今回のテーマは「なりわい」。
ものを売ったり、作ったり、人やものを運んだり、磨いた芸を見せたり、今でもある生業(なりわい)も、今はもうない生業もあって、江戸時代の人たちの生き生きとした生活が見ることができるとても楽しい展覧会です。
3階企画展示室前のホワイエにある撮影スポット 富士山を背景に職人さんとぜひ記念写真を! |
※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示作品はすべてすみだ北斎美術館所蔵品です。
※展覧会は4月23日(火)から6月9日(日)までですが、前期と後期で展示替えがあります。
前期:4月23日(火)~5月19日(日) 後期:5月21日(火)~6月9日(日)
※関連イベントやコラボ企画もあります。詳しくはこちらでご確認ください
→すみだ北斎美術館公式ホームページ
最新情報は公式フェイスブック、ツィッターでご確認ください。公式ホームページの画面で見ることができます。
企画展示室入口 |
それでは200年ばかり前の江戸時代にタイムスリップしてみましょう。
「今回の展覧会では、北斎と一門の作品が、前後期で約100点展示されます。」と山際さん。
展示は6章構成になっています。
第1章 ものを売る生業
第2章 自然の恵みをいただく生業
第3章 人を楽しませる生業
第4章 ものを運ぶ生業
第5章 ものを作る生業
第6章 生業いろいろ
第1章 ものを売る生業
第1章展示風景 |
最初に出てくるのは葛飾北斎《東海道五十三次 桑名》。
焼き蛤(はまぐり)が名物だった桑名宿で、団扇を片手に蛤を焼いて売る女性と、おいしそうに食べている男性が描かれています。
葛飾北斎《東海道五十三次 桑名》前期展示 |
パネルの解説にも注目です。
作者や絵のタイトルや解説はじめ、描かれている生業も絵のタイトルの右下に書かれています。この絵の生業は「焼き蛤売り」。
「その手は桑名(=食わぬ)の焼き蛤」というダジャレもあったそうです。
「こちらが北斎にゆかりのある唐がらし売りです。」と山際さん。
「北斎は30代後半、「宗理」という雅号のころ、生活が苦しかったので七味唐がらしを売っていたと伝わっています。」
「北斎は30代後半、「宗理」という雅号のころ、生活が苦しかったので七味唐がらしを売っていたと伝わっています。」
牧墨僊『写真学筆 墨僊叢画』 全期間展示 |
左のページの左上に描かれているのが、大きな唐がらしの形のものを肩に下げて、そこに粉唐がらしの小袋を入れて売り歩く唐がらし売りです。
牧墨僊『写真学筆 墨僊叢画』(部分) 全期間展示 |
壁の所々に詳しい解説パネルがあるので、こちらも注目です。
新発見「蛤売り図」!
すみだ北斎美術館のコレクションに加わった葛飾北斎《蛤売り図》が、今回初めてお披露目されます。
蛤売りの上には、「蜆子(しじみ)かと思ひの外の蛤は げにく(ぐ)りはまな思ひつき影 蜀山人筆(花押)」と書かれた江戸時代後期の狂歌師・蜀山人の賛があります。
描かれた人物を「蜆子(けんず)和尚」(居所を定めず、夏も冬も一衲(いちのう)をまとい、蜆や蝦を食べていたという唐末の禅僧)に見立て、籠の中の貝は蜆かと思ったら、よく見たら大きい貝なので蛤だった。これはとんだ見当違い(「ぐりはま」)だと思いついた、といった意味。
「はまぐり」を倒置した「ぐりはま」は「貝合わせ」から来た言葉で、食い違うことや
あてが外れること。「思いつき影」は、思い「付き」と「月」影の掛詞(かけことば)。
さすが狂歌師として一世を風靡した蜀山人らしいエスプリのきいた賛です。
籠の中の蛤の白色は、貝殻を焼いて砕いて粉末にした胡粉で描かれています。
ぜひ近くでご覧になってください。
そしてもう一つ。「蜆子和尚」といえば京都大徳寺・真珠庵の《蜆子豬頭図襖》のように蝦を手に持ってうれしそうな顔をしているところを思い浮べるので、この絵に描かれた蛤売りのおじさんとはイメージが違いますが、威勢よくものを売るというより、少しうつむき加減で、どことなく世の中を達観したような表情をしているので、蜀山人が和尚さんに見立てたのも一理あるのかなと、勝手に想像してしまいました。
