2018年7月25日水曜日

青い日記帳×ショーメ展ブロガー特別内覧会 in三菱一号館美術館

明治の洋館の趣を残す三菱一号館美術館にピッタリの展覧会が始まりました。
パリの伝統あるジュエラー(宝石商)、ショーメの宝飾品の数々が展示されるショーメ展です。


宝石の展覧会というと、男性のみなさんは「興味ないなあ」とすぐにおっしゃるかもしれません。私も展覧会を見るまでは同じように思っていました。
でも、展示会場に入ればすぐにそんな考えは吹き飛んでしまいます。

大きな肖像画とジュエリーの展示ケース、そしてこの三菱一号館美術館の洋風の内装がコラボして、まるでヨーロッパの貴族のお屋敷に迷い込んだような不思議な気分。
女性だけでなく決して男性も裏切らない内容の展覧会です。
(展覧会の概要はこちらです→ショーメ展特設サイト)

さて、さっそく先日参加したブロガー内覧会の様子をご紹介したいと思います。
※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。

はじめに高橋館長からご挨拶がありました。

「今回の展覧会は『ブランドとのコラボ』という新たな試みです。レイアウトにも凝りました。ヴァチカンからは普通では借りることができないローマ教皇の王冠が来日しています。ぜひ多くの方にご覧になっていただければと思います。」

  こちらが、最初の部屋の右奥に鎮座する「皇帝ナポレオン1世より贈呈された教皇ピウ
 ス7世のティアラ」です。ヴァチカンはこのティアラの修復をショーメに委任しました。


続いて、今回の展覧会を担当した同館学芸員の岩瀬慧さんと「青い日記帳」主宰のTakさんのトーク。
今回の展覧会のテーマは宝石なので、女性の方が担当されたのではと思っていましたが、岩瀬さんは男性!だからこそ男性にも受ける内容になっているのでしょうか。
岩瀬さんはこれまで昨年の「レオナルド×ミケランジェロ展」や一昨年の「PARIS オートクチュール」展を担当されたとのことです。

Takさん 今まで担当された中でどの展覧会が大変でしたか。
岩瀬さん やはり今回のショーメ展でしょうか。
     今回は特に作品をどう展示するかという点に力を注ぎました。ショーメ側も熱
    意があって、よく議論しました。時には建物のキャパシティをオーバーするよう
    な提案もあって調整に苦労しました。
     レイアウトの作業は、レタックというフランスでファッション・ショーの舞台
    装置を引き受けているチームが担当しました。
Takさん フランスからスタッフが来たのですか。
岩瀬さん 50人も来ました(→すごい!)
Takさん 展示は必ずしも年代順でなく、テーマ別になっていますね。
岩瀬さん 最初がナポレオン、続いてティアラ(頭頂部につけるアクセサリー)、中国・イ
    ンド、中世・ルネサンス、アールデコ、トランスフォーム(変化=宝石の加工)、
    そして最後が日本の部屋です。
Takさん 展示の雰囲気がいいですね。
    最初の部屋はナポレオンとジョセフィーヌの絵があって、入った瞬間、こここは
   どこ?といった感じでした。

 こちらが最初の部屋です。 (「Ⅰ 歴史の中のショーメ」)
 ナポレオン1世と皇妃ジョセフィーヌの肖像画。いきなりフランスです!
 

 肖像画と宝飾品のショーケース。



高橋館長 絵画と宝石を並べて展示して、社会史や文化史とのつながりを見ていただきた
   いというコンセプトです。
Takさん 展示室内に入って、絵画もあるので安心しました(笑)。キラキラだけかと思って
   いたので(笑)。これなら女性が夫や彼氏と一緒に来ても大丈夫ですね。

 ここで展示室内をご案内しましょう。

 Ⅱ 黎明期のミューズ
 (1)皇妃ジョセフィーヌ
    左の宝飾品の展示ケースの後ろの壁に描かれているのは麦の穂。
    これは皇妃ジョセフィーヌのアイコン。豊穣の女神セレスに由来しています。


 (2)王妃オルタンスと皇妃マリー=ルイーズ
   ナポレオン1世の2番目の皇妃マリー=ルイーズの肖像画と宝石
   (王妃オルタンスのオルタンシア(アジサイ)のブローチは後で出てきます。)




 Ⅲ 戴冠!ティアラの芸術
  この広い部屋にティアラがずらり!この部屋は撮影可です!

