2026年7月2日木曜日

静嘉堂文庫美術館 元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開

静嘉堂@丸の内では、元禄!師宣劇場 十二ヶ月風俗図巻 大公開が開催されています。 

展覧会チラシ


今回の展覧会は、切手趣味週間の切手デザインの中でも特に人気が高い「見返り美人」で知られ、江戸時代前期に活躍した浮世絵の始祖・菱川師宣(?~1694)の肉筆画の大作「十二ヶ月風俗図巻」が展示されるというので開幕をとても楽しみにしていました。
そのうえ、期間限定(6/27-7/12)で東京国立博物館所蔵の「見返り美人図」が展示されて、師宣最晩年の傑作がそろい踏みというのもうれしいニュースです。

それではさっそく展覧会の様子をご紹介したいと思います。


展覧会開催概要


会 期  2026年6月27日(土)~8月23日(日)
     [前期]6月27日(土)~7月26日(日)
     [後期]7月28日(火)~8月23日(日)
     ※会期中展示替えがあります。
休館日  毎週月曜日(ただし7月20日は開館)、7月21日(火)
開館時間 10:00~17:00※入館は閉館の30分前まで
     7月3日(金) ・10日(金)は師宣劇場【 見返り美人図ナイト】!20:00まで開館
     *第4水曜 7月22日(水)は20:00まで開館
     *8月21日(金)、22日(土)は19:00まで開館
トークフリーデー  毎週木曜日
入館料   一般 1500円、大高生 1000円、中学生以下 無料
      障がい者手帳をお持ちの方(同伴者1名〈無料〉を含む) 700円
      お得な前期後期セット券 2500円      
※展覧会の詳細、チケット購入方法、関連イベント等については同館公式サイトをご覧ください。今回は元禄コーデ割引もあるので、要チェックです⇒https://www.seikado.or.jp

※撮影条件 写真撮影OKエリア:Gallery2、ホワイエのみ
 *動画撮影・フラッシュ撮影は不可。会場で撮影の注意事項をご確認ください。
※掲載した写真はプレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。

展示構成
 Gallery1:序幕 主役は庶民! 師宣前史から元禄期の絵画
 Gallery2:第一幕 元禄!師宣劇場
 Gallery3:第二幕 菱川、宮川の流れ—屛風絵にみる
 Gallery4:大詰 元禄リバイバル


Gallery1:序幕 主役は庶民! 師宣前史から元禄期の絵画

今回は「師宣”劇場”」ですので、Gallery1は「序章」ではなく「序幕」です。
Gallery1の扉(幕)が開くと、楽しげな雰囲気の屛風が見えてきました。

Gallery1入口

序幕でお出迎えしてくれるのは、重要文化財「四条河原遊楽図屛風」。
中央には鴨川が流れ、左右には四条通が走り、女歌舞伎や若衆能、見世物小屋などが描かれ、多くの人たちの声や楽器を奏でる音が聞こえてきそうです。

重要文化財「四条河原遊楽図屛風」江戸時代・寛永期(1624-44)頃
(公財)静嘉堂 通期展示

「四条河原遊楽図屛風」の隣には、ご存じ「見返り美人図」。このたび東京国立博物館からお出ましです。2週間だけの期間限定展示(6/27-7/12)ですのでお見逃しなく!

菱川師宣「見返り美人図」江戸時代・元禄元~7年(1688-94)頃
東京国立博物館蔵  展示期間6/27-7/12

7月14日からは、菱川師宣筆で(公財)静嘉堂が所蔵する「美人若衆集」が展示されます。

菱川師宣「美人若衆図」江戸時代・元禄期(1688-1704)頃
(公財)静嘉堂蔵 展示期間7/14-8/23

どちらの作品にも赤い着物の女性が描かれていますが、「十二ヶ月風俗図巻」にも赤い着物の「見返り美人のバリエーション」が登場するので、気に留めながら第一幕に向かいましょう。


Gallery2:第一幕 元禄!師宣劇場

第一幕に登場するのは、上巻、下巻ともそれぞれ約10mにも及ぶ長い巻物の「十二ヶ月風俗図巻」。前期(6/27-7/26)には上巻、後期(7/28-8/23)には下巻が展示されます。


菱川師宣「十二ヶ月風俗図巻」上巻 展示風景
江戸時代・元禄5-6年(1692-93)頃 (公財)静嘉堂蔵 前期展示(6/27-7/26)


「十二ヶ月風俗図巻」は、遊里や名所風俗などを得意とした師宣作品の中では唯一「月次風俗(つきなみふうぞく)」を題材とした肉筆画で、武家からの注文による特別上製本と見られ、上巻には1月から6月まで、下巻には7月から12月までの代表的な年中行事の場面が描かれています。



菱川師宣「十二ヶ月風俗図巻」下巻 十二月 江戸時代・元禄5-6年(1692-93)頃
(公財)静嘉堂蔵 後期展示(7/28-8/23)


さきほどふれた「見返り美人のバリエーション」は見返っていない美人もいますが、さまざまなポーズをとる赤い着物の女性に注目したいです。
神妙な面持ちで重箱をうやうやしく受け取る場面もいい感じです。

菱川師宣「十二ヶ月風俗図巻」上巻 三月 江戸時代・元禄5-6年(1692-93)頃
(公財)静嘉堂蔵 前期展示(6/27-7/26)

