東京駅すぐ近くの明治生命館1階にある静嘉堂@丸の内では、静嘉堂文庫竣工100年目を記念して、幕末から明治にかけて活躍した多才な二人の交流の足跡を紹介する特別展が開催されます。
特別展のタイトルは「画鬼 河鍋暁斎×鬼才 松浦武四郎」。
独創的な画風を展開した絵師・河鍋暁斎(1831-89)と、探検家、好古家、著述家で北海道の名付け親・松浦武四郎(1818-88)は、活躍する分野こそ違いましたが、二人の間には交流があり、暁斎が武四郎の依頼を受けて、武四郎の愛玩品図録『撥雲余興』の挿絵の一部や、武四郎を釈迦に見立てた「武四郎涅槃図」を描いています。
サブタイトルは「地獄極楽めぐり図」から リアル武四郎涅槃図まで。
暁斎の代表作「地獄極楽めぐり図」(静嘉堂蔵)と重要文化財「武四郎涅槃図」(松浦武四郎記念館蔵)が16年ぶりに競演することをはじめ、見どころいっぱいの展覧会なので、今から開幕が待ち遠しいです。
展覧会開催概要
会 期 2024年4月13日(土)~6月9日(日)
会 場 静嘉堂@丸の内(東京都千代田区丸の内2-1-1明治生命館1階)
開館時間 10:00-17:00
※土曜日は18:00、第四水曜日は20:00閉館。入館は閉館時間の30分前まで
休館日 月曜日、5月7日(火) ※4月29日(月・祝)、5月6日(月・祝)は開館
入館料 一般 1,500円 大高生1,000円 中学生以下無料
※チケットの購入方法、展覧会の詳細、関連イベント等は静嘉堂文庫美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.seikado.or.jp/
河鍋暁斎(画鬼 暁斎) |
見どころ1 「地獄極楽めぐり図」×「武四郎涅槃図」16年ぶりの競演!!
「地獄極楽めぐり図」は、パトロンの早世した娘・田鶴(たつ)の追善供養にと暁斎が依頼された画帖で、田鶴が冥界ツアーを楽しみ極楽浄土に到達する場面が描かれていて、今回は全40図が全場面公開されます(会期中場面替えあり)。
見どころ2 初の試み「これぞリアル武四郎涅槃図」!
今回のユニークな試みは、「武四郎涅槃図」が展示されるだけでなく、そこに描かれた武四郎の愛玩品が松浦武四郎記念館、静嘉堂の双方から集結して立体的に再現されることです。
重要文化財 河鍋暁斎「武四郎涅槃図」 明治19年(1886) 松浦武四郎記念館蔵 |
横たわる武四郎が首に着けている「大首飾り」や後方の赤い台座の上の仏像、さらには登場する人物たちの肖像画が展示されるので、ぜひ「武四郎涅槃図」と見比べながら楽しみたいです。
『撥雲余興』とあわせて挿絵に描かれた実物も同じ空間に展示されるので、武四郎の愛玩品のユニークさも暁斎の抜群な再現力も見ることができます。
『撥雲余興』より「古銅老猿仮面」河鍋暁斎挿絵 明治10年(1877) 静嘉堂蔵 |
「老猿面」年代不詳 静嘉堂 |
『撥雲余興』より「鬼面鈴」河鍋暁斎挿絵 明治15年(1882) 静嘉堂蔵 |
「鬼面鈴」年代不詳 静嘉堂蔵 |
どちらもなぜこのようなものを蒐集するのかと思ってしまいますが、あらためて武四郎の旺盛な好奇心に驚かされます。
そして、松浦家伝来の暁斎作品や、武四郎蒐集の古物の目録『蔵品目録』掲載の資料で、近年静嘉堂が所蔵することが再認識された古写経類、天神像などの書画も展示されます。
ここでは天神信仰にまつわる作品をご紹介します。
はじめに松浦家伝来の暁斎筆「野見宿禰(のみのすくね)」絵馬額(松浦武四郎記念館蔵)。
これは天神様でないと思われるかもしれませんが、相撲取りの祖として伝えらる野見宿禰は土師臣となり、土師氏の中に菅原姓を名乗るものが出たことから、菅原道真は野見宿禰の末裔とする説があるのです。
「渡唐天神像」は、菅原道真が唐に渡ったとの伝承に基づいて室町時代の禅宗の寺院で盛んに描かれたもので、この作品の作者と伝わる「啓書記」とは、鎌倉・建長寺の書記で、落ち着いた雰囲気のある水墨の山水画を描いた画僧・賢江祥啓のことです。
こちらも『蔵品目録』に掲載されている「渡唐天神像」です。
「画鬼」と「鬼才」、二人の「鬼」がコラボするとどのような内容になるのか、とても楽しみな展覧会です。