東京・広尾の山種美術館では、【特別展】LOVE いとおしい・・・っ!―鏑木清方の恋もよう、奥村土牛のどうぶつ愛―が開催されています。
| 山種美術館外観 |
恋人たちの愛、動物への愛―私たちの身近にはさまざまな形の愛(=LOVE)がありますが、今回の特別展は、LOVEをテーマにした日本の近代・現代の絵画が見られる展覧会です。
遅ればせながら、先日、展覧会にお伺いしてきましたので、さっそく展示の様子をご紹介したいと思います。
展覧会開催概要
会 期 2025年12月6日(土)~2026年2月15日(日)
開館時間 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜日
入館料 一般1400円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)
冬の学割:大学生・高校生500円
※各種割引等は同館公式ホームページをご覧ください⇒https://www.yamatane-museum.jp/
展示構成
第1章 人々への愛
第2章 神仏、動物、そして故郷への愛
※展示室内は次の1点を除き撮影禁止です。掲載した写真は美術館より広報画像をお借りしたものです。
今回撮影可の作品は、小林古径の代表作《清姫》(山種美術館)の連作8点のうちの「日高川」です。
| 小林古径 《清姫》のうち「日高川」紙本・彩色 1930(昭和5)年 山種美術館 |
能や浄瑠璃、歌舞伎の題材にもなった安珍清姫の伝説に取材した《清姫》は、熊野参りの若い僧安珍に恋をした清姫が、逃げる安珍を追いかけ、大蛇になった清姫が道成寺の釣鐘に隠れた安珍を焼き殺してしまうという悲恋の物語の場面が描かれた作品です。
「日高川」で描かれているのは、安珍を追いかけている清姫が日高川に向かって手を伸ばしている場面。
「さて次の場面は」と気になるところですが、今回は全8点が一堂に展示されているので、ぜひその場でご覧いただきたいです。
家族への愛
今回の展覧会では、「家族への愛」、「恋愛」、「師匠・尊敬する人への愛」、「神仏への愛」、「動物への愛」、「故郷への愛」を題材にした作品が展示されていますが、「家族への愛」でご紹介する作品は、大正から昭和初期にかけて活躍した小茂田青樹の《愛児座像》(山種美術館)です。
1929(昭和4)年11月、青樹は38歳で初めて子どもを授かりましたが、生まれた男女の双子のうち、長男はほどなく天に召されたといわれています。
この作品のモデルは幼い長女・仲子で、おかっぱ頭にあどけない表情、小さな手、かごいっぱいのおもちゃなどから、作者の「いとおしい…っ!」という気持ちが伝わってくるようでした。
恋愛
「恋愛」でご紹介する作品は、実話をもとにしたお夏と清十郎の悲恋を題材にした《お夏狂乱》(福富太郎コレクション資料室)。池田輝方が敬愛する坪内逍遥の戯曲『お夏狂乱』の舞台は本作品発表の1ヵ月前に初演されました。
身分違いの恋に破れ、髪も衣装も乱れてぼんやりと遠くをみつめる姿がとても切なく感じられます。
| 池田輝方《お夏狂乱》1914(大正3)年 絹本・彩色 福富太郎コレクション資料室 |
今回の特別展のメインビジュアルになっている鏑木清方の《薄雪》(福富太郎コレクション資料室)や、小林古径の《清姫》も悲恋の物語。舞台で演じられたり、絵になったりするのは、ハッピーエンドではなく、カタルシスを感じることができる悲しい恋、道ならぬ恋がふさわしいのかもしれません。
神仏への愛
続いては、奥村土牛が師と仰いだ小林古径の死に直面して本格的に描きたいと強く願った中尊寺の《一字金輪坐像》を描いた《浄心》(山種美術館)。
実物は木造の坐像なのですが、黄金色に輝く仏さまの肌は柔らかく感じられ、まるで生身の人間のよう。古径を慕う思いが伝わってくるように感じられました。
生きものを題材に数多くの作品を描いた奥村土牛の動物絵を描いた作品も5点展示されています。
どの作品にも生きものに対する愛が感じられ、この《兔》(山種美術館)では、可憐な赤い花と、つぶらな瞳のウサギの絶妙なコンビネーションが見られます。
| 奥村土牛《兔》1947(昭和22)年頃 絹本・彩色 山種美術館 |
山種美術館では、江戸時代や近代の日本画だけでなく、同館が主催する公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード」で入選した現代作家の日本画を見ることができるのも大きな楽しみの一つです。
今回は、「Seed 山種美術館 日本画アワード2024」で奨励賞を受賞した小針あすかさんの《珊瑚の風》(山種美術館)が展示されています。
| 小針あすか《珊瑚の風》2023(令和5)年 紙本・彩色 山種美術館 |
この公募展の入選作品の展覧会が開催されたときには会場に足を運び、ちょうど小針さんご本人のアーティストトークをおうかがいすることができました。
沖縄の離島のとある海岸を描いたというこの作品を前にすると、海の波の音と、柔らかな風が感じられて、とても心地よい気分になってきます。
故郷への愛
川合玉堂が描くのは、少年時代を過ごした岐阜の代表的な風物詩の鵜飼です。
この作品は、生涯を通じて繰り返し鵜飼を描いた玉堂の初期の代表作で、制作に際し、改めて現地を取材したとのこと。
鵜飼の活気ある様子もさることながら、切り立った岩山の迫力に圧倒されます。