第2章 自然の恵みをいただく生業
「北斎の魅力は大胆な構図です。」と山際さん。
働いている場面だけでなく、焚火の前で暖をとる猟師を描いたりするところも北斎の魅力。そしてこの燃え上がるような炎の赤が印象的です。
さて、「北斎のなりわい大図鑑」はいかがだったでしょうか。
次回の企画展は、「門外不出」のアメリカ・フリーア美術館の北斎作品を「綴プロジェクト」の高精密複製画で綴る「フリーア美術館の北斎展」。
こちらも楽しみです。
すみだ北斎美術館のコレクションに加わった葛飾北斎《蛤売り図》が、今回初めてお披露目されます。
葛飾北斎《蛤売り図》 前期展示 |
蛤売りの上には、「蜆子(しじみ)かと思ひの外の蛤は げにく(ぐ)りはまな思ひつき影 蜀山人筆(花押)」と書かれた江戸時代後期の狂歌師・蜀山人の賛があります。
描かれた人物を「蜆子(けんず)和尚」(居所を定めず、夏も冬も一衲(いちのう)をまとい、蜆や蝦を食べていたという唐末の禅僧)に見立て、籠の中の貝は蜆かと思ったら、よく見たら大きい貝なので蛤だった。これはとんだ見当違い(「ぐりはま」)だと思いついた、といった意味。
「はまぐり」を倒置した「ぐりはま」は「貝合わせ」から来た言葉で、食い違うことや
あてが外れること。「思いつき影」は、思い「付き」と「月」影の掛詞(かけことば)。
さすが狂歌師として一世を風靡した蜀山人らしいエスプリのきいた賛です。
籠の中の蛤の白色は、貝殻を焼いて砕いて粉末にした胡粉で描かれています。
ぜひ近くでご覧になってください。
葛飾北斎《蛤売り》(部分) 前期展示 |
そしてもう一つ。「蜆子和尚」といえば京都大徳寺・真珠庵の《蜆子豬頭図襖》のように蝦を手に持ってうれしそうな顔をしているところを思い浮べるので、この絵に描かれた蛤売りのおじさんとはイメージが違いますが、威勢よくものを売るというより、少しうつむき加減で、どことなく世の中を達観したような表情をしているので、蜀山人が和尚さんに見立てたのも一理あるのかなと、勝手に想像してしまいました。
葛飾北斎《蛤売り図》(部分) 前期展示 |
第2章 自然の恵みをいただく生業
第2章展示風景 |
働いている場面だけでなく、焚火の前で暖をとる猟師を描いたりするところも北斎の魅力。そしてこの燃え上がるような炎の赤が印象的です。
葛飾北斎《百人一首うはかゑとき 源宗干朝臣》前期展示 |
葛飾北斎《覗機関(のぞきからくり)》 前期展示 |
覗機関(のぞきからくり)は、凸レンズを通して奥行きを強調した絵を見たり、紙芝居のように絵を替えて物語を見せるものでした。
安定しない台の上に高下駄で乗って刀を振り回している人がいます。
この人の職業は「居合抜」なのですが、これは歯磨粉などを売るためのパフォーマンス。
よく見ると後ろの看板には「はみがき」と書かれています。
そしてこの「居合抜」の御仁、歯の治療もするそうなのですが、居合抜きよろしく歯を抜かれてはたまったものではありません。
「この先生にはあまり治療してもらいたくないですね(笑)。」と山際さん。
八隅景山著 葛飾北秀画『養生一言草』 全期間展示 |
第4章 ものを運ぶ生業
第4章展示風景 |
情報を運ぶのが飛脚、人を運ぶのが駕籠かき、そして川を越える人やものを運ぶのが川越人足。
こちらは、東海道の要所として橋をつくることや渡船が禁止されたため、川越人足が人やものを運んでいた大井川。
「箱根八里は馬でも越が越に越れぬ大井川」と言われたように、大雨で川が増水したときには水が引くまで何日も待たされたのですが、こんなに増水して流れが急な時でも人を渡したのを見ると、川越人足も、上に乗って運ばれている人も命がけですね。
葛飾北斎《富嶽三十六景 東海道金谷ノ不二》 前期展示 |
第5章 ものを作る生業
3階ホワイエの撮影スポットのパネルにもなっているのが葛飾北斎《富嶽三十六景 尾州不二見原》。
