東京・日本橋の三井記念美術館では、特別展「京都・真如堂の名宝」が開催されています。
真如堂は、正式には鈴聲山真正極楽寺(れいしょうざん しんしょうごくらくじ)といい、平安時代に戒算上人によって開かれた天台宗の古刹で、応仁の乱によって伽藍は焼失し、その後も移転や火災を繰り返しましたが、江戸時代に現在の洛東・神楽岡の地に再建されました。
今回の展覧会は、真如堂をテーマとする初めての展覧会です。
真如堂に伝わる仏像・絵画・経典などをはじめとする貴重な文化財が紹介され、鎌倉時代の阿弥陀如来立像が寺外初公開になるなど、見どころいっぱい。
開幕に先立って開催されたプレス内覧会に参加しましたので、展覧会の様子をさっそくご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2026年7月4日(土)~8月30日(日)
※会期中展示替があります。
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 月曜日(但し7月20日は開館)、7月21日(火)
入館料 一般 1,500円、大学・高校生 1,000円、中学生以下無料
※展覧会の詳細、各種割引等については同館公式サイトをご覧ください⇒https://www.mitsui-museum.jp/
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、プレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。
展示室1 真如堂の歴史と三井家1
展示室2 国宝「法華経(運慶願経)」
展示室3・4 真如堂の本尊と同時代の仏像
寺外初公開!鎌倉時代の阿弥陀如来立像
真如堂伝来の仏教美術
展示室5 真如堂縁起
展示室7 真如堂伝来の書画
真如堂の歴史と三井家2
真如堂の歴史と三井家1
江戸時代には、三井家の元祖である三井高利夫妻が檀家となったことを契機に、真如堂と三井家は深い関わりをもつようになりました。
いつもゴージャスな雰囲気で気分を盛り上げてくれる展示室1には、『真如堂縁起』をはじめとした真如堂の歴史を伝える書画や、三井高利夫妻ら三井家の肖像彫刻などが展示されています。
| 「展示室1」展示風景 |
国宝「法華経(運慶願経)」
続いては展示室2。
いつも展覧会を代表する作品が展示される「VIPルーム」には、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活躍した仏師・運慶が発願した国宝『法華経(運慶願経)』が展示されています。
| 「展示室2」展示風景 |
日本史にも登場する有名な仏師・運慶が、仏像を造るだけでなく仏教の経典を法華経という形で残したことは、ほかにこのような例はなく、また、運慶の信仰心を知る上でも国宝『法華経(運慶願経)』は非常に重要な意味をもつ史料なのです。
国宝『法華経(運慶願経)』は全八巻のうち、一巻は失われ、八巻は個人所蔵、真如堂は二巻~七巻を所蔵しています。今回の展覧会では、第三巻と第五巻が7月4日~8月2日、第七巻は8月4日~8月30日に展示されます。
三井記念美術館の中で最も広い展示室4に移ります。
真如堂の本尊と同時代の仏像
真如堂の本尊・阿弥陀如来立像は本堂建立時の正暦5年(994)頃の作とされ、現存する阿弥陀如来立像として最古級の作例に位置付けられています。
本尊は秘仏のため展覧会への出展はかないませんが(パネル展示)、展示室4には本尊の模刻像をはじめ、本尊の制作時期と同じ頃に都や比叡山に伝来した仏像が12体展示されています。
これだけ古い時代の仏像が並ぶ様は、まさに荘厳の一言。この空間をぜひその場で体験していただきたいです。
そして、真如堂本尊が造立された10世紀後半から11世紀初頭にかけては、平安時代前期にみられる重厚な作風から、穏やかな「和様」へと移行していく時期にあたるので、衣の襞(ひだ)の形や、仏像の体形の違いなどを、解説を読みながら見比べると、その当時の変化をうかがうことができます。
