冬になるとクリスマスのイルミネーションでひときわ輝いて見える三菱一号館美術館の外壁パネルのデコレーション。
今年は開館10周年の最後を飾る展覧会「1894 Visions ルドン、ロートレック展」が開催されています。
「1894」とは、丸の内初のオフィスビルとして三菱一号館が竣工した年。
今回の展覧会は、世界有数のルドン・コレクションを誇る岐阜県美術館とのコラボ企画で、
1894年にちなんでルドンやロートレックが活躍した19世紀末のフランス・パリに焦点を当てたものです。
さらにルドンやロートレックだけでなく、同時代の画家や、フランスに留学した日本の洋画家たちも登場して、19世紀末のパリの雰囲気がそのまま展示室内に再現されている豪華な展覧会なのです。
展覧会概要
会 期 2020年10月24日(土)~2021年1月17日(日)
(前期後期で展示替えがあり、11月26日から後期展示が始まっています。)
開館時間 10時~18時(祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21時まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合と、12月28日、2021年1月4日は開館)
年末年始の12月31日(木)、2021年1月1日(金)
入館料 一般 2,000円ほか
※本展覧会は日時指定券をお持ちの方を優先的にご案内します。展覧会の詳細、チケット購入方法等は同館公式HPでご確認ください⇒https://mimt.jp/
展示構成
第1章 19世紀後半、ルドンとトゥールーズ=ロートレックの周辺
第2章 NOIR-ルドンの黒
第3章 画家=版画家 トゥールーズ=ロートレック
第4章 1894年 パリの中のタヒチ、フランスの中の日本-絵画と版画、芸術と装飾
第5章 東洋の宴
第6章 近代-彼方の白光
巡回展情報
岐阜県美術館
「三菱一号館美術館共同企画 1894 Visions-ロートレックとその時代」
開催予定 2021年1月30日(土)~3月14日(日)
※展示室内は撮影不可です。掲載した写真は、内覧会で美術館より特別の許可をいただいて撮影したものです。
さて、展示構成にしたがって順番にご案内したいところですが、まずは今回の展覧会を象徴する場面からご紹介したいと思います。
エッフェル塔やセーヌ川を背景に見るロートレック。
第4章展示風景 |
暖炉の部屋で見るルドンやロートレック。
第2章展示風景 |
第3章展示風景 |
もうこれだけで気分はパリ!
すっかり19世紀末のパリの雰囲気にひたることができます。
さらに冒頭ご紹介したように、今回の展覧会はこの二人だけではありません。
同時代の画家や、フランスに留学した日本の洋画家たちも登場する豪華なラインナップなのです。
「第1章 19世紀後半、ルドンとトゥールーズ=ロートレックの周辺」では、三菱一号館美術館と岐阜県美術館の所蔵する19世紀後半の名品の「夢の競演」が実現しています。
19世紀後半といえば、やはり一番の人気は印象派。
三菱一号館美術館が所蔵するルノワール、モネの作品でまずひと安心。
「第1章 19世紀後半、ルドンとトゥールーズ=ロートレックの周辺」でしっかり19世紀後半のツボを押さえたうえで、「第2章 NOIR-ルドンの黒」に進みます。
ルドンの「黒」とは、主に木炭で描かれた作品群のこと。木炭の濃淡だけで描かれた不思議な世界に引き込まれてしまいそうです。
第2章展示風景 |
続いて「第3章 画家=版画家 トゥールーズ=ロートレック」へ。
ロートレックのポスターは、街頭に貼り出すためのものと思っていたのですが、蒐集家が室内を飾るために制作された限定版もあったとのこと。
部屋に飾ると室内が華やいだ雰囲気になりますね。
「第4章 1894年 パリの中のタヒチ、フランスの中の日本-絵画と版画、芸術と装飾」はすでに一部紹介しましたが、ロートレックの大判ポスター、ゴーギャンがタヒチ文化理解のために刊行しようとした紀行文『ノア・ノア』に自らが描いた挿絵などが展示されていて、当時のパリの華やいだ雰囲気が伝わってきます。
第4章展示風景 |
第4章展示風景 |
そして、「第5章 東洋の宴」の注目は明治期を代表する洋画家・山本芳翠。
フランス仕込みの洗練された女性像を描く芳翠は好きな洋画家の一人。
岐阜県美術館は芳翠の出身地だけあっていい作品を所蔵しています。
第5章展示風景 |
ところで、解説パネルに「留学中に描いた作品を積み込んだ海軍の巡洋艦畝傍(うねび)が航海中に消息を絶ち、滞欧中のほとんどが失われた。」とありますが、芳翠の滞欧中の作品は、なぜ海軍の巡洋艦で運ばれたのでしょうか。
明治前半、日本にはまだ自前で大型の軍艦を建造する技術がなかったため、日本海軍がイギリスに発注したのが防護巡洋艦「浪速」「高千穂」、そしてフランスに発注したのが「畝傍」でした。そして、「畝傍」が竣工して日本に向かうタイミングで芳翠の作品を積み込んだのです。芳翠も軍艦なら安全だろうと考えたかもしれません。
しかし、「畝傍」はシンガポール出港後行方不明になり、のちに亡失と認定されましたが、真相は謎のまま。
かえすがえすも残念でなりません。
さて、いよいよ会場は3階から2階に移り、最終章「第6章 近代-彼方の白光」。
暗闇の中に浮かんでくるのは三菱一号館美術館の至宝中の至宝、「黒」の時代から「色彩」の時代に移ったルドンの大作《グラン・ブーケ(大きな花束)》。
《グラン・ブーケ(大きな花束)》が完成した1901年、精神も肉体も病んでいたロートレックは、まるで19世紀が終わったのを見届けるかのように、同年の9月に亡くなりました。