2018年6月6日水曜日

泉屋博古館分館「うるしの彩り-漆黒と金銀が織りなす美の世界」ブロガー内覧会

かつて住友家の麻布別邸のあった六本木一丁目に建つ泉屋博古館分館。6月2日(土)から「うるしの彩りー漆黒と金銀が織りなす美の世界」が始まりました。


蒔絵の鼓、硯箱、香箱、どれもがまばゆいばかりに金や銀の装飾で輝いています。そして、螺鈿の貝殻も見る角度によって青く、白く、そして紫色にキラキラと輝いています。

そんなきらびやかな作品が並んだとても素晴らしい展覧会。じめじめした天候が続く中、さわやかさが感じられるこの夏おススメの展覧会です。

それでは先日参加したブロガー内覧会の次第に沿って展覧会の魅力を紹介したいと思います。

はじめに「暑い中ようこそおいでいただきました。本日は絶好のうるし鑑賞日和です。」とユーモアたっぷりにご挨拶いただいた野地分館長。今回の展覧会は「住友コレクションの漆工芸品が東京初上陸!」とのことですので、見逃すわけにはいきません。

続いて担当学芸員の森下さんと外山さんのギャラリートーク。

第1会場の様子。
黒を基調とした展示スペースが、金銀の輝きを引き立てています。





森下さんに最初に紹介いただいたのは、第1会場入って左側の能に使われる楽器のコーナー。





「住友コレクションのキーパーソン、住友家第十五代当主 住友春翠(1864-1926)は能を好み、能で使われる楽器を蒐集しました。」と森下さん。
「鼓や太鼓、笛には鯉、桐と鳳凰といった吉祥のある模様が描かれています。」

能の楽器の向かい側には、能を鑑賞したあとのおもてなしに使われる会席の道具が展示されています。こちらは二枚脚の膳で、膳の上の扇面には謡曲(能の謡)のモチーフが描かれています。



中央のガラスケースには、同じく能の演目の一場面が描かれた扇面のお盆が展示されています。招かれた客人たちは、食事をしながら会席道具の絵柄を見て、話が弾んだのでしょう。

お盆の反対側には一見すると黒いお盆。


しかし、斜め横からよく見ると、今尾景年《金閣寺》、幸野楳嶺《平等院・宇治橋》はじめ当時の京都画壇の売れっ子画家による京都の名所風景が浮かび上がってきます。

次に唐物の香合が2つ続きます。



「(上の写真左)《黒漆青貝芦葉達磨香合》(作品番号17)は室町幕府八代将軍 足利義政が相阿弥に下絵を描かせたという香合です。器は中国伝来のもので、織田有楽斎、建仁寺、千家と伝来し、住友家に伝わったものです。」と森下さん。
図柄は、達磨が一枚の芦の葉に乗って揚子江を渡り魏に入ったという説話を描いた芦葉達磨図ですね。

また、和物に戻ります。
「下絵を描いた酒井抱一の《椿蒔絵棗書状》(掛軸 作品番号23)とともに伝わった原羊遊斎の《椿蒔絵棗》(下の写真手前 作品番号22)です。」



絵画作品も展示に彩りを添えています。


《柳橋柴舟図屏風》(上の写真右 作品番号27)
右から順に柳の葉の色づきや柳にかかる雪で春夏秋冬を表しています。
画面に流れる川はよく和歌に詠われた宇治川。
「宇治川は江戸時代に好まれた題材です。」

続いて木挽町狩野家第二代 狩野常信の《紫式部・黄蜀葵・菊図》(上の写真左 作品番号28)。
中央は、紫式部が石山寺で月明かりの中、須磨、明石の段の着想を得ているところです。
「このように江戸時代には古典文学への強いあこがれがありました。」

こちらの硯箱は、表と裏で物語がつながっているので、鏡で裏面もご覧になってください。


部屋の中で香を楽しむのは平安時代から。こちらは江戸時代の作品で、香を当てるゲームの道具《秋草蒔絵十種香箱》(作品番号33)。


しだれ柳の描かれた《柳橋柴舟図屏風》のちょうど向かいに展示されている豪華な香箱《蜻蛉枝垂桜蒔絵香箱》の図柄は枝垂桜。




ここで翌日(6月2日)にゲストトークが予定されていた室瀬智弥さん(目白漆芸文化財研究所 代表取締役)がご登場され、《蜻蛉枝垂桜蒔絵香箱》について解説していただきました。

