今年(2024年)は辰年。
新年を迎えるのにふさわしい展覧会が静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリー静嘉堂@丸の内で1月2日(火)から始まっています。
新年を迎えるのにふさわしい展覧会が静嘉堂文庫美術館の展示ギャラリー静嘉堂@丸の内で1月2日(火)から始まっています。
展覧会のタイトルは「ハッピー龍イヤー!~絵画・工芸の龍を楽しむ~」。
筆者は怪獣映画「ゴジラ」で育った世代なので、龍というと、地球侵略をたくらむ宇宙人に操られたキングギドラを思い浮かべて怖いイメージがあるのですが、迫力のある龍も、こんなに可愛くていいのかという「ゆるキャラ」のような愛嬌のある龍もいて、絵画や工芸作品の中に出てくるバリエーションに富んだキャラクターの龍が楽しめる展覧会です。
それでは開幕に先立って開催された報道内覧会に参加しましたので、展示の様子をさっそくご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2024年1月2日(火)~2月3日(土)
休館日 月曜日、1月9日(火)
※ただし、1月8日(月・祝)、1月29日(月)は開館
特別開館日 1月29日(月)は普段ご遠慮いただいている展示室内での会話が自由にできる
「トークフリーデー」として特別開館。当日は展示室内で担当学芸員さんに
よる列品解説(事前予約不要)が11:00~と14:00~の2回(各回40分)が行われ
ます。
開館時間 10時~17時(金曜日は18時まで) ※入館は閉館の30分前まで
入館料 一般 1,500円、大高生 1,000円 中学生以下無料
障がい者手帳お持ちの方 700円(同伴者1名無料)
◇「辰年生まれ」の方、姓名に「龍・竜・辰・タツ・リュウ」がついている方
は同伴者を含め本展の入館料が200円割引になります。
(他の割引との併用不可。入館の際、証明になるものをご提示ください。)
展覧会の詳細等は公式サイトをご覧ください⇒https://www.seikado.or.jp/
※展示室内には撮影可のエリアがあります。ホワイエは撮影可。会場内で撮影の注意
事項をご確認ください。
※掲載した写真は、報道内覧会で美術館より特別の許可を得て撮影したものです。
※掲載した作品はすべて静嘉堂文庫美術館所蔵です。
展示構成
第1章 龍、東アジアを翔ける
第2章 龍、中国工芸に降臨す
第3章 龍、日本を駆けめぐる
第4章 龍、茶道具に入り込む
ホワイエ ~龍、丸の内でお迎え~
第1章 龍、東アジアを翔ける
第1章には、中国、朝鮮、日本でつくられた古代の鏡、陶磁器、工芸品などが展示されていて、中国で生まれた龍が、東アジアでどのように表現されていったのかがよくわかります。
第1章展示風景 |
ここで特に注目したいのは、中国最古の部種別の漢字辞典『説文解字』(重要文化財)。
もとは後漢時代(25-220)の許慎が作った字書で、静嘉堂本は南宋時代(1127-1276)初期のもので、同類の中では最古という貴重なものなのです。
今回の展覧会では、8冊のうち1冊目冒頭(右側)と、「龍」の字を掲載する6冊目のページ(左側)が展示されています。
重要文化財 許慎(後漢時代)/著 徐鉉ほか/校 『説文解字』8冊のうち 南宋時代(12世紀)刊 |
展示ケース反対側の壁面には『説文解字』の「龍」の解説パネルがあって、日本語訳もあります。
それによると、龍は「その姿は暗くもなり、明るくもなり、小さくもなり、大きくもなり、短くもなり、長くもなる。」とのこと。龍は変幻自在で、その存在はミステリアス、ますます興味が湧いてきます。
第1章の中で、グッズになったらぜひ欲しいと思ったものがこちら。おしゃれな刀装具です。
佐野道好 《十二支図鐔・三所物(小柄・目貫・笄)》 江戸時代末期(18-19世紀) |
