東京・北の丸公園の東京国立近代美術館では企画展「ガウディとサグラダ・ファミリア展」が開催されています。
6月13日の開幕以来、連日大入りで賑わっている「ガウディとサグラダ・ファミリア展」ですが、何がこれだけ多くの人を惹きつけるのでしょうか。
さっそく展覧会の魅力に迫ってみたいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2023年6月13日(火)~9月10日(日)
会 場 東京国立近代美術館 1階企画展ギャラリー
開館時間 10:00~17:00(金・土曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(ただし7月17日は開館)、7/18(火)
観覧料 一般 2,200円、大学生 1,200円、高校生 700円、中学生以下無料
【巡回情報】
滋賀会場:佐川美術館 2023年9月30日(土)~12月3日(日)
愛知会場:名古屋市美術館 2023年12月19日(火)~2024年3月10日(日)
展覧会の詳細等は展覧会公式サイトをご覧ください⇒https://gaudi2023-24.jp/
展示構成
第1章 ガウディとその時代
第2章 ガウディの創造の源泉
第3章 サグラダ・ファミリアの軌跡
第4章 ガウディの遺伝子
※掲載した写真は、プレス内覧会で主催者の許可を得て撮影したものです。
※第3章のみ一部を除き撮影可です。館内で撮影の注意事項をご確認ください。
今回のガウディ展の見どころのひとつは、サグラダ・ファミリア聖堂の二代目建築家アントニ・ガウディ(1852-1926)が活躍したスペイン・バルセロナにあるグエル公園をはじめ、ガウディのユニークな造形の建築物を見ながら旅行気分が味わえることです。
そしてさらには、長らく「未完の聖堂」と言われ、完成時期が視野に収まってきたサグラダ・ファミリア聖堂を飾る彫像群や内部の装飾を間近で実感できることではないでしょうか。
見どころ1 ガウディの建築物でバルセロナ散策
サグラダ・ファミリア聖堂の二代目建築家ガウディが活躍したスペイン・バルセロナには、カサ・ミラ、グエル公園をはじめ、ガウディが手がけたユニークな造形の建築群が随所にあって観光客を楽しませてくれます。
このようにユニークな造形の建築物を生み出したガウディですが、ゼロからの創造ではなく、すでに存在するものを発見して、そこから出発するのが人による創造だと考えていました。
ひとつめのキーワードは「歴史」。
「何ごとも過去になされたことに基づくべきだ」と唱え、15世紀末までイスラム勢力がイベリア半島を支配していたという特有の事情によってスペイン南部に多くあるイスラム建築の研究や、中世ゴシックをはじめとするリバイバル建築に取り組んだことでした。
キリスト教建築とイスラム建築の両様式が混在するムデハル建築の影響を受けたフィンカ・グエル(グエル別邸)はそのひとつ。
パラペットや壁面のレンガと切張りタイルの組合わせ装飾が特徴で、歴史の重みも斬新さも感じられる不思議な雰囲気の建物のように感じられます。
手前 フィンカ・グエル、馬場・厩舎模型/1:25 奥 フィンカ・グエル、換気塔(門番小屋上部)模型/1:5 どちらも 1984-85年/西武文理大学 |
もう一つのキーワードは「自然」。
発見されるべき形は大自然の中にすでに存在しているというのがガウディの考えでした。
それが植物だったり、洞窟だったりとすでに私たちが見ているものなのですが、それを建築に取り入れてしまうところがガウディの天才たるゆえんなのでしょう。
そして、3つめのキーワードは「幾何学」。
ガウディ建築に特徴的なのは「パラボラ・アーチ」。
それまであまり使われてこなかった放物線(パラボラ)を初期の作品から取り入れたのがガウディの真骨頂。図形や空間の性質を研究する幾何学の考えを建築に取り入れたものでした。
こちらは1908年にガウディが手がけたといわれる、高さ300mを超える超高層ホテル計画案の模型。
このずんぐりとした塔のフォルムは、サグラダ・ファミリア聖堂の塔にも通じるものがあるように見えます。
ニューヨーク大ホテル計画案模型(ジュアン・マタマラのドローイング に基づく)/1985年/制作:群馬県左官組合/伊豆の長八美術館 |
このニューヨーク大ホテル計画案模型を所蔵しているのは、西伊豆・松崎町にある伊豆の長八美術館。江戸末期の左官の名工・入江長八の「漆喰鏝絵(しっくいこてえ)」の代表作作品を所蔵することで知られています。
日本の左官職人とガウディが接点があったことは初めて知りました。
見どころ2 間近で体験できるサグラダ・ファミリア聖堂
黄金色に輝いてそびえ立つサグラダ・ファミリア聖堂。
縮尺1:200の模型ですが堂々とした風格があります。
サグラダ・ファミリア聖堂、全体模型/1:200/2012-23年 /制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室/サグラダ・ファミリア聖堂 |
そして、横から見るだけでなく、こうやって歩行者の視点から見上げるとその場で見るような気分になって、迫力が感じられるので、ぜひお試しいただきたいです。
続いて聖堂の入口から入り、両側に高くそびえる円柱の間を通って祭壇に向かう身廊部の模型です。
サグラダ・ファミリア聖堂、身廊部模型/2001-02年 /制作:サグラダ・ファミリア聖堂模型室/西武文理大学 |
樹木式円柱の細部の模型が展示されています。
このようなパーツも聖堂が完成したら、はるか下から見上げることになるので、こうやって目の前で見るのは今だけですね。
サグラダ・ファミリア聖堂は未完成ですが、クリプタ(地下礼拝堂)での礼拝は可能で、すでに聖堂として機能していたからこそ、未完であることが許されたといういきさつがありました。
キリスト磔刑像や燭台が後方のクリプタのパネルとともに展示されていて、厳かさを醸し出しています(キリスト磔刑像のみガウディの指示で彫刻家カルロス・マニに作らせたもので、燭台はガウディ作)。
サグラダ・ファミリア聖堂の彫刻に長年携わっている日本人彫刻家・外尾悦郎氏が制作した「降誕の正面の彫像群」は、1990年~2000年まで実際に「降誕の正面」に設置されていたものなので、間近で見られるのは今がチャンスです。
「第3章 サグラダ・ファミリアの軌跡」の展示は、サグラダ・ファミリア聖堂の中に入り込んだように感じられる心地のよい空間です。
展示作品のカラー図版と詳細な解説はもちろん、バルセロナにあるガウディ建築群の写真もふんだんに使っているので、バルセロナ旅行のガイドブックにもなる「ガウディとサグラダ・ファミリア展」公式図録もおすすめです。
楽しい展覧会関連グッズもたくさんありますので、展覧会特設ショップにもぜひお立ち寄りください!
バルセロナに行ったのはかれこれ20年前。
展示を見ていたら、バルセロナにまた行きたくなってきました。
スペインに行ったことがある人も、行ったことがない人も行ってみたくなる。
こんな魅力的な展覧会ですので、暑さにめげずにぜひご覧ください!