「黒地をバックにアワビの螺鈿、側面の橋には鉛を置くなど、うるしの接着性を活かして手間をかけずにデザインをうまく配置しています。桃山時代の高台寺蒔絵を踏襲しています。」
と室瀬さん。

戦国時代や桃山時代は、政治情勢が安定していなかったので、長い時間待っていられない注文主の武士たちのため、手間のかからない技法がとられたとのことです。
この香箱は江戸時代の作品ですが、こんな豪華な香箱が手間をかけていないものとは、解説をおうかがいするまでわかりませんでした。

続いて第2会場に移ります。
こちらの会場は白を基調とした落ち着いた雰囲気です。

第2会場の様子

こちらでは、京都の本館から来られた外山さんのトーク。
「こちらのコーナーには中国や琉球の漆工芸品が展示されています。蒔絵は日本独自に発展した技法で、中国や琉球では、漆を厚塗りして彫刻刀で彫る彫漆、黒漆に光沢のある貝殻を貼りつける螺鈿が発展しました。」と外山さん。

「こちらは明代の万歴年間の盆で皇帝の所蔵品でした。皇帝の象徴である五本の爪を持った龍が描かれていて、右側の盆は皇帝のシンボルカラーである黄色の漆が使われています。」
「左の盆の龍は爪が四本ですが、爪と爪との間が空いているので、皇帝から下賜されたときに爪を一本削ったのでしょう。」


中国では花鳥、吉祥、理想郷としての仙人や楼閣山水、子孫繁栄を願った子供たちの図柄が好まれました。

《唐子図螺鈿長方盆》(下の写真左 作品番号49)には蓮の花の上に乗った唐子が描かれています。蓮は連に通じ、元気な子供たちが連なって生まれてくることを願ったのです。


《唐児遊図屏風》(作品番号50)。
子供たちのわんぱくぶりがなごめます。


楼閣山水の図柄が並びます。


伝・仇英《蓮池納涼図》(下の写真右 作品番号56)も優雅です。



「螺鈿は、中国では日用品として使われていたのでほとんど残っていませんが、日本ではトップレベルの『お宝』として入ってきたので大切に残されているのです。」と外山さん。
「琉球でも日中両国への主要な献上品として螺鈿は盛んに制作されました。《楼閣山水箔絵藤縁盆》は(上の写真左端のお盆 作品番号61)は日本向けの中国趣味に合わせて作られていますが、どことなく南国的なおおらかさが感じられます。」

「今回の展覧会は、中国、琉球、朝鮮、日本の漆工芸品の技法、モチーフの違いがわかるのも見どころの一つです。」

第2会場の左側には江戸時代後期から明治時代にかけての作品が展示されています。

《吉野山蒔絵十種香箱》(作品番号 62)

文久年2年(1862年)のロンドン万国博覧会や慶応3年(1867年)のパリ万博では、この作品のような漆芸作品も出展され、欧米の注目を集めました。
明治に入ってからも、欧米に追いつき追い越せの風潮の中、漆芸作品は輸出されました。
「今でいえば明治の超絶技巧ですね。」と外山さん。



ここで再び室瀬さんご登場。
「技術的に一級の作品を作った人たちの技を残しつつ、新たなものにつなげていきたい。」という心強いお言葉をいただきました。

残念ながら室瀬さんのゲストトークは終わってしまいましたが、最後に森下さんからさまざまな関連イベントのご案内がありました。
尺八のコンサートもあります。尺八の内側には漆が塗られているのです!
詳細は展覧会の公式サイトでご確認ください。

そして最後に森下さん。
「イベントも盛りだくさんです。みなさんぜひお越しください。」(拍手)

さて「うるしの彩り」はいかがだったでしょうか。
きらびやかで細やかな装飾は、近くで見ないとよくわかりません。
ぜひその場でじっくりうるしの彩りをご鑑賞いたければと思います。