2023年12月25日月曜日

山種美術館 【特別展】癒やしの日本美術 ーほのぼの若冲・なごみの土牛ー

今年も残すところあとわずか。
慌ただしかった一年の疲れを癒やして新たな気分で新年を迎えたいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
筆者もその一人ですが、そんな時にぴったりの展覧会が東京・広尾の山種美術館で開催されています。
タイトルは、【特別展】癒やしの日本美術 ーほのぼの若冲・なごみの土牛ー。 


展覧会チラシ


「ほのぼの」、「なごみ」といったゆるいキーワードに誘われて先日行ってきましたので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。


展覧会開催概要


会 期  2023年12月2日(土)~2024年2月4日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  月曜日
     [1/8(月・祝)は開館、1/9(火)は休館、12/29(金)-1/2(火)は年末年始休館]
入館料  一般 1400円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
     冬の学割 大学生・高校生500円
※チケット購入方法、各種割引等は山種美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/

展示構成
 第1章 江戸時代の「ゆるかわ」 若冲・芦雪
 第2章 癒やしの風景・心地よい音
 第3章 かわいい動物・愛しい子ども・親しい人との時間
 第4章 心が解き放たれる絵画

展示室内は、長沢芦雪《菊花子犬図》(個人蔵)に限りスマホ、タブレット、携帯電話でのみ撮影可。
ほかの作品は撮影不可です。掲載した写真は内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。


第1章 江戸時代の「ゆるかわ」 若冲・芦雪


第1展示室に入るとさっそく伊藤若冲の「ほのぼの」とした布袋さんやひょうきんな表情の鶏たち、長沢芦雪の楽しげな七福神やかわいい子犬たちがお出迎えしてくれます。


第1章展示風景


冒頭に展示されているのは、ずんぐりむっくりした布袋さんが手に扇を持って微笑んでいる姿が描かれた伊藤若冲《布袋図(無染浄善 賛)》(個人蔵)。
解説パネルにある賛の意味もぜひご覧ください。布袋さんの扇から清らかな風が吹いてくるのが感じられるかもしれません。

伊藤若冲《布袋図(無染浄善 賛)》
1762(宝暦12)年賛 個人蔵


長沢芦雪が描くのは無邪気にじゃれあう9匹の子犬たち(下の写真右奥)。
まるでぬいぐるみのようなもふもふの子犬たちの表情には愛嬌があって、後ろ姿の子犬のくるっと丸まった尻尾まで可愛さが感じられます。

第1章展示風景



先ほどご紹介した写真撮影OKの作品はこの長沢芦雪《菊花子犬図》(個人蔵)です(スマートフォン・タブレット・携帯電話に限定)。
ハッシュタグ #山種美術館 #癒やしの日本美術 を付けてSNSで発信しましょう! 


第2章 癒やしの風景・心地よい音


江戸時代の「ゆるかわ」ですっかり和んだあとは、昔懐かしい日本の風景が私たちを癒やしてくれます。

近代・現代の日本画家が描く風景画が並ぶ中でも特におすすめなのが、川合玉堂《山雨一過》(山種美術館)。
いつものことながら玉堂は、こうあってほしいという風景や、こういう人がいてほしいという人物を描く、いわば見る人のツボをグッと押してくれる画家だと感じさせてくれます。
小さいながらも馬子が馬を引いて峠を越す姿がこの作品の大きなポイントになっています。

川合玉堂《山雨一過》1943(昭和18)年
山種美術館

農業に従事しながら絵画制作を行った小川芋銭の《農村春の行事絵巻》は、描かれている人たちの明るい表情がとても印象的です。

小川芋銭《農村春の行事絵巻》1912-26年頃(大正時代)
山種美術館

続いて自然界の心地よい音が描かれた作品へ。

左から 上村松園《杜鵑を聴く》1948(昭和23)年、
川合玉堂《渓雨紅樹》1946(昭和21)年
どちらも山種美術館


上村松園《杜鵑を聴く》からは夏の訪れを告げるホトトギスの鳴き声、川合玉堂《渓雨紅樹》からは水車に流れる水の音が聴こえてきそうです。


第3章 かわいい動物・愛しい子ども・親しい人との時間


第1章では江戸時代の絵師、伊藤若冲と長沢芦雪が描いた可愛い動物たちが楽しめましたが、第3章では奥村土牛が描いた「なごみ」の兎や山羊をはじめとした近代や現代の日本画家が描いた生きものたちに癒やされます。

第1章と第3章の作品を見比べてみると、時代のへだたりはありますが、「可愛い!」と感じた動物たちを細部までじっくり観察して描くという姿勢は共通していることが実感できました。

第3章展示風景

第1章には伝 長沢芦雪《唐子遊び図》【重要美術品】(山種美術館)が展示されていますが、
奥村土牛の《枇杷と少女》をはじめ、あどけない子どもたちに優しいまなざしを向けて描くことも近代日本画家に引き継がれていることもよくわかりました。


第3章展示風景

今までは可愛い動物や子どもたち、そしてのどかな風景を見て心が和んできましたが、親しい友との語らいの場面が描かれた作品は、ゆったりとくつろいだ時の流れに身をまかせてみたいという気分にさせてくれるので、とても心地よさが感じられます。

今村紫紅《歓語》1913(大正2)年
山種美術館



第4章 心が解き放たれる絵画


師と仰いだ小林古径が他界したときに、古径への思いを込めて奥村土牛が描いた作品が《浄心》(山種美術館)。そして、同じく土牛が、歴史家で日本美術院の再興に携わった齋藤隆三を追悼して描いたのが《蓮》(山種美術館)。
第2展示室には、画家の悲しみを癒やし、同時に見る側も安らかな気持ちになれる作品が中心に展示されています。

左から 奥村土牛《浄心》1957(昭和32)年、
奥村土牛《蓮》1961(昭和36)年
どちらも山種美術館


オリジナルグッズも盛りだくさん、新発売もあります!


マルチホルダー、A4クリアファイル、絵はがき、一筆箋、マスキングテープなどなど。
いつものことながら展覧会オリジナルグッズも盛りだくさん。
特に長沢芦雪《菊花子犬図》(個人蔵)の絵はがきは大人気のようです。
新発売もあるので、展覧会ご鑑賞後はぜひミュージアムショップにもお立ち寄りください!




オリジナル和菓子にも癒やされたい!


日本美術で癒やされた後は、やはり甘いもので癒やされたいですね。
「Cafe 椿」では今回の特別展出品作品をモチーフにした和菓子をお召し上がりいただくことができます。
私の一押しは、淡雪のふわふわした食感が心地よい「雲鶴」でしょうか。「春うらら」の胡麻入りこしあんにも惹かれます。
さて、みなさまの一押しはどれになりますでしょうか。





次回展は公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024」


次回展は、今回で3回目を迎えた公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024」の入選作品全45点が一堂に会する豪華な内容の展覧会です。
会期は2024年2月17日(土)~3月3日(日)。
新進気鋭の現代の日本画家たちによるどんな力作が見られるのか今から楽しみです。


展覧会チラシ

#癒やしの日本美術 は2024年2月4日まで開催されています。
今年一年の疲れを癒やしたい方も、美術館で初詣をしたい方もぜひご覧いただきたい展覧会です。