寺外初公開!鎌倉時代の阿弥陀如来立像
貴重な仏像の展示はまだまだ続きます。
真如堂山内寺院の法輪院に伝来する阿弥陀如来立像は、昨年の修理に際して、ファイバースコープの調査によって、像内から仏師「院蓮」の名と建長5年(1253)の制作年を記した墨書銘が発見されました。
胃カメラなどの医療や、配管や機械の内部などの調査に用いられるファイバースコープは文化財の調査でも活用されていることを知りましたが、人体であれば口や鼻から管を入れるところ、仏像は耳から管を入れるのだそうです。
| 阿弥陀如来立像 院蓮作 鎌倉時代・建長5年(1253) 真如堂一山 法輪院 (画像提供:美術院) |
同じく真如堂山内の喜運院に伝来する阿弥陀如来立像も鎌倉時代の作で、寺外初公開。
真如堂本尊との構造上の共通点も指摘されていますが、ここで注目したいのが衣の襞の文様。
仏様の左の胸あたりにクルクルと渦を巻いたような「渦巻衣文」が見えるので、ぜひその場でご覧いただきたいです。
真如堂伝来の仏教美術
展示室4には真如堂に伝来する仏画の名品も展示されています。
これだけ多くの仏像や仏画に囲まれると、まるで寺院の法要の場にいるような気分になってきます。
真如堂縁起
重要文化財『真如堂縁起』(真正極楽寺 真如堂)は、真如堂創建の由来や寺の変遷が描かれた三巻本の絵巻で、このうち中巻と下巻とともに、海北友竹筆と伝わる江戸時代の模本三巻もあわせて展示されます。 (展示室1の『真如堂縁起』この絵巻の詞書だけを書き抜いて冊子装にしたものです。)
海北友竹は、安土桃山時代に活躍して、武士出身らしく気迫あふれる作風で知られる海北友松の孫で、友松の墓が真如堂にあるごご縁から、元禄期の真如堂再建の際に友竹は多くの絵を描いたのでした。
| 「展示室5」展示風景 |
展示替えがありますが、江戸時代の模本三巻とあわせて会期中のどの時期でも上巻・中巻・下巻とも見ることができます。展示替は次のとおりです。
展示期間
真如堂縁起(模本)・巻上 7/4-8/30(通期展示)
真如堂縁起・巻中 7/4-8/2
真如堂縁起(模本)・巻中 8/4-8/30
真如堂縁起(模本)・巻下 7/4-8/2
真如堂縁起・巻下 8/4-8/30
このほかにも、三井記念美術館が所蔵する『真如堂尊像模刻霊感記』も展示されます。
これは、室町三井家二代の継室寿月が、真如堂の阿弥陀如来像を模刻した経緯とその霊験を描いた絵巻です。
| 真如堂尊像摸刻霊感記 下巻 詞:寿月筆 三井高興識 江戸時代・元文3年(1738)三井記念美術館 |
真如堂伝来の書画
展示室7には真如堂に伝わるさまざまな書画が展示されていますが、室町幕府第十三代将軍・足利義輝、豊臣秀吉、徳川家康をはじめ肖像画のメンバーがあまりに豪華なのに驚かされました。
さらには近年の調査で新たに確認された、豊臣秀吉に関わる古文書(太閤検地・朱印状)も特別展示されているので、時の権力者との関わりを垣間見ることができます。
| 「展示室7」展示風景 |
そういった中でも特に異色なのは『安倍晴明蘇生図』
『真如堂縁起』下巻(8/2までは模本)にも、安倍晴明が念持仏の不動明王の力で蘇生する場面が描かれていますが、これはその場面が一幅に仕立てられた作品です。
閻魔大王のアイテムである「浄玻璃の鏡」には胡粉が濃く塗られ(画面下部の白い鏡)、裏面から光を当てると亡者の罪業が映し出される仕掛けになっているので、虫払会の際に寺僧が蠟燭の明かりなどで透かし出して参拝者の目を楽しませたと考えられています。
その場で見ると、何かがうっすらと描かれているのが見えるので、さすが陰陽師・安倍晴明らしいミステリアスな作品だと思いました。
真如堂の歴史と三井家2
展示室7には、三井家から寄進された数多くの品々のうち、絵画を中心とした作品が展示されています。