夜間特別拝観「渉成園 秋灯り」

期間限定の「CURATION⇆FAIR Kyoto」が見逃せません!

2025年11月7日金曜日

根津美術館 在原業平生誕1200年記念 特別展「伊勢物語 ー美術が映す恋とうたー」

東京・南青山の根津美術館では、在原業平生誕1200年記念 特別展「伊勢物語 ―美術が映す王朝の恋とうた―」が開催されています。

展覧会チラシ


今回の特別展は、美男子の誉れ高く、情熱的な和歌が多いことで知られる平安時代初期の歌人、在原業平(825-880)の生誕1200年を記念して、業平の和歌にまつわる物語を集めた短編物語集『伊勢物語』が生み出した書、絵画、工芸が一堂に会する展覧会です。

展示室内には、きらびやかな料紙に書かれた『伊勢物語』の写本の断簡、金泥や彩色で彩られた掛軸、絵巻物、屛風、さらには細やかな文様が描かれた優美な蒔絵の硯箱はじめ、平安王朝の華やいだ雰囲気が伝わってくる作品が展示されています。

それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


会 期  2025年11月1日(土)~12月7日(日)
     ※会期中、前期(11/1-11/16)と後期(11/18-12/7)で、一部作品の展示替、頁替え等
      があります。
休館日  毎週月曜日 ただし、11月24日(月・祝)は開館、翌火曜日休館
開館時間 午前10時~午後5時(入館は閉館30分前まで)
入場料  オンライン日時指定予約
     一般 1500円 学生 1200円
     *障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料
会 場  根津美術館 展示室1・2・5

展覧会の詳細、オンライン日時指定予約等の情報は同館公式サイトをご覧ください⇒根津美術館

※展示室内及びミュージアムショップは撮影禁止です。掲載した写真は記者内覧会で美術館より特別に許可を得て撮影したものです。

展示構成
 第1章 在原業平と伊勢物語 ―古筆と古絵巻―
 第2章 描かれた伊勢物語 ―歌とともに―
 第3章 伊勢物語の意匠 ―物語絵と歌絵のあわい―


第1章 在原業平と伊勢物語 ―古筆と古絵巻―


展示の冒頭では在原業平ご本人がお出迎えしてくれました!

《在原業平像》室町時代 16世紀 根津美術館蔵
通期展示


実はこの《在原業平像》は、今まで公開する機会がなく、今回が初公開とのこと。生誕1200年の今年(2025年)、満を持してご登場いただいたという貴重な肖像画です。
服装は貴族が朝廷に参内する際の束帯(そくたい)、そして左手に料紙を持ち、筆を持った右手は頭の横に上げ、視線を遠くに向ける様子は、ちょうど新たな和歌を案じているところのようです。
まさに天皇の孫で、六歌仙や三十六歌仙に名を連ねた和歌の名手にふさわしいお姿。そのうえ、美丈夫(美男子)といわれたように端正な顔立ちをしています。
もちろん、生前の姿を伝えるものが残されていないので、実際にこのような顔立ちをしていたかどうかはわかりませんが、この《在原業平像》は、南北朝時代(14世紀)の《在原業平像》(重要文化財、個人蔵)に次ぎ制作年代の古いものとしても貴重な作品です。


印刷技術が発達していなかった時代には、物語は写本や書写した本文に絵を添えた絵巻や絵本の形で伝わりました。
『伊勢物語』の写本は古くても12世紀までのものしか残っていないのですが、第1章には平安時代(12世紀)の写本の断簡はじめ貴重な作品が展示されています。
流れるような文体はもちろん、料紙の装飾の美しさにも注目したいです。

第1章展示風景

そして、こちらは室町時代(16世紀)の《伊勢物語絵本》(個人蔵)。
5世紀も前の絵本なのに、色がこれだけ鮮やかに残っているのは驚きです。

《伊勢物語絵本》室町時代 16世紀 個人蔵
前期・後期で頁替


第2章 描かれた伊勢物語 ―歌とともに―


『源氏物語』とならんで、日本の古典文学ではその名がよく知られている『伊勢物語』。
主人公は業平その人ではないかともいわれていますが、作者や成立年は未詳で、「古今和歌集」が成立する延喜5年(905)以前から物語の原型ができ、その後、章段の数が増え、125段からなる形が定着しました。そして、収められている和歌は全部で209首にも及びます。


