2021年4月9日金曜日

【7月24日開幕!】京都国立博物館 特別展「京(みやこ)の国宝-守り伝える日本のたから-」

 7月24日から9月12日まで京都国立博物館で開催される日本博/紡ぐプロジェクト 特別展「(みやこ)の国宝-守り伝える日本のたから-」の報道発表会にオンライン参加しました。


展覧会チラシ

京都国立博物館では2017年に国宝展が開催されたので、「えっ、また国宝展?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回は「千年の(みやこ)」京都ゆかりの国宝を展示する展覧会

2021年3月時点で、国宝66件、重要文化財3件、皇室文化財5件、総数で120件弱の名品が展示されることがアナウンスされていますが、今後、追加される可能性もあるというので、質量ともに充実した内容の展示が期待されます。

展覧会概要

会 期  2021年7月24日(土)~9月12日(日)
 前期展示 7月24日(土)~8月22日(日)
 後期展示 8月24日(火)~9月12日(日)
 ※一部の作品は上記以外にも展示替を行います。
開館時間 午前9時~午後5時30分(入館は午後5時まで)
     ※夜間開館は実施しません。
休館日  月曜日 ※ただし8月9日(月・休)は開館、10日(火)休館
観覧料(税込)  一般 1,600円、大学生 1,200円、高校生 700円
主 催  文化庁、京都国立博物館、独立行政法人日本芸術文化振興会、読売新聞社
特別協賛 キヤノン、JR東日本、日本たばこ産業、三井不動産、三菱地所、
     明治ホールディングス
協 賛  清水建設、髙島屋、竹中工務店、三井住友銀行、三菱商事
特別協力 宮内庁(宮内庁三の丸尚蔵館) 
※本展は、政府が推進する「日本博」及び「日本美を守り伝える『紡ぐプロジェクト』の一環として開催するものです。
※本展は、新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡大防止のため、事前予約<優先制>を導入します。
※日時指定券は6月1日(火)よりローソンチケットで発売予定です。チケット購入方法、新型コロナウイルス感染予防・拡大防止、展覧会の見どころなど詳細は展覧会公式サイトでご確認ください⇒特別展 京の国宝-守り伝える日本のたから-

※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は、主催者よりお借りした広報用画像です。

展覧会は次の4章構成になっています。
 第1章 京都-文化財の都市
 第2章 京の国宝
 第3章 皇室の至宝
 第4章 今日の文化財保護


展覧会の見どころご紹介


見どころ1 京都にこだわった国宝の名品が見られる。

第1章 京都ー文化財の都市では、昭和26年6月9日に、戦後初めて国宝に指定された名品が展示されます。

中でも注目は、平安時代中期、摂関政治の最盛期を築いた藤原道長(966-1027)の日記『御堂関白記』

国宝 御堂関白記 自筆本 寛弘元年上巻(部分)
平安時代(10-11世紀) 京都・陽明文庫蔵
(通期展示<寛弘元年上巻は前期展示>)

『御堂関白記』は、歴史的史料として重要なのはもちろんですが、千年以上も経って本人の自筆本が残されているという貴重なものなのです。

この世をば わが世とぞ思ふ 望月のかけたることも なしと思へば

と詠んで、栄華を極めた藤原道長の直筆をぜひご覧いただきたいです。



こちらも昭和26年6月9日に国宝指定された、京都の粟田口派を代表する名工、久国作の太刀。久国の銘の入ったものは現存するものが少なく貴重な名品です。

国宝 太刀 銘久国
鎌倉時代(13世紀)
文化庁蔵(通期展示)

他にも、同じく昭和26年6月9日に国宝指定された、「瓢箪で鯰をおさえとる」ことができるかという不思議なテーマの「瓢鮎図」(如拙筆 室町時代(15世紀) 京都・退蔵院蔵)<後期展示>などが展示されます。


第2章 京の国宝では、美術工芸品の区分(絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料、歴史資料)ごとに名品の数々が展示されます。

絵 画

日本の画家の中でもっとも国宝指定作品が多いのが、誰もが知っている室町時代の絵師・雪舟。6件の国宝のうち、今回は京都国立博物館所蔵の「天橋立図」が展示されます。

国宝 天橋立図 雪舟筆 室町時代(16世紀)
京都国立博物館(前期展示)

今回の展覧会は京都市だけでなく、京都府ゆかりの国宝の展覧会。
雪舟も京都・相国寺の僧、日本三景のひとつ天橋立も京都府の日本海に面した宮津市にあるので、今回の展覧会にふさわしい国宝といえるでしょう。


続いて、桃山時代の京都で狩野永徳と人気を二分した長谷川等伯の豪華絢爛な金箔の屏風「松に秋草図屏風」(京都・智積院蔵)<前期展示>。
もとは豊臣秀吉が、夭逝した鶴丸の菩提を弔うために建立した祥雲寺の障壁画として描かれたもので、現在では祥雲寺の地を引き継いだ智積院に所蔵されています(智積院は京都国立博物館のすぐ近です)。


