アメリカ・ワシントンD.C.にあるフリーア美術館といえば、俵屋宗達の「松島図屏風」はじめ豊富な日本美術のコレクションで知られていますが、作品を収集したチャールズ・ラング・フリーア氏の遺言により所蔵作品は門外不出。
琳派の祖・俵屋宗達の名作《松島図屏風》も日本に里帰りすることはないのです。
俵屋宗達「松島図屏風」(右隻) 江戸時代 17世紀 六曲一双 紙本着色 フリーア美術館蔵 F1906.231-232 Freer Gallery of Art,Smithsonian |
一方で、所蔵作品をデジタル化して公式サイトで公開するという、うれしい取組みをいち早く行ったのがフリーア美術館。
商業目的以外の利用であれば制限がなく、研究者も、アートファンも見たい作品を検索して画像を見ることができるのです。
そして、さらに作品の里帰りを実現しようという、うれしい試みもありました。
それは、2年前に東京・墨田区のすみだ北斎美術館で開催された「フリーア美術館の北斎展」(2019年6月25日~8月25日)。
フリーア美術館が所蔵する葛飾北斎の肉筆画13点の高精細複製画を綴プロジェクトが制作して、すみだ北斎美術館に寄贈するのをきっかけに開催された展覧会でした。
この展覧会の様子は以前のブログで紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください⇒すみだ北斎美術館「フリーア美術館の北斎展」
「フリーア美術館の北斎展」 展覧会チラシ |
この時は前期後期で13点全部を見ることができましたが、今でもすみだ北斎美術館3階ホワイエにそのうちの1点が展示されることもあるので、ぜひご覧になってください。
こちらは、前回の特別展、筆魂展(2021年2月9日~4月4日)の後期に3階ホワイエで展示されていた葛飾北斎「琵琶に白蛇図」(高精細複製画)。
ご覧のとおりの見事な出来栄え。撮影も可でした。
今年(2021年)3月26日から国文学研究資料館「新日本古典籍総合データベース」でフリーア美術館所蔵「プルヴェラー・コレクション」の高精細画像が公開開始されることになったのです。
東京・立川市にある国文学研究資料館は、「我が国の古典籍及びその関連資料を大規模に集積し、様々な分野の研究者の利用に供するとともに、それらに基づく先進的な共同研究を推進する機関」(同館公式サイトより⇒国文学研究資料館)。
そして、「プルヴェラー・コレクション」は、2007年にフリーア美術館が収蔵した、江戸時代以降に制作された絵本(絵入り本)のコレクションで、ドイツの著名な医学研究者ゲルハルト・プルヴェラー博士と妻のローズマリー氏が30年以上にわたり世界中を旅して取集したもので、その数は900点以上に及びます。
今回はそのうちの12点が先行公開され、今後はすべての画像データが閲覧できるようになるという、アートファンにとって、とてもうれしいプロジェクトなのです。
こちらは、フリーア美術館と国文学研究資料館の共同プロジェクトについて、国文学研究資料館のロバート・キャンベル館長(2021年3月26日現在)とフリーア美術館の学芸員フランク・フェルテンズさんが紹介している動画です。約8分の動画ですので、ぜひこちらもご覧ください。
3月26日に先行公開された絵本は次の12点です。
八島岳亭『天保山勝景一覧』
葛飾北斎『絵本隅田川両岸一覧』
葛飾北斎、鳥文斎栄之『錦摺女三十六歌僊』
鳥居清長『彩色美津朝』
土佐光茂『光悦三十六歌仙』
奥村政信『絵本風雅七小町琴碁書画』
菱川師宣『小袖姿見』
中邑長秀『絵本義経島巡り』
勝川春潮『絵本千代秋』
窪俊満『絵本多能志美種』
一筆斎文調、勝川春章『絵本舞台扇』
歌川豊広『陸奥紙狂歌合』
それぞれの画像のリンクは、国文学研究資料館のプレスリリースで見ることができます。
さて、さっそくですが、12点の豪華ラインナップの中から、葛飾北斎の絵本の画像を見てみることにしましょう。
この本は上中下の3冊。こちらは上巻の表紙です。
画像もとても鮮明で、色合いもよくて、まるで本物の絵本を自分でページをめくるような感覚で見ることができます。
葛飾北斎『絵本隅田川両岸一覧』
Freer Gallery of Art Study Collection, Smithsonian Institution, Washington, DC: Purchase, The Gerhard Pulverer Collection — Charles Lang Freer Endowment, Friends of the Freer and Sackler Galleries and the Harold P. Stern Memorial fund in appreciation of Jeffrey P. Cunard and his exemplary service to the Galleries as chair of the Board of Trustees (2003-2007), FSC-GR-780.230.1-3
国文学研究資料館の公式サイトでは、作品を見るだけでなく、オンライン会議の壁紙に利用したり、ブックカバーを作る方法も紹介されています。
今回はブックカバーを作ってみました。
作り方は簡単です。画像をA4サイズで印刷して、本のサイズに合わせて折り込むだけ。
今回は文庫本なので、絵の周囲の余白は切取りました。
これでオリジナルのブックカバーの出来上がり。
ちょうど遠くに見える富士山が表紙に出てきました。
デジタル画像は、鑑賞するだけでなく、こうやって手に取って楽しめる気軽がいいところです。
みなさんもぜひ、お好みの画像を選んで、古典籍に親しんでみてはいかがでしょうか。