江戸時代初期に出版され、その後の『伊勢物語』を主題とした絵画に大きな影響を与えたのが嵯峨本『伊勢物語』。

嵯峨本『伊勢物語』江戸時代 慶長13年(1608) 個人蔵
前期・後期で頁替

次にご紹介する《白描伊勢物語図屛風》も影響を受けた作品のひとつ。場面数も一致し、絵の構図もほぼこの嵯峨本『伊勢物語』を踏襲しているのです。
章段ごとの区切りに金砂子が撒かれた白描の《白描伊勢物語図屛風》には、44の章段から49の場面が描かれています。

《白描伊勢物語図屛風》江戸時代 17世紀 根津美術館蔵 通期展示


『伊勢物語』は、「八橋」「隅田川」「宇津の山」など断片的には知っているけど、どの場面が描かれていて、どのような物語なのかはよくわからない、という方もいらっしゃるかもしれませんが(筆者もその一人)、ご心配なく。
展示室内には、《白描伊勢物語図屛風》のそれぞれの場面の章段とタイトルや、その中から選ばれた10の名場面の物語のあらずじが記された解説パネルが掲示されているので、とても参考になります。


125段すべての詞書が描かれ、そのうち63段の77場面が描かれているという豪華な内容の絵巻は《伊勢物語絵巻》(全6巻 東京国立博物館蔵)
作者は、土佐派から分かれ、江戸幕府の御用絵師となった住吉派の祖、住吉如慶。
今回の特別展では、6巻のうち巻1と巻6が展示されています。(前期・後期で巻替)

住吉派の《伊勢物語絵巻》(下の写真右奥)と、土佐派の土佐光起による《伊勢物語図屏風》(下の写真左、個人蔵)が並んで展示されているのも何かのご縁でしょうか。

第2章展示風景


上の写真右の独立ケースに展示されている扇子は、『伊勢物語』第87段「海人の漁火」の絵を描いた鈴木其一、そして反対側の和歌を書いた其一の師・酒井抱一という、江戸琳派を代表する二人の絵師による師弟競演の作品です。


鈴木其一(絵)酒井抱一(書)《伊勢物語歌絵扇子》江戸時代 19世紀
個人蔵 通期展示

今回の特別展では、琳派の祖・俵屋宗達、宗達に私淑した尾形光琳、光琳に私淑した酒井抱一という、江戸時代における琳派の系譜をたどることができます。
宗達作と伝わるのは、登場人物の表情やしぐさが可愛らしい《伊勢物語図色紙》。

第2章展示風景

次に宗達派の屛風、尾形光琳、酒井抱一と続き、さらには江戸初期の絵師で、浮世絵の祖といわれた岩佐又兵衛、幕末に活躍した復古大和絵派の絵師・冷泉為恭はじめ、江戸時代を代表する絵師たちが描いたそれぞれ特徴のある『伊勢物語』が並びます。

第2章展示風景



第3章 伊勢物語の意匠 ―物語絵と歌絵のあわい―


展示は、2階の展示室5に続きます。

和歌とその歌の内容を描いた扇型の絵を集めた「扇の草子」と呼ばれる《扇面歌意画巻》は、扇面がパタパタと音をたてて空中に浮かんでいるように見えて、にぎやかで華やいだ雰囲気が感じられます。


《扇面歌意画巻》(部分)江戸時代 17世紀 根津美術館蔵
通期展示

今まで見てきた作品は物語の場面が描かれた「物語絵」でしたが、こちらは和歌の情景が描かれた「歌絵」。全部で100首が描かれた和歌のうち、『伊勢物語』からは29首もの和歌が取られているのがこの作品の特徴です。

