2022年8月13日土曜日

東京藝術大学大学美術館 特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」

東京・上野公園の東京藝術大学大学美術館では、待望の特別展「日本美術をひも解くー皇室、美の玉手箱」が開幕しました。

大学構内の案内看板


皇室の珠玉の名宝と、近代日本美術とともに歩んできた東京藝術大学のコレクションが大集結した豪華なラインナップや見どころについては、報道発表会に参加した時の様子をレポートしていますので、ぜひこちらもご覧ください。



展覧会概要


展覧会名 特別展「日本美術をひも解く-皇室、美の玉手箱」
会 場  東京藝術大学大学美術館(台東区・上野公園)
会 期  2022年8月6日(土)~9月25日(日)
     ※会期中、作品の展示替えおよび巻替えがあります。
開館時間 午前10時~午後5時
     9月の金・土曜日は午後7時30分まで開館
     ※入館は閉館の30分前まで
     ※本展は日時指定予約の必要はありませんが、今後の状況により入場制限等を
      実施する可能性があります。
休館日  月曜日(ただし、9月19日(月・祝)は開館)
観覧料  一般2,000円、高校・大学生1,200円
     ※中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方とその介助者1名は無料
     展覧会の詳細、最新情報等は展覧会公式HP公式Twitterをご覧ください。
展示構成
 序章 美の玉手箱を開けましょう
 1章 文字からはじまる日本の美
 2章 人と物語の共演
 3章 生き物わくわく
 4章 風景に心を寄せる  

※会場内は撮影禁止です。掲載した写真は美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。


さて、特別展のテーマは「日本美術をひも解く-皇室、美の玉手箱」ですので、「美の玉手箱」を開けて、絵画、工芸、書跡などさまざななジャンルの日本美術の豊かな世界をひも解くためのポイントを中心に会場内の様子をご紹介したいと思います。


「ひも解く」その1 ワンポイント作家解説


会場は3階と地下2階に分かれているので、まずはエレベーターで3階まで上がって、入口に置いてある出品目録を受け取ります。
今回は「ワンポイント作家解説」も置かれているので、こちらもお忘れなく。

「ワンポイント作家解説」には、狩野永徳、伊藤若冲はじめ本展の展示作品のうち一部の作家について紹介されているので、作品とあわせて読むと一層作品の味わいが深まること間違いなし。

「ワンポイント作家解説」(裏面もあります)


例えば、国宝《唐獅子図屏風》(右隻 狩野永徳 桃山時代(16世紀)、左隻 狩野常信 江戸時代(17世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:8/6-8/28)を、「ワンポイント作家解説」を読んでから見てみると、豪快なひいおじいちゃんの永徳の唐獅子に向かって、ひ孫の常信の唐獅子が尊敬のまなざしで見ているような気がしてきます。

「3章 生き物わくわく」展示風景


ちなみに永徳の子は松栄、松栄の子が探幽、尚信、安信の「狩野三兄弟」、そして尚信の子が常信。
江戸幕府の御用絵師の座に君臨した狩野派の中でももっとも格式の高い奥絵師四家の一つ木挽町狩野の祖が尚信で、父・尚信を継いだのが常信でした。
明治に入って東京美術学校(現在の東京藝術大学)の創設に尽力した狩野芳崖や橋本雅邦は木挽町狩野の出身なので、常信の作品が東京藝術大学で展示されるのを見ると何かの縁を感じずにはいられません。


「ひも解く」その2 ワークシート「ひもとけ!玉手箱」


3階会場入口では係の方にお声かけしてワークシート「ひもとけ!玉手箱」をいただきましょう。






中を開いてみると、4つの展示作品のクイズがあるので、作品をじっくりご覧になって答えを探してみてください。




「2章 人と物語の共演」展示風景


クイズの解答を記入したあとは、ワークシートの裏面をめくって、「自分の家に飾りたい」、「かわいい」、「きれい」といったキーワードで自分だけの1品を選んでみましょう。



「自分の家に飾りたい」作品は、どれにしようか迷いましたが、私はこの一品に決めました。
それは、大胆に描かれた雄大な滝の景色の中に、小さいながらも丁寧に描かれた宮殿がアクセントになっている五姓田義松《ナイアガラ景図》(明治22年(1889) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示)です(下の写真右)。


「4章 風景に心を寄せる」展示風景


このワークシートは前期用のもので、展示替えにあわせて前期の後半用、後期用と3種類用意されるので、いつ来場されてもお楽しみいただけます。


「ひも解く」その3 雲形の解説パネルに注目!


「三跡」「絵所預」「料紙」など聞きなれない言葉が出てきてもご心配なく。
雲形の解説パネルでは、日本美術で用いられる用語などを丁寧に説明しています。

下の写真手前の雲形の解説パネルで解説しているのは「三跡」。
三跡とは、平安時代に特に字が巧みであった小野道風、藤原佐理、藤原行成のことで、下の写真右がその一人、藤原佐理の『恩命帖』(平安時代 天元5年(982) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 展示期間:8/6-9/4)です。


「1章 文字からはじまる日本の美」展示風景

書体からわかるように、藤原佐理は性格も奔放だったようで、この書は、弓技を競う宮廷行事で矢の調達を担当した佐理が、それを忘れてしまったので上司に出した始末書だったのです。

藤原佐理の書では国宝の『離洛帖』(畠山記念館蔵)が知られていますが、実はこれも詫び状。
本人はまさか始末書や詫び状が後世に残されて、それが美術作品として展覧会で展示されるとは夢にも思わなかったことでしょう。

会場では8月21日(日)までの期間限定ですが、平安時代の書の名品、伝藤原行成《粘葉本和漢朗詠集》(平安時代(11世紀) 宮内庁三の丸尚蔵館蔵 期間中場面替あり)(上の写真左)の手習いが体験できるコーナーもあります。

薄く描かれたお手本をなぞっていくのですが、複雑な筆遣いなので意外と難しいです。
ぜひチャレンジを!







「ひも解く」その4 展覧会関連グッズも盛りだくさん!


 
出品作品にちなんだオリジナルグッズも盛りだくさんなので、つい財布のひもがゆるんでしまいそうです。




トートバッグやマスキングテープはもちろんのこと、お菓子類も充実。
食べたあとも巾着や風呂敷としておしゃれなアイテムになります。




そして今回全く予想していなかったのがこちら。


なんと、東京藝術大学が所蔵する重要文化財、高橋由一《鮭》(明治10年(1877)頃 東京藝術大学蔵 通期展示)(下の写真右)の特別ラベルの「鮭ふりかけ」が登場したのです。

「3章 生き物わくわく」展示風景

会場内をめぐりながら日本美術のよさが実感できるとても素晴らしい内容の展覧会です。
ぜひお楽しみください!