東京・広尾の山種美術館では、9月29日(日)から【特別展】没後50年記念 福田平八郎✖琳派が開催されます。
今回の特別展は、福田平八郎(1892-1974)の没後50年を記念して、初期の写実的な作品から晩年の単純な色彩と大胆な構図の作品まで、平八郎の画業の変遷をたどる、山種美術館では12年ぶりに開催される展覧会です。
今年(2024年)は大阪と平八郎の生まれ故郷の大分で回顧展が開催されましたが、東京には巡回しなかったので、都内で開催されるのを心待ちにしていました。
それではさっそく展覧会の見どころをご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2024年9月29日(日)~12月8日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日[10/14(月・祝)、11/4(月・振休)は開館、10/15(火)、11/5(火)は休館]
入館料 一般1400円(1200円)、大学生・高校生1100円(1000円)*( )内は前売り料金
※前売券は、9月28日まで。
中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)
各種割引、展覧会の詳細、関連イベント等は山種美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/
見どころ1 福田平八郎の初期から晩年までの名品が集結!
画面中央にはボリューム感のある淡いピンク色の牡丹、画面左には寄り添うようにすらっとした枝に咲く濃い赤色の牡丹が配置されたこの《牡丹》(山種美術館)を初めて見た時に受けた強い印象は今でも鮮明に覚えています。
福田平八郎《牡丹》1924(大正13)年 山種美術館 |
一つひとつの花の花びらが陰影をつけて細かく描かれているのでひらひらと動くように見えて、全体的に暗いトーンの色調が妖艶的な雰囲気を醸し出しているように感じられたこの作品は、後から知ったのですが、徹底した細密表現で対象を写実的に描いた大正期の代表作だったのです。
一方で私たちがよく知っている平八郎は、メインビジュアルにある《筍》(山種美術館)のように対象の特徴をとらえて単純化して表現した作品を描く画家というイメージがありますが、全く画風の違う作品を見比べることができるのが、今回の特別展の楽しみのひとつです。
福田平八郎《筍》1947(昭和22)年 山種美術館 |
単純化といってもけっして描いている情報量が少なくなったわけではありません。
2本の筍の皮の質感や皮の間から出てくる緑色の芽の息吹がよく伝わってきますし、画面一面には竹の葉がリズミカルに描かれています。
本物の竹の葉は緑色で、枯れた部分は茶色に変色しますが、あえて色をつけていないので、主題の筍がより一層引き立ちます。
《牡丹》と同じく花を描いている《芥子花》(山種美術館)ですが、絵の印象は全く異なります。
花もつぼみも可愛らしく、くねっと曲がった何本もの茎がリズミカル。画面右から出てくるつぼみは「私も入れて」と言っているようです。
《牡丹》、《筍》、《芥子花》と続きましたが、平八郎の作品はタイトルもシンプルです。
川の中を元気よく泳ぐ鮎を描いた作品はそのものずばり《鮎》(山種美術館)。
福田平八郎《彩秋》1943(昭和18)年 山種美術館 |
大正期から戦後すぐまでの作品を見てきましたが、《紅白餅三鶴》(山種美術館)は晩年の作。おめでたい紅白餅のふっくらとした丸みと、色違いの折り鶴の直線の対比が見どころです。
福田平八郎《紅白餅三鶴》1960(昭和35)年頃 個人蔵 |
見どころ2 琳派も登場!一度で二度楽しめる展覧会!
今回の特別展のもう一つの見どころは、平八郎に影響を与えた琳派の作品が見られることです。
琳派は、江戸前期の俵屋宗達に始まり、江戸中期の尾形光琳、江戸後期の酒井抱一、鈴木其一に受け継がれてきた装飾的でデザイン性に優れた画風を特徴とした流派で、狩野派のように世襲ではなく、私淑によって江戸時代を通じて受け継がれてきました。
今回の特別展では、琳派の祖・俵屋宗達や、酒井抱一、鈴木其一の作品によって琳派の流れをたどることができます。
最初にご紹介するのは、俵屋宗達(絵)と本阿弥光悦(書)のコラボ作品《四季草花下絵和歌短冊帖》(山種美術館)。
金銀泥が使われたきらびやかな下絵と、太い文字と細い文字の差をつけた光悦流のリズム感あふれる書体で書かれた和歌がみごとに調和した、うっとりするような超豪華な作品です。
伝 俵屋宗達《槙楓図》17世紀(江戸時代) 山種美術館 |
光琳に私淑した酒井抱一が江戸で発展させた江戸琳派の優れた作品も展示されます。
背景に浮かぶ月、細い線で描かれた秋草や色付いた葉、餌をついばむ鶉の群れ。
秋の気配を感じさせるおしゃれな作品は、酒井抱一《秋草鶉図》【重要美術品】(山種美術館)。
酒井抱一《秋草鶉図》【重要美術品】19世紀(江戸時代) 山種美術館 |
酒井抱一の作品は、ほかにも《飛雪白鷺図》、《菊小禽図》(どちらも山種美術館)が展示されるので、繊細で洒脱な抱一作品がまとまって見られるのもうれしいです。