右から左に物語を追っていくのが絵巻物ですが、はじめに蓋の絵、次に蓋を開けて裏蓋の絵、最後に箱の中の見込の絵という具合に、蓋を開けながら物語の展開を見ていくのが蒔絵の硯箱。
蓋の下には鏡が置かれていて、裏蓋の絵を見ることができるので、蓋を開けた気分で物語の展開を楽しむことができます。

第3章展示風景 


『伊勢物語』はいくつかの章段のあらすじを知っている程度だったのですが、物語にちなんだ作品を見ているうちにその魅力に引き込まれ、『伊勢物語』についてもっと詳しく知りたいと思わせてくれる展示でした。


同時開催


展示室3 仏教美術の魅力 ー近世の仏像ー


見た瞬間、大きなインパクトが感じられた、忿怒相の不動明王や愛染明王、すべてを包み込んでくれるやさしいお顔の大日如来。
展示室3には、根津美術館が所蔵する室町時代から江戸時代の仏像の優品が展示されています。


右から 《不動明王坐像》日本・室町時代 15世紀、
《愛染明王坐像》日本・ 江戸時代 17世紀、
小沼正永作《大日如来坐像》日本・江戸時代 正徳2年(1712)
いずれも根津美術館蔵 通期展示



展示室6 口切 ー茶人の正月ー


11月は、茶席で茶壺の封を切り、この年の初夏に摘んだ新茶をいただき、茶の湯の新しい一年の始まりの月。茶人たちの正月にふさわしい茶道具が展示されています。

《肩脱茶壺 銘 長門》福建 中国・元~明時代 14~15世紀
根津美術館蔵 通期展示

「肩脱」とは口から肩にかけて釉薬が施されていない茶壺のことで、この作品は、封をするときに使用された紙が残存する加賀藩前田家伝来品です。


ミュージアムショップ


展示作品のカラー図版はもちろん、各分野の作品の鑑賞ポイントに関するコラムも充実した特別展図録はおすすめの一冊です。

特別展図録「伊勢物語―美術が映す王朝の恋とうた―」



新年のカレンダー、オリジナル香「伊勢物語」はじめオリジナルグッズも盛りだくさん。
ミュージアムショップにもぜひお立ち寄りください。



三館合同キャンペーン 秋の三館美をめぐる2025

 
今秋も、三井記念美術館・五島美術館・根津美術館では三館合同キャンペーン実施中!
詳しくはこちらをご覧ください⇒秋の三館美をめぐる2025




2026年度の展覧会スケジュールが発表されました⇒年間スケジュール
来年度も充実のラインナップなので、毎回の展覧会か楽しみです。

2025年10月27日月曜日

山種美術館 【特別展】日本画聖地巡礼2025 ー速水御舟、東山魁夷から山口晃までー

東京・広尾の山種美術館では、【特別展】日本画聖地巡礼2025  ー速水御舟、東山魁夷から山口晃までーが開催されています。

山種美術館外観


今回の特別展は、2023年に開催された「日本画聖地巡礼」展の第二弾。
第一弾では日本国内各地の名所や自然の景色などが楽しめましたが、今回はエジプトのピラミッドをはじめ、海外の聖地も巡礼してさらにパワーアップ。
画題となった土地や、画家と縁の深い聖地を巡ることができる、とても楽しい展覧会です。

それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


展覧会名  【特別展】日本画聖地巡礼2025 ―速水御舟、東山魁夷から山口晃まで―
会 場   山種美術館
会 期   2025年10月4日(土)~11月30日(日)
開館時間  午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日   月曜日(11/3(月・祝)、11/24(月・振休)は開館、11/4(火)、11/25(火)は休館)
入館料   一般1400円、大学生・高校生1100円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
※各種割引等は同館公式ホームページをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/

展示構成
 第1章 日本画の聖地を訪ねて ―北海道から沖縄まで―
 第2章 海を渡って出会った聖地

※展示室内は次の1点を除き撮影禁止です。掲載した写真はプレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。

今回の撮影可の作品は、1930(昭和5)年、イタリア・ローマで開催されたローマ日本美術展覧会に出品された速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】(山種美術館)です。スマートフォン・タブレット・携帯電話限定で写真撮影OKです。展示室内で撮影の注意事項をご確認ください。

