2020年10月15日木曜日

京都国立博物館「御即位記念 特別展 皇室の名宝」

皇室ゆかりの地・京都にふさわしい展覧会「御即位記念 特別展 皇室の名宝」が、京都国立博物館 平成知新館で開催されています。




宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する名品の数々、天皇家伝来の御物、京都国立博物館の名品はじめ皇室が伝えてきた日本文化の粋が見られる展覧会。
これだけ多くの皇室の名宝が見られる機会はそう多くはないかもしれません。
ぜひご覧になっていただきた展覧会です。

【展覧会概要】

会 場  京都国立博物館 平成知新館(京都・東山七条)
会 期  2020年10月10日(土)~11月23日(月・祝)
 展示替:前期 10/10-11/1 後期 11/3-11/23
開館時間 午前9時30分~午後6時(入館は午後5時30分まで)
観覧料  一般 1800円ほか
※本展は、新型コロナウィルス感染症の感染予防・拡大予防のため、オンラインでの事前予約制(日時指定券)を導入しています。
詳細は展覧会公式サイトでご確認ください⇒https://meiho2020.jp/index.html
 


それではさっそく展示室内をご案内したいと思います。
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、報道内覧会で博物館より特別の許可をいただいて撮影したものです。

展示内容は大きく分けて2つの章で構成されています。

第一章 皇室につどう書画 三の丸尚蔵館の名宝

   皇居東御苑内にある三の丸尚蔵館の名宝と聞いて、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは伊藤若冲《動植綵絵》30幅ではないでしょうか。
 そして、江戸後期京都画壇の巨匠・円山応挙の孔雀、教科書に出てくる《蒙古襲来絵詞》《春日権現験記絵》、そして古筆や中国の書画。
 第一章では、幅広い分野の名品を所蔵する三の丸尚蔵館の書画の逸品が展示されています(《花手桶形引手》(通期展示)のみ宮内庁京都事務所蔵)。 

第二章 御所をめぐる色とかたち

 第二章では、京都御所での生活の品々、即位の情景、描かれた天皇の姿、天皇の書、王朝物語などを通じて、天皇が日々をすごしていた空間、御所の後宮の女性たちが暮らしていた空間が、宮内庁三の丸尚蔵館はじめ、御物、京都国立博物館、京都の寺院ほかの名品で再現されています。
 長いあいだ都が置かれていた京都ならでの展示と言えるでしょう。


第一章 皇室につどう書画 三の丸尚蔵館の名宝


第一章展示は4つのエリアに分かれています。

 「筆跡のもつ力」
 「絵と紡ぐ物語」
 「唐絵へのあこがれ」
 「近世絵画百花繚乱」

※紹介した展示作品はすべて宮内庁三の丸尚蔵の所蔵です。

展示は3階の「筆跡のもつ力」のエリアから始まります。

タイトルにあるとおり、時空を超えて現代に伝えらえた、墨で書かれた文字の力をぜひ感じとっていただきたい逸品ばかり。

第一章「筆跡のもつ力」展示風景

冒頭を飾るのは、中国・東晋時代の4世紀に活躍した書聖・王羲之筆(搨本)の《喪乱帖》
後世の中国や日本に大きな影響を与えた王羲之の真筆はすべて失われ、のちの模写、拓本が残されています。この《喪乱帖》も唐時代に模写されたものなのですが、それも数が少なく、貴重なものなのです。

《喪乱帖》は前期展示。後期には、国宝の詫び状で知られた(国宝《離洛帖》東京・畠山記念館蔵)藤原佐理(944-998)の《恩命帖》が展示されます。
本人もまさか詫び状が後世に伝わるとは思わなかったでしょうが、おおらかな人柄がしのばれます。この《恩命帖》も詫び状のようですが、藤原佐理といえば、小野道風、藤原行成と並ぶ平安時代中期の「三蹟」の一人。達筆ぶりをぜひご覧ください。

続いて「絵と紡ぐ物語」のエリア。

ここには、《蒙古襲来絵詞》はじめ絵巻物が展示されています。
日本史教科書の元寇のページに必ずと言っていいほど出てくる場面も出てきます(《蒙古襲来絵詞》は、前期に前巻、後期に後巻が展示されます)。

    
(展覧会チラシは公式サイトからダウンロードできます。)

そして、同じく鎌倉時代に制作されて、一巻も欠けることなく現代に残されている貴重な絵巻《春日権現験記絵》(絵 高階隆兼筆、詞書 鷹司基忠ほか筆)20巻のうち、6巻および目録が前期後期で展示されます。

とても700年以上も前に描かれたとは思えない色のあざやかさをご覧ください。「絵と紡ぐ物語」のエリアは2階にも続きます。
2階の1部屋を占めるのは、岩佐又兵衛《小栗判官絵巻》(15巻のうち3巻が前期後期で1巻半ずつ展示)、尾形光琳《西行物語絵巻》(4巻のうち2巻が前期後期で1巻ずつ展示)。


次に「唐絵へのあこがれ」のエリアに移ります。

第一章「唐絵へのあこがれ」展示風景


墨の濃淡だけで描かれた竹や梅、浮かび上がってくるような鮮やかな色の牡丹、表情豊かな羅漢さんたち。日本の絵師や文人たちがあこがれた中国絵画の名品が勢ぞろいしています。

国宝《観音猿鶴図》(京都・大徳寺蔵)の作者で、日本で特に人気のあった中国・南宋末元初の画僧、牧谿の作と伝わる作品も展示されています。
この伝牧谿《蘿蔔蕪菁図》は、土から掘り出された大根と菜が描かれた二幅。画面の横に描かれた賛とともに室町時代の禅宗の人たちが大根と菜にどのような意味合いをもたせたのか、想像してみるのも楽しいかもしれません。

