2022年7月25日月曜日

山種美術館 【特別展】水のかたち-《源平合戦図》から千住博の「滝」まで- 特集展示:日本画に描かれた源平の世界

雨、霧、川、滝、海、雪。
東京・広尾の山種美術館では水をテーマにした涼し気な展覧会が開催されています。

展覧会チラシ



展覧会のタイトルは、【特別展】水のかたち-《源平合戦図》から千住博の「滝」まで-  特集展示:日本画に描かれた源平の世界

海を舞台に繰り広げられた《源平合戦図》の屏風から、「名所江戸百景」など歌川広重の人気シリーズで描かれた水の景色、横山大観や川端龍子をはじめとした近代日本画界巨匠たちが描いた海や川、そして千住博の「滝」のシリーズまで、さまざまな「水」の景色が楽しめる展覧会です。

それではさっそく展示室内の様子をご紹介したいと思います。

展覧会概要


会 期  2022年7月9日(土)~9月25日(日)
     *会期中、一部展示替えあり。
      前期 7月9日~8月14日、後期 8月16日~9月25日
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
     *今後の状況により会期・開館時間等は変更する場合あり。
休館日  月曜日[9/19(月)は開館、7/19(火)、9/20(火)は休館]
入館料  一般1,300円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)
     夏の学割 大学生・高校生500円*本展に限り通常1000円のところ半額です! 
*他にも割引・特典があります。チケットはご来館当日、美術館受付でご購入いただけます。また、入館日時のオンラインチケット購入も可能です。

相互割引サービスについて
下記チケットのご提示で入館料を100円割引いたします。当館の入場受付時にご提示ください。
■Bunkamuraザ・ミュージアム「かこさとし展 子どもたちに伝えたかったこと」との相互割引について

■太田記念美術館「源平合戦から鎌倉へ -清盛・義経・頼朝」「浮世絵動物園」との相互割引について

*いずれも対象券1枚につき1名様、1回限り有効。
*入館チケットご購入時に受付にご提示ください。購入後の割引はできません。
*他の割引との併用はできません。


*オンライン講演会などの各種イベントも開催されますので、詳細は同館公式webサイトをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/

展示構成
 雨と霧 ー大気の中の水
 川 -流れる水
 滝 -ダイナミックな水
 海 -躍動する水
 雪 -氷の結晶
 特集展示:日本画に描かれた源平の世界
  
*展示室内は次の1点を除き撮影不可です。掲載した写真はプレス内覧会で美術館より特別に許可をいただいて撮影したものです。
*掲載した作品はすべて山種美術館蔵。展示替えのある作品は展示期間を記載しました。展示期間の記載のない作品は全期間展示です。

今回の展覧会で撮影可の作品は、素足を川の流れに入れて涼し気な、小林古径《河風》。「川 -流れる水」のエリアに展示されています。

小林古径《河風》1915(大正4)年
絹本・彩色 山種美術館


雨と霧 -大気の中の水

今ではゲリラ豪雨とか線状降水帯という言葉が一般的になって、「夕立」という言葉はあまり使われなくなりましたが、もくもくと入道雲があらわれて、ザーッと雨を降らす夕立は夏の風物詩でした。

そんな夕立の激しい雨の様子を、雨の線の角度を微妙に変えて見事に表現したのが歌川広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》。

歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
1857(安政4)年 大判錦絵 山種美術館
[前期展示7/98/14



この作品は、ゴッホが模写したことでもよく知られていて、ゴッホの模写《雨の大橋》もパネル展示されているのでぜひ見比べてみてください(《雨の大橋》の原本は国立フィンセント・ファン・ゴッホ美術館蔵)。

実はこの作品でいつも気になるのは、橋の上を急ぎ足で歩く人たちのうち右から2番目、一つの傘の中に入っている男の人たち。
足の数を数えると3人にも見えるのですが、ゴッホの《雨の大橋》で描かれているのは2人。
実際には何人なのでしょうか。ぜひご自身の目で確かめてみてください。

「雨と霧 -大気の中の水」展示風景
左から川端玉章《雨中楓之図》19-20世紀(明治時代) 紙本・彩色、
小茂田青樹《春雨》1917(大正6)年頃 絹本・彩色、
 川合玉堂《水声雨声》1951(昭和26)年頃 絹本・墨画淡彩
 いずれも山種美術館




滝 -ダイナミックな水

千住博《ウォーターフォール》は迫力の大画面。
目の前に立つと滝の音が聞こえて、水しぶきが飛んできそうで、いかにも涼し気。

「滝 -ダイナミックな水」展示風景
左から 千住博《ウォーターフォール》1995(平成7)年 紙本・彩色、
奥村土牛《那智》1958(昭和33)年 紙本・彩色、
中林竹渓《高士観瀑図》19世紀(江戸時代) 紙本・彩色
いずれも山種美術館

