2024年10月22日火曜日

講演会「1975年、山下少年が観た福田平八郎の絵」(【特別展】福田平八郎✖琳派 関連イベント) 

10月19日(土)に開催された講演会「1975年、山下少年が観た福田平八郎の絵」に参加してきました。

山下裕二氏

この講演会は、山種美術館が展覧会ごとに開催している関連イベントのひとつで、今回は美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏が高校1年生のときに初めて福田平八郎の作品を観た時のエピソードを交えながら、平八郎の魅力、現在開催中の【特別展】福田平八郎✖琳派の見どころを紹介する内容になっています。

【特別展】福田平八郎✖琳派は、9月29日(日)から始まっているので、すでにご覧になられた方もいらっしゃるかと思いますが、展覧会開催概要は次のとおりです。

展覧会開催概要


会 期  2024年9月29日(日)~12月8日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  月曜日[11/4(月・振休)は開館、11/5(火)は休館]
入館料  一般1400円、大学生・高校生1100円、
     中学生以下無料(付添者の同伴が必要です) 
各種割引、展覧会の詳細、関連イベント等は山種美術館公式サイトをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/

展示構成
 第1章 福田平八郎
 第2章 琳派の世界
 第3章 近代・現代日本画にみる琳派的な造形



※展示室内は次の1点を除き撮影禁止です。掲載した写真はプレス内覧会で美術館より許可を得て撮影したものです。

今回撮影可の作品は福田平八郎《彩秋》(山種美術館)。スマートフォン・タブレット・携帯電話限定で写真撮影OKです。館内で撮影の注意事項をご確認ください。

福田平八郎《彩秋》1943(昭和18)年 山種美術館


それではさっそく講演会の様子をご紹介したいと思います。

高校1年生の山下少年が1975年の春休みに友人と京都旅行に行ったときに偶然見たのが、京都国立近代美術館で開催されていた福田平八郎遺作展のポスターで、メインビジュアルは《雨》(東京国立近代美術館)でした。
雨というタイトルなのに描かれているのはなぜか瓦だけ。それでもよく見ると瓦には雨粒が点々と残っているというシンプルな構図に「かっこいい!」と思った山下少年は展示を見て図録まで購入したとのこと。

ちなみに山下さんがこの日に着用されていたのは、今年(2024年)大阪中之島美術館と福田平八郎の故郷大分にある大分県立美術館で開催された展覧会「没後50年 福田平八郎」のメインビジュアルで、平八郎の代表作の一つ《漣》(重要文化財 大阪中之島美術館)をモチーフにしたシャツでした(冒頭の写真に注目です)。

《雨》と同じくシンプルなデザインで山下さんが「かっこいい」と感じた《漣》は今回の特別展では展示されていませんが、同様の図柄の作品が展示されているのでぜひ注目していただきたいです。


福田平八郎《漣》20世紀(昭和時代) 個人蔵

この作品は、ある劇場のために《漣》と同じデザインの緞帳の作成を依頼された平八郎が制作した下絵とのこと。もしその緞帳が現存していたら見てみたいと思いました。

《雨》から月日が経過して、当時大学生だった山下さんが出会った平八郎の作品は、1981(昭和56)年発行の「近代美術シリーズ」の記念切手に採用された《筍》(山種美術館)でした。この《筍》は今回の特別展の冒頭に展示されています。

展示風景


山下さんが小学生だった1960年代は、だれもが切手帳を持って、記念切手が発売されると郵便局に並んで買いに行くという切手ブームが盛んな時代でした。「国宝シリーズ」の記念切手で見た雪舟《秋冬山水図》や《信貴山縁起絵巻》などが山下さんにとっての日本美術との最初の接点だったのです。

今回の特別展では文展に落選した学生時代の作品《桃と女》(山種美術館)から、大正期のリアルで「あやしさ」が感じられる《牡丹》(山種美術館)、《筍》をはじめとした、その後のあっさりとした作品まで展示されています。
「これだけ振れ幅の大きな画家はいないのでは。今回の特別展では平八郎の振れ幅の大きさを見ていただきたい。」と山下さん。

右から 福田平八郎《桃と女》1916(大正5)年、
《牡丹》1924(大正13)年 どちらも山種美術館 

上の写真の《牡丹》が描かれた大正期は、平八郎に限らず、洋画家・岸田劉生が言った「デロリ」とした作風が流行った時代でした。
同じ牡丹でも、1960(昭和35)年頃に描いた牡丹はあっさりとしてこんなに明るく描かれています。

福田平八郎《牡丹》1948(昭和23)年頃 山種美術館


今回の特別展では、山種美術館が所蔵する琳派作品で琳派の流れをたどることができます。


琳派の祖。俵屋宗達と本阿弥光悦のコラボ作品と並んで山下さんが紹介されたのは、江戸琳派の酒井抱一や鈴木其一の作品で、特に興味深かったのが、伊藤若冲や中国絵画との関連でした。

伊藤若冲《動植綵絵》のうち「梅花皓月図」を意識したことがうかがえるのが酒井抱一の《月梅図》。若冲ほど梅の枝を込み入って描いてはいませんが、空間を広くとったところに抱一ならではのセンスが感じられます。

中央 酒井抱一《月梅図》、左 酒井抱一《飛雪白鷺図》、
右 鈴木其一《伊勢物語図 高安の女》いずれも19世紀(江戸時代)
山種美術館

中国絵画の学習成果が感じられるのが鈴木其一《牡丹図》(山種美術館)。
伝 趙昌《牡丹図》14世紀(元時代) (皇居三の丸尚蔵館)を参考にしたことが指摘されています。

鈴木其一《牡丹図》1851(嘉永4)年 山種美術館


琳派のDNAを受け継いだ近代・現代日本画家たちの作品が展示されているのも今回の見どころの一つです。

菱田春草《月四題》のうち「秋」1909-10(明治42-43)年頃 山種美術館


今回の特別展の見どころや展示室内の様子は以前の記事で紹介してますので、ぜひこちらもご覧ください。




次回展「【特別展】HAPPYな日本美術ー伊藤若冲から横山大観、川端龍子へー」の講演会「HAPPY三題噺~白蛇・七福神・百~」は現在受付が始まっています。
講師は静嘉堂文庫美術館館長の安村敏信さん。
講演会を聞けば展覧会の楽しみも倍増すること間違いなし。
定員に達する前にぜひお申し込みください!