東京・上野公園の東京国立博物館では、豪華絢爛な桃山文化の逸品が勢ぞろいした特別展「桃山-天下人の100年」が開催されています。
天下人好みの勇壮な襖絵や障壁画、南蛮文化の影響を受けた美術品、侘びの趣の茶道具。
室町時代末から江戸時代初期にかけて激動の100年に生まれた文化の粋が楽しめる展覧会です。
【展覧会概要】
会 場 東京国立博物館 平成館
会 期 2020年10月6日(火)~11月29日(日)
前期展示 10月6日(火)~11月1日(日)
後期展示 11月3日(火・祝)~11月29日(日)
開館時間 9:30~18:00(会期中の金曜・土曜は21:00まで)
休館日 月曜日(ただし、11月23日(月・祝)は開館。11月24日(火)は休館)
観覧料金 一般 2,400円ほか
※ 本展は事前予約制です。オンラインでの日時指定券の予約が必要です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください⇒https://tsumugu.yomiuri.co.jp/momoyama2020/
それではさっそく会場内をご案内いたしましょう。
※会場内は撮影禁止です。掲載した写真は内覧会で博物館より特別に許可をいただいて撮影したものです。
会場内は7つのエリアに分かれています。
第1会場
A「桃山の精髄-天下人の造形」
B「変革期の100年ー室町から江戸へ」
第2会場
C「桃山前夜-戦国の美」
D「茶の湯の大成-利休から織部へ」
E「桃山の成熟ー豪壮から瀟洒へ」
F「武将の装い-刀剣と甲冑」
G「泰平の世へー再編される権力の美」
どのエリアも見どころいっぱいの展覧会で、どれも紹介したいのですが、今回は特に注目のポイントを3点に絞ってご紹介したいと思います。
見どころ1 桃山の二大天才絵師の対決が見られる!
見どころ2 狩野派の師弟の華麗な競演が見られる!
見どころ3 甲冑や刀剣、茶道具も充実!
見どころ1 桃山の二大天才絵師の対決が見られる!
桃山の天才絵師といえばまず思い浮かべるのは、織田信長、豊臣秀吉に仕え、天下人が好む迫力の大画面作品を描いた狩野永徳(1543-90)。
そして狩野永徳の代表作といえば、京都の神社仏閣、祇園祭の山鉾巡行、2,500人近くもの人物が細かく描かれた黄金色に輝く国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》。
こちらは、A「桃山の精髄-天下人の造形」のエリアに展示されている作品で、前期のみの展示です。
狩野永徳筆 国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》 室町時代・永禄8年(1565) (山形・米沢市上杉博物館) 前期展示 |
時の権力者に仕えたため戦火に遭い、安土城、大坂城、聚楽第はじめ、狩野一門の総力を挙げて制作した障壁画がことごとく焼失する中、国宝《洛中洛外図屛風(上杉家本)》と並んで残った永徳の代表作が《唐獅子図屛風》(宮内庁三の丸尚蔵館)。こちらは後期展示です。
東京国立博物館正面の案内看板 |
そして、永徳最大のライバルは能登から上京した長谷川等伯(1539-1610)。
A「桃山の精髄-天下人の造形」のエリアには、永徳と等伯、二人の天才絵師の屛風対決が見られるコーナーがあります。
右 狩野永徳筆 国宝《檜図屛風》 安土桃山時代・天正18年(1590) (東京国立博物館) 前期展示 左 長谷川等伯筆 重要文化財《牧馬図屛風》 室町~安土桃山時代・16世紀 (東京国立博物館) 展示期間10/6-10/18 |
長谷川等伯の台頭をおそれ、「はせ川(等伯のこと)と申す者に内裏の対屋の襖絵を描かせることにしたのは迷惑である。」と、狩野永徳が公家の勧修寺晴豊に申し出たことはよく知られているエピソードですが、まさか当時は火花を散らした永徳も等伯も、400年以上たって仲良く並んで作品が展示されるとは夢にも思わなかったでしょう。
私たちにとってはありがたいことですが。
この屛風対決のコーナーは微妙に展示替えがあるのでご注意を。
10月20日からは長谷川等伯 国宝《松林図屛風》(東京国立博物館)が登場します。
10月6日~10月18日
狩野永徳 国宝《檜図屛風》、長谷川等伯 重要文化財《牧馬図屛風》
10月20日~11月1日
狩野永徳 国宝《檜図屛風》、長谷川等伯 国宝《松林図屏風》
11月3日~11月29日
狩野永徳 《唐獅子図屛風》、長谷川等伯 国宝《松林図屏風》
下の写真は、東京国立博物館が所蔵する高精細複製画の《松林図屛風》。
以前、本館で畳の上でろうそくと同じ明るさの中に展示されている時に撮影したものです。
見どころ2 狩野派の師弟の華麗な競演が見られる!