速水御舟《名樹散椿》【重要文化財】1929(昭和4)年
紙本金地・彩色 山種美術館

第1章 日本画の聖地を訪ねて ―北海道から沖縄まで―


展示の冒頭を飾るのは、奥村土牛《城》。


第1章展示風景
左手前が 奥村土牛《城》1955(昭和30)年 紙本・彩色
山種美術館

描かれているのは白鷺が羽を広げているような優美な外観から「白鷺城」とも呼ばれる姫路城。
天守部分が国宝に指定され、平成5(1993)年には奈良の法隆寺とともに日本で初の世界文化遺産に登録された姫路城は、観光案内の写真などでは石垣や天守閣をはじめとした全体像で紹介されることが多いのですが、土牛が描いたのは、天守閣が目の前に迫ってくるかのようにそびえる迫力いっぱいの姫路城でした。

東京画壇ではライバルどうしの川端龍子と横山大観、そして「東の大観、西の栖鳳」と並び称された京都画壇の重鎮、竹内栖鳳。近代日本画界の巨匠たちの作品が並んで展示されてます。

左から 川端龍子《月光》1933(昭和8)年 絹本・彩色、
横山大観《飛瀑華厳》1932(昭和7)年 絹本・墨画淡彩
竹内栖鳳《潮来小暑》1930(昭和5)年 絹本・彩色
いずれも山種美術館

この中でも「会場芸術」を提唱した川端龍子の作品は特に個性的。

川端龍子《月光》1933(昭和8)年 絹本・彩色 山種美術館

作品タイトルは《月光》ですが、場所は日光。
姫路城と同じく世界文化遺産に登録されている「日光の寺社」のうちのひとつで、三代将軍徳川家光の霊廟・輪王寺大猷院拝殿が描かれた作品なのですが、彩色や彫刻によって重厚で荘厳な雰囲気を醸し出す建物を、下から見上げた破風部分を大きくクローズアップしています。

大胆なトリミングをした作品がある一方で、東京の街の景色を俯瞰的に描いたのは山口晃さんの《東京圖  1・0・4 輪之段》(山種美術館)。
この時は作者の山口晃さんにお会いできました!

山口晃《東京  1・0・4 輪之段》2018-25(平成30-令和7)年
カンヴァス・彩色 山種美術館


大河ドラマ「いだてん」のオープニング映像用に制作されたこの作品には、東京都心部の建物や、通りを歩く人物が画面いっぱいに描き込まれていて、東京タワーや新宿の高層ビルがあるので現代の東京かと思ったら、浅草公園にあった凌雲閣は関東大震災で倒壊したはずなのに描かれていたりなど、細部まで見ているといくら時間があっても足りないくらいです。


自然の空気が感じられる大画面の作品も展示されています。

奥田元宋《奥入瀬(秋)》1983(昭和58)年 紙本・彩色 山種美術館

幅約5.5mもあるこの大作は、古希(70歳)を過ぎた元宋が、大作に取り組めるのは80歳までが限度と考え、日展への出品作とは別に1年に1点、大作を描こうと心に決めたもののうちのひとつです。
目の前に立つと、秋の涼しげな風とともにせせらぎの水音が聞こえてきて、その場であざやかな朱色に色づいた紅葉を見ながら散策しているような気分になってきます。

川端康成に「京都を描くなら、いまのうちですよ」と勧められて東山魁夷が京都を描いた連作「京洛四季」4点も一挙公開されています。

左から 東山魁夷《春静》1968(昭和43)年、《緑潤う》1976(昭和51)年、
《秋彩》1986(昭和61)年、《年暮る》1968(昭和43)年
いずれも紙本・彩色 山種美術館


第2章 海を渡って出会った聖地


ローマ日本美術展覧会の使節として渡欧した際に速水御舟が描いた街並みのスケッチや、帰国後に描いたギリシャ遺跡の作品は、以前、山種美術館で拝見して(※)とても気に入ったので、再会できてうれしかったです。
フィレンツェ、シエナをはじめ、トスカーナ地方の街を歩いた時のことを思い出しながら眺めていました。
(※)2016年に山種美術館で開催された【開館50周年記念特別展】速水御舟の全貌 ―日本画の破壊と創造―


