平安時代中期に京都に蔓延した疫病を鎮めるため民衆に尽くされた空也上人の没後1050年に当たる今年(2022年)、六波羅蜜寺の貴重な寺宝の多くとともに、重要文化財《空也上人立像》が半世紀ぶりに京都から東京にお越しになりました。
展覧会概要
展覧会名 特別展「空也上人と六波羅蜜寺」
会 期 2022年5月8日(日)まで開催中
会 場 東京国立博物館 本館特別5室、本館11室
※総合文化展(本館11室)での関連展示コーナーでは六波羅蜜寺所蔵
の作品も展示しています。
開館時間 午前9時30分~午後5時
開館時間が延長されます!
4月9日(土)~4月30日(土)の土曜、日曜、祝日の開館時間を18時まで、
5月1日(日)~5月8日(日)は19時まで
(ただし、本館11室の本展関連展示を除く総合文化展、その他特別展は17時に閉館)
休館日 月曜日、3月22日(火)
※ただし3月21日(月・祝)、3月28日(月)、5月2日(月)は開館
観覧料(税込) 一般 1,600円、大学生 900円、高校生 600円、中学生以下無料
※本展は事前予約(日時指定券)推奨です。詳細は展覧会公式サイトをご確認ください⇒https://kuya-rokuhara.exhibit.jp
音声ガイド
音声ガイドナビゲーターは、仏像好きの人気声優・小野大輔さん。
特別出演は、六波羅蜜寺 山主 川崎純性さん、今回の展覧会を担当された東京国立博物館研究員 皿井舞さん。貸出料金は1台600円(税込)。おススメです。
以前、報道発表会にオンライン参加した時の記事で3つの見どころを紹介していますが、今回は報道内覧会に参加しましたので、3つの見どころに沿って会場内の様子をご紹介したいと思います。
見どころ1 空也上人立像を360度、どこからでもご覧いただけます。
見どころ2 「珍しい」仏さまにお会いできます。
見どころ3 六波羅ゆかりのあの方にもお会いできます。
前回の記事はこちらです⇒東京国立博物館 特別展「空也上人と六波羅蜜寺」
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より特別の許可をいただいて撮影したものです。
見どころ1 空也上人立像を360度、どこからでもご覧いただけます。
会場に入ってまず驚いたのは、《空也上人立像》をお迎えした展示室のしつらえ。
朱塗りの柱に白い壁、そして中央に《空也上人立像》。
まるで六波羅蜜寺のお堂に瞬間移動したような、とても心地良い感覚。
ここまでいい雰囲気の中でお参りできるとは思っていませんでした。
重要文化財 空也上人立像 康勝作 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 |
後ろからのお姿を拝むのは初めてのことだったのですが、空也上人がまとう動物の皮衣の、特に裾のあたりのしわのごわごわとした質感がとてもリアルに感じられました。
作者は鎌倉時代の大仏師・運慶の四男、康勝です。
前から横から、後ろから眺めていたら、照明の具合でしょうか、空也上人の両眼が光輝く角度を見つけました。
空也上人の「南無阿弥陀仏」ととなえる声が聞こえてくるようで、思わず手を合わした感動の瞬間でした。
もしかしたら360度拝めるのはラストチャンスかもしれません。
ぜひじっくりご覧いただき、みなさまのお好きな角度を見つけてみてください。
見どころ2 「珍しい」仏さまにお会いできます。
西光寺(のちの六波羅蜜寺)創建当時のご本尊は、空也上人が造立された国宝《十一面観音立像》、重要文化財《四天王立像》、梵天、帝釈天ですが、このうち今回は迫力満点の四天王立像が東京にお越しいただいています。
(秘仏の十一面観音立像は六波羅蜜寺でお留守番。梵天、帝釈天は残念ながら現存しません。)
たびたびの兵火に見舞われた京都で、平安時代に創建されたお寺のご本尊が残っていることはとても珍しいことなのです(四天王立像のうち増長天は鎌倉時代の補作)。
そして中央には、空也上人の高弟・中信(ちゅうしん)が造像したと伝えられる、重要文化財《薬師如来坐像》。
