2023年9月25日月曜日

大倉集古館 特別展 畠中光享コレクション「恋し、こがれたインドの染織ー世界にはばたいた布たちー」

東京・虎ノ門の大倉集古館では、特別展 畠中光享コレクション「恋し、こがれたインドの染織ー世界にはばたいた布たちー」が開催されています。

大倉集古館外観

今回の特別展は、日本画家でインド美術研究者の畠中光享氏が収集したインド染織コレクションから約100点が見られる展覧会。ベッドカバーや掛布、ショールなど展示室内は色とりどりの布でおおわれていて華やいだ雰囲気でいっぱいです。

9月12日(火)からは後期展示が始まり会期も残り1ヶ月ほどとなりましたが、遅ればせながら展示を拝見してきましたので、展覧会の様子をご紹介したいと思います。

展覧会開催概要


会 期  2023年8月8日(火)~10月22日(日)
 ※前期 8/8(火)~9/10(日)、後期 9/12(火)~10/22(日)
開館時間 10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日  毎週月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
入館料  一般 1,300円、大学生・高校生 1,000円、中学生以下無料
※事前予約不要
※展覧会の詳細、各種割引料金等は同館公式サイトをご覧ください⇒大倉集古館 
※展示室内は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より広報用にお借りしたものです。
※展示作品は、すべて畠中光享氏所蔵です。

展示構成
 第1章 ヨーロッパに渡ったインド布とその展開
 第2章 東南アジア、ペルシャ、日本へ渡ったインド布とその展開
 第3章 インド国内で使用された布


第1章 ヨーロッパに渡ったインド布とその展開


展示室に入って驚いたのは、ベッドカバーや掛布などの多くがダブルベッドをおおってしまうほど大きさがあることでした。花柄などで彩られた色鮮やかな布が展示ケースの壁一面に広げられて展示されているので、展示室内がとても明るく感じられました。

こちらは白地に「生命の樹」やカーネーションなどの花柄文様の掛布。
媒染技法(媒染剤によって染料を布に定着させる工程)が発達していなかったヨーロッパでは特に人気を博し、このようなインド布を持つことが上流階級の人たちにとってステータスシンボルだったのです。

《掛布》(部分) コロマンデール・コースト(インド)、
18世紀後期 手描染、媒染、防染/木綿


カシミヤ山羊の毛で作った糸を染め、その色糸を巻き付けた木管を使い綴織で模様を織り出すという気の遠くなるような工程を経て作られたカシミールショールは、1枚つくるのに3年くらいはかかり非常に高価なものでした。

《ショール》(部分)、カシミール(インド)、1850~70年代、
綾地綴織/羊毛

インド製の布が重宝される一方、印刷技術が発達していたヨーロッパではプリントによる模倣布がつくられました。
こちらは銅版回転捺染機で模様をプリントし、その上に彩色を施したもので、色鮮やかな南国の鳥たちの美しさに魅了されます。


《掛布》(部分)、ヨーロッパ、19世紀初期、
凸版ローラーによる加彩/木綿

カシミールショールの模倣品は、フランス人ジャカール(英語読み:ジャカード)が発明した自動織機(ジャカード織機)で織られました。
プリントにはない立体感と厚みが高級感を醸し出しています。



《倣カシミールショール》(部分)、フランス、19世紀中期、ジャカード織


第2章 東南アジア、ペルシャ、日本へ渡ったインド布とその展開


古くからインドとの交流があった東南アジアには、インドの捺染布が部族の長によって求められ、儀礼など特別な時に用いられました。

西インドのグジャラートからインドネシアに輸出された捺染布のデザインは、両端に鋸歯文(ノコギリの歯の形)があり、幾何学文が多く全面に模様があるのが特徴です。

《儀礼用布》(部分)、グジャラート州(インド)、18世紀後期、
手描染、木版捺染、媒染、防染/木綿


東南アジアには、ところどころ独特のかすれ具合が出る絣布も多く輸出されました。

《儀礼用布、パトラ(絣織)模様》(部分)、グジャラート州(インド)、
19世紀中期、木版捺染/木綿



ペルシャに輸出されたのはイスラム教徒が礼拝の時に使用する敷布などで、モスクなどがデザインされているのが特徴です。
アラビア文字もデザインされているのがわかります。


《礼拝用敷布》(部分)、アンドラ・プラデッシュ州、マスリパタム(インド)
19世紀末、木版捺染、媒染、防染/木綿



第3章 インド国内で使用された布


インド国内では、王侯貴族の邸宅やヒンドゥ寺院で用いられる荘厳なデザインの布が中心で、金銀糸織や美しい発色の捺染布がつくられました。

ヒンドゥ教徒にとって牛は神聖な存在として大切にされています。
儀式の時に牛に掛ける布も金糸、銀糸を使い豪華絢爛、煌びやかな布です。
牛の頭を覆うためでしょうか、写真の中央下部には三角形の突起があります。


《牛用掛布》(部分)、グジャラート州(インド)、19世紀前期、
縫取織/絹、金糸、銀糸


今回は、1階と2階の展示室だけでなく、地下1階にまで色鮮やかな布が壁一面に展示されています。
会期は10月22日(日)まで。
上流階級や王侯貴族があこがれ、神聖な場所で用いられて世界にはばたいたインドの布の魅力をぜひお楽しみください。