「大きな丸い桶の中に三角形の富士という構図の面白さもありますが、丸い桶を動かないように木槌をストッパーにして固定しているところに注目です。北斎はこういった細かいところまで観察していたのです。」
第6章 生業いろいろ
この章には、医師、手習師匠、質屋、さらには留女といった、今まで章のジャンルに入らなかった職業の人たちが登場します。
その中でも、現在、地球温暖化対策で見直されているリサイクルを生業とする人たちを紹介しましょう。
「下の写真左上は、焼き接ぎ師。割れた茶碗を修理しています。」
岳亭春信『略画職人尽』 前期後期で頁替え |
「下の写真の左ページ手前の人物は紙屑買い。集めた紙は紙屑問屋がすき返して、浅草紙の名で売られました。右ページの人物は唐傘の古骨買い。集めた古傘は傘屋で新しい紙を張り、張替傘として売りました。」と山際さん。
寿福軒真鏡著 二代柳川重信画『主従心得草』後編 上 全期間展示 |
最後に、ご案内いただいた山際さん「北斎や門人たちの描いた江戸時代の仕事をする人たちの生き生きとした姿をぜひお楽しみください。」(拍手)
さて、「北斎のなりわい大図鑑」はいかがだったでしょうか。
江戸時代には、いろいろな職業がありました。
今ではもう存在しない職業だったり、今でも綿々と続く職業だったり、いろいろな職業があって、およそ200年前の江戸時代に仕事をしている人たちの姿がよくわかるとても楽しい展覧会です。
今ではもう存在しない職業だったり、今でも綿々と続く職業だったり、いろいろな職業があって、およそ200年前の江戸時代に仕事をしている人たちの姿がよくわかるとても楽しい展覧会です。
会期は6月9日(日)までありますが、前期後期で一部展示替えがあって、前期は5月19日(日)までなので、お早めに!
企画展「北斎のなりわい大図鑑」展覧会概要
会 期 4月23日(火)~6月9日(日)
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日 5/7(火)、5/13(月)、5/20(月)、5月27日(月)、6月3日(月)
観覧料 一般 1000円(800円)ほか カッコ内は団体料金
(本展チケットで会期中観覧日当日に限り、次に紹介する4階の「AURORA(常設展示)」と「常設展プラス」もご覧になれます。)
(本展チケットで会期中観覧日当日に限り、次に紹介する4階の「AURORA(常設展示)」と「常設展プラス」もご覧になれます。)
「北斎のなりわい大図鑑」展リーフレットも販売しています。これで税込300円。絵も多くて、解説もわかりやすいのでお買い得です!
4階の常設展示室(AURORA)では、北斎の画業の流れがわかる複製画の展示があって、北斎さんに会うこともできます。こちらは一部を除き写真撮影ができます。
北斎と娘のお栄 |
同じく4階の企画展示室では新しい企画として「常設展プラス」が開催されていて、すみだ北斎美術館所蔵の『北斎漫画』や全長7mの「隅田川両岸景色図巻(複製画)」が展示されています。こちらは写真撮影不可です。
葛飾北斎『隅田川両岸景色図巻(複製画)』 |
『北斎漫画』(これは複製です)の立ち読みだってできる!
『北斎漫画(複製)』の立ち読みコーナー |
常設展プラスの開催概要
会 期 2月5日(火)~6月9日(日)
開館時間 9:30~17:30(入館は17:00まで)
休館日 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
観覧料(常設展プラスと常設展示室(AURORA)のみ) 一般700円(560円)ほか カッコ内は団体料金
(企画展開催中は企画展のチケットで会期中観覧日当日に限り常設展プラスとAURORA(常設展示)もご覧になれます。)
次回の企画展は、「門外不出」のアメリカ・フリーア美術館の北斎作品を「綴プロジェクト」の高精密複製画で綴る「フリーア美術館の北斎展」。
こちらも楽しみです。