前期は9~15世紀(唐~五代時代から元~明時代)の中国絵画7点、後期は14~18世紀(元~清時代)の中国絵画7点と朝鮮絵画1点の計8点で、総入れ替えになります。
明清時代の水墨の山水や青緑山水、それに明代の書画の大家で、その後の中国書画に大きな影響を与えた董其昌の金箋の上に墨で描かれた《書画合冊》が出てくるので、中国絵画ファン(私もその一人です)にとっては後期も見逃せません。

続いて広々とした平成知新館の展示室を3つ使って繰り広げられる、近世京都画壇で活躍した絵師たちの「近世絵画百花繚乱」のエリアに移ります。

最初の展示室と次の展示室は、絢爛豪華な屏風の競演。
屏風も前期後期で総入れ替えですので、できれば全部ご覧いただきたいです。

絵師の顔ぶれも豪華。

狩野一門の棟梁として織田信長や豊臣秀吉に仕えた桃山の巨匠・狩野永徳の作と伝わる《四季花鳥図屏風》(前期展示)、《源氏物語図屏風》(後期展示)。
あの有名な国宝《風神雷神図屛風》(京都・建仁寺蔵)の作者で、「琳派の祖」俵屋宗達《扇面散図屏風》(後期展示)。
狩野派に学び、その後、独自の画風を確立した海北友松《浜松図屏風》(前期展示)、《網干図屏風》(後期展示)(海北友松も建仁寺蔵の重要文化財《雲龍図》がよく知られています)。

はじめ狩野派に学び、のちに尾形光琳に学んだ江戸時代中期の京都の絵師・渡辺始興《四季図屏風》(前期展示)。
京都ゆかりの絵師たちの屏風の名品がずらりと展示されています。

江戸を拠点にした狩野探幽狩野常信の屏風も展示されていますが、二人とも京都に上り、それぞれ二条城、紫宸殿に障壁画を描いているので、京都にゆかりのある絵師と言ってもよいでしょう。

そしていよいよ「近世絵画百花繚乱」の最後の部屋は伊藤若冲《動植綵絵》登場!
今回展示されるのは全30幅のうち、鶏、鴛鴦、鳳凰はじめ鳥が描かれた8幅(前期後期で4幅)。
競演するのは江戸中期京都画壇の巨匠、円山応挙《牡丹孔雀図》(前期展示)。
まさに「花鳥の楽園」です!


第一章「近世絵画百花繚乱」展示風景


第一章「近世絵画百花繚乱」展示風景

後期には伊藤若冲《旭日鳳凰図》が展示されるので、こちらも楽しみです。


第二章 御所をめぐる色とかたち



第二章も4つのエリアに分かれています。

 「即位の風景」
 「漢に学び和をうみだす」
 「天皇の姿と風雅」
 「王朝物語の舞台」


「即位の風景」のエリアに展示されているのは、天皇即位の様子や、即位にともなう大嘗祭の後の饗宴で飾られていた土佐光貞・光時《天明度 主基方本文屏風》2帖(京都国立博物館蔵 前期後期で1帖ずつ展示)、天皇が即位礼で着用した礼服(らいふく)と冕冠(べんかん)などが展示されています(礼服と冕冠は御物)。

この展示室は、即位礼の様子が描かれた屏風とあわせて、まさに即位の風景が再現されている空間です。

「京都国立博物館だより」2020年10・11・12月号
展覧会の概要がコンパクトに紹介されています。


続いて「漢に学び和をうみだす」に展示されているのは、私たちになじみのある『万葉集』『和漢朗詠集』『古今和歌集』はじめ、天皇家に伝わる「和様の書」の逸品。

第二章「漢に学び和をうみだす」展示風景

漢文から、やわらかな和風の書体に移ってきた平安時代の書の見どころは、文字の流麗さはもちろん、料紙装飾のきらびやかさ。文字も料紙もあわせてお楽しみください。

第一章で紹介した藤原佐理と並ぶ平安時代中期の「三蹟」の二人、小野道風《屏風土佐》(後期展示)、藤原行成筆と伝わる《雲紙本和漢朗詠集 巻上》(前期後期で巻替)、《大江切本古今和歌集》(前期展示)(いずれも宮内庁三の丸尚蔵館蔵)も展示されるので、三人の書を見比べることができます。


「天皇の姿と風雅」のエリアでは、天皇の肖像、天皇の筆跡「宸翰」、天皇が研鑽を積んだ書道や和歌、音楽といった学問に関する名品から天皇の日々の姿が浮かび上がってきます。

第二章「天皇の姿と風雅」展示風景


展覧会のフィナーレを飾るのは、みやびやかな「王朝物語の舞台」
王朝文学を代表する『源氏物語』や、御所の中でも中宮や有力な女御が住まう「飛香舎」に飾られていた襖絵や調度品が展示されていて、当時の御所での生活の様子を思い描くことができます。
第二章「王朝物語の舞台」展示風景



展覧会オリジナルグッズも充実してます!

展覧会公式図録は約100件の出品作品すべてカラー図版で掲載、伊藤若冲《動植綵絵》は1ページ1点で紹介、解説も詳しくて丁寧ですので来館記念にぜひ!(税込 2,800円)。



展覧会出品作品をデザインした一筆箋3種類(税込550円)、マスキングテープ3種類(税込550円)など展覧会オリジナルグッズも盛りだくさん。お帰りにはぜひ1階ミュージアムショップにお立ち寄りください。


これだけの名品がそろった展覧会も会期はわずか6週間。
そのうえ、前期後期それぞれ3週間で多くの作品が展示替えになるので、いつか行こうと思っていては見逃してしまいます。
今から予定を立てて、名品の数々をご覧になっていただければと思います。