2021年11月5日金曜日

東京国立博物館 伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」

 今年(2021年)10月から来年(2022年)5月にかけて、東京、九州(福岡)、京都の3つの国立博物館を巡回しながら開催される伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」の東京国立博物館での展示が始まりました。



今回の特別展は、門外不出の秘仏ご本尊が寺外で初公開されるなど、天台ゆかりの寺社などの至宝が展示されて、3館を巡ってまさに「天台宗のすべて」がわかる展覧会。
東京、九州(福岡)、京都、それぞれの国立博物館では、各地域の特色ある展示が見られ、それぞれの会場で展示される作品のラインナップは大きく異なります。
今回は東京会場の見どころを中心にご紹介したいと思います。


東京会場展覧会概要


会 場  東京国立博物館 平成館(東京都台東区上野公園13-9)
会 期  2021年10月12日(火)~11月21日(日)
     ※会期中、一部作品の展示替えを行います。
開館時間 午前9時30分~午後5時
休館日  月曜日
観覧料[前売日時指定券] 一般 2,100円 大学生 1,300円  高校生 900円
          [当日券] 一般 2,200円 大学生 1,400円  高校生 1,000円
 ※中学生以下、障がい者とその介護者1名は無料。ただし、「日時指定券」の予約が必要。
 ※本展は混雑緩和のため、事前予約制(日時指定券)を導入しています。入場にあたって、すべてのお客様は日時指定券の予約が必要です。
 ※ご予約不要の「当日券」を会場にて若干数ご用意しますが、ご来館時、「当日券」は販売終了している可能性があります。

展覧会の詳細、チケット購入方法等は、展覧会公式サイトをご覧ください⇒特別展「最澄と天台宗のすべて」

※展示室内は、根本中堂の一部(内陣中央の厨子)再現展示以外は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より特別の許可を得て撮影したものです。

巡回展
 九州会場(九州国立博物館) 2022年2月8日(火)~3月21日(月・祝)
 京都会場(京都国立博物館) 2022年4月12日(火)~5月22日(日)

 
展示は6つのエリアに分かれています。

第1会場
 A 最澄と天台宗の始まり-祖師ゆかりの名宝
 B 教えのつらなり-最澄の弟子たち
 C 信仰の高まり-天台美術の精華
第2会場
 D 教学の深まり-天台思想が生んだ多様な文化
 E 現代へのつながり-江戸時代の天台宗
 F 全国への広まりー各地に伝わる天台の至宝


第1会場に入ってすぐにお出迎えしてくれるのは、鎌倉時代の貞応3年(1224)に制作された現存する最古の最澄(767-822)の肖像、重要文化財「伝教大師(最澄)坐像」(滋賀・ 観音寺蔵)。
トレードマークの頭巾をかぶり、穏やかな表情で瞑想する優しいお顔が印象的です。

展示風景

国宝「聖徳太子及び天台高僧像」十幅全てが見られるのは東京会場だけです!


東京会場での大きな見どころの一つが、国宝「聖徳太子及び天台高僧像」(兵庫・一乗寺蔵)の全十幅が展示されること。
ただし、十幅の中には複製が展示される期間もあるので、全十幅の原品が見られるのは11月2日(火)から7日(日)までの6日間限定です。

国宝「聖徳太子及び天台高僧像」
平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
※原品の展示期間は各幅ごとに異なります。

平安時代の11世紀に描かれた国宝「聖徳太子及び天台高僧像」は、インド・中国・日本の天台の高僧と聖徳太子の肖像。

日本の天台の高僧は、最澄とその弟子、円仁(794-864)が描かれています。
最澄は、冒頭ご紹介した重要文化財「伝教大師(最澄)坐像」と同じく、頭巾をかぶり、穏やかな表情で瞑想をしているところが描かれています(下の写真左)。

下の写真右は、最澄の跡を継いで天台密教の基礎を築いた円仁。
円仁も瞑想をしている優しげな表情をしています。

左)国宝「聖徳太子及び天台高僧像」十幅のうち「最澄」
右)国宝「聖徳太子及び天台高僧像」十幅のうち「円仁」
どちらも 平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
原品の展示期間:10月12日(火)~11月7日(日)
※以降は複製 