右から 速水御舟《塔のある風景(写生)》、《フィレンツェ アルノの河岸の家並(写生)》
どちらも1930(昭和5)年 紙本・インク、淡彩 山種美術館

中国・江南地方の経済、文化の中心都市として栄えた蘇州はもう一度行ってみたい街のひとつ。「水の都」らしい景色が描かれた竹内栖鳳の《城外風薫》も好きな作品です。

竹内栖鳳《城外風薫》1930(昭和5)年 絹本・彩色 山種美術館


イタリアのトスカーナ地方や中国・蘇州は、行こうと思えば今でも行くことができますが、全土に退避勧告や渡航中止勧告が出ているイラクにはとても行くことができません。
平山郁夫《バビロン王城》(山種美術館)に描かれた鮮やかな青色のイシュタル門を見て、1990年代半ばに奇跡的に観光客に門戸が開かれていたイラクに行き、イシュタル門の前で記念撮影をした時のことを思い出しました。
(※)イラク・バビロンにある現在のイシュタル門はレプリカです。本物はドイツ・ベルリンのペルガモン博物館で復元展示されているので、ペルガモン博物館が改修工事を終えて再開したらまた訪れてみたいです。


いつものことながら、展覧会出品作品をデザインしたグッズなど人気商品も盛りだくさん。
なんと、山口晃さんの《東京圖  1・0・4 輪之段》(山種美術館)がクリアファイルになっていました!
東山魁夷「京洛四季」のマグネットも新商品です。



出品作品全51点を収録した展覧会図録もおすすめです。




観覧後の大きな楽しみは、展覧会出品作品にちなんだオリジナル和菓子。1階「Cafe椿」にもぜひお立ち寄りください。



作品の横には作品解説とあわせて、作品が描かれた聖地の写真も添えられているので、展示を見ながら北海道から沖縄まで、そして海外にも行った気分になれて、ヴァーチャルな旅行が楽しめる展覧会です。
美術館で聖地巡礼の旅を体験してみませんか。

2025年10月21日火曜日

静嘉堂@丸の内 静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝

東京・丸の内の静嘉堂@丸の内(明治生命館1階)では「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)開催記念 修理後大公開!静嘉堂の重文・国宝・未来の国宝」が開催されています。



静嘉堂@丸の内が開館して3周年となる記念すべき今回の展覧会では、大阪・関西万博にちなんで、国宝3件、重要文化財17件、重要美術品10件、そして20世紀初頭の博覧会出品作20件余りや修理後初公開10件が一挙公開されて、静嘉堂ならではの東洋絵画の逸品が勢揃いします。
そして、展示のテーマも大きく分けて3つあって、前期後期でほぼ全作品が入替えになるというとても盛りだくさんの内容が楽しめる展覧会です。

展覧会開催概要


会 期  2025年10月4日(土)~12月21日(日)
      前期:10月4日(土)~11月9日(日)
      後期:11月11日(火)~12月21日(日)
      ※前後期でほぼ全作品の入替えがあります。
会 場  静嘉堂文庫美術館(静嘉堂@丸の内)
休館日  月曜日(ただし、11月3日、24日は開館)、11月4日(火)、25日(火)
開館時間 午前10時~午後5時
     第4水曜日(10月22日、11月26日)は午後8時まで
     12月19日(金)、20日(土)は午後7時まで開館
     ※入館は閉館の30分前まで ※毎週木曜日はトークフリーデー
入館料  一般1,500円、大高生1,000円、中学生以下無料
※展覧会の詳細、関連イベント等は静嘉堂文庫美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.seikado.or.jp

※撮影条件  ギャラリー4 国宝《曜変天目》以外は撮影可
       *携帯電話・スマートフォン・タブレットのカメラは使用できます。動画撮   
        影・カメラでの撮影は不可
※掲載した作品は、フォトモ作品(個人蔵)を除き、すべて静嘉堂文庫美術館所蔵です。


展示構成
 第1章 岩崎家(静嘉堂)と展覧会
 第2章 修理後初公開!詩画一致の絵画
 第3章 未来の国宝!謝時臣「四傑四景図」と菊池容斎の巨編(前期)/伝周文「四季山水図屏
    風」と式部輝忠「四季山水図屏風」(後期)
 第4章 渡辺崋山と彌之助・小彌太父子(前期)/静嘉堂の国宝ー宋元の文物より(後期)
 エピローグ 重要文化財・明治生命館で三菱二号館再現フォトモ 

   
展覧会チラシ


テーマ1 博覧会出品作品が勢揃い!


