2022年4月21日木曜日

京都国立博物館                           伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」

京都国立博物館では、 4月12日(火)から伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」が始まりました。



昨年10月の東京国立博物館に始まり、今年2月から九州国立博物館に巡回した特別展「最澄と天台宗のすべて」は、京都会場でフィナーレを迎えます。

京都は、比叡山のおひざもと。
京都ならではの展示が見られるのが楽しみでしたので、開幕に先がけて開催されたプレス内覧会に参加してきました。

展覧会の見どころ、3会場それぞれの特色ある展示については、昨年の報道発表会に参加した時の記事で紹介していますので、今回は会場内の様子を中心にご紹介したいと思います。


東京会場の紹介記事はこちらです⇒http://deutschland-ostundwest.blogspot.com/2021/11/1200.html



京都会場展覧会概要


展覧会名 伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」
会 場  京都国立博物館 平成知新館 (京都市東山区茶屋町527)
会 期  2022年4月12日(火)~5月22日(日)
 前期展示 4月12日(火)~5月1日(日)
 後期展示 5月3日(火・祝)~5月22日(日)
 ※会期中、一部の作品は上記以外にも展示替を行います。
休館日  月曜日
開館時間 9:00~17:30(入館は17:00まで)
観覧料  一般 1,800円、大学生 1,200円、高校生 700円、中学生以下無料
※展覧会の詳細は京都国立博物館公式ウェブサイト展覧会公式サイトをご覧ください.。
※本展は、事前予約不要です。ただし、展示室内が混雑した場合は、入場を制限する場合があります。また、会期等は今後の諸事情により変更する場合があります。最新情報は、同館公式ウェブサイト、展覧会公式サイト・Twitter等でご確認ください。 

※展示室内は、根本中堂の一部(内陣中央の厨子)再現展示以外は撮影禁止です。掲載した写真は主催者より特別の許可を得て撮影したものです。

さて、今回の特別展は見どころ満載なのですが、京都会場ならではの見どころを一つあげるとすると、やはりこれです。

他の会場では見られなかった秘仏、名品が見られる!



京都会場では前期後期で、国宝23件、重要文化財72件をはじめ、全国の天台の名品130件が京都に集結します。
指定文化財(国宝、重文)の割合はなんと7割強(!)なのですが、文化財保護上の制約で、国宝・重文の展示場所は2カ所までしか移動できないため、3館共通で見られる国宝・重文はないのです。

「東京で見たから、九州で見たから、京都まで行く必要はない。」と言って今回の展示を見に行かないのはもったいないです!
関西圏の方はもちろん、全国各地から京都までお越しいただいて、ぜひともご覧いただきたいです。


最初にご紹介するのは、最澄の現存最古の肖像画。
穏やかで優しい表情に自然と心がなごんできます。
国宝「聖徳太子及び天台高僧像」十幅のうち、前期(4/12-5/1)には「最澄」と弟子の「円仁」、後期(5/3-5/22)には「龍樹」「善無畏」のそれぞれ二幅が展示されます。いずれも東京会場と京都会場のみの展示です。


右から 国宝「聖徳太子及び天台高僧像」十幅のうち「最澄」「円仁」
どちらも平安時代・11世紀 兵庫・一乗寺蔵
展示期間:4月12日(火)~5月1日(日)


そして、盛り上がった頭部が特徴の重要文化財「性空上人坐像」は、以前から気になる存在でした。
こちらは九州会場と京都会場のみの展示。
お隣の重要文化財「慈恵大師(良源)坐像」は京都会場のみの展示です。


左が重要文化財「性空上人坐像」 慶快作
鎌倉時代・正応元年(1288) 兵庫・圓教寺蔵
右が重要文化財「慈恵大師(良源)坐像」 蓮妙作
鎌倉時代 弘安9年(1286) 滋賀・金剛輪寺蔵
どちらも通期展示


京都会場でもう一つ注目したいのは、東京、九州、京都の国立三館の総力を挙げた調査研究の成果を最終会場の京都で見られることです。

そのひとつが「性空上人坐像」の頭部に納められている「瑠璃壺」。
今回のX線CT撮影調査の結果、「瑠璃壺」はガラス製ではなく、青色の釉薬が塗られた陶器であることが判明したのです。

