開館40周年を迎えた神戸市立博物館では特別展「よみがえる川崎美術館-川崎正蔵が守り伝えた美への招待-」が開催されています。
神戸市立博物館外観 |
川崎造船所(現川崎重工業株式会社)や神戸新聞社などを創業した川崎正蔵氏(1837-1912)が日本や東洋の美術品の海外流出を憂えて収集した所蔵品を、現在のJR新神戸駅周辺にあった自邸で公開したのが明治23(1890)年のことでした。
その後、正蔵氏の没後を含め14回の展観(展覧会)が開催されましたが、昭和初期の金融恐慌を契機にコレクションは散逸し、自邸も災害などにより失われてしまいました。
今回の特別展は、ゆかりの地・神戸でおよそ100年ぶりに「川崎美術館」の姿を再現するという、夢のような展覧会。
まさに神戸市立博物館の40周年を記念するのにふさわしい展覧会ではないでしょうか。
展覧会開催概要
展覧会名 神戸市立博物館開館40周年記念特別展「よみがえる川崎美術館―川崎 正蔵が守り伝えた美への招待―」会 期 2022年10月15日(土)~12月4日(日) 会期中、一部作品に展示替えあり会 場 神戸市立博物館(神戸市中央区)開館時間 9時30分~17時30分 (金曜・土曜日は19時30分まで、入場は閉館の30分前まで)休館日 月曜日観覧料金 一般1,600円(1,400円) 大学生800円(600円) 高校生以下は無料 *( )内は前売・団体(20名以上)料金 *障がい者割引など各種割引あり問い合わせ: 電話
078-391-0035
展覧会名 神戸市立博物館開館40周年記念特別展「よみがえる川崎美術館―川崎
正蔵が守り伝えた美への招待―」
展示構成
第一章 実業家・川崎正蔵と神戸
第二章 収集家・川崎正蔵コレクション
第三章 よみがえる川崎美術館
第四章 美術とともに
第五章 川崎正蔵が蒔いた種-コレクター、コレクション、美術館
※会場内は撮影禁止です。掲載した写真は報道内覧会で博物館より特別の許可をいただいて
撮影したものです。
とても内容の充実した展覧会なのでお伝えしたいことはたくさんあるのですが、実際には現地で体験していただくとして、見どころを3つに絞ってご紹介したいと思います。
見どころ1 東洋古美術の幅広いコレクションが見られる!
今回の展覧会で展示されるのは、国宝2件、重要文化財5件、重要美術品4件を含む約80件と関連資料をあわせて約110件。
もとは千点も二千点ともいわれた川崎コレクションのうち、今回の展覧会のための調査で確認されたのは国内外で所蔵されている約200件。
そして調査の手がかりとなったのが川崎正蔵氏の養嗣子・川崎芳太郎氏が刊行した『長春閣鑑賞』でした。
『長春閣鑑賞』全6集には厳選された386図が掲載されていて、各巻の構成は次のとおりですが、これだけ見てもジャンルも時代も幅広い東洋古美術がコレクションされていたことがわかります。
第1集 仏画・やまと絵・肉筆浮世絵
第2集 水墨画・狩野派
第3集 円山・四条派
第4集 中国絵画
第5集 仏像・漆器
第6集 陶磁器・玉器・青銅器
まずは3階第1会場の絵画からご紹介していきますが、あらためてジャンルの幅の広さに驚かされます。
「第二章 収集家・川崎正蔵コレクション」展示風景 |
絵画作品は展示期間が限られるものもあるので、公式サイトの「出品目録・展示替予定表」をご確認ください。
仏画で展示中の作品は、重要文化財《孔雀明王像》(文化庁)。
11月13日までの展示で、《最勝曼荼羅》(奈良国立博物館)は11月1日~12月4日、《春日宮曼荼羅》(MOA美術館)は11月15日~12月4日に展示されます。
重要文化財《孔雀明王像》平安時代・12世紀 文化庁 展示期間:10/15-11/13 |
肉筆浮世絵のうち、幻想的な風景が描かれた葛飾北斎《渡船山水図》(北斎館)は11月8日~12月4日の展示です。
「渡船山水図」葛飾北斎 弘化4年(1847) 北斎館 11月8日~12月4日展示 |
今回展示される2件の国宝のうち、《宮女図(伝桓野王図)》(個人蔵)は11月15日~12月4日に展示されます。
見どころ2 応挙の襖絵の間が再現!
国内外に散逸した旧・川崎正蔵コレクションがゆかりの地・神戸に大集結したというだけでも大変なことなのですが、なんと今回の展覧会では、かつての川崎美術館の室内の一部まで再現されているのです。
「川崎美術館」の扁額をくぐり、中に入ると・・・
見てください、円山応挙の襖絵で囲まれたこの贅沢な空間を!
「第三章 よみがえる川崎美術館」展示風景 |
上の写真左、中国・明代の宣宗皇帝が描いた《麝香猫図》のモフモフした毛並みで、可愛らしい表情をした猫は、展覧会オリジナルグッズになっているのでぜひ注目してみてください。
見どころ3 「名誉の屏風」5双のうち3双が見られる!
明治35年(1902)の明治天皇の神戸行幸で御用立てられ、「名誉の屏風」と呼ばれた5双の金地屏風がありました。
今回は、そのうち海外から初の里帰りとなる狩野孝信筆《牧馬図屏風》(個人蔵 通期展示)をはじめ、伝狩野孝信筆《桐鳳凰図屏風》(重要美術品 林原美術館蔵 通期展示)、狩野探幽筆《桐鳳凰図屏風》(サントリー美術館 展示期間:11/8-12/4)の3双が展示されます。
狩野孝信筆《牧馬図屏風》 桃山時代~江戸時代・16世紀後期から17世紀前期 個人蔵 |
この《牧馬図屏風》は、とても400年ほど前に描かれたとは思われないほど鮮やかな色が残っていて、それぞれの馬の表情も個性があるので、いつまで見ていても飽きない作品です。
今回の展覧会のメインビジュアルになっているのもよく分かります。
さらにこの作品は、第三回売立に出されたのですが、その売立が二・二六事件により無期延期になり、近年、海外で再発見され2019年にアメリカの美術館で展示が行われたもので、歴史の渦に翻弄された川崎コレクションを象徴するかのようにも感じられました。
会場の最後に展示されているのは、川崎正蔵氏がコレクションの中で最も愛したという作品、重要文化財《寒山拾得図》伝顔輝筆(東京国立博物館)。
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