展示の冒頭を飾るのは、明治28(1895)年に平安遷都1100年記念事業として京都が初めて会場となった第四回内国勧業博覧会に出品された野口幽谷《菊鶏図屏風》(下の写真右、前期に右隻、後期に左隻が展示されます)。

第1章展示風景

第四回内国勧業博覧会の目玉はなんといっても、岩﨑家の資金援助により著名な東西日本画家によって制作された11件の屛風絵でした。
そのうちの1件が野口幽谷の《菊鶏図屏風》で、11件の中には、今回の展覧会では展示されていませんが、明治期の作で初めて重要文化財に指定された橋本雅邦《龍虎図屏風》(静嘉堂文庫美術館蔵)も含まれています。

明治43(1910)年にロンドンで開催された日英博覧会では、広大な美術展示場に33件もの国宝を含む古美術1138点、新美術(同時代の美術)263点が展示されました。
岩﨑家からは、浮世絵、琳派、油絵、そして《菊鶏図屏風》ほかが出品される中、異彩を放ったのが菊池容斎《阿房宮図》。


菊池容斎《阿房宮図》江戸時代(19世紀前半) 静嘉堂文庫美術館蔵
後期展示(11/11-12/21)


阿房宮とは、秦の始皇帝(在位 前259-前210)が長安(現在の西安)の西北の阿房に建てた宮殿のことで、始皇帝はここに宮女三千人を置き、日夜遊楽にふけったとされています。
《阿房宮図》では、秦を滅ぼした楚の項羽によって火が放たれ、3カ月間燃え続けたといわれる様子が描かれれていますが、まるでスペクタクル映画のラストシーンのような大迫力の画面に圧倒されます。

菊池容斎(1788-1878)は幕末・明治初期の日本画家で、狩野派、土佐派を学び、有職故実を研究して近代歴史画の先駆となり、明君、賢人、忠臣、烈婦など五百余人の肖像を描いた『前賢故実』10巻を著したことでも知られています。
今回の特別展ではのちほど紹介する《馮昭儀当逸熊図》《呂后斬戚夫人図》とあわせて、前後期で容斎の三大名幅を観ることができます。

テーマ2 修理後初公開!


1970年の大阪万博では万国博美術展が開催され、会場となった万国博美術館には世界各国から絵画・彫刻を中心に732点もの名作が集結しました。
静嘉堂からは国宝1件、重要文化財4件を含む水墨画の優品7件が出品されました。


第2章展示風景

年代がばれてしまいますが、実は1970年大阪万博には、筆者が小学生の時、家族ぐるみでお付き合いをしていた近所の方に便乗して行ってきました。
アメリカ館では、当時大きな話題になっていた「月の石」を見て宇宙へのロマンを感じたり、三菱未来館では、動く歩道に乗って、荒れ狂う海の中や溶岩渦巻く噴火口の中を通って当時の最新技術の映像に感動したことなどを覚えていますが、万国博美術館のことはその存在すら知りませんでした。

とは言っても、今でこそ上海博物館や台北の國立故宮博物院まで行って中国絵画を見るほど中国絵画が大好きなのですが、中国・明末の文人・政治家で、李自成の乱のときに自ら縊死し、明朝に殉じた倪元璐の《秋景山水図》を見て小学生の筆者が感動したかどうかは定かではありません。

重要文化財 倪元璐《秋景山水図》明時代(17世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
後期展示(11/11-12/21)

第2章には中国と日本の水墨画の名品が展示されていますが、ここでのもう一つの見どころは、修理後初公開の作品が数多く展示されていることです。
中でも注目したいのは修理後初公開された伝周文の重要文化財《三益斎図幷序》。