今回の展覧会の特徴は、屏風や障壁画といった大画面の作品が、広い平成館特別展示室の中にぎっしり展示されていること。見応え十分の展示です。
中でも、徳川の時代に移り、江戸に下った狩野探幽のあと京都で狩野派の基礎を築いた狩野山楽(1559-1635)と、山楽の弟子で、のちに養子となって京狩野を継いだ狩野山雪(1589/1590-1651)の襖絵の競演も見どころのひとつ。
E「桃山の成熟ー豪壮から瀟洒へ」のエリアに展示されています。
山楽の襖絵は、京都・大覚寺を飾る《紅梅図襖》と《牡丹図襖》。
この二つの襖絵は同じ襖の両面に描かれているので、ご覧のように敷居のついた展示ケースに入っていて、どちらの面も見られるようになっています。
うねるような梅の木の大胆さと、画面いっぱいに広がる紅梅の優雅さが感じられる《紅梅図襖》や、白い牡丹がまるで音符のようにリズミカルに舞う《牡丹図襖》。
山雪の襖絵は、京都・妙心寺塔頭の天球院を飾る《籬に草花図襖》と《竹林虎図襖》。こちらも襖の両面に描かれているので、敷居のついた展示ケースに入っています。
山楽と山雪の襖が展示ケースに入って一直線に並んでいる様は壮観です。
垂直に描かれた竹の安定感と咆哮する虎の迫力の対比が見事な《竹林虎図襖》や、竹垣の壁のような安定感と草花の踊るような動きの対比が見事な《籬に草花図襖》。
見どころ3 甲冑や刀剣、茶道具も充実!
桃山文化が花開いた時代は、江戸幕府が開かれて天下泰平の世になるまで戦いが絶えませんでした。屛風や障壁画だけでなく、優れた甲冑や刀剣もこの時代のシンボルなのです。
F「武将の装い-刀剣と甲冑」のエリアでは、有力な武将にゆかりの刀剣や甲冑が展示されています。
まるで後ろの《関ヶ原合戦図屛風》から飛び出してきたような甲冑群と刀剣。
合戦のときの法螺貝の音や鬨(とき)の声が聞こえてきそうな空間。このレイアウトは絶妙です。
茶道具はD「茶の湯の大成-利休から織部へ」以外のエリアにも数多く展示されていますので、ぜひじっくりご覧になっていただきたいです。
こちらは、C「桃山前夜-戦国の美」に展示されている、上品な趣の青磁と茶入。
展覧会オリジナルグッズも充実してます
第1会場と第2会場の間にある特別展のミュージアムショップでは、展覧会オリジナルグッズを販売中!どれも欲しくなるものばかりで、財布のひもがついゆるんでしまうかも。
屛風の大判絵はがき(200円+税)。専用の大判絵はがき用フレーム(1,500円+税)に入れて部屋に飾ることができます。
お帰り前に撮影スポットで記念に一枚!
1階ラウンジには撮影スポットがあります。来館記念にぜひパチリ!
撮影スポット |
こちらは2020年に制作された、狩野長信筆 国宝《花下遊楽図屛風》(東京国立博物館)の高精細複製画。関東大震災で失われた右隻中央部も見事に復元されています。
原品は会場内のE「桃山の成熟-豪壮から瀟洒へ」のエリアに通期で展示されています。
豪華絢爛な桃山文化の展覧会にふさわしい内容充実の展覧会です。
会期は10月6日(火)から11月29日(日)までですが、前期後期で展示替えや、細かな展示替えもあるので、出品目録をチェックして、お目当ての作品をぜひお楽しみください!