国宝 松に秋草図屏風 長谷川等伯筆
桃山時代 文禄元年(1592)頃
京都・智積院蔵(前期展示)

そして、江戸時代初期に京都で人気のあった、琳派の祖・俵屋宗達の国宝「風神雷神図屏風」は8月24日から9月5日までの限定展示(下の展覧会チラシ右下)。
後期はぜひこの時期に見に来たいです。

展覧会チラシ





なお、長谷川等伯「松に秋草図屏風」と俵屋宗達「風神雷神図屏風」は、今回の報道発表会で新たに出展が発表されたもの。
これからも新たにどんな名品が出てくるか楽しみです。

考古資料

「金装大刀」は、平安時代初期の武将で、蝦夷征討を行った征夷大将軍坂上田村麻呂の遺品とされる大刀。金装の輝きをぜひその場で見てみたいです。
坂上田村麻呂は、京都・清水寺の創建者とも伝えられています。

国宝 山科西野山古墓出土品のうち金装大刀
奈良~平安時代(8~9世紀)
京都大学総合博物館蔵(通期展示)

彫 刻

新幹線で京都駅に着いてすぐに目に入ってくるのが東寺(教王護国寺)の五重塔。
東寺の五重塔を見て「京都に来たんだ」と実感される方も多いかと思いますが、私もその一人。

世界遺産に登録されている東寺からは、展覧会チラシの表紙にも掲載されていて、まさに今回の展覧会の顔「梵天坐像」が展示されます。
国宝 梵天坐像 平安時代(9世紀)
京都・東寺(教王護国寺)蔵
通期展示

工芸品

平安時代に隆盛を誇った藤原氏一門の氏神・春日大社からは、波濤や波間を舞う千鳥が蒔絵で見事に表現されている箏が出展されます。
平安王朝の優美さが伝わってくる逸品。後期展示も見応えありそうで楽しみです。


国宝 本宮御料古神宝類のうち山水蒔絵箏
平安時代(12世紀)
奈良・春日大社蔵(後期展示)





見どころ2 京都ゆかりの皇室の至宝が見られる。

今回のもう一つの見どころは、京都ゆかりの皇室の至宝が見られること。
第3章 皇室の至宝では皇室の名品の数々が展示されます。

中でも楽しみなのが、700年の時を超えて今に伝わる鎌倉時代の絵巻物の傑作「春日権現験記絵」
「春日権現験記絵」は、藤原氏一門の氏神・春日大社に奉納されていましたが、江戸時代後期に流出し、その後、収集されて皇室に献上されたもので、20巻すべてが現存するという貴重な絵巻物。数奇な運命をたどった絵巻物ですが、保存状態の良さに驚かされます。

春日権現験記絵 巻二(部分)
絵:高階隆兼筆 詞書:鷹司基忠ほか筆
鎌倉時代 延慶2年(1309)頃
東京・宮内庁三の丸尚蔵館蔵
(通期展示<巻二は前期展示>)

同じく東京・三の丸尚蔵館からは、藤原佐理、藤原行成と並んで平安時代中期の3人の能書家「三跡」のひとり、小野道風の「玉泉帖」が展示されます(後期展示)。
「玉泉帖」は、当時の貴族の教養書のひとつ『白氏文集』を抄出したもので、ご覧のとおり、自由でのびのびとした筆さばきを見ることができます。

玉泉帖(部分) 小野道風筆
平安時代(10世紀)
宮内庁三の丸尚蔵館蔵(後期展示)

見どころ3 文化財保護の取組みが実感できる。

全国で1万件を超える国宝・重要文化財の指定を受けた美術工芸品のうち6分の1は京都府内あるので、京都が長年取り組んでいた文化財保護の取組みが見られるのも今回の展覧会の大きな見どころの一つ。
第4章 今日の文化財保護では、映像で文化財修理の過程が映され、文化財を守り伝える営みの大切さが感じられる名品が展示されます。

文化財保護にとって大きな課題は、もちろん経年劣化ですが、ただ修理をすればいいというのではなく、修理をする技術を持った人、修理をするための道具を作る人、修理の材料となる植物を栽培する人が少なくなっていることも大きな課題なのです。

そして、文化財保護にとって、災害や盗難も大きな難敵。

関東大震災で被災して右隻中央部が失われた国宝「花下遊楽図屏風」(狩野長信筆 桃山時代(17世紀) 東京国立博物館蔵)も、9月7日から12日まで期間限定で展示されます(下の展覧会チラシの上が右隻)。


展覧会チラシ






今回の展覧会は、海外にもポータルサイトで発信されるとのこと。
コロナ禍の影響で、海外との交流が自由にできない中ではありますが、国内の方はもちろんのこと、世界中の多くの方にも見ていただきたい展覧会です。