重要文化財 伝周文《三益斎図幷序》応永25(1418)年 序
静嘉堂文庫美術館蔵 前期展示(10/4-11/9)

解説パネルには、修理前と修理後の状態の写真が掲載されいてるのですが、修理前はしわしわの状態だったのが、修理後はクリーニングに出してアイロンをかけたようにシワがきれいにとれているのです。
もちろん、実際には決してアイロンをかけたりなどはしませんが、ホワイエで修理の工程などの紹介映像が放映されているので、ぜひご覧いただきたいです。

作品を解体修理すると新たな事実が発見されることもあるのですが、以前より模本説があった《三益斎図幷序》でも、平成30年から3年かけて行われた解体修理で、上の写真右の序と、左の画の紙質が異なることが明らかになり、模本説が証明されたのです。
それでもこの作品は周文の筆致を伝える貴重な作品であるという評価は変わりませんでした。


テーマ3 未来の国宝!


そして今回の特別展の3つ目のテーマは「未来の国宝!」。

美術作品の中には、どんなに素晴らしいものであっても、国宝や重要文化財に指定されていないものが数多くあります。
そこで、ここでは今回を機にぜひとも後世に伝えたい静嘉堂の所蔵品を「未来の国宝」と銘打って紹介しています。

前期(10/4-11/9)に紹介されるのは中国と日本の巨幅です。


第3章展示風景

中国の巨幅は、中国古代の英傑の苦難の時代が描かれた四幅対の大作《四傑四景図》。(上の写真右の四幅)
作者は中国・明末の蘇州を中心に活躍した職業的文人画家・謝時臣。
四幅それぞれからは、後世名を挙げた英傑も、妻に愛想をつかされたり、食べるのにも困窮したりと、売れない時の悲哀がひしひしと伝わってくる作品です。

続いては、さきほど《阿房宮図》でご紹介した菊池容斎の二幅の大作。
こちらも中国の故事に基づいた作品です。

右から 菊池容斎《馮昭儀当逸熊図》 天保12(1841)年、《呂后斬戚夫人図 
天保14(1843)年、どちらも静嘉堂文庫美術館蔵 前期展示(10/4-11/9)


ひとつは、前漢の元帝や側室たちが野獣の戦いを観戦しているときに、突然、一頭の熊が檻から飛び出し、御殿に上ろうとしたところ、他の側室の女性たちが逃げる中、馮媛だけが勇敢にも熊の前に立ちはだかり、元帝を守ろうとした場面が描かれた《馮昭儀当逸熊図》。
こちらは護衛がすぐに熊を打ち殺したので大事には至らなかったのですが、《呂后斬戚夫人図》には見るも残酷な場面が描かれています。
前漢の高祖劉邦の正妻・呂后が、劉邦没後、自身の子・恵帝の地位を守るため、劉邦が寵愛した戚夫人が生んだ皇子・趙王を毒殺し、戚夫人の手足を切断して目をえぐり、厠に投げ込み、ヒトブタと呼ばせたという逸話に基づいて描かれたこの作品は、菊池容斎がその場で見てきたのではないかと思えるほどの迫力があります。

後期(11/11-12/21)に展示されるのは、前期とは打って変わって、これぞ室町山水画といえる落ち着いた雰囲気の2帖の屛風です。

重要文化財 伝 周文《四季山水図屛風》室町時代(15世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
後期展示(11/11-12/21)

重要文化財 式部輝忠《四季山水図屛風》室町時代(16世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
後期展示(11/11-12/21)

周文、式部輝忠とも、室町時代を代表する絵師なのですが、二人とも謎の多いことでも知られています。
周文は、京都・相国寺の禅僧で、室町幕府の御用絵師になり、雪舟の師とされるにもかかわらず、作品には印も款記もないので確実に真筆とされる作品がなく、生没年も不明。
式部輝忠も、16世紀中期に鎌倉、小田原など東国を中心に活動したことが近年の研究によりわかり、屛風の大作が5点、掛軸は20数点、扇面画は100点以上と多くの作品が残されているにもかかわらず、生没年も経歴も全く判明していないのです。