上の写真の一番上は、十二支のうち表に子から牛、裏に未から亥までが置かれた刀の鐔(つば)。
下の三所物、小柄(こつか)、目貫(めぬけ)、笄(こうがい)には、わずか数センチの幅に12匹の動物たちが表現されている精巧なもの。当時の金工師たちの腕前のすごさに驚かされます。
第2章 龍、中国工芸に降臨す
第2章では、漆芸、陶磁、染織など、中国の明時代から清時代までの中国工芸の逸品に表された龍を見ることができます。
第2章展示風景 |
堆朱(ついしゅ~朱漆を厚く塗り重ねて、これに文様を彫刻したもの)の作品「《雲龍堆朱盒》「大明宣徳年製」銘」は、明時代初期で明の全盛期の皇帝、永楽帝、宣徳帝の世で、中国漆工史上の堆朱の全盛期でもあった時代に作られた逸品。
《雲龍堆朱盒》「大明宣徳年製」銘 景徳鎮官窯 明時代 宣徳年間(1426-35) |
蓋の表に宝珠を追う5爪の龍、身と蓋の側面に書く4匹、合計9匹の龍の大型の堆朱盒(蓋物)は、北京と台北の故宮博物院と静嘉堂文庫美術館所蔵のこの作品の、世界に3点だけしか知られていないとのこと。
3点のうち一つが台北故宮博物院に所蔵されているということは、1933年初頭、日本軍が北京に迫る危機的な状況の中、北京故宮から避難させた選りすぐりの逸品の中にこの作品と同種の堆朱盒が入っていたのですから、ここに展示されている作品がどれだけ貴重なものなのかがうかがえます。
衰退した明を復興させた明時代末期の皇帝・万暦帝の時代の堆朱や景徳鎮官窯の陶磁もずらりと並んでいますが、その中で可愛らしい表情の龍を発見しました。
《五彩雲龍文盤》「大明万暦年製」銘 景徳鎮官窯 明時代 万暦年間(1573-1620) |
色彩豊かでいかにも「万暦赤絵」らしい「《五彩雲龍文盤》「大明万暦年製」銘」の左のくりっとした目の赤い龍ですが、皇帝を象徴する5爪の龍なのにこんなにひょうきんな表情をしています。
今の時代なら「ゆるキャラ」で人気が出るかもしれません。
第3章 龍、日本を駆けめぐる
第3章では、日本の絵画や工芸作品の中を駆けめぐる龍の姿が楽しめます。
静嘉堂@丸の内の特徴でもある大きな展示スペースに収まっているのは、三菱第2代社長・岩﨑彌之助氏の支援のもと、明治28年(1895)に京都で開催された第4回内国勧業博覧会に出品された二双の屏風。
そのうちのひとつは、狩野芳崖と並んで明治近代日本画界のスーパースター、橋本雅邦の《龍虎図屏風》(重要文化財)。
重要文化財 橋本雅邦《龍虎図屏風》 明治28年(1895) |
昭和30年(1955)に近代日本絵画として初めて重要文化財に指定された《龍虎図屏風》も、発表当時は「小さい龍の顔が老いている」とか、「腰抜けの虎」などマスコミ受けがよくありませんでしたが、にらみ合う龍と虎、吹き荒れる風、うねる波、降り注ぐ雨、不気味にきらめく雷光を目の前にすると、雨や風が顔に当たりそうなくらい、その迫力にただただ圧倒されます。
有田窯の龍たちはユーモラスでチャーミング。
第4章 龍、茶道具に入り込む
今までさまざまな龍を見てきましたが、龍は日本の茶道具の中にまで入り込んでいました。
第4章展示風景 |
室町時代以降、大名や茶人たちは、金糸で文様を織り出した「金襴(きんらん)」など「名物裂」と呼ばれる織物を茶入を包む「仕覆(しふく)」などに用いましたが、その仕覆にも龍の文様が表されているものがあるのです。
小さい龍の模様が見えてきますので、拡大鏡でぜひじっくりご覧ください。
そして、今回の展覧会のトリを務めるのはもちろん国宝《曜変天目(稲葉天目)》。
この輝きはいつ見ても飽きることはありません。
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十二支の中でも龍だけは想像上の動物なので動物園でも自然の中でも見ることはできません。
ぜひ静嘉堂文庫美術館で今年の干支「龍」をお楽しみください!