 Ⅳ 旅するショーメ
 (1)時間旅行
   下の写真左は皇妃マリー=ルイーズのゴシックスタイルのベルト


 注文主にちなんでホープ・カップと呼ばれる大きなカップ。
 金銀細工の細かさがすごいです!何回もぐるぐる回って四方から眺めてました。


 (2)水平線の彼方の新たな世界へ
    中国風の扇もあります。

 フォトスポット
  記念写真をぜひ!

 Ⅴ 自然を披露する
 (1)自然史
   重厚なディスプレイケースに圧倒されます。
   このディスプレイケースの重さに耐えるように床は補強したとのことです。


  自然史のコーナーなので、よく見ると百合だったり、蝶だったり、ハチだったり。


 (2)「この光輝く金と宝石の世界」(ボードレール)
   金銀、真珠は自然の恵み、光り輝いています。

 Ⅵ 身につける芸術=ジュエリー
   後半になると映像が多くなるのが今回の展覧会の特徴のひとつです。
   下の画面では人の首から上の映像が360°回転するので、ネックレスを身につけたと
  きのイメージがわかるようになっています。
   ここはまだおとなしい動きの映像ですが、次のコーナーからは少ずつ動きがダイナ
  ミックになって、そこはまるでチームラボ。


 Ⅶ キネティック・アートとしてのジュエリー
  
  中央のディスプレイの左に飾られている《6羽のツバメの連作》と連動して右の画面
 ではツバメが壁いっぱいに勢いよく飛んでいます。
  (《6羽のツバメの連作》は写真では小さくてよくわからないので、ぜひ近くでご覧に
   なってください。) 



 Ⅷ 遥けき国へーショーメと日本
  そしていよいよ日本の部屋。
  正面のスクリーンの映像はめまぐるしく変化するので、その場に立っていると足元を
 すくわれそうな感覚。やっぱりチームラボ、楽しい気分です。


  中央の円形のディスプレイには西洋と日本の文化がマリアージュしたネックレスやイ
 アリング。


 こちらは漆器の硯箱。



さて、ふたたびトークに戻ります。

Takさん 岩瀬さんおススメの一点は。
岩瀬さん 最後の日本の部屋の雷神のブローチです。19世紀後半にはフランスに日本の芸
    術が入ってきましたが、この雷神は俵屋宗達のとちがい、服を着ていて、女性と
    向かい合っています。ジョセフ・ショーメはいろいろな要素を混ぜ込んでこのブ
    ローチをつくったのでしょう。
     この不思議さを楽しんでください。


Takさん 雷神が叩いているのはどうも太鼓のように見えないですね。
岩瀬さん タンバリンのようです(笑)。
高橋館長 西洋のジュエリーはきらきら輝いています。これは教会のステンドグラスに見
    られるように、ヨーロッパの、特に北の方の人たちの、光に対するあこがれが原
    点ではないでしょうか。
Takさん ただ「きれい」というのでなく、そこには西洋的価値観、光へのあこがれがあり
    ますね。

Takさん 他に見るべきポイントはありますか。
岩瀬さん ダイヤモンドのカッティングとセッティングですね。
     ダイヤモンドのカッティングはルネサンス期から洗練されてきて、20世紀以降
    は格段の差で進歩しました。
     また、ダイヤモンドと一緒に飾られる金や銀も磨かれていないとダイヤモンド
    の輝きも悪くなります。ダイヤモンドと金や銀、その他の宝石とのセッティング
    や地金の彫刻も洗練されてきています。時代とともに洗練されてくるカッティン
    グやセッティングも見どころの一つです。
Takさん ダイヤモンドの輝きだけでなく地金の部分も注目ですね。
岩瀬さん もうひとつは、トランブルーズ(フランス語で「震えるもの」という意味)とい
    って、後ろに小さなばねが入っていて、身につけたときに震えて独特の輝きを見
    せる作品もあります。
Takさん ありがとうございました。それではみなさんショーメの輝きをお楽しみください
    (拍手)。

 王妃オルタンスのオルタンシア(アジサイ)のブローチはこちらです。
 アジサイの花の茎のところにバネがあるのがおわかりでしょうか。
 展示していると震えないので、自分の頭を揺らして角度の違いによる輝きの違いを味わいました。


 こちらが清楚な王妃オルタンスの肖像。
 暖炉がいい雰囲気を出しています。



さて、ショーメ展はいかがだったでしょうか。
繰り返しで申し訳ありませんが、男性でも十分楽しめる展覧会です。
ぜひともショーメの細かい技巧がほどこされた宝飾品を近くでじっくりご覧になっていただければと思います。