2018年12月3日月曜日

山種美術館「特別展 皇室ゆかりの美術ー宮殿を彩った日本画家ー」


東京・広尾の山種美術館では、特別展「皇室ゆかりの美術-宮殿を飾った日本画家-」が開催されています。

皇室ゆかりの美術品や宮殿にちなんで制作された作品が展示されていて、とてもきらびやか。幅9mを超える大画面の東山魁夷《満ち来る潮》(山種美術館)(下の展覧会チラシ中央)から、可愛らしい銀製のボンボニエール(下の展覧会チラシ右下)の細部まで楽しめる展覧会です。
ぜひみなさまにもご覧になっていただきたい展覧会なので、今回は先日開催された内覧会の様子をお伝えしながら見どころをご紹介したいと思います。
※掲載した写真は、美術館の特別の許可をいただいて撮影したものです。

ギャラリートークはじめ関連イベントもあります。
詳細は同館ホームページでご確認ください。 → 山種美術館


さて、それではさっそく同館特別研究員の三戸さんのギャラリートークをおうかがいすることにしましょう。

「皇居宮殿が完成したのが1968(昭和43)年、今年でちょうど50年。また、来年には皇位が継承されて年号が代わります。こういった節目の年に今回の特別展を開催しました。」と三戸さん。

第1章 皇室と美術 -近世から現代まで

展示室入口でお出迎えしてくれるのは鶴と松のお目でたい題材の双幅の掛軸《松鶴》(山種美術館)。作者は京都に生まれ、京都で活躍した西村五雲。

西村五雲《松鶴》(山種美術館)


「今回の展覧会は作品のキャプションにも注目です。この《松鶴》は久邇宮家旧蔵の作品で、昭和8年に大礼記念京都美術館(現 京都市美術館)から久邇宮家に寄贈されたものです。久邇宮家は昭和天皇の皇后・香淳皇后の出身家です。

「皇室の書」のコーナーでは、後陽成天皇《和歌巻》【重要美術品】(山種美術館)に注目。和歌の一部の言葉が絵で表される「判じ絵」になっています。

「絵画」のコーナーでは、野口小蘋《箱根真景図》、下村観山《老松白藤》と大作が並びます。
野口小蘋《箱根真景図》は、竹田宮家旧蔵の屏風。
右隻が箱根権現や富士山の描かれた春景、左隻がドイツの医師・ベルツが保養地として設置を勧めた箱根離宮が描かれた秋景。
竹田宮家の婚礼の調度品であった可能性が指摘されています。

野口小蘋《箱根真景図》(山種美術館)

下村観山《老松白藤》(山種美術館)

下村観山《老松白藤》は、明治神宮から献上された伏見宮家旧蔵の屏風。
大胆な松に繊細な藤がからむ観山渾身の作品。
左隻の左から2面に描かれた小さな熊蜂に注目です。
この作品のみ撮影可です。ぜひ記念に一枚!

第2章 宮殿と日本画 -皇居造営下絵と宮殿ゆかりの絵画

「皇居を飾る」のコーナーでは、赤坂離宮や皇居造営の下絵に注目です。

赤坂離宮の花鳥図の下絵は、荒木寛畝がはじめに担当しましたが、途中で渡辺省亭に交代。
「時代に合わせて、より西洋的な図柄が好まれたのでは。」と三戸さん。
それでも荒木寛畝には絵を描いた分の謝礼は支払われたそうです。

「山種美術館と宮殿ゆかりの絵画」のコーナーでは、昭和の新宮殿の作品を誰もが楽しめるようにと、山種美術館創立者・山﨑種二氏が宮殿装飾に携わった画家たちに依頼して制作された作品が展示されています。

橋本明治《朝陽桜》は、皇居正殿の東廊下を飾る杉戸絵《桜》とほぼ同様の構図の作品。

橋本明治《朝陽桜》(山種美術館)

第3章 帝室技芸員ー日本美術の奨励

帝室技芸員制度は、日本美術を奨励、顕彰する目的で設置された制度。
「1890(明治23)年から1944(昭和19)年まで13回にわたり任命が行われ、日本画家がもっとも多く、第1回の橋本雅邦らから、最終回となった第13回の鏑木清方、上村松園、前田青邨らまで79名が任命されました。作品のキャプションの右上に任命された年が記載されています。」と三戸さん。

こちらは日本画のコーナーです。

橋本雅邦《松林山水》(山種美術館)

右から、瀧和亭《五客図》、荒木寛畝《雉竹長春》、
川端玉章《犀川真景図》(いずれも山種美術館)


右から、竹内栖鳳《双鶴》、今尾景年《松下牧童図》
(いずれも山種美術館)

右から、下村観山《寿老》、川合玉堂《鵜飼》
(いずれも山種美術館)


右から、横山大観《富士山》、山元春挙《火口の水》、
寺崎広業《渓山雪後》(いずれも山種美術館)
日本画だけでなく、洋画や工芸・彫刻の分野で任命された帝室技芸員の作品も展示されているので、こちらもぜひじっくりご覧になってください。

展示されている作品はもちろん、今回もスイーツやグッズが充実しています。

1階エントランスロビーにある「Cafe 椿」の特製和菓子。
どれも美味なので、どれをおススメしたらいいか迷ってしまいます。

下の写真中央は「吉祥」(西村五雲《松鶴》)、右上から時計回りに「初陽」(横山大観《富士山》)、「雪輪」(上村松園《牡丹雪》)、「ちとせ」(下村観山《老松白藤》)、「春の朝」(橋本明治《朝陽桜》)。(カッコ内はイメージした作品名で、いずれも山種美術館蔵)

こちらは今回の展覧会関連グッズ。地下のミュージアムショップで販売していますので、展覧会の思い出にぜひ。


おススメは、クリスマスの時期などに欠かせないグリーティングカード。
1枚は350円+税ですが、5枚セットだと1,400円+税で1枚分お得です。


会期は2019年1月20日(日)までですが、展示替えがあって、前期は12月16日(日)までなのでお見逃しなく!
後期は12月18日(火)から始まります。後期展示も楽しみです。