2024年2月25日日曜日

山種美術館 公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024」

東京・広尾の山種美術館では、公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2024ー未来をになう日本画新世代―」が開催されています。

展覧会チラシ

今年で第3回目を迎える公募展(#Seed2024)は、コロナ禍の影響で2年間延期されていたので、とても待ち遠しく楽しみにしていました。
遅ればせながら2月24日(土)にお伺いしてきましたので、展示の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


会 期  2024年2月17日(土)~3月3日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  月曜日
入館料  一般 700円、学生及び未就学児無料(中学生以下は付添者の同伴が必要)
     渋谷区民の方は入館無料(住所が確認できるものの提示が必要)

※ほかにも割引・特典、他館との相互割引サービスがあります。また、関連イベントとして受賞・入選者によるアーティストトークも開催されますので、詳細は同館公式サイトをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/

アーティストトークは、土日の午前11時からと14時から開催されて、作家さんの作品に対する思いや苦労したことなどをお伺いできるので、機会があればぜひご参加いただきたいです。毎回数名の受賞・入選された作家さんが参加されます。
  
※今回の展覧会では、受賞・入選作品に限りスマートフォン・タブレット・携帯電話での撮影が可能です。展示室内で撮影の注意事項をご確認ください。


#Seed2024では、全153点の応募作品の中から厳正な審査を経て選ばれた大賞1点、優秀賞1点、特別賞(セイコー賞)1点、特別賞(オリコ賞)1点、奨励賞6点を含む入選作品全45点が展示されています。

展示風景
右から 特別賞(セイコー賞) 早川実希《頁》
大賞 北川安希子《囁き―つなぎゆく命》
優秀賞 重政周平《素心蠟梅》
特別賞(オリコ賞) 前田茜《山に桜》


新進気鋭の作家のみなさんの力のこもった作品ばかりで、公募展を見る時はいつも「私のお気に入りの一品」を探すのですが、今回は特に悩み、展示室内をうろうろしながら考えてしまいました。(「私のお気に入りの一品」は最後にご紹介します。)

展示を見た最初の印象は、月並みですが「やはり日本画はいいなあ。」と思ったことで、とても心地よい気分で作品を見ることができました。
それは、ただ単に画材として岩絵具を使っているということでなく、画題が季節の草花だったり、技法も金箔などを貼っていたりなど古くからの日本画をベースにしながら、その上に新たな試みにチャレンジしている作品が多かったからなのです。

展示風景
右 福島恒久《歳寒三友図》 左 朴泰賢《仰見》 


金箔など継ぎ目「箔足」の大ファン(?)の筆者としては、箔足を見ただけで「わぁ、いいな!」と思ってしまうのですが、その上に作家さん独自の表現を楽しむことができました。

こちらは、子どもを画題にした作品が多いという宮腰有希乃さんの《ひかりめぐる》。

宮腰有希乃《ひかりめぐる》

土日に開催されるアーティストトークの時間にあわせて行ったので、宮腰さんのお話を直接おうかがいすることができました。

画面全体に黄金色に染まるイチョウの落ち葉が舞い、三日月の上に座る子どもの頭にはオナガドリがとまるというファンタジーの世界が描かれているこの作品は、背景には金箔を貼り、三日月の部分は輝きを出すため金箔を重ねているとのことです。

確かに三日月はイチョウの落ち葉に比べてより一層輝いているように見えます。
この作品は、一目見ただけでも幻想的な雰囲気が感じられますが、やはり作家さんのお話をお伺いすると作品の良さがより深く伝わってきます。


学生時代から海面を描き続けていた清水航さんの《飛沫(しぶき)》にも箔が貼られているのには驚かされました。

清水航《飛沫》


ホッキョクグマの白と水面のエメラルドグリーンの色の対比が鮮やかな作品ですが、この色を出すためトルコ石を下地に全面に真鍮箔を貼り、それを塩化アンモニウムで腐食させ(※)、さらにその上に岩絵具を塗ったとのこと。
(※)真鍮は銅と亜鉛の合金なので、腐食させると銅のサビ・緑青が出てきます。


この日はほかに小針あすかさん(作品名《珊瑚の風》[奨励賞])、吉澤光子さん(作品名《一羽》)、林銘君さん(作品名《出口》)のアーティストトークをお伺いすることができました。

伝統的な技法の箔を使う作品がある一方、思いがけない画材を使っているのが田中寿之さんの《ドレス》でした。

田中寿之《ドレス》

日本画の技法だけでなく、様々な素材をコラージュして制作されたこの作品には、岩絵具だけでなく、布や凧糸、ステンレス針などが使われていて、今回の入選作品の中でも特に異彩を放っていました。
伝統的な日本画の画題や技法に根差した作品はもちろん好きですが、戦後、日本画界に新風を吹き込み、2020年に惜しくも解散したパンリアル美術協会のように、新たな表現をめざした作品にも魅力を感じます。

そして最後に「私のお気に入りの一品」をご紹介します。
それは陳映千さんの《息》です。

陳映千《息》

画面右にはもやがかかった木々の中に流れ落ちる滝、左には暗闇の中に浮かぶ塔。
屋根にかすかにかかる陽の光を表す金色と、塔の欄干の朱色がいいアクセントになってるところに特に惹かれました。

川合玉堂、速水御舟はじめ巨匠たちが今回の公募展の応募者と同じ20代から40代の頃に制作した作品も展示されています。

会期は短く、3月3日(日)まで。
アーティストトークは2日(土)と3日(日)がラストチャンスです。

ぜひその場でご覧いただいて、「お気に入りの一品」を見つけてみてはいかがでしょうか。