静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリー「静嘉堂@丸の内」では、東京・丸の内の明治生命館1階に移転して初めて迎える正月にふさわしい展覧会が開催されています。
展覧会チラシ |
展示室内には、今年の干支の兎にちなんで卯年生まれの三菱第4代社長、岩崎小彌太氏の還暦を祝って制作された木彫彩色御所人形や、兎や七福神をはじめとしたおめでたい題材が描かれた絵画や工芸が数多く展示されているので、新春らしく楽しい気分になれる展覧会です。
それではさっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2023年1月2日(月・振休)~2月4日(土)
開館時間 午前10時~午後5時(金曜は午後6時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日 毎週月曜日
入場料 一般 1500円、大高生 1000円、中学生以下無料
展覧会の詳細、チケット購入・日時指定予約等は同館公式サイトをご覧ください⇒静嘉堂文庫美術館
※館内は撮影禁止です。掲載した写真は報道内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
※展示作品はすべて静嘉堂文庫美術館所蔵です。
静嘉堂@丸の内はホワイエを中心に4つの展示ギャラリーがあります。
まずはギャラリー1「新春・日の出」から。
最初にお出迎えしてくれるのは近代日本画界の大家、横山大観の《日之出》。
雲海に浮かぶ山々のかなたから昇ってくる太陽を見ていると、初日の出を拝んでいるようなすがすがしい気分になってきます。
横山大観《日之出》 |
続いてギャラリー2「七福うさぎがやってきたー小彌太還暦の祝い」へ。
ここの展示のメインは、小彌太氏の還暦祝いのために制作された総勢58点に及ぶ木彫彩色御所人形。
まずはこの豪華な御所人形の行列をご覧ください。
後ろの金屏風が彩り豊かな御所人形をさらに引き立てています。
布袋さんが乗る宝船には、米俵に鯛、大判小判など盛りだくさんの宝物。
カラフルな御所人形の反対側に展示されているのは、小彌太氏の還暦祝いに贈られた茶釜。
遠くから見るとよく分かりませんが、近くで見ると愛嬌のある兎の姿が見えてきます。
さて、こちら側には何匹の兎がいるでしょうか。
ギャラリー3「うさぎと新春の美術」で最初に目に入ってきたのは、兎や吉祥の題材が描かれた明清時代の中国絵画。
「中国絵画」展示風景 |
2017年に世田谷区岡本の静嘉堂文庫美術館で開催された「あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~」で、同館所蔵の明清絵画の名品の数々を楽しませてもらったのですが、今回はその時展示されなかった作品が多く展示されていました。
中国絵画ファンにとってはたまらない光景です。
中でもお気に入りの一品はこちら。
明末蘇州派の画家・李士達の《歳朝題詩図》(重要美術品)。
元旦にお屠蘇を楽しんで揮毫する老人たちが描かれた作品で、正月らしくのどかな雰囲気が伝わってきます。
画面右の子供たちは何をしているのかと思ったら、爆竹に夢中になっていたのですね。
日本の江戸時代の文人画の絵師たちも頑張っています。
《寿老図》は、おおらかな性格の池大雅らしく長頭短躯が大胆にデフォルメされた寿老人が描かれていますが、「えっ、寿老人?福禄寿では?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
寿老人は鹿を従えていることが多いのですが、ここに描かれているのは鶴を従えた長頭の老人。
寿老人と福禄寿は、どちらも南極星の化身とされ混同されることがあったので、池大雅は寿老人をこのように描いたのかもしれません。
国の重要文化財に指定されている明治生命館ならではの内装を活かした展示もいい雰囲気を醸し出しています。
展示されているのは、まるで蛸を正面から見たようなユニークな花が描かれている《七宝花唐草文壺》(「万暦年製」銘)。
東洋趣味のヨーロッパ貴族の邸宅に飾られた中国陶磁器といった趣があります。
《七宝花唐草文壺》(「万暦年製」銘) |
大きな工芸作品だけでなく、小品の香合もいい味を出しています。
こちらは《蓬莱蒔絵香合》。
松と竹が生える島の上には長寿を寿ぐ吉祥の鳥とされた千鳥が2羽、そして島の下には同じく長寿の象徴の亀が描かれているので、じっくりご覧になって千鳥や亀の長寿にあやかりましょう!
ギャラリー4 七福神と初夢は、主に七福神にちなんだ浮世絵や工芸作品が展示されています。
古くから縁起の良い初夢は「一富士、二鷹、三茄子」や「宝船に乗った七福神」など諸説あって、子どものころには「宝船に乗った七福神」の絵を枕の下に敷いて眠るといい初夢が見られるという話を聞いたことがあります。
こちらは宝船ではなく、七福神の神々の演奏風景。
天照大御神が天の岩戸に籠った時、岩戸の前で神々が天照大御神の気をひこうと宴を催した神話の見立てとなっているこの絵を枕元に置いたら、歌あり踊りありのにぎやかで楽しい夢がみられるかもしれません。
印籠という限られた空間の中に描き込まれた七福神の神々や、鷹、茄子、鶴といった縁起物が私たちを楽しませてくれます。
そしてしんがりは、ご存じ国宝《曜変天目》。
前回の開館記念展「響きあう名宝」に引き続きお椀の中に輝く小宇宙を見ることができますが、毎回必ず展示されるわけではないので、この機会をお見逃しなく!
ホワイエの作品は撮影可です。
こちらは、鶴と亀、松竹梅が描かれ、菊の花の形をしたおめでたいものづくしの有田焼(古伊万里様式)の《色絵鶴亀甲松竹梅文菊花形大鉢》です。
ミュージアムショップには、今回の展示作品はじめ静嘉堂のコレクションにちなんだグッズが揃っているので、ぜひお立ち寄りください。
木彫彩色御所人形は見開き4ページで紹介されています。
おめでたい気分いっぱいの展覧会「初春を祝うー七福うさぎがやってくる!!」の会期は2月4日(土)までなのでお早めに!