風のように現れ、風のように去り、名作だけは残していくというミステリアスさがかえって「かっこいい」と感じる二人の絵師の作品は、ぜひ国宝として後世に残ってほしいと思いました。


第4章は、前期と後期で作品も展示のテーマもがらりと変わります。
前期(10/4-11/9)は、三河(愛知県)田原藩の家老で、文人画家でもあった渡辺崋山(1793-1841)の名幅が並びます。

第4章展示風景


西洋事情を研究していた渡辺崋山は、天保8(1837)年、幕府が米国商船モリソン号を異国船打払令に基づいて砲撃して、退去させた事件(モリソン号事件)など、幕府の鎖国政策を批判したため逮捕され、国許の田原藩に蟄居を命じられました(蛮社の獄 天保10(1839)年)。
蟄居となった崋山は国許でも絵を描き、弟子たちが困窮した崋山を助けるため崋山の絵を売ろうとしたことなどが「蟄居中不謹慎」と伝わり、天保12(1941)年、その責任が藩主に及ぶのをおそれ自刃。アヘン戦争で清国がイギリスに敗れ開国させられたことに衝撃を受けた幕府が異国船打払令を廃止して薪水給与令を出したのは、その翌年の天保13(1842)年のことでした。
 誰よりも民のため、国のためを思った崋山は、明治人たちにとってあこがれの対象でした。岩﨑小彌太氏が崋山の作品を実直に模写した《模本「崋山筆月下鳴機図」》からは、その憧れの強さが伝わってきます。

後期(11/11-12/21)には、それぞれ南宋画院の代表的な画家、馬遠の伝承を持つ国宝《風雨山水図》、伝夏珪の《山水図》や、中国・元時代を代表する文人・趙孟頫の国宝《与中峰明本尺牘》」はじめ中国・南宋時代から元時代の書画の名品が展示されます。
 
国宝 伝 馬遠《風雨山水図》南宋時代(13世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
後期展示(11/11-12/21)


国宝 趙孟頫《与中峰明本尺牘》元時代(14世紀) 静嘉堂文庫美術館蔵
後期展示(11/11-12/21)


ホワイエに巨大な洋館が出現!
これは、フォト(写真)とモデル(模型)を組み合わせた造語「フォトモ」の作品。

ホワイエのフォトモ作品

作者は、写真とは何かを追求し、「フォトモ」をはじめ、様々な写真技術による作品を発表し、個展、ワークショップなど多方面に活躍する糸崎公朗氏です。

上の写真右は、《復元フォトモ・三菱二号館 明治28(1895)年竣工》。静嘉堂@丸の内がある明治生命館が建つこの地に昭和5(1930)年まで存在した三菱二号館の復元です。
上の写真左は、三菱二号館と、現在の明治生命館と丸の内の人々を「フォトモ」として立体空間に合成した《タイムスリップ復元フォトモ+AI・三菱二号館と丸の内 明治28(1895)年~令和7(2025)年》。(どちらも糸崎公朗作、個人蔵、制作年は令和7(2025)年)

この作品を見てうれしくなりました。ジオラマ好きの筆者にとってはたまらない展示です。


ミュージアムショップには、静嘉堂のコレクションをモチーフにしたオリジナルグッズが盛りだくさん。
今回一番驚いたのは、菊池容斎《馮昭儀当逸熊図》《呂后斬戚夫人図》がデザインされたほぼ実物大のブランケット。凄惨な場面まできちんと再現されています。11月9日(日)までの受注販売です。
(下の写真は報道内覧会時にホワイエに展示されていたのを撮影したものです。)




展示作品のカラー図版はもちろん、緻密に描かれた巨幅や水墨画の繊細な表現も部分アップを掲載するなどしてその魅了を再現している展覧会公式図録もおすすめです。修理報告を含めたコラム6本、詳細な作品解説、充実の関連年表なども掲載されています。


タイトルどおり、万博等出品作、修理後初公開の作品、未来の国宝に推したい作品が大集結した展覧会です。前後期ともぜひご覧ください!