2021年1月31日日曜日

「絵師もの」時代小説の作家と直木賞

先日、とてもうれしいニュースが飛び込んできました。

 西條奈加さん、『心淋(うらさび)し川』で直木賞受賞!

この作品はまだ読んでないのですが、以前、いまトピのコラムで西條さん作の『ごんたくれ』を紹介したので、気になる作家のひとりだったのです。

『ごんたくれ』は、百花繚乱、多士済々の江戸時代中期の京都で活躍した二人の絵師、長沢芦雪(作中では彦太郎こと吉村胡雪)と、曾我蕭白(作中では豊蔵こと深山箏白)の個性がバチバチとぶつかり合う小気味よい展開の作品。

南紀・串本にある無量寺に行った時の話とからめてこの作品を紹介したのは、2019年6月のことでした。



長沢芦雪の代表作《龍虎図》がある南紀・串本の無量寺


これは、絵師が主人公の時代小説を、私が勝手に「絵師もの」小説と名付けて紹介した最初のコラム。このあとも昨年(2020年)は3つの作品を紹介しました。

そのひとつが、2020年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」にちなんで昨年3月に紹介した葉室麟さん作『墨龍賦』



京都・建仁寺大方丈の《龍虎図》
現在は高精細複製画ですが、それでも迫力十分!

『墨龍賦』は、ちょうど「麒麟がくる」の時代から江戸時代初期にかけて活躍した絵師・海北友松が主人公。そして、この雲龍の正体は・・・
ぜひ「麒麟がくる」が終わる前に読んでいただきたい作品です。

そして、葉室麟さんが『蜩ノ記(ひぐらしのき)』で直木賞を受賞したのが、第146回(2011年下半期)。

「絵師もの」小説そのもので直木賞を受賞した方もいます。

それは、第148回(2012年下半期)の直木賞を受賞した安部龍太郎さん。
受賞作は『等伯』でした。

『等伯』は、長谷川等伯と狩野永徳、桃山時代を代表する二人の絵師たちの火花散るライバル対決が繰り広げられる物語。

京都・本法寺にある旅姿の等伯の像


一方の狩野永徳を主人公に描いた、山本兼一さん作『花鳥の夢』とあわせて紹介しました。
両方の作品を並行して読んでみても面白いかもしれません。


狩野永徳《洛中洛外図屛風 上杉本》(国宝 米沢市上杉博物館)
(これは我が家の絵はがきです)

ちなみに、山本兼一さんは『利休にたずねよ』で第140回(2008年下半期)直木賞を受賞しています。



そして、今年(2021年)に紹介したのが、新年早々、NHK正月時代劇「ライジング若冲」で話題になった伊藤若冲が主人公の澤田瞳子さん作『若冲』


我が家の伊藤若冲《鳥獣花木図屛風》
(原本は出光美術館)

澤田さんはこの作品で第153回(2015年上半期)直木賞の候補にあがったのですが、惜しくも受賞を逃しました。
その後も『火定』、『落花』、『能楽ものがたり 稚児桜』で立て続けに直木賞候補にあがったので、近いうちにぜひ受賞していただきた方です。
できればできれば「絵師もの」時代小説で、というのは私の勝手な願いですが。


今までいまトピのコラムで紹介した「絵師もの」時代小説は、5冊(『等伯』は(上)(下))。



他にも絵師を主人公にした時代小説はまだまだあるので、これからもぜひ機会を見て紹介していきたいと考えています。ぜひご期待ください。