「性空上人坐像」の隣には3次元データをもとに3Dプリンタで制作した壺が展示されています。


展示風景


下の写真中央の菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)(愛媛・等妙寺蔵 通期展示)は、60年に一度公開される愛媛の秘仏。今回拝見できる機会を逃すわけにはいきません(九州、京都会場のみの展示)。
ごつごつした岩の上に堂々と構えるお姿、きりっと引き締まった表情からは、ぐっとくる威厳が感じられました。

展示風景

菩薩遊戯坐像(伝如意輪観音)もX線CT撮影調査を行ったところ、頸部に高さ5.2cm、最大径2.2cmの五輪塔が納入されていることがわかり、3次元データをもとに3Dプリンターで制作した五輪塔が裏側に展示されています。

延暦寺の名宝の展示が数多くあるのも京都会場の特徴です。

延暦寺の名宝の中でも特にご紹介したいのは、皇室と延暦寺の深いかかわりがうかがえる勅封唐櫃及び納入品(滋賀・延暦寺蔵 勅封唐櫃は通期展示、納入品は前期後期で展示替あり)。

延暦寺では、5年に一度執り行われる10月の法華会で、勅使(宮内庁京都事務所職員)が、朱塗りに蒔絵で輪宝を表した唐櫃に納められている寺宝を改める儀式があるとのことです。
後期(5/3-5/22)には納入品のうち、平安京遷都を行った桓武天皇の肖像画(「桓武天皇像」)が展示されるので、ぜひ注目したいです。

展示風景



京都会場のみ展示される名宝が数多くあるのも京都会場の特徴です。

大きな仏像も納まる1階のこの広いスペースは、いつ来てもとても心地よく感じる空間なのですが、ここでも重要文化財「智証大師(円珍)坐像」(良成作 京都・聖護院蔵 通期展示)、重要文化財「釈迦如来坐像」(経範等作)、重要文化財「薬師如来坐像」(どちらも大阪・興善寺蔵 通期展示)はじめ、京都会場のみに展示される名宝を拝見することができます。

展示風景


展示風景




上の写真の奥には、14基が現存する日吉大社所蔵の神輿のうち、重要文化財に指定された7基のうちの1基、「日吉山王金銅装神輿(樹下宮)」(滋賀・日吉大社蔵 通期展示)が見えていますが、この巨大な神輿もゆったりと納まっていて、頂部の鳳凰はじめ豪華な装飾を間近で見ることができます。

多くの神輿が繰り出して活気あふれる祭礼の様子は、重要文化財「日吉山王祭礼図」(京都・檀王法林寺蔵 通期展示)に描かれているので、ぜひこちらも細部までじっくりご覧いただきたいです。

展示風景


最後は江戸時代の天台宗ゆかりの名宝の展示室。
一瞬、「ここは東京会場では」と思える空間ですが、関東での天台宗発展の基礎を築いた天海の肖像画(「天海僧正像」栃木・輪王寺蔵 通期展示)はじめ京都会場のみの展示もあるので、東京会場では見られなかった光景なのです。

展示風景



京都会場でも比叡山延暦寺の総本堂、国宝 根本中堂の一部(内陣中央の厨子)が会場内に再現されていますが、こちらは東京、九州会場の再現展示とは少し違っています。

東博、九博と比べ天井が低い分、上を見上げるかたちでなく、現地では厨子内に納められているご本尊の薬師如来と、参拝者の目線の位置が同じ高さになるようになっているのです。



国宝「根本中堂」の一部(内陣中央の厨子)再現展示



展覧会オリジナルグッズも充実の内容。
京都会場限定商品もあるので、ミュージアムショップにもぜひお立ち寄りください。



3会場全体の展示作品が収録されている展覧会公式図録(税込 3000円)は、カラー図版、詳しい解説が掲載されていて、ご覧のとおりの圧巻のボリューム。
永久保存版です。来館記念にぜひ!




伝教大師1200年大遠忌記念だからこそ実現した、まさに「最澄と天台宗のすべて」が見られる展覧会です。
この機会にぜひ京都にお越しください!