令和3~4年度に本格解体修理が行われて折れやシワが解消され、全面的に裏彩色が施されていることや、軸木の墨書から制作年代が元禄5~6年(1692-93)であることなどが判明するなど新たな発見もありました。
詳しくはGallery2内に掲示されている解説パネルをご覧ください。修理前と修理後の違いを写真で比較することができます。


Gallery3:第二幕 菱川、宮川の流れ—屛風絵にみる

一番大きな展示室のGallery3に六曲一双の大きな屛風が並ぶ様はまさに壮観!
手前は、「見返り美人図」「十二ヶ月風俗図巻」と並んで師宣晩年の傑作、重要文化財「歌舞伎図屛風」。
右隻には華やいだ舞台の様子が描かれ、左隻には舞台裏の楽屋や、役者が客をもてなす芝居小屋まで描かれていて、当時の歌舞伎の人気ぶりがよく伝わってきます。

手前 菱川師宣 重要文化財「歌舞伎図屛風」江戸時代・元禄5-6年(1692-93)頃
東京国立博物館蔵 前期展示 
奥 「上野隅田川図屛風」江戸時代・元禄~享保期(1688-1736)頃
(公財)静嘉堂蔵 通期展示


「歌舞伎図屛風」は前期展示で、後期には、原本:菱川師宣「江戸風俗屛風(高精細複製)」(原本:米国フリア美術館蔵 元禄元~7年(1688-94)頃 千葉県立中央博物館蔵)が展示されます。
「複製」といっても、現在の技術では本物と見紛うばかりの出来栄えですし、「門外不出」という方針の米国フリア美術館が所蔵する作品ですので、本物の雰囲気を味わうことができる絶好のチャンスです。

「上野隅田川図屛風」には、上野の花見の様子が右隻に、隅田川の納涼の様子が左隻に描かれていますが、ここで注目したいのは、師宣が挿絵を担当した墨摺絵本『江戸雀』。
『江戸雀』で師宣が描いた上野や両国橋などの構図が「上野隅田川図屛風」に受け継がれているのがよくわかります。

近行遠通 撰 菱川師宣 画『江戸雀』江戸時代・延宝5年(1677)
全十二冊のうち二冊 (公財)静嘉堂蔵 通期展示 

ほかにも静嘉堂所蔵の師宣や、同時代の浮世絵師・杉村治兵衛、近藤清信の版画が初公開されていますが、世界に一枚しか確認されていない貴重な版画がさりげなく展示されているところがすごいです(下の写真の2点)。


右 近藤清信「朝鮮人押大名行烈 四」江戸時代・正徳~享保期(1711-36)頃
左 杉村治兵衛「風流絵尽」のうち一枚 江戸時代・貞享~元禄前期(1684-96)頃
どちらも(公財)静嘉堂 通期展示


Gallery4:大詰 元禄リバイバル

そしていよいよ大詰へ。

師宣の没後数年を経た元禄末年頃、菱川工房を率いていた息子の師房は祖先の家業である紺屋(こうや)に戻り菱川派は途絶えましたが、師宣が描いた「浮世」の風景は、次の世代の宮川長春(1682-1752)らの宮川派に受け継がれました。


Gallery4:大詰 元禄リバイバル 展示風景

宮川長春はあでやかで美しい肉筆美人画を数多く制作した絵師で、今回の展覧会でも(公財)静嘉堂が所蔵する「美人図」(前期展示)、「形見の駒図」(通期展示)、東京国立博物館所蔵の重要文化財「風俗図巻」(展示期間 第一段:8/4-8/16、第二・三段:8/18-23)を見ることができます。

宮川長春「風俗図巻」江戸時代・ 元文~寛延期(1736-51)頃 
東京国立博物館蔵 展示期間8/4-8/23 *この場面の展示期間(8/18-23)
Image:TNM Image Archives


そして時が下って江戸後期の元禄懐古趣味の中で師宣を再評価したのは、浮世絵師にして戯作者、考証家の山東京伝(1761-1816)でした。そういった時代背景の中、文化文政期(1804-30)に江戸琳派の鈴木其一(1796-1858)によって、古画に倣った「雪月花三美人図」が描かれたのです。


鈴木其一「雪月花三美人図」江戸時代・文政期(1818-30)頃
(公財)静嘉堂蔵 通期展示 


ミュージアムショップ

ミュージアムショップには、静嘉堂のコレクションをモチーフにしたオリジナルグッズが盛りだくさん。
なかでも国宝・曜変天目「稲葉天目」をモチーフにしたグッズは、絵はがき、ハンカチ、ぬいぐるみ、アロハシャツと充実の品揃えです。ショップのみのご利用も可能ですので、ぜひお立ち寄りください。



展覧会図録も販売中です。
菱川師宣の代表作「見返り美人図」ほか師宣とその系譜の作品27点が掲載され、静嘉堂所蔵の「十二ヶ月風俗図巻」は詳細な図版で紹介されているので、自宅に帰ってからでも作品の余韻に浸ることができるのでおすすめです。

展覧会図録

菱川師宣の晩年の傑作も、江戸時代を通じて流れる師宣の画風を継承した作品も見られ、まさに「師宣劇場」が楽しめる展覧会です。
前期も後期もぜひご覧いただきたいです。