古くから、滝は人間を超えた存在として崇められてきました。本作品への視点を変えると、とっても涼し気に見えますね。


中林竹渓《高士観瀑図》19世紀(江戸時代) 
紙本・彩色 山種美術館


滝の作品の前にはベンチがあるので、《高士観瀑図》の高士のように那智の滝やカラフルな滝を見上げて涼んでみてはいかがでしょうか。

千住博《フォーリングカラーズ》2006(平成18)年 紙本・彩色
山種美術館




海 -躍動する水

第一展示室の冒頭でお出迎えしてくれるのは奥村土牛の《鳴門》。
いつもこのポジションにはどんな作品が展示されるのだろうと楽しみにしているのですが、今回も展覧会のイメージにピッタリの作品が展示されていました。

渦を巻く潮の音、ものすごく強い海風が感じられ、まるで渦の中に引き込まれるかのように「水のかたち」の世界に入り込んでいくことができました。


奥村土牛《鳴門》1959(昭和34)年 紙本・彩色
山種美術館




「会場芸術」を唱えた川端龍子らしい豪快で躍動感あふれる海の情景を描いた《黒潮》。
作品の前に立つと、こちらも全速力で走る漁船に乗ってトビウオを追いかけているようなスピード感が感じられます。

川端龍子《黒潮》1932(昭和7)年 絹本・彩色
山種美術館



「海 -躍動する水」展示風景
左から 横山大観《夏の海》1952(昭和27)年頃 紙本・彩色、
黒田清輝《湘南の海水浴》1908(明治41)年 カンヴァス・油彩、
石川響《東海日月》1970(昭和45)年 紙本・彩色
いずれも山種美術館



雪 -氷の結晶

今回の特別展では川合玉堂の作品が3点展示されていますが、雪の白は生地の白をそのまま生かしているのに、なぜか盛り上がって見えるこの雪景色は特に好きな作品です。

タイトルの《雪志末久湖畔》の「志末久(しまく)」とは「風巻(しま)く」のことで、風が激しく吹き荒れるさまを表しているので、雪空の中の寒々とした空気がスーッと吹いてくるように感じられました。

川合玉堂《雪志末久湖畔》1942(昭和17)年 
絹本・墨画淡彩 山種美術館


温暖であまり雪が降ることがないのに、なぜか雪景色の静岡・蒲原。
歌川広重《東海道五拾三次之内 蒲原・夜之雪》は後期(8/16-9/25)に展示されます。
ちょうど残暑厳しい折でしょうから、暑いさなかに見る雪景色も乙なものかもしれません。

 歌川広重《東海道五拾三次之内 蒲原・夜之雪》1833-36(天保4-7)年頃
大判錦絵 山種美術館 [後期展示8/169/25]



今回は「東海道五拾三次」「名所江戸百景」はじめ、歌川広重の人気シリーズから前後期それぞれ7点、全部で14点の浮世絵が展示されるので、広重ファン、浮世絵ファンにとっても見逃せない展覧会です。



特集展示:日本画に描かれた源平の世界


特集展示では、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」でも話題になった源平合戦をはじめ、源氏と平氏にちなんだ作品11点が展示されています。

まずは江戸時代に描かれた六曲一双の屏風《源平合戦図》。

《源平合戦図》17世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色
山種美術館

「鎌倉殿の13人」では破天荒な源義経の役を演じた菅田将暉さんの演技が光ってましたが、この屏風には義経が指揮する源氏軍が、都から逃げのびようとする平家を追い詰める場面がいくつも描かれています。
作品の左にはそれぞれの場面の解説パネルがあるので、鵯越のさか落とし、義経八艘飛びなどの名場面をじっくりご覧になってください。


続いてこちらは義経が木曽義仲を討った宇治川の合戦での、佐々木高綱と梶原景季の先陣争いの場面。
右隻右上に水墨で描かれた平等院鳳凰堂が渋いです。

森村宜稲《宇治川競先》20世紀(大正-昭和時代)
紙本金地・彩色 山種美術館



オリジナルグッズも和菓子も充実!


歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》の額絵(税込550円)や、川端龍子《黒潮》の絵はがき(税込110円)をはじめ、特別展「水のかたち」に合わせた涼し気なオリジナルグッズが盛りだくさん。



今回の注目は、上の写真で川端龍子《黒潮》の絵はがきを支えているガラス製の小さなカードホルダー:キューブ。
クリア、バイオレット、コバルトの3色あってとてもオシャレ(税込各660円)です。
飾る絵はがきの色合いに合わせて色を選ぶ楽しみもありますね。


展覧会出品作品にちなんだ和菓子は今回も充実のレパートリー。
ランチメニューもありますので、美術館ロビーの「Cafe 椿」にぜひお気軽にお立ち寄りください。





上の写真、右上から時計回りに、「やしま(小堀鞆音《那須宗隆射扇図》)」、「うず潮(奥村土牛《鳴門》)」、「涼やか(小林古径《河風》)」、「汐風(横山大観《夏の海》)」、「水の音(千住博《フォーリングカラーズ》)」。
(カッコ内はモチーフにした作品で、すべて山種美術館蔵)


これからも蒸し暑い日がしばらく続きますので、涼しさが感じられる展覧会をぜひお楽しみください。