のちに仏師・定朝が完成させる寄木造の技法では現存最古という珍しい仏さまなのです。
中央 重要文化財 薬師如来坐像 右から 重要文化財 四天王立像のうち 多聞天、持国天、増長天、広目天 いずれも平安時代・10世紀(増長天のみ鎌倉時代・13世紀) 京都・六波羅蜜寺蔵 |
《薬師如来坐像》は、およそ千年前と同じく不安定な時代に生きる私たちの心を癒やしてくれる、とても柔和なお顔をしていました。
《薬師如来坐像》の両脇を固めるのは仏教の守護神《四天王立像》。
力強さみなぎるお姿がとても頼もしく感じられました。
続いて運慶作の重要文化財《地蔵菩薩坐像》。
文献では多くの仏像を残したことが伝わっていますが、現存するものはとても珍しい運慶作の仏さまです。
重要文化財 地蔵菩薩坐像 運慶作 鎌倉時代・12世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 |
運慶は、今年のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の主人公・北条義時とほぼ同時代の人。
これから「鎌倉殿の13人」にも登場してくるので、どのような人物として描かれるのか楽しみです。
これだけ名の知られた運慶ですが、今回の展覧会ではなんと運慶と伝わる仏像にもお会いできるのです。
下の写真左が重要文化財《伝運慶坐像》、右が重要文化財《伝湛慶坐像》。
湛慶は運慶の長男で慶派の棟梁となった仏師です。
十王図 陸信忠筆 中国・南宋~元時代・13~14世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 ※写真の秦広王、初江王、宋帝王は3月21日(月・祝)までの展示になります。 |
このように恐ろしい地獄に落とされても仏教を信じる心があれば救ってくれる仏さまが、重要文化財《地蔵菩薩立像》。
先ほどの威風堂々とした地蔵菩薩坐像が鎌倉時代の大仏師・運慶作なら、こちらは平安時代を代表する大仏師・定朝の作と伝わる仏さま。
着衣に残された截金文様から当時の華やかさが感じられます。
そして最後にご紹介するのは、日本史の教科書でおなじみの重要文化財《伝平清盛坐像》。
おでこの三本のしわや、伏し目がちの目がとてもリアルで、経典を手にもって読む姿は、平氏一門の棟梁としてトップに立った者だけが背負う苦悩を一身に引き受けているようにも見えました。
関連展示もぜひご覧ください!
東京国立博物館の本館正面入口から入ってまっすぐ奥に進むと特別展「空也上人と六波羅蜜寺」の会場になっている特別5室ですが、正面入口すぐ右に曲がった本館11室でも六波羅蜜寺の名宝が一部展示されています。
右から 重要文化財 吉祥天立像 鎌倉時代・13世紀、 奪衣婆坐像 康猶作 江戸時代・寛永6年(1629) 司録坐像 江戸時代・17世紀 司命坐像 鎌倉時代・13世紀 いずれも京都・六波羅蜜寺蔵 |
特別展観覧券で、特別展観覧の当日に限り総合文化展もご覧いただけるのでお見逃しなく!
※総合文化展では撮影不可マークのある作品以外は撮影できますが、こちらの関連展示の作品はすべて撮影不可です。
展覧会オリジナルグッズも充実のラインナップ!
今回の注目は何といっても、フィギュア製作で定評のある海洋堂が手がけた、フィギュア「六波羅蜜寺公認 空也上人立像」(税込9,800円)。
空也上人の表情や口から出る6体の仏像、衣のしわなど、今にも歩き出しそうなお姿が見事なまでに再現されています。
他にも六波羅蜜寺の至宝をデザインしたA4Wクリアファイル(税込700円)、空也上人立像をデザインしたクリアファイル(税込450円)や、黒地に金色の空也上人のお姿が浮かび上がるトートバッグ(黒、税込1,000円)もあって、展覧会の思い出にどれも欲しくるものばかり。
空也上人や仏さまの大迫力のアップ写真もあって、解説も充実している図録(税込2,300円)もおススメです。
特設ショップへのご入場の際、欠品または完売している商品がある場合があります。
フィギュア「六波羅蜜寺公認 空也上人立像」の販売については、展覧会公式サイトをご確認ください。