東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムでは「ミロ展ー日本を夢みて」が開催されています。
スペイン・カタルーニャ地方のバルセロナで生まれた大芸術家、ジュアン・ミロ(1893-1983)は日本でもよく知られていて、丸や線がカラフルに描かれた作品を思い浮かべる方も多いかと思いますが、会場外のフォトスポットの写真は、なぜか大きな狸の置物と並んだミロ。
一瞬、「あれっ?」と思われるかもしれませんが、展覧会のサブタイトルをもう一度見て納得。
日本を夢みて
そうなんです。
今回のミロ展は、ミロと日本との深~い関係に焦点を当てた展覧会なのです。
とても面白そうな展覧会のなので、さっそく先日開催されたブロガー内覧会に参加した時の様子をご紹介したいと思います。
開催概要
会 場 Bunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)
開催期間 2022年2月11日(金・祝)~4月17日(日)
※2/15(火)、3/22(火)は休館
開館時間 10:00~18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
※金・土の夜間開館については、状況により変更になる可能性もあります。
入館料 一般 1,800円 大学・高校生 1,000円 中学・小学生 700円
※会期中すべての土日祝及び4月11日(月)~4月17日(日)は事前に【オンラインによる入場日時予約】が必要です。
最新情報などの詳細は展覧会公式サイトでご確認ください⇒ミロ展-日本を夢みて
展示構成
Ⅰ 日本好きのミロ
Ⅱ 画家ミロの歩み
Ⅲ 描くことと書くこと
Ⅳ 日本を夢みて
Ⅴ 二度の来日
Ⅵ ミロのなかの日本
ミロのアトリエから
※展示室内は下記の場合を除き撮影禁止です。掲載した写真は、本展主催者の許可を得て撮影したものです。
【3月平日限定】会場内の撮影可能!(3/31まで)
3/10(木)~3/31(木)の平日に限り会場内の作品を撮影することができます。
※撮影可能作品は一部になります。
※混雑時には撮影可能作品を変更する場合があります。
※撮影には注意事項があります。会場内の掲示をご確認ください。
見どころ1 ミロの「日本美術愛」がよくわかる!
国内では2002年に開催されて以来、20年ぶりに開催されるミロ展。
この間、以前から日本美術の影響について語られていたミロについて、実際にはどのような影響を受けていたのか本格的な研究が進み、今回の展覧会は、そういった研究の成果として、日本美術に対する愛情を感じ取ることができることが大きな見どころの一つなのです。
まずはいきなりクライマックスの「青い部屋」から見ていきましょう。
どちらもジュアン・ミロ 右《絵画(カタツムリ、女、花、星)》 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード 左 《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》 福岡市美術館 |
どちらもいかにもミロらしく、人や動物などが抽象的に描かれ、画面全体に踊るようにリズミカルに配置されている作品ですが、右の作品《絵画(カタツムリ、女、花、星)》をよく見てみると、絵の中に書かれたフランス語の文字も違和感なく作品に溶け込んでいるのがわかります。
このような文字と絵画が同じ画面に描かれている作品から連想されるのは、画面の下半分に水墨の山水画を描き、上半分には漢詩の賛を書き入れる「詩画軸」。
室町時代の禅僧の間で広まった詩画軸は、もとは中国の書画一致の思想から来たもので、この《絵画(カタツムリ、女、花、星)》は、詩画軸のミロ流の解釈だったのです。
(この作品は56年ぶりの来日。もしかしたら見られるのは一生に一度のチャンスかもしれません。)
そして、上の写真左の作品《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》の背景は、西洋絵画では背景として使われることがあまりない黒色で塗られています。
日本では、水墨画のように黒と白だけで表現されるもあるように、ここでも日本美術からの影響が見られるのです。
ということは、この二つの作品は和室の床の間にかけても意外と斬新で似合うかもしれません。
(もしミロが「寿庵(ジュアン)」という茶室を造ったら、室内に飾ったかも?)
そしてもう一つミロの「日本美術愛」が感じられる展示をご紹介します。
展示風景 |
中央には焼き物の大きな壺、そして右の展示ケース内の掛軸はなんと大津絵!
まるで「民藝展」を見ているようですが、中央の大きな壺は、ミロの友人で、民藝運動を主導した柳宗悦や濱田庄司とも交流のあった陶芸家・アルティガスとミロの共作で、ミロの友人を介した民藝運動への関心の高さがうかがえます。
見どころ2 ミロの画業の流れがよく分かる!
ミロの作品はほぼ制作年代順に展示されているので、ミロの画業の流れがよく分かる展示構成になっています。
(各章ごとに壁の色に変化をつけているのでわかりやすく、色合いも落ち着いているのでとてもいい雰囲気です。)
初期には、のちの作品に比べて比較的絵具の厚塗り感が感じられる作品を描いていました。
展示風景 |
それがだんだんとミロらしさが出てきて、
展示風景 |
いかにもミロらしい作風になって、
そして最後には晩年の作品群。
展示風景 |
初期の作品も、説明がなければミロの作品とは分からないかもしれませんが、晩年にはこういった、まるで水墨画のようなモノトーンの世界を描いていたのです。
さらにミロは巻物の作品も制作しています。
上の写真中央のケースにはその名もずばり《マキモノ》(町田市立国際版画美術館)が展示されています。
こちらはミロのアトリエの風景。
手前に展示されているのはミロの蔵書です。
蔵書の中には、江戸時代後期の禅僧画家で、ユーモアに富んだ作品を描いた仙厓の画集や、書道の本、さらには岡倉覚三(天心)の『茶の本』のカタルーニャ語訳があって、ミロの画風の変遷への「日本の美」の影響の大きさを垣間見ることができました。
見どころ3 スペイン、ニューヨーク、そして国内各地からミロの作品が渋谷に大集結!
コロナ禍で、国境を越えた人やモノの移動が難しい中ではありますが、地元スペインやアメリカのニューヨーク近代美術館から作品が来日しています。
展示会場に入ってすぐにお出迎えしてくれるのは、ニューヨークから来日した《アンリク・クリストフル・リカルの肖像》。
縞模様のシャツに目を奪われがちですが、背景の右半分には浮世絵がコラージュされています。
この作品は、ミロが20歳代半ば頃に描いた作品で、折からのジャポニズム・ブームの中、ミロは浮世絵、特に葛飾北斎を敬愛していたのです。
そして、国内各地からもミロの作品が大集結しています。
こちらは、富山県美術館が所蔵する《絵画(パイプを吸う男)》。
2020年11月から開催された、国内有数の20世紀西洋絵画コレクションを所蔵する横浜美術館、愛知県美術館、富山県美術館の3館がコラボした「トライアローグ展」を思い出しましたが、それにしてもこれだけ多くのミロの作品が日本にあるとは知りませんでした。
会期は4月17日(日)までなので、すぐに終わってしまいます。
ただし、Bunkamura ザ・ミュージアムは月曜休館ではありません。これからの休館日は3月22日(火)のみ。
毎週金・土は夜間開館も実施していますので、ご都合のよい日時にぜひお越しください!
充実のラインナップのミュージアムグッズも待ってます!