重要文化財「慈覚大師伝」(京都・三千院蔵)はじめ慈覚大師円仁に関する資料や、重要文化財「僧形坐像 伝慈覚大師(円仁)」(岩手・黒石寺蔵)(下の写真正面)は次のBエリアに展示されています。

展示風景


円仁の弟子で、比叡山中の約300か所の聖地を7年間に延べ千日かけて礼拝する回峰行を創始したと伝わる建立大師相応(831-918)ゆかりの寺院のご本尊が展示されているエリアは荘厳な雰囲気を醸し出しています。

展示風景



極楽浄土へ行くための”マニュアル”がほしい方はこちらです。

Cエリアに移ると、末法思想が流行した平安末期、極楽浄土へ行くためのマニュアルともいえる重要文化財『往生要集』上巻 (京都・青蓮院蔵)を執筆して、念仏による極楽浄土を説いた恵心僧都源信 (942-1017)に関連する仏画や資料が展示されています。


展示風景 


江戸天台の世界へようこそ!


第2会場に移ると、東京会場ならではの光景が広がっていました。

展示風景

奥に鎮座するのは、江戸城の鬼門を守護する東叡山寛永寺を開山した天海僧正(重要文化財 「慈眼大師(天海)坐像」康音作  栃木・輪王寺蔵)。

かつては寛永寺の大伽藍が広がっていたこの上野公園一帯は、今では東京国立博物館をはじめとした博物館、美術館があって、上野動物園にはパンダもいていつもにぎわっていますが、随分と様変わりした様子を見たら天海僧正はきっと驚いてしまうことでしょう。
ちなみに山号の東叡山は、京都の鬼門を守護する比叡山にちなんで東の比叡山という意味です。

江戸時代にも多くの人が参拝に訪れていた寛永寺の様子を知るには 「東叡山之図」[絵]橋本貞秀筆 [賛]植村蘆洲筆  (東京・寛永寺蔵) (下の写真右)。


展示風景



根本中堂の一部が会場内に再現されています!


比叡山延暦寺の総本堂、国宝 根本中堂の一部(内陣中央の厨子)が会場内に再現されていて雰囲気を盛り上げています。
ここだけは撮影可です。



紹介が遅くなりましたが、市川猿之助さんがナビゲーターの音声ガイドもおススメです(税込 650円)。
ポイントごとの丁寧な説明があることはもちろん、お経に節をつけて唱える声明(しょうみょう)を聴きながら展示を見ると、一層雰囲気が盛り上がること間違いなしです。


フィナーレを飾るのは、全国各地に伝わる天台の至宝のエリア。


展示風景



展示風景

特にインパクトが強かったのは、高さ2m近くもある日本最大の肖像彫刻「慈恵大師(良源)坐像」(東京・深大寺蔵)。
慈恵大師(元三大師)良源(912-985)は、火災で大きな被害を受けた比叡山延暦寺を復興した、天台宗中興の祖。
なにしろこの大きさに圧倒されます。
それに、開扉されるのは50年に一度という秘仏なので、今が慈恵大師(良源)坐像を拝む絶好の機会なのです。

「慈恵大師(良源)坐像」鎌倉時代・13~14世紀
(東京・深大寺蔵)


展覧会オリジナルグッズも充実しているので、ミュージアムショップにもぜひお立ち寄りください。



3会場全体の展示作品が収録されている展覧会公式図録(税込 3000円)はまさに圧巻!
来館記念にぜひ!





総合文化展(常設展示)でも関連企画開催中!


東京国立博物館 本館14室では特集「浅草寺のみほとけ」が開催中です。
会期は2021年9月28日(火)から12月19日(日)まで。

※特集「浅草寺のみほとけ」は、特別展「最澄と天台宗のすべて」の観覧料で、特別展ご観覧の当日に限りご覧いただけます。
ただし、総合文化展の混雑状況によっては、入場をお待ちいただく場合があります。総合文化展の日時指定券をご予約いただく必要はありません。



海外からの観光客にも大人気の金龍山浅草寺は、慈覚大師円仁によって中興されたと伝えられる天台宗の古刹の一つ。
この特集では、浅草寺から東京国立博物館に寄託された仏像13件17体が一堂に展示されます。

迫力ある不動明王立像や、四天王立像はじめ浅草寺の寺宝も、特別展とあわせてぜひお楽しみください。


展示風景


展示風景